小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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お待たせしました!にこ登場です!
番外編でしか出番のなかった彼女も登場して、ようやく全員が一応登場したでしょうか。
まだ彼女のあのセリフは出ていませんが、それは後のお楽しみです。


それでは、どうぞご覧ください!


視線の主は?

真姫と凛が加入してから1週間ほどが経った。その間、鷹也は母との相談を重ねて自分の考えを実現しようと書類の整理を進めつつ、μ’sのダンスレッスンに関して多少のアドバイスを続ける日々を送っていた。最初は鷹也を警戒していた様子だった凛も今では何とか慣れてきた様子で他のメンバーと同じように鷹也に接するようになっていた。そんなある日のことである。

 

「誰かに見られてる気がする?」

「うん……私の気のせいかもしれないんだけど……」

 

いつものように放課後の練習を神田明神にて行っている時、休憩中にことりが鷹也にそう言ってきた。最近は忙しいがそれでも鷹也は朝練には毎日、放課後の練習にも2日に1度は顔を出している。練習していないで、見てアドバイスする立場の鷹也の方が周りを見る機会は多いはずなのだがそんな人影は見たことがない。しかし、その視線は他にも感じているメンバーがいたらしくみんなが話に混ざってくる。

 

「わ、私もたまに……私の自意識過剰かもしれないですけど……」

「そんなことないよ、かよちん。凛もなんか見られてる気がするときあるもん。」

「え?そうかなぁ?」

「穂乃果は鈍感ですからね……。屋上での練習のときも視線を感じることもあるくらいなんですが……」

 

真姫の方を見てみると口にはしないものの顔をしかめていることから、真姫にも身に覚えがあるのだろう。こういったことに能天気な穂乃果は参考にならないとすると全員が視線を向けられていることになる。

 

「うーん……そうは言っても誰にも心当たりはないんだよね?」

 

鷹也が確認をとると、全員が揃って首を横に振る。まあ、そんな視線を向けられ続けるようなことに関して心当たりが個人でそうそうあるものでもないだろう。となるとμ’s全体に対して向けられている視線と言うわけになる。確かにファーストライブの映像がネットに流されたことで話題になり、さらにメンバーも増えてホームページに6人で撮った写真も載せていることで、そこそこ有名にはなってきているので、そういうことも起こり得るかもしれない。問題はその視線が好意的なものか悪意的なものか。

 

「でも、それって有名になってきたってことだよね!」

「あ!確かに!凛たち頑張って写真とかホームページに載せたもんね!」

「有名になったのはいいけど、これが本当にいいことかは分からないわよ。」

 

その辺りは真姫も分かっているようで、ポジティブに思考を切り替えている穂乃果と凛に釘を刺す。他のメンバーを見る限り、この2人以外はみんなそのことは分かっているようだ。ただ2人分かっていない穂乃果と凛が有名なのにいいことじゃないの?と言ったように首を傾げる様子に苦笑しつつ、鷹也はとりあえずの案を口にする。

 

「まあ、今のところは考えても仕方ない。ただこれからはなるべく1人で行動することを避けること。一緒にいるときはなるべく俺も警戒するけど、不審な人がいたらすぐに教えること。」

 

素直に返事をする5人に笑顔を見せて、返事をしなかった真姫に分かったなと釘を刺しておく。人に頼ることに慣れていないのか、なぜか渋々分かったわよと言う真姫に苦笑しつつ、鷹也は考え込む。

 

(有名になったからって言ってもいきなりこんな問題が起こるもんか……?そもそも有名とはいってもまだまだ知名度は低いはずなのに……)

 

気持ちを切り替えて練習を開始する6人に視線を向け、アドバイスする部分を確認しながら鷹也はなにか見落としがあるような、そんな違和感を胸に感じていた。その違和感が解決するのは意外とすぐのこととなる。

 

 

 

 

 

次の日の朝練の時間。鷹也とことりはいつもより早く集合場所である神田明神に到着していた。その時である。

 

「…………!!」

「ことり?」

 

ことりは軽く体を伸ばしながら、鷹也は今日は海未が弓道の朝練のために普段彼女がやっている階段の周りに躓いてしまうような石がないかなどの確認を代わりにしながら他のメンバーを待っていると、ことりが急に後ろを振り向いた。不審に思う鷹也だが、先日の会話を思い出す。誰かに見られている気がする。

 

「お兄ちゃん……」

「大丈夫。俺が見て……」

「おっはよー!!」

 

