インフィニット・ストラトス「山猫の軌跡」   作:駄菓子

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第2話

「...............はぁ〜」

 

おもーいため息を吐きながらとぼとぼとカラード機構の一角にある廊下を歩く。

カラード機構の広大な敷地の中心に企業連の本部があるせいで中々行き来が厳しい。

ネクスト技術やらハイエンドノーマル技術は突飛つしてるくせして、こういった移動手段は用意されていないという不親切設計。

毎回何キロも歩かされるこっちの身にもなりやがれコンチクショウ。

何しろついさっき唐突に告げられた、要約して「お前、IS学園に行けよ?あ、拒否権はないから夜露死苦!」と言われたせいで余計にくるものがある。

本当スミカにどうやって説明しよう?

普通に説明したら激怒確定な気がするし。

 

「...............お、お腹すきました」

 

だから考えてるふりして廊下の隅っこで行き倒れっぽいやつを無視しても問題はないはず。

悪いな。俺は今自分の事で手一杯だから頑張ってくれ。

 

「このひとでないしぃ...............」

 

と、スミカとの生活で身についたスルースキルを発揮したかったのだが、こいつには無意味だったようだ。

ならば最後の手段。

逃げるが勝ちッ!

 

「って、エイその手離せ!」

 

「嫌です!私お腹すいたんですよ!そんな私を見捨てると言うのですか!?」

 

「知るかぁ!ついさっきまでぶっ倒れてたくせにそこまで喋れるんだから平気だろ!?」

 

ぐぐぐぐと思いっきり俺の足を掴むその力は明らかに行き倒れのやつが出せるようなものでは到底ない。

そろそろそんな時期かなんて思ってたけどまさか俺が鉢合わせてしまうなんてなんて運がないんだよ。

 

「そうみえるだけです!私はここ1週間水だけで生きてきたんですよ!?もうそろそろ救いの手を差し伸べてくれてもいいはずです!」

 

「お前給料どうした!毎月の支給とは別に任務の個人報酬があるだろうがっ!」

 

「そんなものとっくにご飯に消えましたッ!」

 

「この暴食ミサイルハッピーめ!」

カラードの一角で繰り広げられるしょーもない攻防戦は置いておいておこう。

個人報酬と言うのはまず依頼を出す側は前金として契約金をカラードに支払う。

で、任務を完了したと仮定するとして、その場合は契約金とは別に当初予定していた報酬をリンクスに支払う事になる。

その金額で期待修理と弾薬補給の額を差し引いたのが個人報酬となる。

ちなみに契約金は失敗すれば払い戻されるのだが、成功の場合カラードに斡旋料として回収される。

まぁ、そんな感じで給料を得るわけだが、カラードから支給として毎月30万を支払われるため個人報酬を合わせるとまず、金に困る事はないのだが。

こいつの場合は別だったりする。

 

「お給料日は明日ですけどもう我慢できません!ご飯奢ってください!てか奢れ!」

 

「もう命令になってんじゃねぇか!」

 

「お腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいた!!」

 

「お前はどこぞの暴食シスターだ!お前さすがに節約覚えろよ。毎回そうなってんじゃねぇか」

 

「お腹いっぱい食べるのが私の幸せなんです!それは譲れません!」

 

「お前は量がおかしいんだよ...............」

 

「ごーはーん!ご飯食べたいです!絶対お金は返しますから!」

 

「お前の絶対は信用ならねぇ!」

 

どうせ稼いだ金全部食費に消えるのには目に見えてる。

最初から期待なんかしてないわ。

 

「えへへ〜。久しぶりのご飯です〜!」

 

「少しは遠慮しろよコンチクショウめ...............」

 

...............結局奢らないと絶対にはなれないと公言して羽交い締めにされたので根気負けしておごる羽目に。

背中に当てられた二つの膨らみにドキッとしたからじゃないからな!じゃないからな!?

そんなこんなでこんな羽目になったわけだが、それはもう食べるわ食べる。

大食い王選手権に出たら確実に優勝しそうな勢いだし何しろ、その手が止まる事を知らないらしい。

てか体のどこにそんな量が入るのか知りたい。

カラードで有名な七不思議の一つである。

このままじゃカラード食堂の全メニューを制覇してしまいそうなわけで、こんだけ食えばどんだけ破格の給与だったとしても足りないわけだ。

幾ら食堂のメニューが安いとはいえ、量が量なだけに。

こいつ本当は女の皮を被ったなにかように思えてきた。

...............くっ!スミカが何でもかんでも壊しまくるせいでうちの家計は火の車だというのにこいつッ!

