小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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少し更新が遅れました。すみません……
ストックしつつ書いてるわけでもないのでこのようなことがこれからもあるかもしれませんがご了承ください。

今回はアニメの6話の話。ここはアレンジを加えづらかったのでそこに関してはあまり自信はないです
あと絵里が鷹也と話す際の敬語。なんかイメージがわきづらくて難しいです……

ですが、ようやく絵里の心情もきっちり書き始められそうなので楽しく書けています。

ではご覧ください!


μ’sの中心

「取材?」

「うん。ちょっとした生徒会の活動でね。学校にある部活の紹介動画を撮ってるんよ。」

 

にことの騒動があった次の日。今日も大学の授業を終えて、音ノ木坂学院へ行く。こんな時、遊びみたいなサークルは休んでも何も言われないから楽だな、と大学のサークルの緩さに感謝しつつ、音ノ木坂学院校内に入ると中庭でなにかやっている2年生組と凛、そして希を発見した。そして、何をしているのかと1番近くにいた希に聞くとそんな答えが返ってきたのだ。希はちょうど良かった。と言いながら、なぜかカメラマンを務めている凛に指示を出して鷹也のことをカメラに映し始める。その時点で鷹也は把握。ため息をつきながら希に確認をとる。

 

「で、俺にも話を聞きたいわけ。」

「学校内で教師でもない男の人を見ることなんてほとんどないし、みんな気になってるんよ。だから、ダメもととはいえ一応お願いはしとかないとって思って。」

「鷹也さん、笑って笑って〜!」

 

希の説明を聞いて納得する。確かに見知らぬ男性が女子校の校内を歩いていたら注目を集めるだろう。だが、

 

「星空さん、やめて。」

「え〜なんでですか〜!」

「矢澤さんが言ってただろ。俺はあんまり前に出ない方がいいの。」

 

というわけだ。カメラを手で遮りながら鷹也は凛を止める。自分が関わるのは最低限の部分だけで紹介動画に映るのも最低限のみ。サポートするだけの立場なのだから裏方に徹するべきだ。練習の際にはアドバイスも兼ねている部分もあるし、最低限はうつることになるだろうがそこだけだ。それ以外はできるだけ映らないようにしなくては。

 

「つまんないの〜……」

「そんなこと言われても……。ほら、それよりちゃんとメンバーのこと映しなよ。」

「そうだった!じゃあ次は……海未先輩!」

「わ、私ですか!?」

 

言われてあたふたする海未とそれを面白がっている穂乃果、苦笑いすることりを眺めながら、鷹也は希に声をかける。まず、一応このグループの外部コーチという立場でサポートをしているのだ。自分がとりあえず話を把握しなくては。

 

「この取材って強制なのか?μ’sのメンバーが普通に取材受けるとは思えないんだけど……」

「そう?意外とノリノリの子もいるようやけど?」

 

首を傾げる希の視線を海未の方に誘導してやる。そこには

 

「い、嫌です!取材なんか受ける必要ないはずです!練習時間の無駄です!」

「え〜!でも、面白そうじゃないですか?」

「い・や・で・す!」

 

断固拒否の姿勢を貫く海未と面白いからという理由からだろうが取材を続行しようとする凛の姿。ほらな?という風に希に視線を向ければ希も苦笑い。

 

「確かに難しそうやね……」

「嫌がるメンバーに強制する訳にもいかないし、こちらにメリットがないなら取材は中止してもらいたいかな。」

「鷹也さん……!!」

「えー!そんなのつまんないにゃー!」

 

庇ってもらったと思って嬉しそうな海未と頬を膨らます凛。だが、まだ絶対に止めるとは言っていない。どうせ希のことだ。こちらがそう言い出すだろうと思ってなにかメリットを用意しているはず。それは予想通りだったようで、

 

「メリットならあるよ?撮影に協力してくれたらしばらくカメラを貸してあげるし、紹介動画とはいえμ’sのPRには取材はもってこいやと思うけど。」

「んー……」

 

