小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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前回は番外編だったので本編も早めに更新しようと思って頑張りました……

にこのあのまっすぐな想いは本当にすごいものだと思います。
あんなに夢中に頑張れるものを曲げずに持っているのはすごいことだと思うんです。

そんなにこの加入回。
上手く表現できたかは分かりませんがどうぞご覧ください!

改稿:真姫が名前呼びすると言ったのはメンバーのことなので鷹也はまだ西木野さん呼びに修正。鷹也はあくまでサポート。メンバーではなく一歩引いた位置でいるからという考えが彼にあるのでこの時点ではまだこの呼び方です。


その想いが求めたもの

にことの遭遇があったその日の夜。鷹也は理事長であるひな子との話し合いをしていた。すでにことりは部屋で寝ている。

 

「俺が直接学校に?」

「そう。今日送られてきた修正の書類を会議で話し合ってみたわ。まだスクールアイドル活動は学校としては認可していないけども、スクールアイドル活動をしようとしてる生徒がいることは有名なのよ。」

 

頑張ってるみたいだし、学校側としても認可されさえすればそのくらいの支援ならいいという判断です。と言ってひな子は微笑む。どうやら学校内にもμ’sの活動は影響を与え始めているらしい。彼女らの頑張りが目に見える形で出てきているようで鷹也は嬉しくなる。

 

「だから、支援するなら早めに始めるためにもその準備段階は進めておいて損はないという判断に賛成することにしたの。日付は明後日。忙しい中で先生方も時間をとってくれるらしいから失礼のないようにね。」

「明後日とはまた早く判断してくれたね……。分かった、詳細な時間とか場所は?」

 

鷹也はひな子の説明を聞きながら思う。まさかここまで早く進むとは思っていなかった。それだけ廃校の危機が切羽詰まっているということだろうか。

 

「りょーかい。じゃあ、明後日に音ノ木坂学院に行くよ。」

「お願いね。ねぇ、鷹也……」

 

説明を簡単にメモ書きして頷く鷹也にひな子が心配そうな目で話しかける。心配されるようなことがあっただろうかと思いながら鷹也はなに?と首を傾げる。

 

「無理してない?」

「無理?」

 

ひな子の言葉にさらに首を傾げる。これは自分の好きでやっていることだし、ひな子もそれは分かってる。だからこそことりやμ’sのことをお願いされたのだろうし。

 

「ええ。最近、いつにもまして周りのためにだけ動くことが多くなってる気がするわ。別に鷹也がそこまでする必要は……」

「母さん。」

 

鷹也はひな子の言いたいことが分かってその言葉を遮る。確かにそうだ。ことりたちがスクールアイドルを始めてからというもの、鷹也が音ノ木坂学院の存続に関わる頻度は圧倒的に増えた。理事長のひな子の手伝いも理事長が忙しくなるにつれて増えている。だからこそ言いたいのだろう。鷹也には音ノ木坂学院が廃校しようが関係ないのではないか。私たちのために忙しくなって無理してまで手伝わなくてもいいのだと。でも、

 

「俺がやりたくてやってるんだよ?」

 

そう鷹也はこれを辛いと思ったことも、苦しいと思ったこともない。鷹也にとってこの行動は自分の本質からくるものだ。これを否定してしまったら鷹也のあり方が根本から歪んでしまう。

 

「だから気にしないで。」

 

そう言って鷹也は微笑む。一切の影も違和感も感じられないはずの微笑み。しかし、心配そうなひな子の目は変わらず、返事が返されることはなかった。

 

 

 

 

 

次の日。鷹也は放課後にことりたちにファーストフード店に呼び出された。部活申請が通ったからお祝いとでも言い出すのかと思ったが、彼女たちのことだ。穂乃果ならばやる気が刺激されてさっそく空き教室で練習しようと言い出し、それにみんなが賛成するくらいのことをしそうなものだ。

 

