小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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UA10000、お気に入り登録100の記念回の番外編です!
のつもりがいつの間にかUA15000にお気に入りが136と大幅に増えてて、だいぶ遅れた記念になってしまいました。びっくりするとともに感謝の気持ちでいっぱいです!


今回の話は前回の番外編とも本編とも関係ないある日の話。
それではご覧ください!


番外編:彼と彼女たちの特別な日

あの人はいつも気づかない。毎回毎回こちらから言い出さないとこの特別な日を完全に忘れ去っているのだ。他の人の時は絶対に忘れないのに。

自分のことにはとことん無関心なあの人。どうせ今回も気が付かないのだろう。ならば今回もこちらから言い出さなくてはいけない。でも今回は少し特別だ。

 

「あ、もしもし、穂乃果ちゃん?これからみんなにも連絡するところなんだけどね……うん……」

 

今のあの人の周りにいるのは私だけじゃない。いつもお世話になってるし、みんなで伝えなくては。

 

「じゃあみんなにも連絡してみるねっ!」

 

そう言って電話を切ると、次はもう1人の幼なじみに連絡をとる。その次は……

 

「ことり?晩ご飯できたぞー!」

 

そこで彼に呼ばれる。はーいっ!もう少し待ってー!と返事をしつつ海未へ電話をかける。他の人への連絡はご飯を食べてからにしよう。特別な日まであと1週間。今回はみんなで伝えよう。

 

「おまたせ、お兄ちゃん。」

「大丈夫。さ、冷めないうちに食べるか。」

 

私の、私たちの大切な人に。

 

 

 

 

 

☆彼と彼女たちの特別な日☆

 

 

 

 

 

今日は何かおかしい気がしていた。昨日の土曜日はいつも通り彼女たちは練習に励んでいたのだ。だから、鷹也としては日曜日である今日もてっきり練習するものだと思っていた。しかし、

 

「休みになるとはねぇ……」

 

普段は鷹也と海未と絵里の3人で基本的に練習日、内容などを相談しているのだが昨日は突然だった。練習終わりに絵里からそんな提案がなされ、他のみんなも賛同。まさか海未までいいんじゃないでしょうかなんて言うとは思っていなかったために驚いた記憶がある。

 

「あ、お兄ちゃんは今日どうするの?」

「ん~どうするかな……」

 

することもなく、ぼーっとリビングでソファに寝っ転がって過ごしていると、ことりが声をかけてきた。そもそも今日は彼女たちの練習に付き合う予定でいたので特になにも考えていない。ことりの方を向くと、ことりはでかけるようで外出準備万端でこちらをのぞき込んでいた。

 

「ことりはでかけんの?」

「うん、みんなとちょっと買い物する約束なんだ。」

「そっか……」

 

鷹也は考える。ことりの言うみんなとはμ’sのみんなのことだろう。練習を取りやめたその日にみんなで買い物なんて何かあったのだろうか。最近は遅くまで部屋から電話しているような声が聞こえていたが。

 

「家にいても暇だし、荷物運びでもしようか?」

「い、いいよ!大丈夫!!」

「そんな全力で断らなくても……まあ、俺も女の子9人の買い物に付き合うのは大変そうだしいいんだけどさ」

「ご、ごめんね?いってきまーす!」

 

いってらっしゃいと鷹也はことりを見送る。あの慌てよう、本当になにかあったのだろうか。首をひねりながらも鷹也は立ち上がる。このままぼーっとしていても仕方ない。彼女たちのサポートを始めてから考えれば、1日丸ごと暇なのは珍しいのだ。さてどーするかと立ち上がり、とりあえず部屋に向かって書類がたまってないかなどの確認を始めた。

 

 

 

 

 

「で、9人集まったのはいいけどどうするわけ?」

「そうね……」

 

にこの言葉に絵里が頬に手を当てて考える。準備することを決めたのは数日前。だが、彼女たちは学生でありスクールアイドル活動に取り組んでいる真っ最中なのだ。月曜から金曜までは授業があって放課後には練習。土曜日に準備するという手もあったが2日間も休みにするわけにもいかないし、ならば半端に準備していくより1日かけて準備しようと相談で決めたために、気が付けば明日には当日である。あまり時間があるわけではない。

 

「とりあえず全員で動いても効率が悪いのではないですか?」

「そうね。ここで時間を使いすぎてもいけないし……班分けして別れていろいろ回ってみましょうか。」

 

海未の言葉にうなづき、絵里が言う。班分けはじゃんけんで決定。3人ずつに分かれて買い物をしてしまうことにする。買わなくてはいけないものはいくつかあるし、分担も決めておく。今いるのは結構な規模のショッピングモールであるし、ここで大抵のものは揃うだろう。