不安げなことりを安心させるために微笑みつつ、鷹也はことりが視線を感じたであろう建物の影に向かおうとするが、そこで穂乃果が元気よくあいさつしながら階段を駆け上がってきた。

 

「なに?どうかしたの?」

「いや、なんかまたことりが視線を感じたとかで……」

「ほんとに!?どこ!?」

 

あそことことりが指さすと、穂乃果は止める間もなくそちらへ近づいていく。慌てて追いかけて鷹也が穂乃果を止めようとする。

 

「おい!相手がどんな人かも分かんないのに急に……」

「鷹也くん!静かに!気づかれちゃうよ……!!」

「楽しんでるだろ、お前……」

 

鷹也の話も聞かず、穂乃果は建物の影へと、口でささっなどと効果音を言いながら忍び寄っていく。鷹也にむけて頬を膨らませながら人差し指を口に当てて見せたその顔は完全にこの状況を面白がっていた。おそらく忍者みたいなどとでも思っているのだろう。鷹也はそんな穂乃果に呆れつつ、仕方ないので後ろから回ってみることにする。

 

「穂乃果、こっちから俺は行くからそっちは任せるな。」

「任せて!」

 

一応ことりになにかあった時のお願いも込めてアイコンタクトを送っておく。しっかりとことりが頷いてくれたことを確認して、穂乃果と息を合わせて駆け出す。

 

「あれ~……?なんだ、誰もいないってうわわわあ!!」

「穂乃果!?」

 

なにかあったのだろうか。だが、ここまで来てしまったならば裏から回った方が近い。そして鷹也が裏から回って、不審者がいるかもしれないとされていた建物の影に到着してみたものは

 

「さっさと解散しなさい!!」

「…………へ?」

 

おでこを赤くして地面に倒れる穂乃果とそれを支えることり。そして

 

「誰……?」

 

びしっ!という効果音でも聞こえてきそうな勢いで2人を指さす少女。おそらく。おそらくというのは、その少女はトレンチコートと言うのだろうか。厚手のコートを着て、顔には大きめのサングラス。さらにはマスクという完全な不審者の服装。それでいて髪型は黒髪のツインテール。背丈もたいして大きくないどころか、鷹也がよく目にしているμ’sのメンバーと比べれば誰よりも小さいのではないだろうか。

 

「……っ!!」

「あ、逃げた。」

 

一瞬追いかけるか迷うも、穂乃果の方はことりが見てくれているようなのでとりあえず追いかける。正直これまでの視線があの少女のものだったというならば、あんまり心配がない気がしてきていた。あの不審者感満載の格好に完全にミスマッチなあの少女の風貌。危険がないと断定できるわけではないがなんとなく毒気を抜かれてしまっていた。階段を駆け下りていく少女をやる気なく追いかける。結局は男子大学生と女子の脚力である。

 

「なんで追いかけてくるのよ!!」

「いや……なんでって言われても……」

 

文句を言ってくる少女に何とも言えないで鷹也は追いかけ続ける。2人の距離はぐんぐん縮まってきている。もう少しで追いつける。そのところで

 

「おっと……!!」

「鷹也さん?そんなに急いでどうしたん?」

 

希と鉢合わせた。曲がり角から急に表れた希とぶつからないように止まったせいで、鷹也は少女を見失ってしまう。曲がり角を曲がっていってしまったのだろう。視界にいなくなってしまったので追いかけようがない。鷹也は軽く息を整えつつ希をにらみつける。

 

「いややなぁ。そんな怖い顔で睨まんでもいいやん?」

「希、わざとだろ。」

「どうやろね?」

 

とぼけたような様子もなく、裏の見えない笑顔で微笑む希に鷹也はため息をつく。希の格好は巫女姿で手には箒。完全に境内の掃除の最中だ。そんな希が境内から出てきて、こんなところで偶然鷹也にぶつかりそうになるはずがない。

 

「……音ノ木坂の生徒か?あの子。」

「さあ?ウチは鷹也さんが走ってきたのにぶつかりそうになるのが怖くて、誰を追いかけてたかなんて見る余裕なかったし。」

「誰も追いかけてたなんて言ってないけど?」

「状況と会話の内容からだいたいを察することができるいい女なんよ、ウチは。」

 

どうやらなにも教える気はないらしい。鷹也はもう1度ため息をついて首を振る。希に教える気がないのならもうどうしようもないだろう。今のところ、鷹也にはまだこの少女の考えは読み切れない。もう話していても意味はないだろうし、鷹也は希に手を振ってその場を後にしようとする。