カメラを貸してもらえる。それは魅力的ではある。ファーストライブの動画、新メンバーの加入と最初の段階としては完璧なスタートダッシュはきれている。それならばそろそろ新曲を作り、PVをサイトにアップしてその勢いをそのまま持続させたいところだ。そのPVを撮るためのカメラ。それが必要なのだが、ここで手に入るというのならそれはありがたい。そこまで考えて頷く。

 

「よし、それならいいか。」

「鷹也さん……」

「やったー!!」

 

絶望的な表情を浮かべる海未と両手をあげて喜ぶ凛に苦笑いしながら、鷹也は穂乃果とことりに声をかける。

 

「穂乃果、ことり、他の子たちも呼んできて。アイドルっぽいだろ。取材って。」

「アイドルっぽい……!!行こう!ことりちゃん!」

「あ、穂乃果ちゃーん!待ってー!!」

 

そう言って駆けていく2人を見送っていると、横から視線を感じて顔を向ける。そこにはジト目でこちらをにらむ海未。

 

「鷹也さんの考えは分かりますが……カメラなら自分たちで用意すればいいじゃないですか。」

 

しっかりと理由も考えながら反論してくるところが海未らしいなと感じつつ、鷹也は笑って言う。

 

「それだけじゃない。海未だっていつまでも恥ずかしがり屋のままでもいられないだろ?緊張しやすいメンバーの特訓の意味も兼ねてるんだよ。」

「別にそこまでする必要は……」

「ないとは言い切れないだろ。明らかにこの子よりは緊張しやすいだろうし。」

 

そう言って凛に視線を向ける。そこではカメラの使い方を詳しく希から教えてもらい、カメラを構えていろいろと遊んでいる凛の姿。彼女は鷹也と海未が見ていることに気が付くと、不思議そうに首を傾げる。

 

「見てみろ。自分も取材受けなきゃいけないこと分かってんのか不安になるくらいじゃんか。」

「ほんとですね……」

「まあ、あそこまではいかなくてもいいけど、少しは人前に出ることに慣れなくちゃな。海未しかり花陽しかり。」

 

そう言ってやると少しは納得したのか、複雑な表情ながらもとりあえず分かりましたと海未は頷く。そんな海未に校内の取材程度だし気楽になと声をかけつつ、希に視線を向ける。海未には言わなかったが、もう1つ、受けるメリットはある。生徒会に貸しを作っておく。今回はカメラの報酬もあるし、大した貸しにはならないがこのような小さな貸しでも積み重ねていけば、今後生徒会となにかあった時の交渉材料にもなる。そんな鷹也の考えを知ってか、知らずか。希は鷹也に向かって静かに微笑んで見せた。

 

 

 

 

 

こうして取材を受けることが決定。鷹也は当然後で出来上がりは確認するが、基本的に取材には関わらないため、練習時間になったら屋上に向かうということを告げて理事長室に向かう。一応大学でも作業をするようにノートパソコンを持ち歩いていて、そのまま音ノ木坂学院にきたので、書類の整理や大学の課題などを進めようと考えたのだ。空き教室などを使うという手もあるのだが、関係者でもないのに勝手には使えないうえに、そもそも鍵がかかっている。廊下の隅に休憩用のいすなどがある場所もあるが、さすがに女子校内で堂々と作業をするのははばかられる。よって申し訳ないとは思うが、理事長室の隅で作業を行わせてもらおうと考えたのだ。理事長であるひな子しかいない部屋なら作業をしていても問題ないだろう。そう考えて廊下を歩いていたその時、向かいの角から見たことのある人物が歩いて来る。鷹也が気づくと同時に彼女も気が付いたのだろう。軽くこちらに一礼してきた。

 

「お疲れ様です、南さん。」

「どうも、絢瀬さん。」

 

そう言って、すれ違おうとする絵里をちょっと待ってと引き留める。鷹也は前々から気になっているのだ。生徒会長である彼女はなにか抱えているのではないか。初めて会った時から感じているその違和感を鷹也は放っておけない。ならば、話す機会をそんなに多く持てない以上こういうところでしっかりと会話してみなくてはいけないだろう。なんですかという風に振り向く絵里に鷹也は笑顔を見せる。

 