 

「...............あ、はへまふ?(あ、食べます?)」

 

「食いながら喋るな馬鹿。俺は気にしなくていいから食ってろ」

 

カラード食堂のおばちゃんが作ったものを美味しそうに食べてもらえるのは嬉しいと言うのは、こいつの笑顔を見ていると分からなくもない。

さっきから哀れみの目線を向けられてくるけど、てめぇら哀れむくらいなら金寄越せ。

 

「ん?、おぉエイちゃん個人報酬でも入ったのか?昨日まで死にそうな顔してたのにな」

 

「んぐ。あ、ロイさん。たまたますれ違ったセレンくんにおごってもらってるんですよ。だからお金が入ったりなんてしません」

 

「へ?セレン...............ってうぉ!?まじでセレンじゃないか!久しいな、元気にしてたか?」

 

「...............おかげさまでな」

 

俺がまだオリジナルセブンスどころかリンクスでもなく、ただありふれた戦場の傭兵レイヴンと呼ばれていた頃からの長い付き合いのロイ。

俺はオリジナルセブンスの登録でのゴタゴタ、ロイはリンクス傭兵として忙しかった為、数ヶ月ぶりの再会であり本当に喜ばしいことなのだが。

いかんせん目の前の財布に優しくない悪魔のせいでそんな気分にはなれそうにない。

 

「ここで再会したのもなんかの縁だ。俺も一緒させてもらうな」

 

別に断る理由はないし、お好きにどーぞ。

 

「ははっ、んじゃ遠慮なく。まぁ、再会してすぐ言うのもなんだが御愁傷様ってな」

 

「そう思うなら金くれよロイ。こっちは財布がやばいんだって」

 

「んー?俺たちみたいなカラードのリンクスなんかと比べもんにならないくらい支給されてるんじゃなかったか、オリジナルセブンスは?」

 

「ヒント、スミカ」

 

「お、おう。まぁ、なんだ?お疲れさんだな...............」

 

たったそれだけで全部わかってくれるのは、やっぱり長年の付き合いがあってからだろう。

ただ、たったそれだけでわかってしまうのも心の中では割と悲しくもあるのだけど。

ちなみになんでうちの家計がキツいかというと、スミカは俺が今日企業連に呼び出され時みたいに何でもかんでも物を壊すという、かーなーり厄介な悪癖があるから。

しかもぶっ壊す物、というかスミカが愛用している物が如月製な為やっかいなのだ。

如月とはレイヴンACパーツを供給する企業であるとともに、一般にも値段と性能ともに基地外級の製品を販売しているので有名。

そんな物をポンポン、ゴミを捨てるかのごとくぶっ壊すので幾らオリジナルセブンスの給与が有ってもキツいというわけだ。

普通のテレビが日本円で百万越えとかどんだけ。

パソコンに至っては1テラバイトのメモリを積んでいる物が最低限で、最高級の物になると通常サイズのディスクトップパソコンでスパコン並みとかもあるし。

流石はモノづくり大国日本だ。

俺も一応日本人だけどな。

まぁ、長い間日本語使っていないせいで、そんな感覚なんかなかったけども。

...............そういや日本語の感覚を戻さなければ。

日本にIS学園があるからだけどな。

てか、それ以前にインフィニットストラトスの開発者が日本人なせいで世界共通語も日本語になりつつあるし。

 

「幸せぇ〜!あ、おばちゃん唐揚げ定食お代わりお願いします!」

 

「...............金、足りるかな」

 

「...............これやるから涙拭けよな」

 

手渡されたのはドル札の束。

決して多くはない額だけども今はその優しさがありがたかった。

涙じゃないもん心の汗だもの。

な、泣いてなんかいないし。

...............これからしばらくは飯がお茶漬けだけになりそうな気がする。

本当にこんな生活が夢にまで見たオリジナルセブンス出会っていいのだろうか。

きっとリンクスのみんなが知ったら絶望するに違いない。

原因になってるのはスミカとかスミカとかスミカとかスミカとかスミカとかこのエイだったりするんだけどな。

 

「エイちゃん、取り敢えずASミサイルばらまくだけの戦法をどうにかしたらどうだ?」

 

「えー?そんなの弾幕張れないじゃないですかぁ。ミサイルの弾幕こそ最強ですよ?」

 

「馬鹿。それだから最近カラードランクが下がるんだろ?フレア持っている相手には無力、しかも射撃中に撃たれると誘爆しかねないだろ?ミサイルの自爆って相当痛いだろ?」

 

