結構長めに書いたんですが……
次こそは、次こそは凛ちゃんの出番を……!!
というわけで、話は進んでないわ、オリジナリティはあんまりないわとひどい出来な気がしますが、よろしければご覧ください……m(__)m
「ここでちょっと待っててね。」
「は、はい……、あの、真姫さん……は……」
「家、病院を経営してて、今そっちに顔出してるのよ。もうすぐ帰ってくると思うから。」
だからもう少し待っててね。そう言って真姫の母親は微笑む。そのきれいな微笑みの中に真姫に似た部分を見て、やっぱり親子なんだなぁと花陽は意味もなく感心する。美人の子は美人なのだ。
「それにしてもあの子の友達が来るなんてね……。高校に入ってから友達連れてきたことなかったから心配してたのよ。」
「は、はぁ……」
ここで友達ですと言ってしまっていいのだろうか。真姫とはほとんど会話らしい会話はしたことのない花陽はそう考えてしまって、あいまいな笑みを見せるにとどまる。真姫の母はそんな様子にも気づかずにニコニコとしながらゆっくりしててねと言って部屋から出ていく。
(ゆっくりしてってと言われましても……)
そう考えながら花陽は周りを見渡す。花陽の家はもちろん病院なんて経営していないし、普通の一般家庭だ。少なくとも花陽はそう思っている。そんな花陽の感覚でとらえれば、この部屋は広い。そして置いてあるものが基本的に豪華すぎる。
(お、落ち着かない……)
「ほんとになんなのよ……」
真姫は小さくため息をついて家に入る。感情はすでに落ち着いている。というか、今更そこまで感情を表に出してしまう程のことでもないのだ。
なのになぜだろう。真姫は考える。
先ほど会った南鷹也という青年。彼にはなぜか気持ちの制御がきかない。なぜか、なにか思い出しそうになるのだ。自分にとって大事な、本当に大事な記憶。今の自分に多大な影響を与えたであろう出来事。
(なんて。そんなわけないわよね……)
ただの他人の空似だろう。そう結論付けて考えることを放棄して、真姫がただいまと言って玄関を開けるとそこには笑顔の母親が待ってましたと言うように微笑んでいた。
「真姫、お客さん来てるわよ。」
「お客さん?」
全く身に覚えがない。しかし、母が喜んでいる手前突っぱねるわけにもいかないだろう。自分に高校の友達なんていないため、当然友達を家に呼んだことなんてない。だからこそ、真姫が友達を連れてきたのだと思って、母は喜んでいるのだろう。首を傾げながら客間に顔を出す。どうでもいいからさっさと帰ってもらおう。お客さんに用事があってもこちらにはないのだ。そう考えて真姫が客間で目にしたのは、クラスで目にしたことのある少女。
「こ、こんにちは……」
「……なんの用?」
緊張気味に眼鏡の奥の目を揺らす小泉花陽だった。なぜか無下に扱いづらいこの少女を前にして真姫は向かいのソファに座る。なんでこう今日は、方法は違うとはいえ、自分の内面の深くまで影響を与えるというか、刺激してくるような人ばかりと会うのだろうか。
「あの……これ……」
そう言って真姫に花陽は何かを手渡してくる。よく見てみると、それは真姫の生徒手帳。なんであなたが。と目線で問いかけると、緊張しているのだろうか。なぜか謝る花陽。
「ご、ごめんなさい……」
「なんで謝るのよ……」
あきれたようにそう真姫が言うと、花陽は小さくなってしまう。そんな様子にまた呆れつつ、でもそんな様子を見せられると自分としても不本意なので、
「でも……ありがと……」
そうお礼を言う。恥ずかしくてそっぽを向いてしまったけど、まあ言えたから良しとしようと真姫は思い、ちらりと花陽の様子を伺う。すると、意を決したように花陽が話しかけてくる。
