ARMORED CORE ONLINE 作:ローディー大先生
「よぉーす。おひさ!」
「遅かったじゃないか‥‥‥」
「いやいや時間通りだから。一々ACネタぶち込んでこなくていいからね?で、どうだった?」
「ん?」
「アリーナだよアリーナ。第一回PvPアリーナ予選。出たんだろ?」
「そうそう。ビジュ機も多かったけどやっぱみんな上手いよなー。今までのランカーとかも出てたし。くっ‥俺も粗製でなければ‥‥‥」
「ランカーといえば、sixさん出てた?」
「いや、偽物しかいないよ‥‥‥前作のレイヴンランク一位なんだから早く今作に来てくれないかなぁ」
「うぃー!お待たせ!」
「お、遅えぞオイ!」
「いやいや今こそACネタぶち込めよ」
「Bブロック予選どうだった?」
「いやぁ、色んな意味でメンバーがすげえよ?fortuneさんとかokonomiyakiさんとか有名な人ばっかだよ。どうにかなんねえの?」
「え?okonomiyakiさんと会ったの?結局男なの?女なの?」
「いやぁ、やっぱりネカマでしたわ‥‥‥」
「えっ‥‥‥じゃあもう俺ホモでもいいや」
「お前‥‥‥既に手遅れだったか‥‥」
「そういやお前、誰に負けたんだ?」
「負けた前提で話を進めんなよ‥‥‥まあ、負けたけどさ?」
「は?初戦ってあの粗製だろ?偽物の方のsix」
「うん、まあそうなんだけどさ」
「‥‥‥どうした?マジで負けたのか?」
「相性でも悪かったか?」
「それが‥‥‥膝でブッ刺されて‥‥」
「「は?」」
───☆───
とある女子大生がいる。
肩まで伸びた黒髪に大きな瞳。長いまつ毛に二重まぶた。和服の似合いそうな桜の蕾の様な少女。
彼女の名を、
和服屋の家に生まれた事もあり、彼女も小さい頃は和服について勉強した。だが、彼女は毛頭和服なんて興味はなかった。
それでも、母の期待に応えようと努力した。だが、彼女には致命的に才能がなかった。勿論、手伝いに呼ばれる回数も減っていった。
そんな彼女を嘲笑うかのように、一と九はそれぞれの才能を伸ばしていった。
姉の一は、とび抜けて色彩の才能があった。どの色とどの色を合わせると綺麗だとか、あの場所に行くのなら何色が似合うだとか、ともかくセンスがあったのだ。
実際一の私服センスは飛び抜けてよかったし、妹達は一に服を選んでもらっていた。
妹の九は家の手伝いになるような才能はなかったが、とにかく頭が良かった。天才、神童と呼ばれる程の才を持ちながらも努力を怠らず、更に普通は嫌がるような学校行事を率先して行うなど、まさに完璧な人間であった。
そんな中、次女の六はなんの才能もなかった。外では必ずと言っていいほどに二人と比較され、「雨宮家の落ちこぼれ」として世間からは白い目で見られた。彼女も、それに劣等感を抱き、不登校になった時期もあった。
最も、和を尊ぶ雨宮家に才を鼻にかけるような人は居らず、彼女を平等に扱った。
自分の無能さを親に相談したこともある。その事に母は「あなたにはあなたのいいところがあるわ」と諭され、姉にも妹にも同じ事を言われた。
きっと、それは善意の一言なのだろう。だが、その時の彼女は誰かに優しくされる程辛かった。何を言われても馬鹿にしているようにしか感じなかった。
ある日、自室に籠もってぼーっとしていた彼女は、気楽なニート生活に嫌気が差していた。一日中家に居ればやりたい事なんてすぐにやり終えてしまうし、ネットもすぐに飽きてしまった。
そうだ。家の中を探索してみよう。
思い立った彼女は、誰もいない広い家を探検する事にした。そして、彼女は“それ”を見つけた。
それがAC。彼女にとっての全てだった。
ACとは、家庭用テレビゲーム【ARMORED CORE】シリーズの略称であり、このゲームを知る人は皆こう呼ぶ。
初代PSから始まったこのシリーズは専用コントローラが追加されたPS7までに手を伸ばし、ハイスビードメカアクションゲームの頂点に君臨している。ALO、GGOを始めとした
最初は操作が難しく敷居の高いゲームだったが、このソフトの持ち主である父の手解きもあり、一人前に操作ができるようになった。
その後、過去作を漁るなどどっぷりとハマった結果、ゲーム内の登場キャラクターに激しく影響を受け、一ヶ月も経たずに学校に復帰した。動機が不純であるが、不登校でなくなったことに両親は喜んだ。結果的にそれなりの大学にも合格し、彼女の人生はある程度の進路を持ち直した。
そして今日。ついに、ACシリーズはVRゲームに進出した。シリーズ内で最も人気があり、VRゲームと相性の良い4系がリメイクされる事になった。といっても、既にPS6で一度リメイクされているのだが。
このニュースを聞くと、彼女は叫ぶほどに歓喜した。叫びはしなかったが、興奮のあまり家に飾られていた壺をかち割ったくらいだ。この後、彼女はこっ酷く怒られた。
(あと10分、あと10分‥‥‥)
午前0時からサービス開始だ。布団の上でウキウキとしながら、アミュスフィアを装着する。静寂な部屋の中にコチ、コチと秒針の音だけが過ぎ去って行く。
そして、すべての針が「12」を差す。同時に、彼女はその言葉を口にする。
「リンク・スタート」
途端、世界の全てが色を失った。暗闇の底から現れた光の奔流が六の身体を駆け巡り、弾ける。
光が作り出したのは無機質な空間。六角形を基調とした壁の隙間から、淡い青光が漏れている。
彼女の目の前には小さなウィンドウ。
「What's your name ?」迷わずに「six」と入力する。
すると、突然短いアラート音が鳴り、彼女はビクッと肩を揺らす。目の前に、新しいウィンドウが展開される。が、興奮していた彼女はそれを良く読まずに「yes」を押す。
「アバターの作成に入ります」
ウィンドウ上に読み込みアイコンが出ると、数秒後に完了する。
「アバターの変更には追加料金が必要です。十分に注意して下さい」
(鏡がないからどんな姿かわかんないや‥‥‥‥)
六は口を尖らせる。
「チュートリアルを受けますか?」
操作自体は不慣れだが、そんなものはミッションをこなしながら覚えればいい。彼女はそう考えた。従って、「no」を押した。
「おかえりなさい。メインシステム、パイロットデータの認証を開始します」
(おおっ!?フィオナの声だ!すごーい‥‥こんな変更点もあるんだ‥‥)
「メインシステム、通常モードを起動しました。これより、作戦行動を再開します。貴方を信じてる、帰ってきて」
「はい!行ってきます!」
COMボイスにハキハキと答えた六の顔は、これからの出来事への喜びと希望に満ち溢れていた。
───それが、すぐに壊されてしまう事も知らずに。