小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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オリジナル展開って難しいですね。書いてて楽しいですが。

さらに、この話をかいてる最中にランダム再生にしていた音楽プレイヤーが凛ちゃんソロ、かよちんソロを連続で流してくれて、空気の読める優秀な音楽プレイヤーのおかげで執筆がはかどりました。

ではでは、そんななかで書いてたお話です。
気にいっていただけるかは分かりませんがどうぞご覧ください。



少女が憧れたもの

あれはいつ頃のことだっただろう。小学校の高学年、もしくは中学生のころだっただろうか。

自分が他とは違うと気が付き始めたころ。そして周りが違う世界にいるのではなく、自分が1人違う世界にいたのだと気が付いてしまった頃のことだ。まだ、私は1人でいるということに慣れていなかった。自分を偽ってでも他人と、誰かと仲良くしたい。そう思っていた。しかし、そんな自分が目にしたのは1人の少年。彼は周りを複数の男子生徒に囲まれていた。

 

『いつも1人でいてキモイんだよ!』

『学校来んなよ!』

 

見たところ中学生に見える生徒によるイジメの現場。真ん中の少年は周りにいる4人の少年に殴る蹴るの暴行を受けている。そこにたまたま出くわした私は特に何を思うでもなく、その場を後にしようとしていた。別に自分が薄情だとは思わない。学校などではよくイジメはいけないこと、仲間外れはいけないことだと言われる。でも、そんなの関係なしにイジメは存在するのだ。自らよりも弱く、抵抗もしてこない存在。それを見つけてしまえば、人間は簡単に人を見下し、蔑み、イジメる。大人の世界ですらその感情に逆らうことをせずにイジメが発生することがあるのに、精神的に未熟な子供の世界でイジメが起きないわけがないのだ。

……今思い出しても、イジメの現場を見てそんなことを考えている自分の子供らしくなさ、性格が嫌なものだと再確認する。

 

『おい!なんとか言えよ!あ!?』

 

それでも、ここでその人を見捨てるほどにはまだ良心がなくなってはいなかった自分は、ここを少し離れてから誰か大人に話して何とかしてもらうつもりだった。この場で何とかできるほど、自分は強くないしここであの悪口と暴力の嵐を聞き続けているのは精神的に参る。しかし、そう考えてその場を離れようとした自分の耳に衝撃的な発言が聞こえてくる。

 

『なに笑ってんだよ!』

 

一瞬耳を疑った。あの状況で笑う?そんなことがありえるの?混乱した状態でつい振り向いてしまう。自分の常識の中には、殴られて蹴られて笑うなどという状態はありえないものだ。しかし、目にしてしまった。4人に囲まれている少年。彼は確かに、笑っていた。

 

『1人でいて何か悪いの?別に誰にも迷惑かけてないでしょ?』

『そ、そういうことじゃねえんだよ!いつもなにされても平然としてて……気持ち悪いんだよ!!』

 

またも耳を疑った。なにをされても動じない。そんなことってあるのだろうか。この現状を見るに、いつも酷いイジメを受けていることは想像がつくのに。自分は1人でいるだけでつらくて、さみしくて心が悲鳴を上げかけているのに。そんなことを考えながら呆然と見つめ続ける自分に気づかず少年は笑みを濃くしてさらに笑う。

 

『別に?だってこんなことどうってことないもん。』

『どうってことないって……そういう態度がムカつくんだよ!!!』

 

少年の態度が感に触ったのだろう。イジメの主犯格だろうか。1番体格のいい少年が殴り掛かり、イジメられている側の少年が後ろに倒れこむ。しかし、少年はすぐに起き上がって笑う。

 

『こんなことする暇あったら自分を何とかしようとしたら?みんなサッカー部のレギュラーでしょ?』

 

うちのサッカー部は強いし、練習してればいいとこまで行けるんじゃない?と少年は笑顔を絶やさないで言う。口を切ってしまっていたのだろう。途中で口から流れ落ちた血を見て、あららとハンカチでふき取るのが何か不気味に見えた。