 

「これも一緒に買ってくればいいんだよね……、うん!覚えた!かよちん!真姫ちゃん!早くいくにゃー!」

「え!凛ちゃん、ほんとに覚えたの?ってちょっと待ってよ~……!」

「結局学年ごとじゃない……。それよりことり、ここって結構な人が買い物に使う場所だと思うんだけど大丈夫なの?」

 

私は別にばれたってどうでもいいんだけど。そう言う真姫にことりは苦笑しつつ答える。

 

「うん、家出るときは今日は何するか決めてないって言ってたし、大丈夫じゃないかな。」

「それ、ここに来るって決める可能性もあるじゃない……」

「真姫ちゃーん!!早くしないとおいてっちゃうよー!!」

「ちょっと待ちなさいよ!もう!」

 

あっという間に駆け出して行った凛とそれに引きずられる花陽を追いかける真姫を見て、後ろから絵里が集合場所と時間について声をかける。ほとんど反応は見せずに去っていった3人の後ろ姿を見て、絵里は表情を曇らせる。

 

「聞こえてるのかしら……」

「大丈夫やって。真姫ちゃんもついてるし。」

「希の言う通りね。時間もないんだし、私たちも行きましょ。」

「あ、ちょっと2人とも待って!もう、穂乃果たちも時間は間違えないようにっていないし……」

 

絵里が声をかけようとするもすでに穂乃果たちの姿は見えず、どうやらもう買い物に駆け出してしまったようだ。本当に大丈夫かしら……と少しの不安を覚えつつ、絵里はにこと希の後を追って駆け出した。

 

 

 

 

 

「見て見て!これ可愛い!!」

「ほんとだ~!もふもふ~!!」

「穂乃果、ことり。今日は遊びに来たわけじゃないんですよ?」

 

とりあえずと入ってみたファンシーショップで立ち止まってはしゃぐ穂乃果とことりに注意しつつ海未はため息をつく。一時期、メンバー集めにてこずっていた時ですらアルパカにはまった時には学校で飼っているアルパカの前からなかなか動かなくなったことりだ。今回のことを最も大事にしているのだが、やはりこういった可愛らしい物には反応してしまうらしい。穂乃果も可愛らしい物が好きで性格が性格であるために立ち止まってしまっていた。今回の目的には明らかにそぐわない物に海未には見えるのだが。

 

「え~でも、こんなに可愛いんだよ?」

「可愛いのは認めますが……」

「もっふもふだ~♪」

「ことりもいつまでもそうしてないで他のところ見に行かないと……」

 

穂乃果が差し出してくるクマのぬいぐるみを押し返しつつ、ことりに声をかける。そう、今日は時間があまりないのだ。こんなことをせずに何を買うかを限られた時間でしっかりと吟味しなくては。海未はそう意気込む。しかし、2人はそんなことはお構いなしでさらにそのお店の中に入って行く。

 

「ちょ、ちょっと穂乃果!ことり!」

「あ、これも可愛い!」

「ほんとだ~!海未ちゃんも!ほらっ!!」

 

慌てて海未が追いかけるも、2人は聞く耳を持たない。いつも通りといえばいつも通りである。いつも止めようとしても穂乃果だけでなくことりまで一緒になってはしゃぎだしてしまったら止めれた例がないのだ。正直、海未はこんな可愛らしい雰囲気の人形やらアクセサリーやらが置いてある店にはほとんど入ったことはない。だからこそ、なんとなく入るのがためらわれるというのも早くこの店から出て本来の目的に戻りたい理由の一端ではあるのだが。そこでことりからヒヨコのようなぬいぐるみを手渡される。

 

「あ、ほんとにもふもふですね……」

「でしょでしょ!」

「海未ちゃん!こっちももふもふだよ?」

「本当ですね。なんだか落ち着きます……」

 

普段はぬいぐるみなんて海未の部屋にはない物であり、そもそもぬいぐるみを抱くことなんて穂乃果やことりの家に遊びに行った時に数回あったかなかったかくらいである。そんな海未にとって、ことりに手渡されたヒヨコのぬいぐるみの感触はとても落ち着くものであり、抱きかかえて自然と笑みがこぼれる。これを好機と思ったのか、穂乃果とことりにいくつかのぬいぐるみを手渡されるうちに海未もすっかりぬいぐるみに夢中になっていく。

 

「ことりちゃん!海未ちゃん!今度はこっちも見てみようよ!」

「うんっ!」

「もふもふ……ってはっ!そうじゃないです!他のところも見に行かないと……!穂乃果!ことり!」

 

海未は我に返るが時すでに遅し。海未にぬいぐるみのよさを伝えた穂乃果とことりはすでに店の奥へ。海未は慌てて2人を連れ戻しにかかる。

 

