fate-another-とある未来の物語   作:無花果耕作

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第二話 唆されるもの

―――同日、午前3時40分。勝海市内柊邸。

 

 

「なんだ?」

 

遠くで感じる激しい魔力同士のぶつかり合い、おそらくサーヴァント同士が戦っているのであろう。

ヘラもそれを感じているのであろう、さっきから険しい顔をして考え込んでいる。

 

「この感じ、ライダーと……なんだバーサーカーか?」

 

一つは先ほど学園で相手取ったサーヴァントだ、しかしもう一つはいやに強大だが禍々しい感じを感じない。

おそらくセイバーかランサークラスだろう。

 

「懐かしい感じがする……」

 

ヘラがそうつぶやいたのを聞き逃さなかった、しかしそれ以上追及することを断念したあまりに……彼女があまりに悲しそうな顔をしていたためそれ以上聞けなかった。

 

「思ったより戦闘が激しいな……これは急がないといけないな」

 

真琴は、その思考を消すために別の話を振る。

ヘラの顔はいつの間にかいつも通り冷たいものになっていた。

 

 

―――同日、午前6時57分。同場。

 

 

「おはよう」

 

「おはようございます、先生」

 

「あれ?」

 

いつも通りの登校風景なのだが、一人足りない。

 

「あれ愛華はどうした?」

 

真琴は優奈にそう問うが優奈は歯切れの悪そうに曖昧な応えしか返さない。

不審に思いつつもそのまま学園へ登校した。

学園で連絡を受けたところ風邪でお休みという話だった。

 

 

―――同日、午後17時10分。勝海学園内。

 

 

「あれ、神代残ってたのか……」

 

教室に戻ると、優奈が待っていた。

優奈は真琴に気がつくとゆっくり近寄ってくる。

その眼は虚ろで、焦点があっていない。

 

「せんせい……わたし……」

 

「ど、どうしたんだ?」

 

優奈はそのまま真琴にもたれかかれるように倒れる。

その体は熱く、とても正常とは思えない。

 

「大丈夫か―――」

 

その瞬間、優奈の後ろから漆黒の鎧に身を包んだ男が真琴に切りかかる。

瞬時に、魔力を込めて腕を強化しその剣を防ごうとする。

しかし、その一撃は強化した腕を切り裂き、深い傷ができる。

 

「いってええ」

 

ヘラが魔力を発生させて優奈を吹き飛ばす。

追撃を行おうとするヘラを真琴が慌てて制止する。

 

「やめろキャスター」

 

ふらふらと、優奈は立ち上がる、その傍には漆黒の鎧の男が立っている。

あきらかにサーヴァントだ、まさか巻き込まれた?

 

「おい神代!お前なんで聖杯戦争に!?」

 

優奈に叫んで、問いかけるがその言葉は彼女に届いていない。

それどころか痛みで我を忘れている。

 

「いやあああああああああしにたくないよおおおおおおおおおセイバあああああああああああああ」

 

「――――――――――――――」

 

声にならない声が教室全体に響き渡る。

 

「セイバーか……無理……だけど」

 

「だから言ったでしょ」

 

ヘラは静かに障壁を複数展開する。

 

「逃げよ、マスター」

 

「いや、逃げない……あれは俺の生徒だ」

 

「そう、じゃあ最後まで付き合うよ……」

 

ヘラは障壁の上から鎖を発生させる。

鎖は、セイバーの体に巻きつきその動きを制限する。

 

「いいぞキャスターそのままサポートしろ!!」

 

真琴は駆け出し、言葉を紡ぐ。

 

「強化・六重魔術!!ミストテイル」

 

両足に魔力を通し、怪我のしていない左手に四重の強化を掛ける。

その拳はセイバーに直撃する、しかしセイバーは傷一つ負っていない。

手ごたえから、耐久が高いのではないことに気がつく……

 

「スキルか宝具……か、その鎧……まさかな」

 

真琴は一つの確信にいたるが、それを否定したい自分もいる。

教え子が……まさか……

 