 

『な、なんだよ、こいつ……』

『?なにか間違ってる?』

 

そう言って少年は首を傾げる。彼の顔に浮かんでいるのは純粋な疑問で。ここまでいくと異常に見える彼からなぜか自分は目が離せなくて。

 

『こんなにイジメられてんのになんでなんともないような顔してんだよ……!』

『ああ、そういうこと?だって…………』

 

イジメていた側の少年たちの顔にはもはや怯えの色すら見える。自分たちより弱いはずの相手。にも関わらず、これまでなにをしても揺らがなかったのだろう。どんなにイジメられても自分を崩さない。そんな風に見えた彼は私にはものすごい強者に見えた。そんな彼は自らをイジメている相手の言葉に納得したように口を開く。

 

 

 

 

 

「ん………夢……?」

 

そこで目が覚めた。真姫はぼーっと辺りを見まわす。いつもの自分の部屋。鳴り響く目覚ましのアラームを止めて立ち上がる。寝起きの気分はあまりいいものではない。なんで今頃、あんな夢を見るのだろう。確かに今の自分に多大な影響を与えた出来事であるとは思うが。

 

(それでも夢で見るほどのことではないのに……)

 

真姫は朝からため息をつく。正直、自分に影響を与えていようが所詮過去のことであり、ほとんど細部は覚えていない。あんなに印象的なイジメられていた少年の顔も思い出せない。ならば残るのは、気分がいいものではないイジメの現場を見てしまったという事実。朝から憂鬱な気分で真姫は登校の準備を始める。そんな中、真姫は机の上にある丸めてある紙を見る。端からのぞいているのはμ’sの文字。

 

『まだまだメンバーは募集中ですよ?』

『穂乃果なら、ことりなら、海未なら、受け入れてくれるから!』

 

笑顔で差し出された手。大声を出しすぎて枯れそうになっていた声を思いだす。

 

「………………」

 

真姫は無言でなにかを振り払うように頭を振る。そして、丸まったその紙を、ごみ箱の中に捨てた。

 

 

 

 

 

 

鷹也はその日の朝、珍しく寝坊していた。昨日は帰ってきてから、なにかないかと考えているうちに気が付けば寝てしまっていたのだ。

 

「お兄ちゃーん!準備終わった?」

「ごめん!先に行ってて、ことり!」

 

分かった~!と言ってことりが慌ただしく家から出ていく音がする。どうやらことりも寝坊していたようで、部屋で急いで準備をしていたために鷹也が起きていないことに気が付かなかったとか。朝から本調子でないことが露呈してしまって鷹也は小さくため息をつく。昨日のことが尾を引いているのはもう明白だった。

あの後、とりあえずはどうしようもなく、まったくと言っていいほど考えもまとまらなかったのでとりあえずは明日話そうということにして解散となった。新しくメンバーになった花陽に至っては、自分の友人である2人があんな反応を示したのがつらかったのだろう。意気消沈してしまっていたし、海未もなにか真剣に考え込み、穂乃果もことりもどうすればいいのかわからないと言った様子だった。

 

(全然考えまとまってないんだけどな……)

 

鷹也としても正直どうすればいいのかはまだ分からない。凛のことは花陽に任せるのがベストな気もするが、真姫に関しては別だろう。あの少女が何を抱えているのか。その大きな問題を何とかしなくてはいけないのでは花陽1人では荷が重いかもしれない。

 

(といっても、自分が何かできるかと言われたらな……)

 

そう考えながらようやく準備を終えて、鷹也は神田明神へ急いで向かう。自分の考えのなさに苛立ちすら覚えてしまう。あの少女の抱えているものを軽視して、簡単に勧誘を急いてしまい、そのフォロー案は一切なし。あの少女の辛そうな、悲しそうな表情。自分があの才能あふれる少女を潰してしまうことになってしまってはいけない。それは絶対にしてはいけないことなのに。唇をかみしめながら、急いで神田明神に到着。そこではすでにいつもの朝練が開始されていた。