「もう!行きますよ!」

「えぇ~!!もうちょっといいじゃん!」

「海未ちゃん、お願い?」

「だ・め・で・す!!」

「「ええ~!!」」

 

 

 

 

 

「それにしても何を買えばいいのか全く思いつかないわね……」

「そやんなぁ。今回ばっかりは自分がほしいものってわけにもいかんしねぇ……」

 

絵里と希は揃ってうーんと歩きながら考え込む。悩みながらも絵里たち3年生組はとりあえずはそれっぽいところを歩きまわってみていた。正直なところまったく見当もついていないのだ。これまで数日の間に個人個人で考えてはいたのだが、どれもしっくりこなかったらしい。

 

「にこっちは弟さんもいるし、こういうの考えるの得意なんやないの?」

「そうは言っても……。しっくりくるのがぜんっぜん思いつかないのよねぇ……」

「へぇ……」

 

な、なによ。と言うにこを見ながら希はにやにやとした笑みを見せる。

 

「にこっち。意外と真剣に選んどるね?」

「べ、別にいいでしょ!一応μ’sのために働いてくれてるわけなんだし……」

「にこっちからもお礼せんとね?」

「なんか癇に障るわね、その言い方……!」

「はいはい、希はにこのことからかわないの。にこも簡単に乗せられない。」

 

はーいと全く反省の見えない様子で返事をする希と乗せられてないとふてくされるにこを見ながら絵里は苦笑する。よくもまあここまで性格の一致しない3人が一緒にμ’sとしてスクールアイドルなんてやっているものだ。そう考えて、この3人どころか9人全員バラバラなのよねと思いなおしてまた苦笑しつつ、絵里はあるお店の前で立ち止まる。

 

「ここは……アクセサリーショップね。」

「えりちはアクセサリーを買うのもありなんやない?アクセサリー作るの趣味なくらいやし。」

「それは考えたんだけど……」

 

絵里は考える。今回は自分でつけるわけでもないし、好みなどもアクセサリーはでるだろうしと考えると難しいかなと思っていたのだ。そんな絵里ににこが声をかける。

 

「いいんじゃない?私たちにあの人の好みとか分かんないんだもの。自分たちが得意な物とかこととかであの人に合うもの選べば。」

「自分の得意な分野で似合うと思う物……ね……」

 

にこに言われて少し考えてみる。普段はおそらくアクセサリーなんてつけないだろうから、あんまり目立たない物のほうがいいかしら。だとしたら……などど絵里の頭の中でイメージが固まってくる。

 

「そうね……。いいかもしれないわ。」

「じゃあ、うちも自分の分野で選んでみようかな!」

「希の得意分野って不安ね……。それなら私もこのにこにーの類まれなるオシャレの才能で……」

 

そう会話してアクセサリーショップに入って行く。どうやら方向性は決まりだ。相手のことがあまり分からないのなら自分たちの得意な物で相手に似合う物を。相手のことを思う気持ちは同じなのだからいいことだろう。このアクセサリーショップで絵里の買い物が済んだら、希の買い物。そして最後ににこの買い物のために服屋へ。簡単に行動予定を決めた3年生組は足取り軽く買い物を再開した。

 

 

 

 

 

「真姫ちゃ~ん!まだ~?」

「ちょっと待ちなさいよ……いいわ。」

「「わぁあ……!!」

 

試着室から出てきた真姫に凛と花陽が歓声をあげる。真姫の格好は男物の服装。さすがと言うべきか、完全に着こなす真姫は出てきてから少ししか経っていないが、恥ずかしそうにカーテンを閉める。

 

「も、もういいでしょ!なんで私がこんなこと……」

「ええ~真姫ちゃん、似合うのにー」

「うるさいわよ!」

「ま、まぁさすがにいつまでもお店の物着ててもいけないしね……」

 

心なしか残念そうな花陽の言葉には何も返さず、真姫は着替えを開始する。なんでこんなことになったのか。ため息をついて思い出す。原因は少し前。

 

 

 

「こういうのはどうかな?」

「でも、どれが好みか分かんないし……」

「ていうか、私たちじゃあそもそもどういうのがいいのかも分からないじゃない。」

 

適当になにかないかと歩き回っていた1年生組が発見したのはメンズファッションのフロア。自分たちではどういうのがいいのかも分からないし、自分たちには場違いだろう。そう考えて、真姫はすぐにその場を後にするつもりだったのだ。自分は買う物は大体決めてあるし、他の2人が決まってないのならばそこから行けばいい。

 

