インフィニット・ストラトス「山猫の軌跡」   作:駄菓子

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第1話

オリジナルセブンスという言葉をご存知だろうか?

...............いや、なんかこういうのは止めておこうか。なんか俺だったらイラッとくるかもしれないからな。

オーメルの仲介人のようなあの物言いはかなりイライラさせられるし、第一スミカがブチギレるのでまずまともにブリーフィングが終わらないのだ。

気がついたら部屋が血まみれなどという、サスペンスホラーも真っ青なボロ雑巾(と化したオーメル仲介人)と返り血で真っ赤に染まるスミカだったとかザラ。

そうなったら最後で任務とかそういう事は後回しにされるのだけど、取り敢えずその言葉は置いておこう。

兎に角オリジナルセブンスとはネクストと呼ばれる新型のアーマードコアがあるのだけど、それの操縦者(繋がるものという意味でリンクスと呼ばれる。もしくは英語圏でのリンクスの読みから山猫とも)の中でも、トップクラスの操縦者に送られる称号のようなもの。

他のリンクスと比べて圧倒的な実力を誇る、いわば核兵器のような抑止力にすらなりうる最強単体戦力を誇る。

セブンスという言葉が意味する通り現在では7名いるのだが、通称カラードと呼ばれるリンクス戦力を仲介する組織には登録されていない。

なぜかと言うとカラードに登録された正規リンクスたちがいれば大抵の任務はこなせる為に、俺たちが出る必要は全くないからだ。

それにカラードに登録されているとシステム上依頼が舞い込んでしまうしね。

つまりオリジナルセブンはカラードに登録されていないイレギュラーであるとともに、奥の手でもあるため余程の事がない限り通常任務に駆り出される事はない。

と、ここまでダラダラと説明したのは理由があるのだ。

俺がオリジナルセブンスのナンバーセブンだと自慢するためだけどな!

と言ってもそう名乗るのを認められたのはつい5ヶ月ほど前だけども。

ほぼ毎日をAC乗りとして戦場を駆け巡っていた頃に比べ、オリジナルセブンスは通常任務に駆り出される事はないというのはさっき説明した通り。

つまり俺がなにを言いたいかと言うと兎に角暇だという事。

演習するにもカラードのシュミレーターは予約でいっぱいだし、俺専用のそれが納品されるのもまだまだ先の話。

だから、なにが悲しくて太陽がコンコンと煌めく昼間からネットサーフィンする他に暇つぶしがない。

なんせ外ではミンミンゼミが喧しいくらいに鳴いている中へ出て行こうとは到底思えないし。

 

「...............あぁ、暇ぁ」

 

本なんてものは活字を見ると頭が痛くなるたちな為に読まない。

ついでに言うと眠くなるのだ。

まぁ、こんな状態となっては寝るのもいいかもしれないけど、あいにくここには本が無い。

八方塞がりだった。

やばい、暇すぎて死にそう。

 

「ぐぬぬぬぬ!チクショウメーッ!!」

 

ドンガラカッシャーン!という何かが壊れる音と共に隣の部屋から怒声が響いた。

どうやら隣の部屋にいるスミカが理由は知らないけど(むしろ知ってたら怖いが)激怒したようだった。

スミカがキレやすい性格なのは長い付き合いの中で分かっているし、むしろこういうことは割と日常茶飯事。慣れっこなのでなにも気にしない。

どうせオーメル仲介人がなんかやらかしたんだろ。

 

「この老害ガァァァッ!!!」

 

と、思っていた時期が俺にはありました。

壁を突き破って俺の目の前のパソコンをぶっ壊した、スミカ愛用の如月製超高性能ディスプレイが目の前に現れるまでは。

 

「...............」

 

確かこのディスプレイってうん十万はいかなかったっけとか、軽く10キロくらいあったよなとか、壁ぶち破るとか取り敢えず心の中で思ったことを、取り敢えずどっかに置いておく。

気にしたら負けだと俺自身に言い聞かせ、なんとも言えない気持ちの中、壁に空いた穴からスミカの部屋に首を突っ込んだ。

 

「フーッ!フーッ!フーッ!」

 

「スミカ。ものを投げる癖を止めようか?」

 

タンクトップにホットパンツ一丁という、いろんな意味で終わっている軽装のスミカは余程お怒りなのだろう。

割と離れているのに額に浮かぶ青筋がしっかりと見えた。

普段だったらもう少しまともな服を着ようかというところなんだけど、今のスミカにはいっても無駄だろう。

てか、統一する気なしの適当半袖短パンの俺もどっこいどっこいだけども。

うーん。やっぱり俺たちって似た者同士。

 