 

「はぁ……はぁ……!!」

「花陽ちゃん!頑張ってー!!」

 

階段を上る花陽に穂乃果の声援がとぶ。その隣でことりが座っていて、海未がタイムを計っていることから見て、ことりと花陽の走る順番だったのだろう。鷹也は階段を走って上って、花陽に追いついて声をかけてやる。

 

「ほら、小泉さん。もうちょっと!」

「た、鷹也さん?は、はい……!」

 

眼鏡の奥の目は驚きを示すも、あまり話す余裕もないのだろう。花陽は頷き、ラストスパート。なんとか階段を上りきる。

 

「はい、休憩にしましょう。花陽、がんばりましたね。」

「お疲れ、花陽ちゃん!」

「はい、タオルと飲み物だよ。」

「あ、ありがとうございます……!!」

 

息も絶え絶えな様子の花陽に3人が声をかける。最近になって3人はようやく慣れてきたようで、このメニューも少しは余裕を持ってこなせるようになってきたが、初めての花陽にはまだ厳しかったようだ。そんな風に思いつつ、4人に近づく。

 

「ごめん、遅くなった。」

「鷹也さん、おはようございます。穂乃果ならともかく、鷹也さんが寝坊なんて珍しいですね?」

「えー!!私、今まで朝練に寝坊したことないよ!!」

 

頬を膨らませて抗議する穂乃果を、日ごろの行いですとばっさり切り捨てつつ、海未が心配そうな目で鷹也を見る。ことりも同じように鷹也を見つめていて、鷹也はあいまいな笑みを浮かべながら頬をかく。昨日のことで本調子でないことはばれているようだ。でなければ海未なんて遅刻に厳しい性格だから、少しは小言が飛んでくるだろうし。

 

「ちょっと考え事しててね。休憩時間みたいだし、ちょっと話すか。」

 

そう言って鷹也は全員を呼び寄せて円になって座り込む。花陽もなんとか回復したようで、タオルを片手に真剣な表情でこちらを見ていた。

 

「まず、小泉さん。μ’sに入ってくれてありがとう。」

「い、いえ!まだ自信はないですけど……がんばります!」

「うん!頑張ろうね!」

 

とりあえずは花陽の加入を歓迎。花陽の返事に両手でガッツポーズをしながら笑みを向けたことりに花陽も笑顔になる。どうやら3人との相性も悪くないようなので一安心。とすると問題は

 

「で、西木野さんと凛ちゃん……だっけ?のことだけど……。」

「ふ、2人とも悪い子じゃないんです!ただちょっと事情が……」

 

2人のことを悪く思われていると勘違いしたのだろう。慌てて弁明しようとする花陽に大丈夫と笑顔を向ける。彼女たちが悪い子じゃないことなんて鷹也も分かっている。花陽の友達だ。悪い子なわけがない。それは他の3人も分かっているようなので、鷹也は穂乃果に意見を求める。

 

「穂乃果は2人に入ってもらいたい?」

「……うん。2人とも、海未ちゃんとことりちゃんが手を差し出した時、嬉しそうにしてたもん。やりたいなら、やってみてほしいな。」

「そうですね。私もそう思います。」

 

そういう穂乃果の言葉に海未もことりも頷く。穂乃果たちも感じていたことは鷹也も感じていたこと。あの嬉しそうな表情。やりたいという気持ちがあるならやってみるべきだ。そして、花陽が入ってもメンバーが足りていないこの現状。あの2人を逃がすわけにはいかない。でも、鷹也は少しためらってしまう。これは鷹也の完全な想像である。本当に入りたくない可能性だってあるのだ。それでなくても、昨日は勧誘のタイミングを間違ったことで真姫にあんな悲し気な表情をさせたばかりなのだ。

 

「お兄ちゃん。」

「ことり……?」

 

すると、ことりがそこで鷹也に声をかけてくる。鷹也の迷いを察したのだろうか。笑顔を見せる。

 