「似合いそうなの見てみればいいんじゃないかな?ほら、これとか!」

「確かに似合いそうだけど……」

「これって実際に着てみたらどんな感じなんだろう……凛、試着してみるね!!」

「ちょっと、凛!あなたが試着する意味ないじゃない……ってもうどんだけフットワーク軽いのよ……」

「あはは……多分、凛ちゃん楽しくなっちゃったんじゃないかな……」

「子供じゃないんだから、もう……」

 

しかし、気が付けば男物のジャケットやストールを手にして凛は試着室へ。今回は自分の買い物じゃないので試着に一切意味はないはずなのだが。だが試着室に入ってしまった以上、真姫と花陽にどうすることもできない。

 

「凛に任せて動くんじゃなかったわ……。次は私は買う物決めてるからとりあえずそこに行っていい?」

「う、うん。その後でいいから、私もすこし考えてきたし凛ちゃんが出てきたら……」

「じゃーん!!」

 

自分は決めているし後でいいかと考えたのが間違いだった。凛が適当に歩き回るのにまかせてはいられない。これからの予定を花陽と真姫が話し合っていると、元気な声と共に凛が試着室のカーテンを開ける。

 

「どう?どう?似合う?」

「凛ちゃん……すごく似合うけど……」

「凛、あなたが試着する意味ないでしょ。早く着替えて次のところに行くわよ。」

「ええ~!つまんないー!もっといろいろ着てみようよ~!!」

「ええ~じゃないの!早く着替えて!」

「ふにゃ!!」

 

可愛らしく整っている容姿の凛だし、似合わないわけではない。むしろ活発な印象を受ける凛に男性が着る服は似合っているくらいだ。しかし、感想もそこそこに真姫は駄々をこねる凛を無理やり試着室に押し込んで、カーテンを閉める。今回は時間がないのだ。こんなお遊びしている場合ではない。

 

「真姫ちゃんも着てみないの?」

「着てみないわよ。なんで私が……」

「あ~自信ないんだぁ~」

 

カーテンから顔だけ出して凛が言ってくる。本格的にただ面白いからという理由だけで遊び始めている。凛のそんな様子に真姫はため息をつきつつ返していたが最後の言葉に少し引っかかる。

 

「べ、別に。今は時間ないし……似合う自信がないとかじゃないわ。」

「ま、真姫ちゃん……?」

「でもでも、似合わなくても仕方ないと思うよ?凛だって男物の服まで真姫ちゃんが完璧に着こなせるとは思ってないもん。」

「そんなわけないでしょ!私ならどんな服でも着こなすわよ!」

「ま、真姫ちゃん?無理しなくても……っていうか凛ちゃんに乗せられてない……?」

「無理してないし!乗せられてないし!」

 

分かったわよ!そこまで言うなら着てあげるわよ!そう言って店内を探し回る真姫を悪戯っぽく笑ってみる凛。悪戯の時は特に頭の回転が速くなる凛のその表情は完全に悪戯を成功させたときの子供の顔である。花陽はおろおろして2人を交互に見る。

 

「ま、真姫ちゃん、早く他のところに買い物行かないと……」

「真姫ちゃーん!はっやくー!」

「分かってるわよ!」

「凛ちゃんも遊んでる場合じゃ……」

「かよちんは着ないの?」

「き、着れないよ!もう……だれかたすけて~!!!」

 

頼みの綱の真姫が凛の行動に乗せられた以上、花陽にこの2人を止めるすべはない。花陽がいつものセリフを言ってしまうのも仕方のないことだった。

 

 

というわけで、真姫が試着する羽目になったとうわけである。試着最中に冷静になった真姫は着替えが終わり、ため息をつく。自分の悪い癖だ。完全に凛に乗せられた。でも、これ以上時間を使うわけにもいかない。集合時間まで時間もないし、早く買い物をすませなくては。そう気持ちをなんとか切り替えて試着室から出る。

 

「凛、花陽。もう次のお店に……」

「真姫?」

「え……?」

 

聞こえるはずのない声に冷や汗が出る。今回の買い物をもっとも見られてはいけない人の声が聞こえなかったか。真姫は向かいの凛と花陽に目を向ける。彼女たちも完全に動揺してしまって、まずいというような表情を見せていた。ゆっくりと横を向く。

 

「あれ、凛と花陽も。なにやってんの、こんなところで。」

「た、鷹也くんこそ、こんなところでなにやってるにゃ……?」

 

 

 

 

 

『ことり!言ってたことと違うじゃない!』

「ご、ごめん~!えっとえっと…………あ、絵里ちゃーん!!」

 

真姫の電話にことりは焦って辺りを見まわす。とりあえずは自分の買い物を終えたところで、穂乃果と海未と分担された方の買い物を行っていたところだ。一緒に耳を澄ませていた穂乃果と海未もどうしようというような顔をしている。するとそこでちょうど絵里たち3年生組が通りがかった。慌てて事情を説明する。

