fate-another-とある未来の物語   作:無花果耕作

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第ZERO話 二人のサーヴァント

―――2219年9月29日午前2時44分 勝海市、竜岳山麓。

 

とある田舎にそびえ立つ外観に似合わぬ屋敷でとある男が儀式を始めようとしていた。

几帳面に書かれた魔術陣、その中心に乳白色のものが木箱に大事そうに収められている。

 

「よし」

 

男は立ち上がり自身の魔力回路を確認する。流れはしっかりしていて魔力も十分にある。

陣に回路を接続して魔力を流し込む。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する」

「―――――Anfang」

「――――――告げる」

「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 

屋敷が激しい光に包まれる。

陣が輝き小規模な暴風が部屋のなかで乱舞する。

男はそんな光の中でも陣を凝視していた、そして一層光が激しくなると男は視線を背けた。

そしてしばらくの沈黙が訪れた。

男が目を開けると陣の中心には黒と白基調のゴスロリ服に身を包んだ金の長い髪の少女が座っていた。

 

「こ、これが……俺のサーヴァント……?」

 

男は一瞬目を疑った、こんな英霊は少なくとも文献などでは見たことがない。

しかし、呼んでしまったものは納得するしかない……と男は意を決して口を開いた。

 

「さて、早速だが名乗ってもらうぞ我がサーヴァントよ」

 

少女は男をキョトンとした目で見ている。

そしてしばらく考え込むとなにかを閃いたようにこう言った。

 

「チェンジ」

 

「はあ?」

 

男は思わず、落胆の声を出した。

なんて失礼な奴だ、男はそう思ったに違いない。

 

「だって、あなた冴えてないんだもの。違うマスターが良いわ」

 

少女は遠慮なく言葉を続ける。

 

「おいおい、いくらなんでもそれはないぜ……こっちだってどこの誰だか分からないサーヴァント掴まされてご立腹なんですぜ?俺だって違うサーヴァントがいいわ」

 

その瞬間、目の前の少女の魔力が跳ね上がった。

 

「私のこと捨てるの?イラナイノ?ネェ?」

 

少女が男の体に圧し掛かる、彼の貧弱な体では少女一人も支えきれない。

体制を崩し背中を打ち付け倒れる、少女は馬のりになりながら男を凝視する。

その瞳を見ているとまるで吸い込まれるのではないかという錯覚を覚える。

恐らく誘惑(チャーム)の類であろう、普通の魔術師ならばここで少女のいいなりになってしまうのだがこの男は普通の魔術師とは離れた存在だった。

 

「残念だが俺にその程度の魔術効きはしないぞ」

 

少女は目を見開いて驚いた表情をしたがこんどはニンマリと笑ってこう言った。

 

「あなたは簡単に壊れないよね?」

 

「少なくともサーヴァントにはやられないさ。それに……」

 

男は自身の腕に刻まれた赤い印を確認する、そこはまるで焼かれているかのように熱を感じる。しかし、これがあることがこの戦争への参加条件。

 

「礼呪で命ずればいいしな」

 

「マスター仲良くしようね。私はヘラ、ギリシアのヘラだよ」

 

「ヘラ?ヘラってあの神様の?うっそだろ」

 

男は目の前のゴスロリ少女を見回しながらそう言い放つ。

 

「俺が触媒に使ったのってなんかやばいもんだったのか……」

 

この聖杯戦争において触媒は重要な役割をもつ、それがサーヴァントとのつながりを示し、より強い者を呼びたければそれ相応の触媒を用意しなければならない。

今回男が使った触媒は、父親から譲り受けた謎の石だった。

 

「この触媒……あーぬしらなくていいよ」

 

ヘラはその石に魔力を込めて砕いてしまった。

 

「あああなんてことするんだ!」

 

「いいよ。もう使わないでしょ?」

 

ヘラはニッコリと笑う。

 

「名前、聞かせてよ」

 

「あ、俺か俺の名は柊真琴。魔術師だ」

 

「私はキャスタークラスで召喚に応じた、ギリシアのヘラ……ちょっと汚れちゃってるけどね。これも聖杯の影響かな……」

 

「キャスターか……それより聖杯になにかが?」

 

「分からない、でも魔力が濁ってる……こんなことなら全開の状態で召喚してほしかったな……それと私の願いは秘密ね」

 

「ほう、じゃあ俺の願いも秘密だ……けど信頼してるぜヘラ」

 

ヘラは不思議そうな顔をして真琴を見た。

そして何かを言いかけたがやめた。

 

「よろしくマスター」

 

「ああ、よろしく」

 

二人は強く握手した。

ヘラのステータス開示、ヘラ自身が真琴に公開した部分のみ。

 

【クラス:キャスター】

【真名:ヘラ】

【性別:女】

【属性:中立・中庸】

【ステ:筋力D耐久A敏捷C魔力A運B宝具?】

【固有スキル】

・陣地作成:E

・道具作成:E

【保有スキル】

・神性:?

・???

・???

【宝具】

・???

 

 

 

 

―――同時刻、勝海市、とある山の中。

 

山の洞窟だろうか人が住むために整備された洞窟で、女性が一人何かを呟く。

女性は白く長い髪に赤い瞳、そしてまるで貴族のようなドレスを着ている。

しかし、そのドレスはボロボロであちこちが裂けたり汚れたりしている。

そしてその女性が屈む前に陣となにやら黄金の杯が置かれている。

突然、激しく光り輝き薄暗い洞窟を照らし出す。

光が治まるとそこには同じように光り輝く鎧をきた金髪の男が立っていた。

すると女性は歓喜に震えた声でこう言った。

 

「わ、我が王よ……最良の出会いに感謝いたします」

 

さらに深く女性は頭を下げる。

 

「我を召喚するとは……実に運がよいな。よもや三度も聖杯に呼ばれることになるとは、我の器と並ぶものもいないとみえる。それでお前はだれだ?」

 

女性は頭を下げたまま、問われた問いに愚直に応える。

 

「私は、フェルトメア・アインツベルン……」

 

黄金輝く男は一瞬眉を動かす。

 

「ほう、アインツベルンが我のマスターか……これも何かの天命かもしれぬな。それでアインツベルンは我に何を求める」

 

「私は、王の勝利を……」

 

瞬間、男はどこからともなく赤く螺旋を象られた剣を女性の目の前へ突きだす。

女性は言葉に詰まり、冷や汗を流す。

 

「顔を上げろアインツベルン」

 

女性がゆっくりと顔をあげるとその首元に剣を突きたてる。

 

「つまらぬことに時間を使わせるな……本心を言え、人形が風情が」

 

「わ、私は……王を利用しアインツベルンの復興を願います」

 

「ふん、気に入らぬが余興にはなろう。それにところどころで強い魔力を感じる、大方他のマスター達が召喚を始めたのだろう」

 

男は剣を出したときのようにどこかへしまうとまたどこからか玉座のような派手な椅子をとりだしそこへ腰かけた。

 

「お前は我に魔力を供給していればよい。これは余興だ、精々我を飽きさせぬように尽くせ」

 

「畏まりました、我が王……」

 

こうして二人のマスターと二人のサーヴァントの物語が開始された。

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