(ならどうしたんだろうなぁ……)

 

鷹也は雨の中を歩いてファーストフード店へと向かう。雨ばっかで嫌になるなぁと考えながら歩き、店の中に入るとすぐに彼女たちは見つかった。

 

「お兄ちゃん、ごめんね?急に呼び出しちゃって……」

「いいよ、別に。で、どうしたんだ?」

 

申し訳なさそうに言うことりに大丈夫と言いつつ、話を聞く。すると珍しく穂乃果も凛も静かにしている中、海未が説明をしてくれた。

 

「アイドル活動部の申請が却下されたんです。」

「え?なんで?」

 

海未の言葉に鷹也は驚いて聞き返す。どうりで穂乃果も凛も静かにしているわけだ。学校に認可されないとなると空き教室も使えない。真剣な話し合いと思って黙っているのだろう。体を動かしたくてたまらないタイプの彼女たちにとっては本当に重要な問題だろうし。しかし、そうだろうとは思っていたが、実際に聞くとやはり不思議だ。人数的には問題は無いし、活動内容も申請が却下されるほど訳が分からないものでもないだろう。他になんの原因があって却下されたのか。

 

「他にアイドル研究部という部活があるようで……」

「ああ、限られた財源で重複する内容の部活に部費を出す余裕はないってことか……」

 

最後まで聞かずに鷹也は察する。その可能性は考えていなかった。充分ありえる可能性だったのに。それならどうするんだ?と続きを促すと海未は歯切れ悪く続ける。

 

「申請を通して欲しかったらアイドル研究部さんと話をつけてくることって副会長に言われたのですが……」

「ぜんっぜん話聞いてくれなかったよ〜」

「あんなにすごいコレクション……もっと話したかった……!!」

 

海未に続けて凛と花陽がテーブルにつっぷしながら言う。なんとなく花陽が悔しがってる部分がずれてる気もするが。アイドル研究部としても部の存続がかかっているようなものだ。簡単には譲れないだろう。だが少し引っかかる。

 

(希がけしかけた……?)

 

考えすぎかもしれない。ただ彼女たちの手助けをしただけかもしれない。だが、これまでの希との関わりで彼女の行動に見通せない何か意味があるような。鷹也はそんな気がしていた。

 

「にこ先輩、なんかうまくいきそうな気がするんだけど……」

「穂乃果、なんて言った?」

「え?うまくいきそうな気がするんだけど……」

「そこじゃない。もうちょい前。」

「にこ先輩?」

「そういうことか……」

 

どうかしたの?と首を傾げる穂乃果になんでもないと言いつつ、詳しい話を聞く。希が彼女らをアイドル研究部にけしかけた意味が鷹也は分かった気がしたのだ。そこから途中他の5人の補足を混じえながら聞いた穂乃果の話をまとめるとこうなる。

 

 

アイドル研究部はたった1人の部活。そのただ1人の部員、部長が矢澤にこである。

話し合おうと今日の放課後に申請を却下された後すぐにその部室に向かった穂乃果たちだったが、アイドルとしてのキャラ付け、心構えが足りていないとにこに言われて追い出されてしまう。

その後、希が声をかけてきてにこの話をしてくれた。彼女が前までスクールアイドル活動を行っていたこと。その理想が高すぎて、気持ちが、想いが強すぎて誰もついてきてくれなかったこと。それから1人でアイドル研究部として部室にこもっていること。

 

 

「そっか……」

 

鷹也はあのにこのファミレスでの言葉の続きが分かったような気がした。そして希の思惑も同時に理解した。

 

(だからあの時は会わせなかったのか……)

 

最初に朝練でにこが解散を迫ってきた時、あの時に鷹也がにこを捕まえていたら警戒してしまって今日穂乃果たちがにこに話を聞けるチャンスはなくなっていたかもしれない。それは穂乃果たちもにこをよくは思わないようになってしまう危険があるということ。このタイミングで、アイドル研究部との話し合いというこのタイミングでにこと話し、希から穂乃果たちが話を聞けたからこそ穂乃果たちはにことうまく話し合えないかと考えることができている。