「μ’sのポスター……見てたよね?」
「わ、私が?見間違いじゃない?」
「でも、手帳もそこに落ちてたし……」
そう言う花陽の視線をたどるとそこには真姫の鞄。その横のポケットに入っているμ’sのポスター。顔が熱くなるのを感じる。何をやっているのだろう。同じようなミスを今日、しかもこの短時間で2度も犯すなんて。
「ち、違うの。これは違うくて……っていったぁ……!うわあぁ!」
「だ、大丈夫?」
慌てて立ち上がろうとしてテーブルに足をぶつけ、痛さで片足立ちになったところでバランスを崩してソファとともに真姫は後ろにひっくり返る。心配そうな花陽の声に自分の顔がどんどん熱くなっていくのを感じる。
「へ、平気よ……。もう!あなたが変なこと言うから!」
恥ずかしいは恥ずかしいが決してそんな様子は見せずに、真姫は強気な口調でそう言う。しかし、そんな様子が面白かったのか。花陽が小さくふきだし、笑い出す。その笑顔はとてもきれいで。なんでこんな笑顔になれる子がこんなに自信なさげにしているのだろう。もったいない。真姫はそう一瞬思ったが、それと恥ずかしさは別である。顔をしかめながら、きつめの口調で。
「笑わない!」
「ふふっ……!」
「むぅ……!!」
真姫の抗議の声は届かず、花陽はしばらく笑っていた。
「私がスクールアイドルに?」
花陽の言葉に真姫は聞き返す。まさかこんなところでもこの話を持ちかけられるとは。花陽はうんと頷き、話し始める。真姫は気が付いていなかったが、花陽はどうやら放課後に真姫がピアノを弾いて歌っていたのを聞いていたらしい。
「ずっと聞いていたい。そう思うくらい西木野さんの歌が好きなの。」
そう言って微笑む花陽の言葉に嬉しさを覚えてしまう。この子は真姫を、西木野のお嬢様でない真姫を見て言ってくれている。そんなふうに思えてしまう。でも
「私ね、大学は医学部って決まってるの。」
そうなんだ……と呟く花陽から視線をそらす。そう。自分の将来は決まっている。医者として跡を継ぐ。それが真姫の将来。そこに音楽が入り込む余地なんてない。
「だから……私の音楽はもう終わってるってわけ。」
『無理なんかじゃない!』
そう口にした後、先ほどの青年の言葉が思い出されて、なぜか後悔のようなものに襲われた。もう諦めはついている。そのはずなのに。なぜか生じそうになったその気持ちを、そして思い出してしまった青年の言葉を、真姫は心の奥底に押し込めて花陽に向き直る。
「それより、あなた。アイドルやってみたいんじゃないの?熱心に前のライブ見てたじゃない。」
先日行われていたμ’sのライブ。そこにいた人は少なかったので印象に残っている。花陽は特に熱心に、憧れの視線をステージ上にいる3人に向けていた。それに、この少女は自分に自信がないだけで、先ほどの笑顔は確かに魅力的だった。
「私!?私なんか……!ていうか西木野さんもあのライブ見てたんだ?」
「わ、私は通りがかっただけだけど。」
慌てて真姫は取り繕う。そして、言葉を続ける。ああ、自分にできないことを他人に押し付けてる。そんな気持ちになりながらも、真姫は素直に思ったことを告げる。
「やりたいならやってみればいいじゃない。そしたら少しは応援……してあげるから。」
なにを偉そうに自分は人に言ってるんだろう。自分はこの言葉をさっき言われて、それでも無理だとあきらめて踏み出さずにいるのに。そんな複雑な、でも応援はしたいという純粋な気持ちを持って花陽を見つめる真姫に、花陽はありがとうと言って微笑む。真姫にはやっぱりその笑顔はとても魅力的に、羨ましいくらい魅力的に見えた。
「いろいろあるんだなぁ、みんな……」