「1人で考えすぎないで?私たちだってあの表情には嬉しさが見えてたよ?だから、その上で入ってほしいとも思ってるもん。お兄ちゃんだけの責任にしなくてもいいよ?」

 

そう言ってことりは穂乃果、海未、花陽を見る。すると、3人も鷹也に向けて頷いてくれる。このメンバーを、μ’sを支えなくてはいけないのは自分なのに、支えられている現状に鷹也は苦笑しつつ頭を切り替える。そうだ。悩んでいる暇はないのだ。自分の判断に迷っているのなら、この4人を信じて進め。

 

「よし、じゃああの2人をμ’sに勧誘する。勧誘の方法は……」

 

鷹也は4人と相談して考えを話していく。まずは2人の本心を聞いてみなくてはどうしようもない。ならば聞きだす。そのための状況を創り出す。2人のあの嬉しそうな表情。そこから悲し気な顔に切り替わることなんてあっていいわけがない。嬉しそうな表情のままでいるべきなはずなのだ。

 

 

 

 

 

「凛ちゃん、今日ちょっと……」

「かよちん!凛、ちょっと陸上部の見学行ってくるね!」

 

そして放課後。凛は花陽に呼びかけられるも、それを遮って駆け出す。悲し気な花陽の表情が目に入って胸が痛む。でも、花陽の考えが分かってしまう凛は花陽と話すのを避けるしかなかった。

 

(凛にアイドルなんて……)

 

今日は花陽が朝練があるということで登校は久しぶりに1人ぼっちだった。小学校から一緒だったためにこんなことはこれまでほとんどなかった。久しぶりの1人での登校はとても孤独で、隣に誰もいないことでぽっかりと心に穴が空いてしまった気分だった。授業合間の休み時間、昼休みなども徹底的に凛は花陽を避け続けた。こんなに離れて学校生活を送ったことなどこれまであっただろうか。少なくとも凛の記憶にはない。そして避けてる間中、花陽はずっとなにか話があるような様子だったが、話の内容は十中八九アイドル活動をやらないかというものだろう。その話を今の自分が聞くわけにはいかない。

 

(なんで凛を勧誘なんてするんだろ……)

 

頭に浮かぶ講堂のライブの光景。人は全然いなかったのにあんなにキラキラしていた3人を思い出す。素直にすごいと思った。素直に憧れた。女の子らしい可愛らしい彼女たちに。でも、その姿はどう考えても自分とはかけ離れているのだ。なのになぜ、彼女たちは自分を勧誘してくるのだろう。一瞬アイドルをやる自分を想像。急いで首を振ってかき消す。ありえない。こんな女の子らしくないアイドル見たことない。凛はそう思いながら昇降口まで走ってきて、ここまで来ればと一端息を整える。普段なら息なんて整えるまでもない距離なのに不思議と息は乱れて、胸が少しチクリと痛んだ。少し休憩と靴を履き替えてそのまま座り込む。

 

(凛がアイドル……)

 

落ち着いたところでもう1度つい想像してしまう。今度はテレビで見るような大きなステージで、歓声を浴びながら、可愛い衣装を着て歌って踊る自分。似合うかどうかはこの際おいておこう。そう考えてみると、とても楽しそうなことに気が付いた。凛はどちらかと言えば、明るくて楽しいことが大好きなアクティブな性格である。そんな凛にとって、大きなステージで観客、ファンと歌って踊って盛り上がる。その状況はとても楽しそうに思えた。そんなことを考えてぼーっとしていたからだろうか。後ろから近づいている人に気が付かなかった。

 

「みっつけたー!!」

「うにゃああ!」

 

急に後ろから肩をつかまれて悲鳴を上げてしまう。機敏な動きでその手を振り払って立ち上がる。そこにいたのは、

 

「こんにちは!」

「こ、こんにちは……」

 

そう言って微笑むと穂乃果は一歩また近づいて来る。何を言われるのか分かっている凛はまた一歩後ずさる。

 