「セレンッ!コーヒー!」

 

「はいはい。いつものね」

 

ミルク多め!というスミカにはいはいと返事を返しながら俺はキッチンへと向かうとコンロでお湯を沸かす。

その間に戸棚からカップとインスタントコーヒー、そして大量の砂糖とミルクを用意する。

ドンガラカッシャーン!という音を背景に沸いたお湯を半分ほど注いでインスタントコーヒーを大さじ一杯入れる。

 

「...............ほんとスミカって人間じゃねぇよなぁ」

 

元リンクスだから人間では無いだろ、というツッコミは置いておきながらなみなみになるまでミルクを注ぎ、おびただしい量の砂糖を加える。

これでいわゆるスミカスペシャルの完成なのだけど、俺はこれをコーヒーだなんて認めない。

こんなのコーヒーの色をした砂糖水だって。

てかコーヒー飲めない癖に無理やり飲もうとした結果がこれだよ!

本人曰く努力の結果だろうけど、これだったら氷砂糖なめてた方がいい気がする。

将来糖尿病にならないか心配だ。

 

「セレンーッ!」

 

...............さてとっとと渡しに行くとしますか。

これ以上被害が広がらないうちに。

あぁ、修理にどれくらいかかるんだろうか。

そろそろ懐事情が厳しいこの頃。

 

 

 

 

ちなみに。

セレンが激怒する原因となったのは企業連からのメール。

うん。さすがにその内容を見たときは俺もブチ切れそうになったね。

老いぼれ小龍め。

今度こそ引導を渡してやろうか。

 

 

 

 

 

 

「で?老いぼれクソジジィ。なんで俺たちを緊急招集したんだよ。オリジナルセブンスが全員集まるなんでなに考えてる」

 

「もう少し貴様は年上を敬おうとは思わんのか」

 

「あ?去年援護するとか言った癖に背中ぶち抜いた奴がよく言うよ。そんな奴をどう信用しろと?」

 

「...............済まなかったと、故意にはしていないと何度も言ったろう」

 

「へっ!やなこった」

 

場所は変わって企業連の第一会議室。

薄暗く締め切られたこの部屋にオリジナルセブンスが複数集められるのはやっぱり異様な光景だと思う。

戦場のイレギュラー因子に対抗するためのイレギュラーを持ち出すようなものなため、世界大戦並みの異常事態でない限り、まず複数人を同任務にかり出すことはないのだから。

本当老いぼれ小龍の考えはよく分からない。

そろそろボケ始めたのかもしれないな。

うん、そうに違いない。

そういうことにしておこう。

 

「落ち着くんだ、セレン。そう突っかかっていては話が進まない。どうせ長くはない身だ。好きにさせようじゃないか」

 

「お前たち。最近私の扱いがひどくはないか?」

 

「「さぁ?記憶にないね(知らないね)」」

 

ナンバー6のセロと共に小龍を悪乗りしていじる。

オツムはつけてる?とか最近腰の調子はどうだい?と、兎に角小龍からすれば腹立たしいことこの上ない言葉の羅列をぶつけていく。

いっつも生煮え飲まされてるからこれくらいしてもバチは当たるまい。

 

「いい加減にしろ貴様ら」

 

ズドンッ!という擬音がぴったりなほど思いっきり俺とセロの頭に木刀が振り下ろされた。

ぐおぉぉ!?こ、これは中に鉄心がいれられてるやつかっ!?

当たり前だけどものすごーく痛い。

妙に腰の入った一撃のせいで内臓あたりまで衝撃が響いたために、なんか全身が痛いというわけがわからないよ状態。

ネクストでも生身でも剣の達人なのはよくわかったから俺たちにそれを向けるのは本当にやめてもらいたい。

そうじゃなきゃいつしか真剣持ち出されて真っ二つにされかねないし。

 

「そう思うんだったらあまりそういうことをしないことだ。特に私の前ではな」

 

ごもっともなこった。

 

「お前たちの気持ちは分からんでもない。真改との練習を削ってまでここにわざわざ、わざわざ来てやっているからストレスがたまっておかしくなりそうなんだ」

 

「...............アンジェ。そんなことを思っていたんだね」

 

「明後日とりあえず集まってね〜てへぺろ!というメールを見たときには思わず真剣に手をかけかけたさ!普通そうに見えるかもしれないが、自制しておかないと今すぐにでも殺してしまいそうなんだ!だろう!?レオハルト!」

 

「い、いや。いきなり私に話を振らないでくれないか」

 

「先に言っておくが俺はなにも言わないぞ」

 

「...............貴様が一番話をややこしくしているのに気付かんのかね」

 

