「なんであの短時間にフォレス・ガロのリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか⁉︎しかもゲームは明日⁉︎一体どういうつもりですか⁉︎時間もお金もありません!」
「「「「ムシャクシャしてやった。反省も後悔もしていない。」」」」
「黙らっしゃい‼︎」
帰って来た黒ウサギに怒られる陽明達。このゲームは自己満足でしかない。しかし、道徳云々より、ガルドが陽明達の活動範囲内で野放しにされるのが気に食わず、絶対ち叩きのめしたいと思うためゲームを仕掛けた。
「はぁ〜。仕方ないです。まぁ十六夜さんがいれば楽勝でしょう。」
「何言ってんだ?俺は参加しねぇよ?」
「当たり前より貴方なんて参加させないわ。」
「十六夜が参加しなくても勝てるからな」
「駄目ですよ!コミュニティの仲間なんですから!」
「いや、この喧嘩はコイツらが売った。そして奴が買った。なのに俺が手を出すよは無粋だって言ってるんだよ。」
「ああもう、好きにして下さい。」
丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギはもう言い返す気力が残っていない。どうせ失うものが無い為もうどうにでもなれと呟いていた。
「それじゃあ今日はコミュニティにかえる?」
「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰り下さい。ギフトゲームが明日ならサウザンドアイズに皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。十六夜さんが手に入れたこの水樹の事もありますし。」
サウザンドアイズとは。特殊な瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティである。箱庭に広く展開している超巨大コミュニティである。日本で言うとマク○ナルドとかスターバッ○スとかdoc○moとかだろう。
「ギフト鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めたる力や起源などを鑑定する事です。皆さんも自分の力の出どころは気になるでしょう?」
「「「別にそうでもない」」」
「いいから行きますよ‼︎」
道中、日が暮れて、月と街灯に照らされる並木道を久遠は不思議そうに見る。
「桜の木・・・では無いわね。花弁の形が違うし真夏になっても咲き続けているはずがないもの。」
「いや、まだ初夏だから気合の入った桜があってもおかしくないだろ。」
「??今は秋だった気がするけど。」
「春真っ盛りだったが・・・」
内容が噛み合わない。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのです。」
「へぇ。パラレルワールドってやつか?」
「正しくは立体交差平行世界論というものですけど。まぁそれはまた今度です。」
どうやら店に着いた様だ。商店の旗には向かい合う女神像が記されている。あれがサウザンドアイズの旗なのだろう。日が暮れて看板を取り下げる店員に待ったをかけるが、
「待ったはなしです。うちは営業時間外はやってません。」
あーだこーだ言ってみるがそもそもノーネーム御断りである為説得は難しい。
諦めかけたその時!
「いぃぃやほぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィ!!」
黒ウサギは店内から爆走してきた着物風の服を着た白髪の少女のフライングボディアタックをくらい、クルクルとトリプルアクセルとトリプルトーループを決め吹っ飛んだ。着地失敗だからこれがスケートなら減点である。
「おい店員。この店にはドッキリサービスでもあるのか?なら俺も別バージョンで是非。」
「ありません。」
「なんなら有料でも。」
「やりません。」
「実は無料だとかは?」
「ないです」
実は割とマジだったりする。
フライングボディアタックで黒ウサギを強襲した少女は黒ウサギの胸に顔を埋めていた。ヘンタイである。
「し、白夜叉様⁉︎どうしてこんな下層に⁉︎」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!やっぱり黒ウサギは触り心地違うのう!」
黒ウサギは白夜叉を無理やり引き剥がし頭をつかんで投げる。クルクルとトリプルアクセルした白夜叉十六夜が足で受け止める。
「てい」
「ゴパァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。和装ロリ。」
呆気にとられる陽明達と痛そうに頭を抱える店員。
飛鳥が思い出したように話しかける。
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。このサウザンドアイズの幹部で白夜叉様だよ。ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。ここに来たという事は・・・遂に黒ウサギが私のペットに!」
「なりません‼︎どんな起承転結があるのですか⁉︎」
やはり痛そうに頭を抱える店員。苦労している様だ。