「あついよぉせんせい」

 

「――――」

 

セイバーが吠える、拘束している鎖ももう持たないだろう。

しかし、逃げる訳にはいかない……

 

「こうなったら」

 

真琴はなにかを決心したように、もう一度セイバーに向かって走り出す。

今度は、セイバーではなくマスター……つまり優奈の方へと向かっていく。

 

「なにするのせんせい?」

 

まるで別人のように甘い声を出す。

 

「ごめんな」

 

そして優奈の頭に手を置く。

セイバーが隣で吠えている。

まるで優奈に触れることを起こっているようだ。

 

「解除」

 

その瞬間、優奈の魔力回路は真琴の魔力によって次々と切断された。その衝撃で優奈は眼を見開き意識を失い、その場に倒れた。

それに続くようにセイバーは吠えながら姿を消した。

教室には静寂だけが残った。

 

「ごめん……」

 

真琴はもう一度だけ呟いた。

 

 

―――同日、午後23時01分、勝海市内柊邸。

 

 

「ここは……」

 

優奈は意識の混濁から眼を覚ました。

右手が熱く、鈍い痛みを放っている、自分の右手をみるとそこには赤い模様のようなものが刻まれていた。

 

「なにこれ……」

 

彼女がそれを眺めていると、ひょっこりとヘラが顔を出す。

 

「御目覚め?」

 

「は、はい!」

 

優奈は慌てて飛び起きる、今自分の状況が飲み込めていないようだ。

 

「落ち着いて、ここは安全よ?それこそ要塞だから」

 

ヘラはニッコリと笑いかける、年下に見える女の子に宥められて少し落ち着いたのか、優奈は小さく深呼吸する。

 

「誰ですか?」

 

最初に出た言葉がそれだった、旅行者にしては格好が変わっているし、なによりここは先生の家だ。親戚かなにかかなと優奈は思った。

 

「それはマスターから聞けばいいわ、今はゆっくりしてなさい」

 

「ま、マスター?」

 

「そう、私のね」

 

ヘラはまたニッコリと笑う。

優奈はなんだか分からないが安心してもう一度ベッドへ横になった。

そしてそのまま眠りに着いた。

 

「寝たわよ」

 

「お、おう」

 

がちゃりと扉を開けて真琴が入ってきた。

 

「盗み聞きとは感心しないのだけれど?」

 

「すまん、入ろうと思ったんだが……な。」

 

「気にしてるの?」

 

真琴は黙って視線を落とす……

彼が優奈にした行為は魔術回路の破壊と同様の行為だった。

強制的に魔力の流れをカットしてサーヴァントへの魔力供給を一気に減らした。

あれだけのサーヴァントだ、おそらく彼女の持つ魔力をかなり消費していたはずだ、すこし減らしただけで消えるはずっだたのだが、生憎魔力の流れを抑える方法なんて思いつかなかった。

外傷がないように考えた結果、こういう方法しか選べなかった。

しかし、それ以上の傷を彼女に残してしまうかもしれない、それは考えなかった訳じゃない。

もう二度と、魔術が行使できなくなったら?あんなに俺から関わっておいて。

確かに平穏という意味合いでは使わない力かもしれなが……選択を奪うのは違う。

そんなことが頭を回り、合わせる顔がなかったのだ。

 

「……」

 

「あのままやってても負けてたし仕方ない。すべてを得るなんて無理な話よ」

 

ヘラの言葉に頭を、思考をなんとか切り替える。

 

「ああ、そうだな。それとセイバーのことだ。あれは狂化に近い感じだった……」

 

「ここで思考しても無理よ。彼女に聴くのが一番よ」

 

「それもそうだが……」

 

こうなってくると衛宮も心配だ……なにかに巻き込まれていないか……真琴はそう考える。優奈の朝方の対応も曖昧だった、普段なら風邪なら風邪と言ってくれるはずなのだが……

ヘラの言った通りいくら思考を重ねても答えは見えてこない。

今はただ優奈の回復を待つばかりだった。

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