「凛ちゃんさ……」

「な、なんですか……?」

「アイドル……」

「り、凛、ちょっと行かなきゃいけないところがあるので失礼しますにゃー!!」

 

あ、逃げた!という穂乃果を無視して昇降口から外へ逃げようとする。しかし、

 

「逃がしません!」

「にゃっ!?」

 

昇降口の外への出口には海未の姿。どうやら最初から逃げることは想定されていたようだ。どうしようどうしよう。凛はパニックに陥る。このまま話を聞いてしまえばきっと自分は……

 

「そ、そんなの……」

「ほ、星空さん?少しお話を聞いてほしいだけなのですが……」

「だめにゃーー!!!!」

「あっ!!」

 

凛は靴を脱ぎ捨てて、校内への逃亡を開始。途中に止めようと立ちふさがった穂乃果を完璧なフェイントと速度でかわし、階段を上る。どこに逃げるかは全く考えていない。でも、一切立ち止まってはいられない。

 

(そうだ!1階で窓から逃げてもすぐ追いかけてこられるけど、2階の窓から逃げれば……!)

 

2階くらいなら上手く着地する自信がある。凛は冷静ではない頭で考えた自分の案を実行するために2階の手頃な教室を探す。しかし、

 

「ちょっと!なにしてるの!」

「にゃっ!?生徒会長!?すみませんーー!!」

 

廊下の先に見えた生徒会長の姿を見てその案も断念。追いかけられるかと思ったが、どうやらその様子もないようだ。しかし、以前後ろから穂乃果が追いかけてきている気配はする。2階からの逃走は不可能となり、3階、4階と逃げ回る。もう何も考えていなく、ただ振り切るために走り回っているだけだった。そうしてパニックのまま、屋上に駆け込む。

 

「っ……はぁ……はぁ……!!」

 

さすがに通常よりも激しくなっている息を膝に手を当てて整える。階段を一気に屋上まで駆け上がったのはさすがの凛でも辛いものがある。だが、いつまでも黙ってここにいてはつかまってしまう。そう考えて、とりあえず動き出そうとしたところで、

 

「凛ちゃん!」

「っ……!か、かよちん……」

 

ここ最近で、いやこれまでほとんど聞いたことのない親友の大きな声に立ち止まる。凛が声の方に視線を向けると、いつもよりも真剣な眼をしている花陽の姿。つい、一歩後ずさる。

 

「お願い!話を聞いて?」

「いや……やだよ……聞いたら凛……アイドルやらないかなんて言われたら……凛……!!!」

 

そう言って屋上から駆け出そうとする。しかし、

 

「ごめんね、凛ちゃん。」

「ことり先輩…………」

 

そこに立つのは南ことり。おそらくは先ほどまでどこかで隠れていて、凛が入ってきてからドアを塞ぐ位置に移動したのだろう。これで逃げ場はなくなった。凛はどうしようとうろたえる。今、自分は逃げなくては気持ちが傾いてしまう。あの時、ライブで感じた気持ちが、昨日勧誘されて確信に変わったあの気持ちが抑えられなくなってしまう。

 

「ど、どいてください!!」

「ごめんね。でも、花陽ちゃんの話、ちゃんと聞いてあげてほしいな。」

「でも……でも……!!」

「凛ちゃん!!!」

 

ことりの言葉に凛はうろたえつつも無理やり横を通ってしまおうかと考えた時、花陽に肩をつかまれて振り向かされる。花陽の真剣な表情が目の前にある。凛はもう逃げられないと悟り、せめてもの抵抗として目を花陽から逸らす。

 

「凛ちゃん、本当に凛ちゃんはアイドルやりたくないから逃げてるの?」

「そんなの……」

「凛ちゃん、こっち見て?」

「え……?」

 

花陽に無理やり頬を両手ではさまれて、視線を合わせられる。花陽は優しく微笑んでいて。その優し気な、きれいな瞳にうつりこむ自分の顔はひどいもので。今にも泣き出しそうな、そんな表情で。