西木野家を出た花陽はそう呟く。真姫のあの表情。もう音楽は終わってる。そう言った時の表情はなにか複雑な感情が垣間見えた気がした。でも、それは花陽が感じることはできなくて。なにを思ってたんだろう。考えても仕方ないことが頭の中をぐるぐる回っていて、少し落ち着こうと花陽は空を見上げる。空はもうすでに日は沈み、星が淡く、少しだが瞬き始めていた。それからもう1度視線を先に向けると、そこに和菓子屋さんの看板が見えた。
(気分転換で甘い物もいいよね……お母さんにお土産買っていこうかな。)
そう思い、その看板のお店に入る。
「あ、いらしゃいませ~ってあれ?」
「先輩……?」
そこにいたのは花陽のあこがれるスクールアイドルを始めた先輩、高坂穂乃果。
「うわあ!いらっしゃい!」
「こ、こんばんわ……!どうして……」
「ここ、家のお店なんだ!」
笑顔で答える穂乃果に、それはそうだろうな。と当たり前のことを聞いてしまった自分が恥ずかしくなる。そんな花陽におかまいなしに、穂乃果は話を進める。
「花陽ちゃん、どうしたの?」
「え?あ、その、お母さんにお土産買っていこうと思って……」
「そっかそっかぁ。じゃあ、少し上がって行かない?これから海未ちゃんとことりちゃんと鷹也くんとちょっと集まるんだ!」
「え?いや、でも……」
「さ、どうぞどうぞ~!」
あれよあれよと言う間に話が進み、いつの間にか花陽は穂乃果に連れられて、家庭用の方の入口へ。だれかに助けを求める暇もない。
「さ、いらっしゃい!」
「お、お邪魔します……!」
結局穂乃果の勢いに流されてお邪魔することに。まあ、時間もあるしいいか。と思いなおすことにして玄関で靴を脱ぐ。
「私、店番あるからちょっと上で待ってて。」
「あ、はい!」
「じゃ、またね……って痛い!」
「穂乃果、その説明で上に上がらせんな。てか、お前無理やり連れてきたんじゃないよな。」
立ち去ろうとした穂乃果の頭にチョップを振り下ろしながら奥から出てきたのは鷹也。痛いよ、鷹也くんと抗議する穂乃果をいいから店番行ってこいと言って追い返しつつ、鷹也は花陽を見る。
「また会ったね、小泉さん」
「は、はい!こんばんわ……!」
やっぱ緊張解けないなぁと苦笑しながら鷹也は花陽にこっちと手招きして階段を上がっていく。慣れているその様子に、やっぱり何回も来てるんだろうなぁとどうでもいい感想を抱きつつ、花陽はその後ろを慌てて追いかける。
「ごめんね、どうせ穂乃果が急に上がらせたんでしょ?」
「い、いえ……私こそ急にお邪魔して……」
「大丈夫大丈夫。穂乃果がオッケーって言ったなら大丈夫だよ。」
鷹也はそう言って笑うと、2階にあるいくつかの部屋の前で立ち止まる。ちょっとここに用事あるから、小泉さんはそっちの部屋で待ってて。そう言われて花陽はそちらのドアを開けようとして踏みとどまる。なにか歌が聞こえてきたのだ。一方、鷹也は気が付いていないようで、そことは違うドアをノックする。
「雪穂。雪穂の父さんがちょっと手伝ってほしいって……」
「鷹也さん!?ちょっ、ちょっと待って!!」
ノックとともにドアを開けた鷹也が勢いよくドアを今度は閉める。その表情は見えない。とはいえ花陽もいつまでもこうしているわけにもいかないので、ドアをそーーっと開く。
「じゃーーん!!」
隣の部屋を開けた鷹也同様、花陽も開けたドアをすぐに閉じる。今、前に見たときはクールな印象を受けた海未先輩が会心の笑顔でポーズをとっていなかっただろうか。隣でなにかを見てしまったであろう鷹也と顔を見合わせる。鷹也の顔も引きつっているが、おそらく自分の顔も引きつっているだろう。
「「どうしよう……」」