「いや、前に会った時聞きたかったんだけど聞けなかったことがあって。」

「聞きたいことですか?」

「そう。絢瀬さんさ、なんであいつらの活動が気に入らないの?」

「…………リスクが高すぎます。それなら他に方法を考え出す方がいいと思いますから。」

 

一瞬の間の後、絵里がそう答える。これはずっと絵里が言い続けている、主張しつづけているアイドル活動をやめさせた方がいいという理由。だが、彼女は学校の存続で行う生徒会長としての活動を話すとき、本当に辛そうな顔をすると理事長であるひな子は言っていた。その表情の一端を鷹也も見ている。そんな彼女が生徒会長として言うそのアイドル活動に反対する理由。これも本心ではあるだろう。だが、鷹也は重ねて聞く。

 

「本当にそれだけ?」

「………どういう意味ですか。」

 

聞き返してくる絵里を無言で見つめ返す。他にも理由がある気がするのだ。彼女は生徒会として存続に尽力してきていた。だからこそアイドル活動が気に入らないことは分かる。だが、生徒会長としての義務感で辛そうにしている彼女が生徒会長としての理由だけでアイドル活動にそこまでの反対をするのだろうか。生徒会長としての義務感で行動しているだけなら、アイドル活動にリスクがあると思うのならまずは生徒会も独自に動けるように理事長に認めてもらってからアイドル活動の行動の制限を行っていくという方法が正しいだろう。理事長から独自に動いていいと言われたのなら、学校存続を目指す生徒たちの管轄は理事長の前に完全に生徒会が掌握できる。アイドル活動をギリギリまで縮小できるはずなのだ。聡そうなこの少女がこのことに気が付かないはずがない。それならアイドル活動に反対するのになにか他の、絢瀬絵里個人としての理由があるはず。これはただの鷹也の憶測だ。しかし、

 

「…………………………あなたには関係ありません。先ほど言ったこと以上の理由はないです。」

 

数秒の後、絵里はそう言うと失礼しますともう1度礼をして鷹也の横を通り抜けていく。数秒間の間、鷹也の視線を受け止めていた彼女の目は迷うように揺れていた。

 

(なにかある気がするんだけどなぁ…………)

 

鷹也はそう考えつつ、去っていく絵里の背中を見送る。その背中は、そのとても小さく見える背中はどれだけ大きなものを抱えているのだろう。その小さな肩にはどれだけの重荷がのしかかっているのだろう。彼女はどれだけの悩みを抱えているのだろう。今回の会話でも聴くことができなかったそれはまだ鷹也には考えもつかない。

 

 

 

 

 

「星空さんはちょっと速い!小泉さんは逆に遅れてきてる!リズムちゃんと聞いて!」

「「はい!!」」

「矢澤さん!立ち位置ずれてる!西木野さんは動き小さい!海未も!」

 

結局絵里との会話の後には理事長室で時間を潰し(今回だけだと釘を刺された)、時間になって屋上に向かった鷹也はダンス練習に励むメンバーに手を叩いてリズムを取りながら指示を送る。新曲をやろうと考えていたために新しいステップを入れた練習なのだが、ある程度形になってきていることに満足しつつ、鷹也は細かいところに関しても注意をとばしていく。

 

「穂乃果、動きが雑になってきてる!ことりは今のところのステップ間違ってる!」

「「はい!」」

「よし、ラスト!!」

 

声に合わせて全員が最後の決めポーズをとって一端休憩。次は休憩終わりに海未を代表にこちら側に立ってもらって全体の確認させてからパートごとに練習するという指示を出し、カメラを構えていた希の方に向かう。

 

「かれこれ休憩なしで1時間弱。全員息は上がっているが、文句を言う者はいない。そんな練習を支えているのが外部コーチとしてダンスのサポートを行っている南鷹也さんだ。」

「って俺も結局インタビューありなの?」

「練習の時にどうしても映っちゃってるし、しょうがないやん?」

 

そう言う希の言葉にため息をつく。確かに練習の時にうつってしまったなら、なにも言わないよりはきちんと関係者として活動しているということを見せておいた方がいいのかもしれない。チラリとにこに視線を向ける。こういうことはアイドルに詳しいにこに相談しておいた方がいいだろう。にこはその視線を受けて肩をすくめる。

 