 

「凛ちゃん、自分の気持ちを素直に言って?私に自分のやりたいことやっていいって言ってくれたのは凛ちゃんだよ?」

「でも……!」

「大丈夫。」

 

自分の気持ちを素直に言う。それはとても不安なのだ。だって、こんなに女の子っぽくない自分が、髪だって短い自分が。

 

「私は絶対に味方だよ?」

「あ……」

 

花陽の言葉に涙がこぼれる。いいのだろうか。自分がこの感情に素直になっても。笑われるかもしれないけど。凛は泣きながら不安げに花陽を見る。目の前の少女は優しく微笑んでくれて。そこで限界だった。

 

「凛もかよちんと……かよちんと一緒にやりたい……アイドルやってみたいよ……!!」

 

気持ちがあふれ出した。昔から女の子らしい周りの子に憧れていた。そんな女の子らしい子たちの中でもさらにキラキラしたアイドル。それを始めたμ’sのライブを見たときに思ったのだ。

 

(凛もあんなふうに……)

 

なれるかは分からない。μ’sの先輩たちや花陽はアイドルになる前から可愛い、女の子らしい女の子たちだし、自分がそこに混ざってそうなれるかは分からない。でも、勧誘されて思ってしまった。あんな風にキラキラしている先輩たちに、そしてなにより花陽に勧誘してもらえるのならば、

 

(凛も……キラキラできるのかな……)

 

その想いが抑えきれなくなった。自分も女の子らしい可愛い衣装で歌って、踊って盛り上がって。女の子らしくない自分も女の子したい。アイドルとして女の子らしくしたい。

 

「凛も……凛もアイドルやってみてもいいのかな……?」

「凛ちゃん。」

 

花陽に促されて後ろの屋上のドアの方を振り返る。そこには追い付いてきたのだろう。ことりの他に穂乃果と海未も立っていて。

 

「凛ちゃん、アイドルやってみない?」

 

そう言って満面の笑みと共に手が差し出される。いいのだろうか。この手を取っても。凛は一瞬迷って後ろにいる花陽を見る。すると、花陽は優しく微笑んで頷いてくれる。大丈夫、私がついてるよ。花陽のその気持ちに後押しされて凛は穂乃果の手を取る。

 

「星空凛です。女の子っぽくないし、髪だって短いけど……アイドル活動の仲間に入れてもらえますか……?」

「うん!よろしく!」

 

凛の不安を穂乃果の、海未の、ことりの笑顔が吹き飛ばす。この人達は歓迎してくれている。こんな自分を。ならば、

 

「よかったね、凛ちゃん。」

「かよちーん!!!!」

「わわっ!」

 

凛は目に涙をためながら、でも笑顔で花陽に飛びつく。こんな自分でも歓迎してくれる人がいて、常に自分を可愛いと言って味方でいてくれる親友がいる。ならば

 

「……凛、がんばるにゃー!!」

 

まだ不安はあるけれど、とりあえず自分もキラキラした人の中で、そのキラキラに混ざれるよう頑張ってみようと思う。

 

 

 




はい、書いてて思ったことを言います。
凛ちゃんは可愛いよ!!

というわけで凛ちゃん加入回。まさかの真姫ちゃん加入まで1話でいかないこの感じ。
もう少しオリジナル展開にお付き合いください。

そろそろ、あと100もないうちにUAが10000突破です。本当に嬉しいです。ありがとうございます。
お気に入り登録も増え続け、もう少しで100に届きそうです。というわけで、UA10000、お気に入り登録100にたどり着けば番外編の2でも書こうかと思ってます。内容は前の番外編となんら関係ないものになるかもしれませんが。

真姫ちゃん加入回の方が先になるとは思いますが、番外編も書きたいと思っていますので、できればお気に入り登録、感想、評価の方していただければとても嬉しいです。

では次もよろしくお願いします。

追記:えりち誕生日おめでとー( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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