夕方あたりに同じ言葉で、同じようにシンクロしなかっただろうか。そんな風にデジャヴを感じる行動を2人でとっていると、2つの部屋のドアが同時に開く。片や、髪で顔が隠れてしまっていてものすごく怖い雰囲気を醸し出す海未、片や、顔にパックを貼り、タオル1枚で真剣な表情をしている中学生くらいの少女。
「「見ました……?」」
「…………う、うぅ……」
「雪穂、とりあえずお前はそのかっこなんとかしろ。」
真剣にそう聞いて来る2人に花陽はうつむくことしかできず、鷹也にそう指摘された雪穂という少女はう、うわわわわ!と慌てながら部屋に引っ込んでいった。
「ご、ごめんなさい……」
「ううん、こちらこそごめんね。」
小さくなって謝る花陽を穂乃果がそう言って慰めてくれるが花陽は申し訳なさでいっぱいだった。まさかあの海未にあんな一面があるなんて花陽にとっては意外な事実であり、見てはいけないものを見てしまったという罪悪感がひどかった。花陽はちらりと視線を横に座る鷹也に向ける。どうやら鷹也の方は穂乃果の妹の何かを見てしまったようで、あとで何かお菓子でも持ってかなきゃなと言って苦笑していた。そんな鷹也は海未にからかうように声をかけている。
「しっかし、海未がポーズの練習ね……」
「た、鷹也くんと穂乃果が部屋からいなくなるからいけないんです!!」
「どんな理屈だよ、それ。」
海未のむちゃくちゃな言いがかりに鷹也が苦笑する。普段は理屈っぽく、冷静な印象なのにこういう風にテンパると子供かと思うような理屈を言うこれも花陽にとっては意外な一面だ。そんな海未の意外な一面を見すぎて少し混乱してきた花陽があ、あのと話に混ざろうとすると、部屋のドアが開いて、今度はことりが入ってきた。
「お邪魔しまーす。あ!花陽ちゃん!もしかして本当にアイドルに!?」
「落ち着け、ことり。違うから。」
入ってくるなり、花陽に駆け寄ることりを鷹也が落ち着かせて、穂乃果がたまたまお店に来たからお茶に誘っただけということを説明してくれる。ことりの勢いに押されかけていた花陽は小さく安堵の息をつく。あんな風に勢いよく来られると上がり症の自分は何も言えなくなってしまう。そんな自分も嫌なのだが。
「そうなんだ~。あ、お兄ちゃん、パソコン持ってきたよ。」
「ありがとう。ごめんな、ほんとは俺が持ってこようと思ってたんだけど……」
「ううん、私の方が近かったし。」
少し自己嫌悪に陥りかけた花陽に気づいた様子もなく、そう言ってことりがパソコンを出す。その際にお菓子の入ったお皿をどけて花陽はパソコンを置くスペースを作る。こういうところには昔からよく気が付くようにしている。自分に取り柄がないのだから、他人に迷惑はかけられない。お礼を言ってパソコンを操作しだした鷹也の様子を、お菓子の入った皿を両手に持ったまま、花陽は見つめる。なにしろ、これからなにが始まるのか聞いてもいないのだ。
「それで、本当にあるんですか?」
「うん……あった、これ。」
そう言って鷹也はパソコンの前をわーと言って画面をのぞき込んできた3人に譲って、花陽のそばにくる。誰がとってくれたんだろう。ここ、上手くいったよね。などど話しながら画面を見る3人の後ろから花陽は画面をのぞき込む。
(これ……!!)
そこに映っていたのはまぎれもなくμ’sのファーストライブの映像。気持ちが切り替わるのを感じる。あの時の興奮、感動が思い出される。キラキラした3人。アイドルが大好きでたくさんのアイドルを見てきた花陽から見たら、他のアイドルよりは歌もダンスも拙かったかもしれないけど、笑顔でやりきっていた。まぎれもない3人のアイドルの映像。そして見ていて湧き上がる感情。
(私もこんなふうに……!!)