「変に隠すよりはちゃんと立場を明らかにしといた方がマシよ。隠しておいて、後でなんかの拍子にばれた方が印象悪いわよ。」

「そうなるよね。了解。希、お願い。」

 

にこに言われて鷹也は笑顔でカメラを構える希に向き直る。

 

「南鷹也です。μ’sのメンバーである南ことりの兄でダンスの指導やライブの準備などの面でμ’sのサポートを行っています。」

「女子校ということで男の人がこのようなサポートにつくのは難しいと思われるのですが……」

 

カメラのむこうの希の質問に笑顔になる。いいアシストだ。ここできちんと学校側と問題対策していることを明言しておかなくては、余計な悪印象を招く危険がある。希に内心感謝しつつ答える。

 

「その点に関しては、指導内容や時間などの詳細を学校に私が提出し、一定周期で私の見ないアンケートで問題がないか、不満がないかなどの調査をメンバーに対して学校側で執り行っていただくことで最大限の配慮を行っています。」

「そうなんですね。では、彼女たちのサポートをしようと考えた理由は何なのでしょうか。」

「彼女たちの頑張りに少しでも力になりたいと感じたからです。これからもμ’sのサポートとして彼女たちの力になっていけたらと思います。…………こんな感じでいい?」

「うん、これなら大丈夫そうやね。」

 

ありがとねという希に、鷹也はどういたしましてと手を振りつつ伸びをする。さすがに慣れないインタビューは緊張する。とそこで真姫がこちらに近づいて来た。

 

「終わった?そろそろ練習再開の時間なんだけど。」

「オッケー、今行く。希、他に何かあれば今のうちに答えるけど。」

「じゃあ1つだけ聞いておこうかな。なんで鷹也さんは練習の最終的な確認に海未ちゃんを選んだん?そこはリーダーの出番やないの?」

「そういえば……」

 

希の質問とともに真姫がこちらを見る。真姫も違和感を覚えているようだ。そんな2人に鷹也が答える。

 

「まあ、この確認に穂乃果と海未のどっちが向いてるかって言われたら明らかに海未だと言うしか……」

「それはそうかもしれんけど……」

 

納得していないながらも今回は引き下がることにしたのか、希は引き留めてごめんねと言ってこれからの練習の撮影のためにカメラをセットしなおし始める。そして真姫はといえばこちらも納得していないようで難しい表情をしている。どうやら穂乃果がリーダーであることに疑問を持ち始めた様子だ。

 

「鷹也くーん!真姫ちゃーん!練習するよー!!」

(これはまずいかな……)

 

大した距離でもないのに必要以上の大声でこちらに声をかけてくる穂乃果に顔をしかめつつ、鷹也はそんなことを考えるも、始まった練習に意識を集中していくうちにそのことは頭から自然と抜け落ちていった。

 

 

 

 

 

「で、練習もしないでなにしてんのかな?」

 

にっこりと微笑みながら鷹也が聞くと、部室の椅子に座っている7人全員がさっと目を逸らす。そんな7人に呆れつつ鷹也はため息。今日は大学の授業が最後まであり、高校の放課後とは時間が合わない日。よって鷹也は少し遅れて音ノ木坂学院へと向かっていた。そんな時に学校の外から音ノ木坂学院に戻ってくる7人と遭遇したのだ。練習は外でやる必要はないのでなにか他のことをしていたのは明確である。

 

「にこ先輩があんなこと言いだすから……!」

「な、なによ!私だけのせいだっていうの……!」

「話し合いしてたのに勝負って言いだしたのはにこ先輩にゃ……!!」

「そこの3人。責任のなすりつけあいしない。」

 

怒られると思ったのか、はい!といい返事をしながら背筋を伸ばす穂乃果、にこ、凛から視線を逸らして比較的に話が聞きだしやすそうな残りのメンバーに声をかける。

 

「で、なにしてたの?」

「さ、さぼろうとしてたわけじゃないよ?ね、海未ちゃん?」

「そ、そうです。ことりの言う通りです。」

「まあ、結局無駄な時間だったけど……」

「ま、真姫ちゃん……!今はそういうこと言わない方が……」

 