 

「ったく。タイミング悪いわね……」

「でも、どうするん、えりち?」

「そうね……ここまで来てバレるのもね……」

 

少し考えてから絵里はことりから電話を受け取って真姫に話始める。後ろから凛と花陽が話している声が聞こえてくることから何とか誤魔化しているようだ。

 

「真姫?そっちの買い物は済んでるの?」

『え、えっと……それは……』

「今まで何してたのよ……」

『…………』

 

呆れる絵里に真姫はなにも言わない。謝るということが極端に苦手な彼女のことは分かっている絵里はまあ、いいわと言って考えを巡らす。どうせ凛に振り回されてたらなかなか買い物が進まなかったとかそのあたりだろう。

 

「真姫たちの担当の分はこっちで買っておくわ。だから、そっちは何とか誤魔化しつつ自分の買い物だけ何とかしてきて。後で穂乃果の家で合流しましょう。」

『何とかって……まあ、分かったわ。』

 

じゃ後でね。そう言って真姫からの通話が切れる。本当に大丈夫だろうかという視線を向けてくるメンバーに絵里は微笑みつつ言う。

 

「私たちが考えても仕方ないわ。真姫たちの分の買い物も早く済ませてしまいましょ。」

「そうですね。あちらには真姫もいますし、きっと大丈夫ですよ。」

 

海未もその言葉に賛成して言うと何とか6人は気持ちを切り替えて行動を開始。

 

「でも、あの凛ちゃんと緊張しいの花陽ちゃんが一緒なんよね?」

「やめて、希。ものすっごい不安になってきたわ……」

 

 

 

 

 

「こんなところでなにやってたの?ここメンズのフロアだろ?」

「え、え~っと……」

「そ、そう!凛たち、こういうところあんまり来ないし、なんとなく面白そうだし入ってみようかなぁ……なんて思ったりして……?」

「なんで疑問形……?」

 

凛たちの不自然な様子に違和感を覚えつつも、鷹也はとりあえずはそうかと納得しておく。するとそこで少し離れて電話していた真姫が電話を終えて戻ってくる。

 

「なんであなたがこんなところにいるのよ。」

「メンズのファッションフロア内においてそれを言われるべきはお前たちの方なんじゃ……」

「わ、私たちはいいのよ!」

「そんな横暴な……」

 

鷹也は少し釈然としない気持ちながらも、ここにいる経緯を説明する。別に大したことではない。書類の整理も終え、時間ができてなにかないかと考えていたらサークルできる練習着を最近新しくしようか迷っていたことを思い出したのだ。しばらく同じものをローテーションで着ているので、そろそろ違う物を着ようかと思っていたところだ。というわけでその練習着を買わないまでも見るためにこのショッピングモールに来て、どうせならといろいろと服を見ている最中だった。鷹也が通う大学には世間一般にもれず制服がないので私服もいくつか買い足しておきたかったので、どちらを買うか見定め中というわけだ。そう答えると3人はなぜか少し考え込む。

 

「練習着……鷹也くん、靴もあった方がいい?」

「え、ああそうだな。靴も買っておいて損はない……ってそんなに考え込んでどうした?」

「な、なんでもないわよ!」

「り、凛ちゃん……!!」

「にゃ……?あ!う、うん!なんでもないなんでもない!!」

 

様子のおかしい3人に首を傾げる。今日はどうかしたのだろうか。というかこの3人はことりと買い物に来ているんじゃ……そんなことを鷹也が考えていると3人はこちらに背を向けて一瞬会議。何かを決めたらしい。

 

「さ、さあ!鷹也くん、せっかく会ったし一緒に買い物するにゃ!!」

「そ、そうね!早くいきましょ!」

「おいそんなに押さなくても……」

「た、鷹也さんは何かほかに買う物ないんですか!?」

 

そう言って3人は鷹也の背中をぐいぐいと押し出す。3人のよく分からない行動に混乱しつつ、鷹也はもう大体の値段も見れたし、買うのは今度にしてあとは晩御飯の買い物でもして帰ろうとしていたことを告げる。

 

「っていうか、3人って今日はことりと買い物してたんじゃ……」

「ば、晩御飯の買い物行くなら家に近い方がいいよね!凛たちもちょうどそろそろ帰ろうとしてたし、一緒に4人で途中まで行こ!!」

「さっき買い物するって言ってなかった?」

「細かいこと気にしないの!行くわよ!」

 

結局3人の謎の行動に押されて、その行動の原因もよく分からないままに鷹也は晩御飯の買い物をいつもしているスーパーの近くで3人と別れるまで不自然な彼女らに翻弄され続けた。

