本拠に戻った陽明は黒ウサギと十六夜と仲間が景品に出されるというゲームのことを話していた。
「・・・ゲームが延期?」
「はい、このまま中止の線もあるそうです・・・。」
十六夜は肩すかしを喰らったかのようにソファに寝転ぶ。
「どうやら巨額の買い手がついてしまったようで・・・」
サウザンドアイズは群体コミュニティでその傘下のペルセウスが主催者だった。双女神の看板の傷がつく事も気にならないほど大きな利益がでれば撤回ぐらいするとのこと。
「金か・・・俺たちにはどうしようも無いな」
「まぁ次回を期待するか。ところでその仲間ってどんな奴なんだ?」
「一言で言うとスーパープラチナブロンドの超美人さんです!湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです!」
「へぇ?」
「あっ、十六夜さん、いやらしい目をしてます!」
「わざとだ☆」
「黒ウサギより先輩でとても可愛いがってくれました。近くにいるならせめて一度お話したかったのですけど・・・」
嬉しそうに答える黒ウサギだが、言葉を重ねる毎に、次第に表情も沈んでいく。
その時、窓際から第三者の声が響いた。
「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
三人はハッとして窓を見た。すると金髪の少女が浮いていた。コンコンと窓の叩いている。
「レ、レティシア様⁉︎」
「様はよせ。私は他人に所有される身分だ。"箱庭の貴族"ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」
「わっはっはー」
「笑わないでください!」
ハリセンで陽明を叩く。
十六夜はレティシアをまじまじと見つめる。
「どうした?私の顔に何かついてるか」
「いや。前評判通りの美人だと思って目の保養に観賞してた」
「観賞なら黒ウサギも負けて無いと思うのだが」
「いや。黒ウサギは愛玩動物だから弄ってナンボだろw」
「ふむ、否定はしない」
「してください!」
できるわけがないが、それを言ったらダメな気がした。
「レティシア様と比べれば世の女性の殆どが観賞価値の無い女性でございます!黒ウサギだけが見劣りする訳がありません!」
サラッと酷い事を言った黒ウサギ。
「それで用件は?」
「用件という程のものじゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているか、それを見に来たんだ」
ガルドに鬼種を与えたのはやはり彼女であった。小説とかでよくある吸血というやつだ。
「黒ウサギの同士に神格級のギフト保持者が入ったと聞いてな」
黒ウサギの視線が十六夜と陽明に向く。十六夜は蛇神を倒した。その十六夜に打ち勝った安倍晴明の子孫の陽明。
「そこで一つ試してみたのだが、生憎ガルドでは当て馬にもならなかったよ。彼女たちはまだ青い果実で判断に困る」
レティシアの目から見て飛鳥も耀もまだまだ未熟。実力、潜在能力の底を測れなかったために判断することができなかったのだ。
(とはいっても、一人だけ本気を出してなくて判断できなかったがな・・・)
陽明の事である。あの時はルール上、本気を出す必要性がなかった。
「何もかもが中途半端であるにも関わらずここに足を運んでしまった。私はお前たちになんと声をかければいいのだろうか」
「違うだろ?」
「ん?」
「アンタは言葉をかけてくてここに来たわけじゃない。仲間が今後自立した組織としてやっていけると確信したくてここに来たんだろ?」
十六夜がレティシアに問いかけた。
「・・・そうかもしれないな。解散を諭すには既に遅すぎた。だが仲間の将来を安心して託すに至らない」
レティシアは不安と憂いを帯びた表情を浮かべて答えた。
「だったらその不安を払拭させてやるよ」
「なに?」
十六夜はニヤリと笑みを浮かべる。
「"ノーネーム"が魔王を相手に戦えるのかアンタがその力で試せばいい。どうだ?元魔王様」
「ふふ・・・なるほど。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい。下手な策を弄ろうさず、初めからそうしていればよかったのかもしれないな」