「小……!小泉さん!」
「あ、は、はい!!」
気が付けば完全に見入ってしまっていた。またやってしまったと思いつつ、こちらに何回も呼びかけてくれていたであろう鷹也のことを見る。鷹也はそんな花陽に笑顔を見せつつ、言う。
「前に言ったアイドルの話。どうかな。」
「え、ええ!?」
つい、大声をあげてしまう。自分もああなれるかもしれない。その夢を、現実にできるかもしれないチャンスが目の前にある。しかし、花陽は先ほどから胸にあふれるやってみたいという感情を押し殺して、笑顔を作る。
「でも……私、向いてないですから……」
向いていない。これは自分が勝手にネガティブに考えているわけではない。客観的事実だ。花陽はそう思っている。こんなに声も小さくて、上がり症で取り柄が1つもないアイドル。これまで誰も見たことがない。自分にはできないのだ。しかし、鷹也はそんな花陽に続けて話しかける。
「小泉さん、言ったよね?向いてるかなんて関係ないよ。」
「あ……」
鷹也の言葉を思い出す。やりたいならやってみればいい。アイドルが好きって気持ちがあれば充分。その言葉は自信がなかった花陽の気持ちに微かな光を灯す。アイドルが好き。それだけは自分がゆずれない唯一のものだったから。
「そうですよ。私だって人前にでるのは苦手ですし、とてもアイドルに向いているとは思えません。」
「私もたまに歌詞忘れちゃったりするし、運動も苦手なんだ。」
「私はすごいおっちょこちょいだよ!」
そう言う先輩3人。花陽のあこがれるアイドルになった3人はそう言って微笑む。
「お前ら、小泉さんを勧誘するのはいいけど、、それは威張って言うことじゃないから。あと穂乃果。穂乃果だけなんか違うから。」
「えへへ……つい……」
鷹也にたしなめられて、悪戯っぽく笑う穂乃果。海未とことりの2人も笑顔で。そしてことりが花陽に向けて声をかける。
「私たちは普通のアイドルならすぐ失格。でもスクールアイドルならやりたいって気持ちがあればやることができる!」
その言葉は鷹也の言葉と同様に花陽の心に強く印象に残る。ゆっくりでいいから考えてみて。そう言って笑う穂乃果に花陽は
「はい……!」
そうしっかりと頷いた。
「花陽ちゃん、入ってくれるかな?」
家に帰り、晩御飯の準備をしてくれていることりがそう聞いて来る。大学で課題として出されたレポートの製作を中断して鷹也は考える。
「どうだろうな……。入ってくれるといいけど……」
鷹也はそう言って、椅子から立ち上がってことりの作った食事をテーブルに並べ始める。ありがとうということりのお礼を聞きつつ鷹也は続ける。
「あんなに真剣にアイドルに興味持ってたんだもんな。できれば、小泉さんのためにもμ’sに入って活動してほしいなとは思うよ。」
μ’sのライブの映像を見ている花陽の目。その目はとても真剣で。あこがれのほかにも鷹也には強い何か思いがこもっている気がした。その思いはおそらくは自分もこの中に入ってアイドルをやりたいという思いなのだと鷹也はそう思う。あれほどまでに強く、真剣にアイドルが好きで、やってみたいと思っている。その思いは素晴らしい物だ。鷹也はそんな思いを持つ花陽を応援したい。
「……お兄ちゃん?どうしたの?」
「あ……いやなんでもない。他に運ぶものは?」
ことりに聞かれて誤魔化すように笑顔を作る。心の底からやりたいと思えるものがある。それはとても尊いことで、誇るべきことで、応援されるべきものなのだ。鷹也は、本当に、本当に心の底からそう思う。
「ねえ、聞きたいことあるんだけどいい?」
その日もいつも通り遅くに帰ってきて、先ほど晩御飯を食べ終わって食後のコーヒーを飲んでいる母に鷹也はそう声をかける。ことりは母が晩御飯を食べていた先ほどまではいたのだが、今はもう部屋で寝てしまっている。どうしたの?と言うひな子に鷹也は聞く。
「前にあった会議の結果。まだ聞いてないよ。」
「……そうだったわね。」
聞かせたくない内容なのだろう。ひな子は一瞬口ごもるが、諦めたように口を開く。
「まだ決まりではないからそのつもりでね。オープンキャンパスの結果次第になる可能性も出てきたわ。」
「オープンキャンパス……っていったらもう1か月くらいしかないね。」
「ええ、だからまだ決まりではないわ。急すぎるということもあってまだ反対意見が残っているから。」