 

「……今回は鷹也さんが関われる問題じゃないんよ。」

「なんのことか分からないんじゃなかった?」

「たまたまことりちゃんたちが話してたことを聞いてて、ウチはそのことを言ったつもりやけど?」

「……………あっそ。」

 

やっぱりわざとじゃんか。鷹也はそう呟きつつ、その場を後にしてことりたちの元に戻って行く。その後姿を希は意味ありげな微笑みで見送った。

 

 

 

 

 

「よっし……できた。あとはこれを理事長あてに送って会議にかけてもらえば……」

 

その日の放課後。今日は雨が降ってしまったために練習場所がないから休みにしてみんなでハンバーガー食べてくるとの連絡をことりからもらった鷹也はサークルの活動も今日はないので、家で書類の作成を行っていた。母の手伝いとしてまとめた書類と自分の考えを実現するための書類を分類して母に送る。正直、今の段階では自分でできることはここまで。あとは理事長である母に時間のある時に何とかしてもらうしかない。

 

(確か部活申請できるのは5人からだったし……大丈夫なはずだけど……)

 

鷹也はそう考えつつ、休憩としてリラックスしながらコーヒーでも飲むかとコーヒーメーカーの準備を始める。最近は書類の整理も順調に進んでいたために、少し余裕が出てきている。大学の課題も今はないし、これから少しことりたちの練習に顔を出す頻度を増やそうかと考え始めていた時である。コーヒーメーカーのセットを終え、少しずつ溜まっていくコーヒーをぼーっと見ていた鷹也の耳に、携帯がメッセージの着信を告げる音が入ってくる。何だろうと画面を見ると、ひな子からのメールのようだ。内容を見て、鷹也の顔が引きつる。

 

『さっき送られてきた書類の確認終わったわ。問題はなかったし、ありがとう。あと例の書類のことだけどまだ部活申請に来てないみたいよ?それでも大丈夫なの?』

 

「あいつら……!!」

 

急いで作り直すとひな子に返信を送り、続いてことりに電話をかける。確認不足だった。まさか生徒会長がスクールアイドルを嫌って申請を無理やり止めているなんてこともありえないだろう。つまりは

 

『もしもし、お兄ちゃん?どうしたの?』

「ことり?今何してる?」

『今、学校の空き教室を使うには先生が正規の部活じゃなきゃ許可してくれないって話してて……』

 

嫌な予感的中。鷹也は顔が引きつるのを自覚しながらことりにある問を投げかける。

 

「…………正規の部活になるための人数は?」

『え?…………あ……』

 

あーー!!という声が向うから聞こえてくる。耳をすませていたのだろう。穂乃果の声も聞こえてくることから、どうやらみんな気が付いたようだ。なんてことない。練習場所に今日困っているのも、鷹也の考えの実現を妨げたのも単純な理由。

 

『みんな忘れちゃってたみたい……』

「頼むよ、もう……」

 

目の前のコーヒーメーカーが最後の一滴のコーヒーを作り終え、最後の一滴がたまったコーヒーに波紋を作る。しかし、額に手を当ててうなだれる鷹也はもはやそのコーヒーを飲む気にはならなかった。

 

 

 

 

 

 

先日の話し合いで鷹也が感じた違和感。それは例の視線の主が全く知らない人ではない可能性を感じたからこその違和感だったのだろう。普段から学校と神田明神と家くらいしか彼女たちの行動範囲はない。とはいえその中で頻繁に視線を感じるほどその行動を把握できるほどの人は有名になったとはいえ、そうはいないだろう。つまり、彼女たちの行動把握しやすい人物となる。そして決定的なのは屋上での練習でも視線を感じるという海未の言葉。屋上に入っている時点で確定だ。視線の主は音ノ木坂関係者。あの朝の少女が視線の主だとすると彼女はやはり音ノ木坂の生徒だろう。

 

(そりゃあ俺じゃ関われないな……)

 

そこまで考えて鷹也はため息をつく。あの少女のことが全く分からない以上、これは女子校内での話になってくる。そうすると今のところ鷹也では関われない。どうせ希はそれを把握していて、あの少女の抱えることも知っているからこそ朝にあのような行動をとったのだろう。本当に分かりづらい、不器用な子だと鷹也は思う。あんな行動でそこまで把握できるわけがない。

 

(なら、この問題はことりたちに任せるしかないか。)

 