と、ぶっちゃけしまえば修羅場のような、もうあつめられた意味ないんじゃね?なんて思うくらいめちゃくちゃに。

ついに吹っ切れて真剣持ち出したアンジェ。

アンジェから必死に逃げる小龍に、それが可笑しくて腹抱えて大爆笑する俺とセロ。

取り敢えず止めようとするレオハルト。

そんでもってどこ吹く風のベルリオーズ。

サナーダに至っては面白い素材を見つけたとか言ってどっかに行ってしまった。

...............オリジナルセブンスは全員キャラ濃いやつ多いなと思う(セブンスじゃない小龍は除いて)。

結局まともに話ができるようになったのは1時間後だったりする。

オリジナルセブンスがそのキャラの濃さとかこういったところを指して、もちろん愛称だがおバカセブンスなんて言われてるのが分かるね。

その1人が俺なんだけどな。

 

 

 

「ごほん。で、ではこれからは真面目に、頼むから真面目にしよう」

 

コクリとボロッボロになり、心なしか涙目の小龍の言葉に全員がただ無言でうなづく。

スミカにこれでもかと徹底的に〆られたためにここにいる全員が小さくはないダメージを受けた為に、小龍だけではなく全員がボロッボロだ。

...............さすがは元オリジナルセブンスのナンバー1なだけある。

戦場から離れた癖して未だに一線級で通用するんじゃなかろうか。

最強スミカ無双なんちって。

でも、それがありえなくないからとても恐ろしい。

 

「で、だ。貴様らオリジナルセブンスを呼んだのは私だが、非常事態宣言が発令されたわけではない」

 

「...............」

 

「セレンそんな目で見るんじゃない。私もあのメールを送ったのは済まないと思っている。しかし、リリウムがそうすれば必ず集まるというのでな...............」

 

なんとも言えない表情の俺たちオリジナルセブンス。

レオハルトに至っては同じ貴族出身としてからか、あのリリウム・ウォルコット嬢が?と信じられないと言いたげだった。

うん、俺も信じられない。

だってあのリリウムだもの。

お淑やかでなんだか図書室で優雅に本を呼んでいそうなイメージなのにまさかあんなことを考えつくとは思えないんだもの。あまり喋る方ではないからなおさらかもしれない。

ほんとまじで最近のリリウムはどうしたんだろう?

 

「兎に角、そこまで急を要するものではないが、とある計画が上層部で考案されたのだ。その計画を遂行する為のデータ取りをする者を選考しようとしたときに、お前たちオリジナルセブンスに白羽の矢が立ったというわけだ」

 

「へぇ?僕たちがか。オリジナルセブンスじゃなければできないというのか?」

 

「単純に言ってしまえばそうだ。カラードのリンクス達は斡旋される依頼をこなす事で手一杯だ。逆にお前達は余程の事がない限り待機を命じられているだろう?その中の1人から選べば問題ないだろうというのが上層部の決定らしい」

 

「まぁ、私たちが招集されたのはまだ良い。しかし、その計画とは一体?まさか選ばれた者にのみ伝達されるというわけではないだろう?」

 

「その通りだレオハルト。少し遅れたが計画の内容を知らせるとしよう。モニターを見てくれ」

 

薄暗い部屋なのにもかかわらず、思いっきり最大光量でモニターを表示する小龍。

ほんとまじで引導を渡してやろうかと思う。

ちょっとくらいは遠慮しやがれ。

アンジェなんか一瞬真剣に手を掛けかけたし。

...............あれ?今更だけどいつの間にアンジェはそんなもん持ってんの?

まだ死にたくないから俺には向けないでね?

 

「アーマーコアネクスト対インフィニットストラトス戦闘力強化計画?随分と愚直な計画だな。それにしてもインフィニットストラトスに対抗するか。名前はアレだが中々面白い計画だと思うぞ?」

 

「まぁな。発案自体は中々だと思った。既存のハイエンドノーマルACと比べコストの面では悪化したものの、性能自体は比べ物にならないほど強化され、コスト物量をとるか、戦闘力でとるかという選択を取れるようになったのは知っているだろう。ネクストが誕生して早3年。ネクスト技術も安定してきたのだが、ここで問題が発生したのだ」

 

「問題ってなんだよ?なんかネクストに欠陥でもあったのか?」

 

「ある意味ではな。欠陥とは言い難いが、見逃す訳にはいかない。そんなところだ。それが計画の名にもある通り対インフィニットストラトス戦力に対するデータだ。現在のインフィニットストラトスはもっぱら軍属として配備されているのが実情だ。だが、これからの時代いつ我々の戦場、紛争地帯に現れないとは言い切れん。いざ鉢合わせして対応できなかったでは、戦場の要である傭兵の名折れ、詰まる所実戦データが不足しているのが現状だ。データ上での兵装のスペックは大差ないが」