 

「ねえ、西木野さん。」

「なによ?」

「1人でいるのはつらいよな?」

「はぁ?」

 

この中では1番にこの気持ちが分かるのではないかと鷹也が思う真姫に聞く。真姫も音楽に強い想いはあったがその才能、性格で周りに溶け込めずに1人でいた。にこだって同じだ。アイドルに関して思い入れは人一倍。それこそ花陽と同じかそれ以上ではないか。自分もアイドルとして輝きたい。その想いが、その想いをもって頑張れるという才能が彼女を1人にした。怪訝な顔をする真姫だったが、鷹也の表情を見て渋々答える。

 

「絶対に辛いとは言い切れないわよ。でも……私は今の方が楽しいわ。」

「真姫ちゃん……!」

「真姫ちゃーん!!」

「凛!いちいち抱き付かないで!もう!」

 

真姫の言葉に感動したように花陽と凛が笑顔になる。そうだろう。真姫に会ってからまだ少ししか経っていない。でも、確実にμ’sに入った後の方が笑顔の彼女を見る回数は増えた。それならば

 

「じゃあ決まりだな。」

 

そう言って穂乃果とことりを見る。どうやら2人はすぐに理解したようだ。小さいころ、同じような子供がいたのだ。仲間に入りたいのに素直に言えなくて物陰からこっそりと覗いている子が。解散しろとまで言うにこはずっと穂乃果たちを物陰から見ていたのだろう。なんてことない。小さい子と同じだ。ただ羨ましかったのだろう。みんなでいることが羨ましかったのだ。

 

『でもアイドルとしての気持ちが、想いが足りてないのよ。それなら私のほうが、私だって……』

 

この言葉に続く言葉はこうだったのではないか。『私だってアイドルをやりたい』。

 

「今回は俺は西木野さんの時みたいに手助けできない。大丈夫?」

「まっかせて!」

「うん、大丈夫!」

 

穂乃果とことりに合わせて、他の4人も頷く。方向性は決まった。ならば今回は彼女たちに任せよう。上手くいけばμ’sが学校公認となるはずだ。

 

 

 

 

 

次の日、にこはいつも通りの授業を受けて1人で部室に向かう。1人ぼっち。もう慣れたものだ。ふと目が1つのポスターに止まってつい立ち止まる。自分が目指していたもの。そこに進んでいっている少女たちのポスター。

 

「今日なんか食べてかない?」

「いいねー!」

 

そんな声が後ろから聞こえてくる。羨ましい。そう思った時もあるが、もうなんともない。私の想いはみんなとは違った。誰もついて来てくれないのなら仕方ない。でも、自分の気持ちを曲げるくらいなら1人でいい。そう思っていた。でも、とポスターの前でうつむく。

 

(でももし……曲げずに済むことがあれば……)

 

『あいつらだって遊びでやってるわけじゃないと思うけど?そう見えちゃうかもしれないけど、真剣に取り組んでると思う。』

 

(……なによ、前にもそんな子たちはいたけどみんな結局やめていった。なら……)

 

最初から期待するだけ損じゃない。小さくつぶやいて、立ち止まっていた足を動かして部室に向かう。彼女たちならあるいはと思わないこともない。あのライブは悔しいけどいいものだったし、その後の言葉には自分の想いと同じだけのものを感じた。だけど、

 

(だけど……期待するのは、期待して傷つくのはもう……嫌なのよ……)

 

最初から期待して自分から近づいていって裏切られるくらいならば期待なんてしない。所詮誰も本気でアイドルをやろうなんて思っていないのだ。どうせあの子たちも。ならばこんな期待にすがるだけ無駄だ。そこまで考えて部室のドアを開ける。いつも通りに誰もいなくて真っ暗な部室。そのはずだった。