「ちょ、ちょっと御二人様⁉︎陽明さんも止めてk「面白そうだな」あぁ、もうダメです・・・」
レティシアは空を飛び、ギフトカードを取り出す。
「互いに一撃ずつ撃ち合い、受け止められなかったら敗北だ。先手はいただくぞ?」
「好きにしな」
レティシアは輝くギフトカードから長柄の武具を取り出した。
「ふっ──!」
呼吸を整え、翼を大きく広げ全身をしならせた反動で打ち出すと、その衝撃で空気中に視認できるほど巨大な波紋が広がった。
「カッ、しゃらくせえ!」
しかし其れを十六夜は殴りつけた。そして、砕いた。
「「・・・は?」」
あまりの一瞬の出来事に呆気にとられるレティシア、黒ウサギ。
槍は一撃で砕け、ただの鉄塊と化して散弾銃の如く無数の凶器となってレティシアを襲った。
なんと馬鹿馬鹿しい破壊力。受けられない。避けなければ。如何に吸血鬼の純血の彼女といえど第三宇宙速度で迫る凶器を退けることは不可能であった。
そして、レティシアが血みどろになって落ちる覚悟を決めた時、
「オーバーキルだ。十六夜」
陽明が結界を張って防いだ。
「やりすぎとしか言いようがないな」
「・・・深夜テンションだ。反省はしない」
終わった後にレティシアのギフトカードを黒ウサギが取り上げた。
「あ、く、黒ウサギ!」
「ギフトネーム・“純血の吸血姫"・・・やはりギフトネームが変わっている。鬼種のギフトは残っているものの、神格のギフトが残っていない。これではレティシア様の力も、以前の十分の一以下でしかありません。レティシア様は鬼種の純血と神格があったため魔王と呼ばれていたはず。どうしてこんな事に・・・」
目を背けるレティシアに十六夜は呆れた感じで笑う。
「ハッ、どうりで歯ごたえが無いわけだ。他人に所用されたらギフトまで奪われるのかよ」
「いえ。いくら隷属させたからといって、魂の一部である“恩恵”をそう易々と奪うことは出来ません。それこそ、本人同意でもなければ──」
黒ウサギが言葉を続けようとしたその時、異変が起きた
遥か後方から褐色の光が射し込んだ。
「ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」
焦燥の混じった声で叫ぶレティシア。光は真っ直ぐに近づいてきた。
「くっ!」
レティシアは光から庇うように三人の前に立ちふさがる。
褐色の光を全身に受けたレティシアの体は瞬く間に石へと変質されていった。
「いたぞ!吸血鬼は石化した!」
「例のノーネームもいるようだが?」
「ふん!別に潰しても構わんそうだ。」
本来なら本拠への不当な侵入は侮辱行為だが世間体もよろしくない。これは明らかにノーネームと見下してのことだ。
「ゴーゴンの威光・・・"ペルセウス"か・・・」
「この!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら非礼の一言も無いのですか!」
怒る黒ウサギを鼻で笑うペルセウスの男達。
「ふん!こんな下層のノーネームに礼を尽くしては我らの旗に傷が付くわ!この名無しめ!」
黒ウサギの堪忍袋が爆発した。黒ウサギは小さく、『よろしい、ならば戦争Death』とつぶやいた。
「ふん、戦うのか?恥知らずめ。我らが御旗の下に成敗してくれるわ!」
「ふ、ふふ。いい度胸です。少しは名のある武具を持っているようですがそんなレプリカぐらい・・・」
今度は相手が怒声をあげる。黒ウサギはインドラの槍を掲げ、雷を呼び出す。
「お覚悟ーーーーーーーー!!!!」
「「てい」」
黒ウサギの耳を陽明と十六夜が引っ張った。
「落ち着け。白夜叉と問題起こしたく無いんだろ?」
「それにここに雷落としたらレティシア(石)が砕ける」
「今はあの無礼者に天柱を「もう帰ったぞ?」逃げ足速すぎでしょう!・・いえ。これは不可視のギフト⁉︎」
「詳しい話を聞きたいなら手順を踏むもんだぜ。事情が詳しそうな奴ならいるだろ?」
十六夜に言われて黒ウサギは思い出す。
レティシアを連れてきたのが白夜叉であるのなら詳しい事情を知っているかもしれない。
「春日部は無理として、とりあえずお嬢様も連れて行くか。最悪その場でゲームになる可能性があるからな。頭数はいたほうがいいだろう」
こうして陽明、十六夜、飛鳥、黒ウサギの四人は、“サウザンドアイズ”二一〇五三八〇外門支店を目指すのであった