そのひな子の言葉に鷹也は考え込む。反対意見があろうがいつかは押しきられる可能性もある。国立の学校である以上、上の決定には逆らえないし、上は生徒の集まらない学校にいつまでも維持費をかけるのを嫌って、廃校派がほとんどだ。ならば、オープンキャンパスが第1のリミットと考えておいて損はないだろう。
「まだ決定ではないし、そうならないよう努力はするけども……。」
「母さんは入学希望者が少なかったらという条件を付けさせただけすごいよ。もとは、問答無用で廃校だったんだから。」
「ありがとう、励ましてくれて。でも、オープンキャンパスで期限となると……」
母の視線に鷹也は首を横に振って答える。正直、メンバーすらいないこの状態では厳しい。部活として認められていない以上、部活紹介として参加することすらできないのだ。そんな状態では、このギリギリの状態の戦力には入れられない。そうよね。とため息をつくひな子。
「でも、まだ決まってないからなんとかできるように頑張ってみるわ。」
「うん、なんか手伝うことあったらどんどん言って。」
そう言ってこの話は一端おしまい。会議にまでは鷹也は干渉できないのでここは理事長である母に任せるしかない。なにもできない自分に少しいらだつが、そんなできもしないこと考えてもしかたないと鷹也はもう1つ聞きたかったことを聞くことにする。
「あと、音ノ木坂学院の生徒会長。ずいぶんと辛そうだったよ?」
「本当にそういうところにはよく気が付くわね、鷹也は。」
ひな子に言われて、鷹也はこれくらいふつうだよ。と返す。実際にあの表情は明らかに何かを我慢して、つらいのをため込んでいるような表情だった。それからひな子に絵里の話を聞く。
どうやら絵里は今日、理事長室にスクールアイドルはライブに人を集められなかったし、学園にとってマイナスだと直談判しにきたらしい。動画を見つけていて、反響も見ていたひな子は人気がないわけでもないし、学園が生徒の自主的活動を止める権利はないと言ったのだが、
「それなら生徒会も独自に活動させてくださいって……。」
「なんで母さんはやらせてあげないの?」
鷹也は聞く。そこまで必死に、真剣になって学校の存続を願っているのだ。独自に活動させてもいいと鷹也は思うのだが。
「あの子が辛そうって鷹也言ったわよね?」
「言ったけど……」
「つらそうなのよ。学校の話をするとき。あの子が本当にやりたくてやっていることじゃなく、義務でやっているのがなんとなく伝わってくるの。」
学校の存続を願う気持ちはあの子の本心だとは思うんだけど……。そう言ってひな子はコーヒーを一口飲む。鷹也はその言葉に思い出す。絵里と話しているときに感じた彼女が無理をしているそんな感じ。
「今、彼女に自由にさせたら無理しすぎるんじゃないか。彼女は学校生活を犠牲にするんじゃないかと思うの。」
「そういうこと……」
鷹也は納得して頷く。ひな子の判断は間違っていない。だからこそ、後は絵里本人がそのことに気が付けるどうか。だが、希の言っていたような不器用な人物像から思うと気づく可能性は、というか気づいてもどうしようもできない可能性が非常に高い。
「どうにかできないのかな……」
鷹也のその呟きにひな子は微笑んで言う。
「鷹也、あなたの周りのことを考えるのはとてもいいことだけど、そこまで抱える必要はないわ。生徒会長のことは鷹也にはどうしようもないのだから私に、ことりや穂乃果ちゃんたちに任せて。」
ひな子の言っていることは正論だ。鷹也にはなにもできない。でも、なぜか忘れられないのだ。あの辛そうな表情を。苦しそうなあの絵里の横顔を。
そうだねと鷹也はひな子にうなづいて見せながら、ここ最近で出会ったなにか抱えている少女たちを思う。
真姫、花陽、絵里。どうにかしてこの子たちの力になれないか。鷹也はそうずっと考えていた。鷹也の考え方、あり方においてあの子たちは放ってはおけないのだから。
鷹也は前回の真姫とのやりとりに関してまったく触れてないですが、今回鷹也ではなくかよちんや真姫の目線から文を書くことが多かったので触れなかっただけです。鷹也にも考えはあるはずなのでそのうち描写します。
次こそまきりんぱな加入回。
3度目の正直です。今度こそ加入させます。そこまで書きます。
やめてください。2度あることは3度あるとか言わないで!
というわけで次回も楽しみにしていただければ幸いです。
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