 

「「「「「「お疲れ様でーす!!!」」」」」」

「え……?」

 

不意に電気が点き、明るくなる室内で微笑むのは自分が憧れたものに、アイドルになろうとしている6人。自分が期待しそうになってしまう6人。彼女たちは口々に話しかけてくる。

 

「部長!新曲のことなんですが!」

「部長!予算の計算しておきましたっ!」

「部長!パート分けのことなんですが……」

「な、なによ!いきなり……!」

 

つめ寄ってくる2年生組にうろたえる自分を無視して話は進む。

 

「部長~ここの物、邪魔だったんで片付けときました!」

「何勝手に……」

「き、曲作りの参考にしたいから部長のおすすめ貸してくれない?」

「それならこの『伝説のアイドル伝説』通称伝・伝・伝を……!!」

「だからそれは保存用で……!!」

 

もう何が何だかわからない。とりあえずにこは深呼吸して落ち着くことにする。落ち着け、彼女たちは自分の部活を何とかしなくては活動ができないのだ。こんなことで押し切ろうとしているのだろうが押し切られてはいけない。押し切られたらダメなのだ。

 

「……なに企んでるの?」

「なんにも企んでないですよ?」

 

にこは軽く睨みつけながらそう聞くも、穂乃果はそんなのなんてことないようで笑顔を見せる。

 

「私たちはただ相談したいだけです。アイドル研究部の部長、にこ先輩もいれたμ’sの7人の新曲について。」

「7人の……」

 

その言葉に一瞬息がつまる。ダメだ。もう期待しないと、期待して傷つくことはしたくない。この子たちが本当に自分と同じだけ真剣にやってくれる保証なんてどこにも……

 

「私たちは本気です。」

「っ……!!」

 

真剣な声で告げられた海未の言葉に、つい反応して視線を向けてしまう。

 

「にこ先輩みたいにアイドルに詳しくないし、アイドルとしてまだまだなのは分かってます。」

 

続いて言うことりに視線を移す。彼女の表情も真剣で。ダメだ、そんな顔で、声で、

 

「でも頑張るって決めたんです。一生懸命、全力で、どんなに苦しくても頑張るって決めたんです!」

 

穂乃果が一歩にこに近づいて来て、その後ろに5人が並ぶ。やめて。そんなにみんな真剣な表情で、気持ちをぶつけられたら

 

「だから……」

「「「「「「にこ先輩、よろしくお願いします!!」」」」」」

「…………」

 

そんなに本気な気持ちがあるってことをぶつけられたら……

 

「……厳しいわよ?」

 

また期待してしまうじゃないか。この少女たちなら、自分の想いと一緒の、同等の想いを持っていると。

 

「「「「「「はい!!!!」」」」」」

 

元気よく返事をする6人を見る。信じていいのだろうか。期待していいのだろうか。自分は諦めなくていいのだろうか。

 

(アイドルになりたい……!!)

 

そんな自分の夢を。

 

 

 

 

 

「……というわけで、ボランティアという形をとらせていただくために費用の問題はありません。男性と言う点を考慮して、毎回活動のサポートを行った際にはその内容を書類として提出。スクールアイドルのメンバーの少女たちにも一定周期で指導内容に不満や間違いがないかのアンケートを実施などの措置を取らせていただきます。この内容で、もしスクールアイドル活動が部活として認可された場合の校内でのサポート、指導を行わせていただきます。よろしいでしょうか。」

 

そこまで一気に言って辺りを見渡す。どうやらどの先生にも反論はないらしい。鷹也が心の中で安堵の息をつくと進行をしていた先生が今回の会議の終了を告げて、各自の仕事に戻って行く。

 

「ふぅ…………」

「お疲れ様。よかったわね?」

 