 

 

 

 

 

 

「き、緊張したよ~……」

「なんかすっごい疲れたにゃ~……」

「なんで私がこんなこと……」

 

なんとか誤魔化した後、ショッピングモールに取って返し買い物を終えた3人は集合場所の穂乃果の家の玄関でへたり込む。そんな3人を見て出迎えに来た5人は苦笑い。

 

「お疲れ様。ばれなかったみたいね。」

「こっちまで緊張しちゃった……」

「はい、お団子食べる?」

 

絵里のねぎらいとことりのほっとしたような言葉を聞きながら、3人は穂乃果に差し出されたお団子を1本ずつ手に取って頬張る。

 

「で、買い物はちゃんとできたのですか?」

「んくっ……うん!ちゃんと買ってきたよ。」

 

海未の問いに、団子を飲み込んでからそう言って凛が手に持った袋を掲げる。きちんとラッピングされたその袋を見るにきちんと買えたようだ。真姫と花陽も同じようにラッピングされた物を持っている。

 

「ちょっと!明日は時間ないんだから今やること多いのよ!手伝いなさいよ!!」

「あらら、にこっち張り切ってるね~」

「にこちゃん料理となるとスイッチ入るみたいだもんね……」

 

今日は作業を終えた厨房を借りて料理をするにこの声に希と花陽が苦笑する。にこの料理の手際の良さはかなりのものであるし、その面倒見の良さからか率先していつも料理をしてくれるのだ。そのいつもの様子とは違うが、ある意味にこらしい面倒見のよさを感じつつ、8人はにこのもとに向かう。

 

「手伝いって言っても基本にこちゃんがやってくれるから何すればいいのやら……」

「真姫の家には専属のシェフがいるんだものね。なら……凛と穂乃果と部屋の飾りつけしてきてもらえるかしら?」

「その方がいいかもしれないわね。」

 

絵里の言葉にそう言って真姫は凛と穂乃果を呼び寄せて、穂乃果の部屋へと向かう。穂乃果に今日のうちに飾りつけしちゃってもいいのかと聞いて確認はとってある。にぎやかだしぜんぜんいいよとのことで全員が穂乃果らしいと感じたのは言うまでもない。

 

「遅い!絵里、希!それの盛り付けしておいて!それなら1日くらい冷蔵庫入れておけば大丈夫だから!」

「うわあ……にこちゃんすごい……」

 

そして厨房に入るときびきびと動き回て今日のうちにできる準備をしているにこの姿。たまに見るとはいえ、その手際の良さに一瞬あっけにとられつつ、慌てて5人も手伝いを開始する。

 

「ことり、ケーキ焼けてたわよ。」

「ほんと!?」

 

にこの言葉にことりはケーキの焼き具合を確かめる。どうやら完璧。後はクリームなどを盛り付けるだけである。今日のうちにクリームなどを盛り付けておいて、フルーツなどだけ後で乗せることにしよう。そう考えてケーキを取り出して準備を始める。

 

「うわあ……ことりちゃんもすごいね……!」

「ふふっ、ありがとう。かよちゃんも一緒に盛り付けする?」

「いいの!?」

 

頷くことりを見て、嬉しそうに花陽がクリームをケーキに塗りだす。そうして2人はケーキを、真姫と穂乃果と凛は部屋の飾りつけを、他の4人は料理の準備をしていてしばらく、ようやく作業が一段落して後は明日に回そうとなった時である。ことりがみんなにある提案をする。

 

「ダメかな?」

 

誰も反論するものはいない。最後にそれぞれその作業を終えて、9人はその日の作業を終えた。

 

 

 

 

 

「ただいま~!」

「おかえり、ことり。」

 

帰ってくることりにキッチンから鷹也は声をかける。今日もひな子は帰りが遅い日だと先ほど連絡が入ったために晩ご飯の支度中だ。材料を切りながら、鷹也は考える。今日はひな子はそんなに遅くまでかかるスケジュールは入っていなかったはずなのだが。

 

「あ、お兄ちゃん。手伝うよ?」

「大丈夫だよ。もうすぐできるから待ってて。」

 

手伝おうとすることりにそう言って笑顔を見せる。実際あと少しでできるので手伝うことなんてほとんどない。それでもことりはなにかしようと思ったのか、鷹也の手元を見て作っているものを判断していつも使っている皿を持ってくる。ずっとこうして料理をして手伝いもして生活しているのだ。これくらいは分かるのだろう。

 

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

「なあ、ことり。」

 

自分が使おうと思っていたものと完璧に同じ皿を持ってきたことりにお礼を言いつつ、微笑んでどういたしましてと言ったことりに話しかける。

 