 

「実戦では何があるかわからないだろう?」

 

「その通りだアンジェ。実戦ではデータなど通用せん。通用するのは己の実力とカンだけだ。しかし、データがあるに越した事はないということだろう」

 

「ふむ。計画の内容は理解した。しかしどうやって実戦データを取るつもりなんだ?軍に直接行っても門前払いをされるのが目に見えているが」

 

「確かに、な。インフィニットストラトスは数が少ない分、一機の損失が果てしなく多い。演習とはいえ軍の奴らは応じないだろうな。いざという時に修理中で出撃できないというのは、意地でも避けたがるはずだ」

 

「それに私たちは軍の奴らからは良い目では見られてはないからな。薄汚い連中どもとどの国も言っている以上、データは絶望的だと思うな。エリート街道まっしぐらの箱娘達は私のような女は野蛮だと言いたいようだしな」

 

各々がそれぞれの意見を上げていくものの、一貫して共通しているのはデータを取る場所をどうするかという事。

俺は口出ししてはいないけど、だいたい考えはみんなと一緒。

アンジェが言っていたように俺たちリンクスやレイヴンはあまり政府達、強いて言うとインフィニットストラトスに関わる軍の連中には好かれてはいない。

別に俺からすればどーでも良い事だし、スミカも関心がなかったし、それ以前にそんな事は今まで影響するようなものでもなかったけど、さすがの今回は難問だと思う。

いや、どうすんねんこれ。

計画発案したは良いけどしょっぱなからてづまりやないかーい!(唐突の関西弁)

駄菓子菓子、そんな俺たちとは打って変わりニヤリと小龍はわらう。

...............老いぼれが笑ってもウザいだけだからやめい。

 

「安心しろ。そういった事は想定済みだ。そのための手段は既に用意している。この世界で唯一データを合法的に取る事が出来る場所があるのだよ」

 

「そんな都合のいい場所なんてあるとは思えないけど?とうとう呆けた?」

 

「喧しい。お前達は興味ないだろうがな、IS学園。その名前くらいは知っているだろう?」

 

「...............は?」

 

「あそこは世界各国のIS技術を集めて作られたインフィニットストラトスが集まる。これ以上にないくらい好条件の場所だ」

 

「いやいや。確かに言い分自体は分からなくもないが、あそこは建前上はハイスクールだぞ?とっくに成人した私たちは行けるはずもないじゃないか。第一あそこはIS適正がなければ転学すら認められないところだぞ?」

 

「レオハルトの言う通りだ。IS適正は基本女性にかないのだぞ?男でもある場合があるが、それらは例外なく起動すらできない数値、ネクストでいうならD以下だ」

 

「安心しろその点は問題ない。運良く、来年以降高校生でも問題ない年でそれでいてオリジナルセブンスのメンバー。なおかつIS適正Aを叩き出した人材が居たのだからな。秘密裏に調べていたが、まさかこうも都合良く見つかるとは思わなかった」

 

「...............高校生でもおかしくない歳?」

 

「...............それでいてオリジナルセブンス」

 

「...............しかもIS適正A」

 

「...............な、なんだよお前ら。なんで俺を見るんだ」

 

じっ!と俺に集まるオリジナルセブンスと小龍の目線。

 

「確かにその条件に一致するのは君だけだ。僕は来年で19だから年齢には一致しないからね。というか未成年は僕ら2人だから、僕が該当しない時点で君だけだ」

 

「いやいやいや!ちょっと待てぇ!確かに俺は今年で15になるし来年は本当だったら高校生だよ!でもなんで俺にIS適正があるんだよ!?つか、俺は学校にはまともに通ってないのにどうすんだよ!」

 

「IS適正はAMS適正と同じく、先天性な才能だ。諦めろ」

 

「あそこはありとあらゆる法が適用されん。小学校卒業すらしていない貴様でも入学は理論上可能だ」

 

「そういうもんじゃないわ!てか、あそこは女子校だろ!?女だらけの中に男1人とか死ぬわ!」

 

「...............ロイだったら喜んで飛び込みそうだな。夢にまで見たハーレムッ!といって」

 

「そしてウィンディーの逆鱗に触れるまでが一連か」

 

「いつもの光景だねぇ」

 

「ファーック!」

 

結局、俺がどう嫌だとごねても変わりようのない決定事項だったらしく、既にチェックメイトを掛けられていたようだった。

嘘だろ?夢なら醒めてくれ。

ところがギッチョン現実ですた(涙目)

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