緊張から解放されて、今度こそ本当に息をつくと1番上座の机で、つまり鷹也と真向いで話を聞いていたひな子が声をかけてくる。鷹也は笑顔を見せて言う。

 

「母さんが賛成してくれたからだよ。ありがとう。」

「別に反論すべき点はなかったもの。鷹也がしっかり案をまとめてきてくれたからよ。」

 

そう言ってくれるが、理事長である母の賛成は大きかったであろう。スクールアイドル活動のサポートとはいえ男性を女子校に入れることには抵抗があってもおかしくない。普通はこんなにスムーズにいかないはずだ。

 

「ううん、いろいろ許可取らなきゃいけないから、そのための書類の確認とか提出とか忙しいのに手伝ってくれたし。本当にありがとう。」

「いいわよ。気にしないで。」

 

じゃあ、理事長室でこれから使えるように入校許可証を渡すからついてきて。そう言うひな子についていって理事長室へと向おうと会議室からでる。するとそこで見たことのある人物と遭遇した。

 

「あら、絢瀬さん。」

「理事長、お疲れ様です。」

 

生徒会長の絢瀬絵里がそこにいた。なにやらすこし不満気な表情で手元に2枚の紙を持っている。そこで鷹也に気が付いたのか、何でここにいるのか分からないからか不思議そうな表情になって鷹也にも1礼。鷹也も軽く頭を下げる。

 

「それで絢瀬さん、誰か先生に用事?」

「あ、はい。新しく部活の申請が通ったので担当の先生に報告をと思いまして……」

 

ひな子と鷹也は顔を見合わせる。このタイミングでの申請と言えば心当たりが1つ。そんな様子で絵里も察したのだろう。苦々し気に口を開く。

 

「アイドル研究部。これからは7人となってスクールアイドル活動を行っていくこととなったようです。」

「母さん、ちょっと行ってくる!」

 

聞いた瞬間、鷹也は駆け出す。絵里のことも気にはなるが、今は彼女たちが先決だ。彼女たちが申請を通したのならそれは大きな一歩。練習してるとしたら屋上だろうか。窓の外に走りながら目をやる。最近降り続いていた雨はもうやんでいた。

 

 

 

 

 

「あらあら……入校許可証は持ってるし、今回は多めに見ようかしらね。」

「理事長。」

 

走り去る鷹也を見送りながら微笑むひな子に絵里が声をかける。その表情は厳し気に、引き締められていて。そんなにいつもきつめの表情をしていなかったら本当にきれいな子なのにと思い、そんな表情をさせているのは理事長である自分も原因かとひな子は申し訳なく思う。そんなひな子の様子に気づかず、絵里は続ける。

 

「南さんはなぜこの学校にいたんですか。」

「ああそれは、これからスクールアイドル活動をサポートするということで学校側からも協力を許可したからよ。」

「スクールアイドル活動のサポート……ですか?」

 

絵里は聞いて一瞬顔をゆがめる。賢い子であるし、この説明だけで気が付いているだろう。この学校はスクールアイドルに期待し始めている。そのことはこれまでがんばろうともがいてきた彼女にとってどれほど残酷なことなのだろうか。ひな子はそう思うが口を開く。

 

「ええ、ボランティアとしてのものだし、問題に対するリスクマネジメントも充分でした。学校側としてもデメリットはないという判断よ。」

「なんで……なんで理事長はあの子たちばかり……なら、生徒会だって独自に……!!」

「絢瀬さん。」

 

つい感情的になりかけたのだろう。声が大きくなりそうになった絵里に声をかけて止める。すみませんとうつむく絵里はなぜだろう。ひな子にはとても弱弱しく見えた。

 

「絢瀬さん、あなたがこの学校のことを本当に思ってくれてることは知っているわ。」

 

だからこそひな子はその顔をのぞき込んで言う。このままではダメなのだ。この少女はこのままではなにか大切なものを見つけられない。

 

