「ふむ、四人とも素養が高いのは分かる。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」
「企業秘密」
「上に同じ」
「以下同文」
「腹の底からどうでも良い(嘘)」
「うおおぉぉぉぉい⁉︎仮にも対戦相手だった者にギフトを教えるのも怖いかもしれんがそれでは話が進まんだろう⁉︎」
「「「「知らんな」」」」
白夜叉の話をバッサリ切り捨ててしまう問題児四人。
「何にせよ主催者として、試練をクリアしたおんしらには褒美を与えんとな。ちょいと贅沢な代物だが、丁度良かろう」
白夜叉が手を叩くと、四人の目の前に4枚のカードが現れる。
コバルトブルーのカード
逆廻 十六夜
ギフトネーム
“
ワインレッドのカード
久遠 飛鳥
ギフトネーム
“
パールエメラルドのカード
春日部 耀
ギフトネーム
“
“ノーフォーマー”
黄色と白の市松模様
安倍 陽明
ギフトネーム
"陰陽五行の術師"
"第42代目安倍家当主"
"不完全者・片割陽"
「ギフトカード!!!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「呪印札?」
「違います!なんでそんなに息ぴったりなのですか⁉︎このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの"生命の目録"だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」
「即ち、素敵アイテムでいいんだな」
「なんでそう適当に聞き流すんですか!あーもうそうです!超素敵アイテムなんです!」
半ばヤケクソな黒ウサギ。価値があるものなのだろうが、素敵アイテム扱いとは身も蓋もない。
「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは"ノーネーム"だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
「「「「ブーブー」」」」
「シャラップ!!!」
「そのギフトカードは正式名称を"ラプラスの紙片"、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった"恩恵"の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」
「へえ?じゃあ俺のはレアケースってわけだな?」
ん?と白夜叉が彼のカードを覗き込む。そこには確かに"正体不明”の文字が刻まれている。
「いや、そんな馬鹿な」
ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的であった。
パシッと表情を変えた白夜叉がカードを取り上げる。
「"正体不明"だと?ありえん。全知たる"ラプラスの紙片"がエラーを起こすはずなど」
真剣な眼差しでカードを見る白夜叉は、不可解とばかりに呟く。
「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
パシッと十六夜がカードを取り上げる。
だが、白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。それほどギフトネームが"正体不明"とはありえないことだった。
(そういえばこの童・・・蛇神を倒したと言っていたな)
神格保持者とは生来の神々や精霊ほどではないが種の最高位だ。時に天変地異を起こせるほどの蛇神が神格を持たぬ人間に負けるなどまずありえない。
(強大な力を持っていることは間違いないわけか。しかし"ラプラスの紙片”ほどのギフトが正常に機能しないとはどういう・・・まさかギフトを無効化した?)
ギフトが正常に動作しない。そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。
(・・・いや、ありえんか)
浮上した可能性を、白夜叉は苦笑と共に切り捨てた。
修羅神仏の集う箱庭においては無効化のギフトはそう珍しくない。だが十六夜のように強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾してしまう。それに比べれば、"ラプラスの紙片"に問題があるという結論の方がまだしっくりくる。
"ラプラスの紙片"のエラー。白夜叉はこの不可解さをそう結論づけひとまず納得することにした。
「白夜叉?俺のも少し意味不明なのだが・・・」
白夜叉は陽明からギフトカードを受け取り、ギフトを見る。
("不完全者・片割陽"?・・・ふむ、この童・・・そういうことか)
白夜叉は何かわかった様でギフトカードから顔を上げる。
「おそらく、おんしは霊格が未完成なのだろう」
霊格とは、世界に与えられた恩恵であり生命の階位。霊格を得る方法は主に、世界に影響・功績・対価を与えるか、誕生に奇跡を伴う遍歴があるかの二通りの方法がある。
「高い霊格を保有しておるが・・・それでもなお、不完全か・・・心当たりはあるか?」
「・・・いや、無い」
本当は有った。確信に近いものが有ったが、敢えて無いと答えた。
いや、確信していた。必然的に答えは分かってしまった。だが、無いと言い訳していた。
落日を、思い出してしまうから。