「今日、1年生の3人と会ったんだけど買い物一緒に行ったんじゃなかったの?」

「い、行ったけど途中で違うところ回るからってばいばいしちゃった。なんで?」

「いや、なんかあの3人の様子が不自然だったからなんかあったのかと……」

「気のせいじゃないかな?」

「そんなこ……」

「気のせいじゃないかな?」

「………………」

 

確定。なにか隠している。ことりは隠し事が下手である。こんなにも動揺して、同じことを繰り返して強引に誤魔化そうとするのは隠し事を誤魔化すときのことりのくせだ。ただでさえわかりやすいのに、一緒に暮らす鷹也に分からないわけがない。だが

 

「まあ、気のせいか。」

 

そう言って鷹也は出来上がった料理を皿に盛り付け始める。ことりが隠したがっていることを無理に聞き出す必要もないだろう。朝の様子や、1年生組の様子、今日の練習が休みになったこと、休みにしてまで買い物にみんなで行っていること、理由もなく帰りの遅いひな子。ほとんど答えは出そろっているし、普段はこういったことに無関心で気づかない鷹也でもさすがに思い出すが、考えるのはやめておく。どうせ明日になったら分かるし、隠れて行動してくれているならそれを尊重しよう。

 

「さ、ご飯食べよ?」

「うんっ!」

「「いただきます。」」

 

今日のところは、誤魔化せたと思ってほっとして笑顔になることりが見れただけで良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

そしてついにその日の放課後。穂乃果の部屋にμ’s全員で集まり、準備を完全に終えて、後は主役の登場を待つだけ。落ち着かないようで穂乃果や凛はずっとそわそわしていて、先ほどから何度も海未や真姫にたしなめられていた。

 

「ことり。」

「絵里ちゃん?」

 

自分も内心そわそわしながら待っていると、そんな様子に気が付いたのか、話しかけてきた絵里に視線を向ける。

 

「喜んでくれるといいわね。」

「……うんっ!!」

 

微笑んで言ってくれる絵里に笑顔を見せる。今までは家族と、もしくは穂乃果や海未と一緒くらいの人数でいた。でも、今日は違う。

 

「あ、来たよ!」

 

窓から外をのぞいていた希がそう言って、みんなが耳を澄ます。下から雪穂の声が聞こえてきて階段を上がってくる足音。

 

「うう……なんか緊張してきたよぉ……」

「別に緊張することじゃないでしょ。ほら、ちゃんと笑いなさい。今日は、今日だけはいつもサポートしてくれるあの人がお客さんになる日でしょ。」

「にこちゃん……う、うん!そうだよね……!!」

 

緊張した様子の花陽はにこの言葉に笑顔になる。そう、今日はそういう日だ。いつも自分を、μ’s全員を支えてくれている彼に恩返しをする日。大切な彼を笑顔にする日。足音が2階にたどり着き、穂乃果の部屋の前に立つ。みんなでアイコンタクト。

 

「みんな?今日はなんでまたここで……うわっ!」

 

みんなでクラッカーを鳴らして入ってきた彼を歓迎する。大きな音にびっくりしたのか。きょとんとしながらきれいに装飾された部屋を見渡す彼にことりはケーキを持って近づく。その大きなホールのケーキにはチョコレートの板が9枚円状に並んでいて。そして中央に大きくもう1枚。円状に並んだ9枚のチョコにはそれぞれ文字が書かれている。

 

『これからも一緒に頑張っていこうね!!』

『これからも私たちを支えてくださいね。私たちもあなたを支えられるよう頑張ります。』

『ずっとずっと見守っててね!これからもよろしくね!』

『まだまだ頑張るので私たちをずっと見ててくれたら嬉しいです。』

『これからも一緒にいっぱいいっぱい楽しむにゃー!!』

『これからもサポートお願いね。少しは期待してるわ』

『にっこにっこにー!笑顔届けるケーキだよ!これからもよろしくね!』

『これからもサポート頼むわね。一緒に頑張っていきましょ!』

『スピリチュアルパワーがたっぷりつまったケーキ!これ食べて一緒に頑張ろ!』

 

チョコ1枚1枚は小さいし、みんな思ってることを書ききれたわけではないだろう。いつも通り素直でない物やキャラを作っている彼女たちらしいものも何枚かあるし。でも、それなら言葉に気持ちを乗せよう。大切な彼に、全員の気持ちを込めて。真ん中のチョコに書いてある言葉を笑顔で彼に告げる。

 

「HAPPY BIRTHDAY! お兄ちゃんっ!!」

 

 

 

 

 

「すごいな、これ……」

「えへへ……びっくりした?」

「まあね……」

 