白夜叉が店員を説得し、店の中に入る事に成功。陽明達は白夜叉の私室に案内される。私室というより和室である。結構な御身分な様だ。
「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構えるサウザンドアイズの幹部の白夜叉だ。」
「外門ってなに?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。」
外壁から数えて中心に近ずくほど数字が小さくなる。まるでそれは、
「超巨大玉ねぎ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンじゃないかしら?」
「バームクーヘンに例えるなら俺たち一番外側か。」
「その通りだ。因みに外門のすぐ外は世界の果てと向かい合う場所になる。その水樹の持ち主など強力なギフト所持者が住んでおるぞ。」
白夜叉は薄く笑い、黒ウサギの持つ水樹に目を向ける。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?」
「いえいえ。この水樹は十六夜さんが蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ。」
ドヤ顔で自慢げに話す黒ウサギ。別にあんたが取ったわけでもないだろう。
「なんと!ではその童は神格持ちの神童か⁉︎」
「いえ。神格持ちなら一目見れば分かるはずです。」
神格とは生来の神では無く、種の最高ランクまで体を変幻させるギフトである。
人に与えれば現人神や神童、鬼なら鬼神、蛇ならば蛇神に。
どうやら蛇神に神格を与えたのは白夜叉らしい。つまり、
「へぇ。じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」
「当然。私は東側のフロアマスターだぞ。この東側の四桁以下には並ぶ者がいない最強の主催者なのだから。」
最強の主催者。その言葉に十六夜、飛鳥、耀は一斉に目を輝かせる。
「そう。なら貴女のゲームをクリアできれば私達が最強になるのかしら。」
「そりゃ景気のいい話だ」
「勝負・・・最強」
三人は闘争心むき出しで白夜叉を睨む。
「ほう。依頼しておきながら私にギフトゲームで挑むと?」
「ちょ、皆さん⁉︎」
黒ウサギは咎めるがすでに時遅しだった。
「よい。私も常に遊び相手には飢えておる」
「フフ、ノリがいいわね」
白夜叉と三人は不敵な笑みを浮かべ、空気が緊迫する。
「陽明さんも止めてくださいよ!」
「無理だな。あの四人の力、特に白夜叉と十六夜はかなり強いから・・・黒ウサギが白夜叉を止めてくれるなら力尽くで止めるが?」
「・・・無理ですね・・・」
黒ウサギは諦めた。『諦めんなよ!』とか聞こえるのはきっとナレーションの空耳。
「一つ確認しておきたい事がある。おんしらが望むのは挑戦か。もしくは決闘か?」
その瞬間、空間がいきなり変わり、白い雪原。水平に太陽が廻る世界になった。
余りの異常さに、息を呑んだ。
「私は白き夜の魔王。太陽と白夜の星霊。おんしらが望むのは試練えの挑戦か?それとも対等な決闘か?」
星霊とは。惑星級以上の星に存在する精霊を指す。
この世界は水平に廻る太陽。つまり白夜叉を表している。彼女はまさに箱庭の代表とも言える魔王だった。
(これを見てなお、白夜叉と直接戦いたいとか言ったら・・・本当に力尽く、最悪重症を負わせてでも止めなければ・・・落日を味わうにはまだ早い!)
陽明は十六夜、飛鳥、耀をいざとなったら止めるため、袖に札を数枚こっそりと仕込み、臨戦態勢をとる。
「参った。降参だ。今回は黙って試されてやるよ。」
流石に勝てないと踏んだ様で、耀も飛鳥も同じ返答をした。
「お互いにもう少し相手を選んでください!階層支配者に喧嘩を売り、それを買う階層支配者なんて、本当に!馬鹿も休み休み言ってください!それに白夜叉様は元魔王じゃないですか!」
ケラケラと笑う白夜叉。ガックリと肩を落とす黒ウサギ。ホッとした陽明。
その時、遠くある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。
「今の鳴き声。初めて聞いた」
「あやつか。おんしら四人を試すには打って付けかもしれんの」
「今の鳴き声は・・・鷲と獅子の声の特徴が混じっている。この事から推測するに、グリフォンか?」
「・・・大正解だ」
そして白夜叉が手招きすると鷲の翼と獅子の下半身を持つ巨大な獣が現れた。
「あやつこそ鳥の王にして獣の王。力・知恵・勇気の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
『ギフトゲーム名
鷲獅子の手綱
・プレイヤー一覧
逆廻十六夜
久遠飛鳥
春日部耀
安倍陽明
・クリア条件
グリフォンに乗り、湖畔を舞う
・クリア方法
力、知恵、勇気のいずれかでグリフォンに認められる
・敗北条件
勝利条件を満たせなくなった場合
宣誓
上記を尊重し誇りと御旗とホストマスターの名の下ギフトゲームを開催します"サウザンドアイズ"印』
その後、陽明と耀がやりたいと言ったが、耀がどうしてもやりたいと言ったため陽明が耀に譲り、見事ギフトゲームはクリアされた。
そして、耀が持つギフトは友達になった動物の能力を得るものである事が判明した。