鷹也は足元の水たまりを避けながら思う。現在、鷹也は気分転換の散歩もかねての晩御飯の買出しに向かう最中である。さすがに書類の作り直しをすぐにする元気はなかった。ファーストライブの時は別だし、今回は真姫や花陽の時のように面識もない。まさか道端でばったりなんてことはさすがにないだろう。そんなことを思いつつ、ことりたちがハンバーガー食べてるとしたらこの辺だなぁと思ってビニール傘で透けて見える空を見上げる。その時、不意に子供の声が耳に入ってきた。

 

「あー!うんちが走ってる!!かっけー!!」

「なに言ってんだか。なにして遊んでたらそんなことに……はぁ!?」

 

子供の突拍子もない発言にいったい何をして遊んでいるのだろうと思い、そちらに視線を向けた鷹也の顔が驚きに染まる。まず目に入るのはピンクの……鷹也は子供ではないのでソフトクリームと表現しておこう。ソフトクリーム。そして、それが結構な速度で移動しているのだ。鷹也は自分の方に向かってくるそれを落ち着いて見てみる。まさかそんなものが単体で動いているわけがない。現にその下には

 

「……ダメだ、どこから突っ込めばいいか分かんない……なにこの変な人……」

 

大きな薄茶色のレンズの眼鏡、お団子にした髪、白いコート。もう不審者とかいうレベルじゃない。変質者の域である。鷹也は傘もささずに走ってくるその変質者を見て考える。すれ違うまであと少し。触らぬ神に祟りなし。関わり合いたいとは到底思えない彼女だが、なにか引っかかる。自分は最近この変質者に似た人物に会ってないか。

 

「うんちだうんちー!!!!」

「うるっさいわね!!違うわよ!!」

「あ、この声。」

 

子供に言い返す声を聞いて、ポンと手を叩いて思い出す。横をすれ違おうとするその少女をコートのフードをつかんで引き留める。

 

「ぐえっ……!!」

「あ、ごめん。」

 

急にフードをつかまれて一瞬首が絞まったのだろう。変な声を出す少女に謝りつつ、鷹也はフードから手を離して、傘に入れてやる。身長は高くはないから問題ないのにソフトクリームが非常に邪魔だ。鷹也はソフトクリームにぶつからないように傘を差しながら、苦しそうにむせる少女を見下ろす。そこまで強くは引っ張っていないし大丈夫なはずなのだが。

 

「けほっ…げほっ…!なにすんのよ!!!」

「それはこっちのセリフ。あの子たちに何の用かな?」

 

顔を真っ赤にして文句を言う少女に鷹也がそう言ってやると、彼女は一瞬なんのことよと言おうとして固まった。どうやら気が付いたようである。

 

「あ、あんたは……!」

「どんな理由かは分からないけど……あいつらに危害を加えるなら黙ってないよ?」

 

そう言って鷹也はにっこりと微笑む。

 

「な、なんのことかなぁ?お兄さん、目が笑ってないよぉ?そんな顔されても、にこわっかんなぁ~い……?」

「…………ちょっと付き合ってくれる?」

「…………はい……」

 

 

 

 

 

鷹也が向かったのはとあるファミレス。少女は何度か逃げ出そうとしたが、全て捕まえた。今はおとなしく向かいの席について、むすっとした顔でストローを口にくわえて飲み物を飲んでいる。ちなみに頭のソフトクリームは外させた。

 

「で、なんであいつらのこと見てたの?」

「…………あんたには関係ないでしょ。」

「はぁ……」

 

さっきからずっとこの調子である。聞き出せたことと言えば矢澤にこという名前くらい。その名前もたまたまソフトクリームを脱いだ時に内側に見えた『にこ』という刺繍からなんとか聞きだしたくらいなのだが。鷹也はどうしたものかとため息をつく。危険はあまりなさそうに見えるとはいえ、一応はμ’sにストーカーまがいのことをしている不審者。ここで事情を聞いておかなくてはいけない。彼女たちの、妹と妹のような彼女たちの邪魔になるようなことは許してはいけない。そんな鷹也にそっぽを向きつつ、にこは視線だけを向けて口を開く。

 

「……なんであの子たちのところに連れて行かないの。」

「え?ああ、ちょっと知り合いがそれを避けてたみたいだし、今のところはね。」

「知り合いって希でしょ?」

「知ってるのか?」

「まあね。」

 