鷹也はきれいに飾り付けられた穂乃果の部屋を見渡してそう言う。感づいていたとはいえ、まさかここまでとは。すでにみんなが思い思いに料理に手を付けている。そんなに広くない部屋だが、真ん中にあったテーブルをどかして床に敷物をして料理を置くことでスペースを確保したらしい。それでも10人で入るには少々手狭だが、まあ許容範囲だろう。

 

「これも手作りなんだろ?」

「うん、にこちゃんがほとんど作ってくれたんだ。」

 

そうなのかと感心してにこを見ると、照れ臭かったのかにこはこれくらいなんてことないわよとそっぽを向いて飲み物を口にする。そんなにこに苦笑しつつ、鷹也は先ほどみんなから渡された包みを見る。きれいにラッピングされた9個の包み。

 

「開けてもいいの?」

「別に好きにしたらいいんじゃない?」

 

真姫にそう言われ、鷹也はそれぞれの包みを開けてみる。出てきたのはネックレス、パワーストーンの置物、男物の時計、イヤホンと音楽プレイヤー、小さいミニ観葉植物、ダンスの練習に使えそうな靴、練習着に使えそうなTシャツとリストバンド、大きなぬいぐるみが2つ。

 

「なんか大体どれが誰のプレゼントか分かるんだけど……」

 

そう言いつつ、2つのぬいぐるみの中でヒヨコの方を抱きかかえる。ちなみにもう一方はよく分からない丸っこい生き物のぬいぐるみだがこれは穂乃果の家にある物と同じものの色違いなので十中八九穂乃果だろう。もう1つのこれはことりかとも思ったが、練習着とセットのリストバンドは手作りのようなのでことりのプレゼントはこれだろう。それならだれがと見まわすと恥ずかしそうに手を上げる人物が1人。確かに、ネックレスが絵里、パワーストーンが希、時計はオシャレに気を使いそうなにこ、音楽プレイヤーは真姫、観葉植物は花陽、靴は昨日の会話から考えて凛とするとそうなるが……。

 

「海未……?」

「ち、違うんです!穂乃果たちに釣られてそういうお店ばかり回っていたら、このぬいぐるみの心地よさしか思いつかなくなってしまって………!!」

 

慌てて弁解する海未を意外に思って見る。他のメンバーも知らなかったのか、同じような視線を海未に向けている。鷹也も海未ではないとばかり思っていたのだが。そんな視線を勘違いしたのか、海未がうつむきながら言う。

 

「そ、そうですよね。鷹也くんにはこれは使いようが……」

「ふっ……」

「え?」

 

落ち込んでしまい、鷹也の呼び方も無意識だろうが変わってしまっていたのにすぐにきょとんとした様子になる海未についに鷹也は吹き出す。そしてヒヨコの人形をぎゅっと抱きしめて満面の笑みで言った。

 

「嬉しいよ、ありがとう。」

 

こんなプレゼントを海未からもらうことももうないだろう。それだけで今日は一生忘れられない日になる。

 

「みんなもほんとに嬉しい。ありがとう!」

 

そして全員を見まわして笑顔になる。手作りの料理も、飾り付けられた部屋も、プレゼントも、短いながらも誰が書いたかなんとなく分かるチョコののったケーキも、全部がとても嬉しい。だから、再度ここで言っておこう。

 

「みんなのサポートはしっかりしてやる。応援してやる。見ててやる。だから、これからも」

 

こんなことまでしてくれるこの9人。隠れて驚かせようとしてくれて、楽しませようとしてくれる。自分はこんな9人をこれからも見守り続けたい。

 

「これからも頑張っていこうな。」

 

元気よく返事をする9人を見まわして笑顔になる。本当に最高の1日だ。こんな1日をくれる彼女たちを自分はいつまでも支え続けよう。まだまだこれから彼女たちは大きくなるのだから。

 

 

 




いかがだったでしょうか?
今回はこの話にするか前回の番外編のように別の未来としてのIFストーリーを書くか迷ったのですが、こちらの方がうまく書けそうだったのでこちらになりました。他にもいくつか案はありますので、他の案はまた別の機会に……

番外編ということである程度悩みつつも好き勝手に書きました。
キャラ崩壊はあまり感じませんでしたが、この子はこんなこと言わない!というようなこと感じる方がいましたら申し訳ありません。

気が付けば大幅にお気に入り、評価、感想、UAが増えており、作者はとても嬉しくて喜びをどう表現すればいいか分からないくらいです。
日間ランキングにものせていただき、読んでくださってる方ほんとうにありがとうございます!
感想、評価、お気に入り登録していただければ更新の励みにもなりますのでできればよろしくお願いします。

ではこんな文章力ですが、これからもがんばるのでよろしくお願いします!

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