うっ!と言葉をだか食い物だか知らないけどとにかくつまるエイ。

どうやら図星のようだ。

てか、そんなのわかった上で使ってたんかい。

ASミサイルはノーロックで発射できてそこそこ威力高いのだけど、熱源オートロックなせいでフレアにはとことん弱いのが実情だ。

しかもその独特なロックオンシステムのせいで炸薬を積む部分が少ない。

熱源探知システムを搭載するためだ。

幾ら威力が高いとはいえ、あくまでライフルなどに比べたらであり、他のミサイルより一回りは威力が劣る。

数を当てなければダメージを稼げないのにフレアにとことん弱いという弱点が。

ついでに言うと弾薬費も高い。

最近はフレアがほぼ標準装備とかしているせいでミサイル全般の肩身が狭い。

ゲーム的に言うなら、環境にあっていないという感じ。

 

「まぁ、そんな中でも意固地になってミサイルを使うあたりエイって大物だよな」

 

「ほめないでくださいよ!照れるじゃないですか!」

 

「エイちゃん、褒めるどころか馬鹿にされてるのに気づかない?」

 

「...............えっ?私馬鹿にされてたんですか?」

 

「...............今まで気づいていなかったのが驚きだ」

 

毎回毎回ミサイルばらまいているだけなので思考停止乙とか、いつも行倒れるためボンビーと言われていたのだけども。

 

「ともかく、悪いことは言わないから、騙されたと思って武器腕を止めてみな。それだけで多分マイナスにはならないと思うから」

 

「...............分かりましたぁ。取り敢えずテルス腕でも使ってみます」

 

「ま、頑張ってみ。それじゃ俺は行くとするさ」

 

「ロイさんさよーなら」

 

「あいよー。つうことでスミカによろしく言っといてくれな。久々に会えてよかったぜ」

 

「俺もだよ、ロイ。スミカには伝えとくから、ウィンディーにもよろしくって頼むよ。浮気して泣かせるなよ?」

 

「ばーか。誰が浮気するだ。俺はウィンディー一筋なのさ」

 

んじゃあなーと手をひらひらさせながら廊下の角を曲がっていくロイだったが、ドル札の束に紛れていた女の連絡先が書かれていた紙のせいで説得力のかけらなんてさらさらなかった。

でも、まぁ金も貸してくれたことだし、今回ばかりはウィンディーに伝えないで墓場まで持ってくなり、処分しとくなり見なかったふりを...............

 

「おぉ、セレンでじゃないか。久しぶりだな」

 

おぉう。いろんな意味でグットタイミングでウィンディーさんのご登場。

これはもう神様が告げてるに違いない!

 

「そういえばロイを見なかったか?インテリオルから試作武器の試験を頼むよう言われてたのだが」

 

「ロイさんならついさっきまでいましたよ?」

 

「あ、かみをおとしてしまったー(棒」

 

「...............全く久しぶりだと思えば何をやっているんだ」

 

はぁ、と小さく溜息を吐きながらウィンディーはおれが落としてしまった(笑)とある紙を手に持った瞬間ピシッ!と固まった。

アッハッハ!そりゃそうだ。

なんせロイの字で女の連絡先が書かれてるんだもの。

女たらしのロイとはいいて妙な言葉だが、まぁ、この場合はそんなロイを好きになったウィンディーがどんまいということで。

え?墓場まで持っていく?

はっ!そんなもん知らんな!

 

「...............ロイはどこへ行った」

 

地獄から響いてきたかのような恐ろしい声だった。

うん。これは激おこぷんぷん丸だ。

原因は俺だけどな。

 

「あっちー」

 

「ロオォォォォォォイィィィィィィィッ!!!」

 

ーーー死ねッ!今度という今度は許さん!

 

ーーーウィ、ウィンディー!?お前どうした!?

 

ーーー問答無用!チェストォォォ!!

 

ーーーぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「あぁ、ロイさんが空の彼方に...............」

 

「計画通り(ニタァ」

 

「ゲスい顔してますよー」

 

アッハッハ。

金貸してもらったのはありがたいけど、浮気云々は別だし?

そういうのは男な風上にも置けないね。

俺はまだ彼女とか恋人とかわからないんだもの仕方ないね(すっとぼけ)

これに懲りたら浮気を止めることだな。

まぁ、無理だと思うけど。

 

「あの〜。デザートいってもいいですか?」

 

「...............えぇ加減にせぇよ?(怒」

 

エイ。

てめーは空気読め。

 

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