ったく余計なこと……と不機嫌そうだった顔をさらに不機嫌にしながらにこは飲み物を飲む。鷹也としてはこの少女をことりたちの元に連れて行ってもいいと思っていた。当人は彼女たちなのだからどうするのかは彼女たちが決めるべきだ。だが、それでいいのなら今朝の時点で希があのような行動に出る必要はない。ならば、この子とμ’sが会って話し合うのは明日以降の方がいいということになる。希の考えは読めないが、彼女は確信をもって行動しているように見える。希も悪い子には見えないし、なにも判断材料がない自分よりはいい方向に持って行こうとしているのだろう。

 

「希は今回の問題は俺が関わる問題じゃないって言ってた。」

「なら関わらなきゃいいじゃない。にこさっさと帰りたいんだけど。」

「確かにな。希の言葉はある程度信頼してる。これまでもなんとなく当たってるし。でもさ……」

 

鷹也の声色が変わる。これまではどこか優しさが残っていて、話し合おうという意思が見えていた。でも、今回は違う。鷹也は完全に脅しとして声を出す。

 

「でも、完全には信用してない。それに希のことを信用しても君のこと信用する気もない。ここで関わる機会ができたわけだし、ほんの少しでもあいつらに危害を加える可能性があるのなら、あいつらの夢を邪魔する可能性があるのなら」

 

こちらを見るにこの目をまっすぐに見る。多少の怯えを見せながらも、気丈に真剣な表情で目を逸らさないにこに向かって最後の言葉を告げる。

 

「そんなこと思わなくなるまで、俺の身を犠牲にしてでも君のことを『説得』するしかなくなる。もちろん方法は問わずに。」

 

どうする?と言った意味も込めてにこの目を見つめる。にこはこちらの雰囲気に飲まれまいと思ったのか、ぎゅっと握りしめた手をさらに握りしめて言葉を絞り出す。

 

「夢もなにも……あんなのアイドルへの冒涜よ……!!」

 

気丈に睨み返してきたにこは続けて告げる。

 

「歌や踊り以前の問題よ。アイドルとしての気持ちが足りてない!」

 

鷹也は感心する。こういった交渉は確かに自分は苦手である。人を脅したりするなんて自分が普段は絶対にしないことだし、できればしたくない。でも、そんな鷹也とはいえ年上の男性。そんな相手に向かってにこははっきりと目を逸らさずに自分の意見を言ってきた。そこには確かな意思がこもっている気がした。

 

「あんな遊びみたいな活動でアイドル活動なんかしてほしくない!これでいいでしょ!」

 

そう言ってにこは立ち上がる。立ち上がった時に開かれたその手は震えていて。怖かったのだろう。でも、それを感じさせずに自分の意思を貫き通せる強さ。そこにあるのはアイドルに対する強い想い。立ち去ろうとするにこに鷹也は声をかける。

 

「あいつらだって遊びでやってるわけじゃないと思うけど?そう見えちゃうかもしれないけど、真剣に取り組んでると思う。」

「……知ってるわよ。あのライブの後の言葉で分かる。でもアイドルとしての気持ちが、想いが足りてないのよ。それなら私のほうが、私だって……」

「なに?」

「……なんでもないわよ。帰る。」

 

そう言って今度こそにこはファミレスから出ていく。にこのアイドルに関する想いは本物だ。でもそれだけだろうか。ならばなぜこれまで彼女たちを見てるだけで接触してこなかったのだろう。簡単に彼女たちを否定しないでずっと見てから声をかけてきたということだろうか。ライブの後の言葉を聞いて、鷹也の目から見ても練習には真剣な彼女たちを見ても彼女は解散した方がいい。そう思ったのだろうか。何か違う気がした。引っかかるのは最後のつぶやき。私だって。この言葉に続く言葉は何だったのだろう。

 

(矢澤にこ……か……)

 

飲み物を飲み干して鷹也は立ち上がる。慣れないことをしたせいで疲れてしまった。今日はとりあえずさっさと帰ろう。にこの分の会計も一緒に済ませる。脅してしまった分のお詫びということでいいかと考えつつ、鷹也は家に向かって歩き出す。今後あの少女はどうμ’sに関わってくるのか、もしくは関わってこないのか。

 

(これからどうなるかな……)

 

 





はい、いかがだったでしょうか。
にこのアイドルに関する強い想いを少しでも表現できていたらいいなと思います。

番外編に関してですが、思ったより書き進まなくって……
もう少しお待ちください。

お気に入り登録、評価をくださった方々、本当にありがとうございます。
楽しんでいただけるよう頑張りますので、引き続き読んでいただければ幸いです。

では、できれば感想、評価、お気に入り登録していただけると作者は非常に喜びます。

次回も引き続きよろしくお願いします。
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