「でもね……そんなにつらそうな顔の生徒に理事長である私がこれ以上の重荷を許可するわけにはいかないの。」

「重荷だなんて……」

「私にはそう見える。周りにも心配してる子はいるんじゃない?」

 

優し気なひな子の言葉に返事はなし。絵里は失礼しますと言うと、ひな子の横を通り抜けて職員室に向かっていってしまう。その通りすがりに見えた表情。そのつらそうな表情を見てひな子は思う。いつも一緒にいる副会長でもことりたちでもいい。自分が口を出すのではだめだろう。限界に見えたらさすがに口を出すが、それはまだだ。そういうことは近い立場の人が言うから心に響くのだから。だから

 

(あの子をあの苦し気な状況から救ってあげてね……)

 

 

 

 

 

「にっこにっこにー!!はい!!」

「「「「「「にっこにっこにー!!」」」」」」

 

屋上から聞こえてくるのは1人増えたメンバーの声。どうやら上手くいったようで鷹也は笑顔を見せる。そして、屋上に続くドアを開けた。

 

「みんな!」

「お兄ちゃん!?」

「鷹也さん、なんでここに……?」

 

驚くみんなをまあまあと笑顔で誤魔化しながらにこを見る。視線をそらす彼女はまだ自分に苦手意識を持っているらしい。まあ、脅しのようなことをしたのだ。当然と言えば当然か。

 

「アイドルやるって気持ちが足りてないから解散させるんじゃなかった?」

「し、仕方ないでしょ!やめる気ないみたいだし……。それなら私がしっかり指導することにしたのよ!」

 

文句ある!?とにらみつけてくるにこに、ないないと苦笑しながら言う。どうやら完全にμ’sに入る気になっているらしい。ならば一応言っておかなくては。これまで1人でいた彼女は不安だろうから。1人は普通の感覚ならばつらいはずだから。

 

「こいつらなら大丈夫。おんなじくらい強い想いを持ってるし、期待して、信じて大丈夫。誰もついていけなくなったりしないよ。」

「……!!ふ、ふんっ!そんなことわかってるわよ!今更逃げようなんて許さないんだから!」

 

そっぽを向くにこは目元に涙がたまっているように見えた。やはり、自分もアイドルをやりたかったのだろう。ようやく見つけたのだ。自分と同じくらいの想いを持って一緒に歩ける人たちを。鷹也がにこに微笑むとにこは目元を拭って鷹也をにらみつける。

 

「っていうかなんであんたがこんなところにいるのよ。まさか不法侵入じゃないでしょうね?」

「ええ……!鷹也さん、それ犯罪ですよ……!?」

「そうだよ!なんで鷹也くんがここにいるの?」

 

にことの会話が一段落し、またもやみんなの視線が鷹也に向く。真姫やにこなんて若干不審者を見る目付きになっている。犯罪者扱いされるのも困るので鷹也はそんなみんなを落ち着けてから告げる。自分勝手に決めたことだが、約束したのだから仕方ないだろう。見守ると、サポートすると決めたのだから。約束したのだから。

 

「これから音ノ木坂学院アイドル研究部の外部からのコーチというポジションで学校での練習もサポートすることになりました。よろしくな。」

「「「「「「「えーーーー!!!」」」」」」」

 

驚く7人に鷹也はもう1度、今度はいたずらっぽい笑みを見せた。

 

 




いかがだったでしょうか。
鷹也のこの設定は少し無理がある気がして、使うのを迷いましたが学校という性質上こうして関わらせるのが1番かと思ってこの設定で押し通しました。

現実じゃ女子校にサポートとして入って行くことなんてできるのかは分かりませんがまあ、そこは二次元の小説ということでご容赦を。

お気に入り、UAどちらもどんどん増えてて本当に嬉しいです。ありがとうございます!
これからも感想、評価なども含めてお待ちしています。

それでは次回もまたよろしくお願いします。
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