必死で誤魔化そうとする様子の3人とどうでもよさそうな真姫に鷹也はもう1度ため息。最初からそこまで怒る気などない。今更この子たちがさぼろうとなんてしないだろう。ならばなにか理由があったと考えるべきだ。ただその理由によっては多少注意しなくてはいけないとは思っているが。

 

「別に怒る気なんかないから落ち着け。なにか理由があったんでしょ。」

「……怒ってないの?」

「怒ってないからさっさと事情説明して。」

 

なあんだぁと急に笑顔になる穂乃果たち3人は放って置き、今度こそことりたちに状況の説明を聞く。

 

「…………ってことになっちゃってて……。」

「リーダーを誰にするかね……」

 

ことりの説明を聞くにどうやら昨日の取材中に希になんで穂乃果がリーダーなのか聞かれたらしい。その理由が明確に浮かばず、メンバー内でもにこが言いだしたことでリーダーを考え直そうということになったらしい。それで今まではカラオケ、ダンスゲーム、チラシ配りで勝負をしていたというわけだ。決着はつかなかったようだが。説明し終わったところで、ことりが鷹也に聞いてくる。

 

「お兄ちゃんはどう思うの?」

「俺は……」

 

鷹也は7人のメンバーを見渡す。全員才能を持ったいい子たちだ。それぞれにいいところがあるし、リーダー向きだと思う子も何人かいる。でも、

 

「俺は今まで通りでいいんじゃないかと思うけどな。」

「なんでよ!?」

 

驚いたような7人を代表してにこが聞いてくる。というか穂乃果はなぜ自分が選ばれて喜ぶどころかおどろいているのだろうか。鷹也はそんな7人の様子に苦笑しつつ口を開く。

 

「理由はあるけど言わない。これはお前たちが決めることだろ。みんなで考えて納得した上でそのリーダーについていかなくちゃ。」

 

そう、これは鷹也が口をあまりはさみすぎてはいけない問題だ。その鷹也の言葉に7人はそうは言われても……といったように困った様子で顔を見合わせる。この状況では誰にすると決めるのは難しいか。鷹也はそう判断して少し後押ししてやることにする。

 

「仕方ないわね……。それならここはこのにこが……」

「じゃあ穂乃果、お前はどう思うんだ?」

「聞きなさいよ!」

 

騒ぐにこを完全に無視しつつ穂乃果に聞く。穂乃果は私?と首を傾げ、少し悩んだ後に全員の視線を受けながら口を開く。

 

「いなくていいんじゃないかな?リーダー。」

「「「「「「ええー!!」」」」」」」

 

驚いた声を出す6人になんで驚かれてるのか分からないといったように穂乃果は言葉を続ける。

 

「だってこれまでだってそれでやってきたんだし……いなくても大丈夫じゃないかな?」

「しかし……」

「リーダーのいないグループなんて聞いたことないわよ!」

「大体センターはどうするのよ?」

 

全員の動揺を受け止めつつ話す穂乃果を見て鷹也は笑う。だれも考え付かなかった発想を出す。それはいつも穂乃果なのだ。

 

「それは全員がセンター!ってだめかな?」

「全員?」

「家でアイドルの動画見て思ったんだ。みんなで順番に歌って、踊る。そんな曲どうかなって。」

 

そう言って穂乃果はどうかなと鷹也に視線を向けてくる。少し考えるが、すでにステップは出来上がってきているし、そこから少し変えれば穂乃果の考えも可能だろう。PVを作るのならば交互に映すという手もある。

 

「できないこともない。練習は大変だけどね。海未、西木野さん。曲の方はどうにかできそう?」

「できないことはないですが……」

「だいたいできてたものに少し手を加えればできないことはないわ。」

「だってさ。穂乃果。」

「うん!じゃあそうしようよ!みんなで歌って、みんながセンター!!」

 

両手を上げて元気よく言う穂乃果にみんなが笑顔で頷く。どうやら決まりのようだ。

 

「よし、それなら練習だ。今日は練習時間も少ないんだから集中してやるよ。」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 

 

 

 

「でも、リーダーなしで本当にいいのかな?」

「いいえ、決まってますよ。」

「不本意だけど……」

 

穂乃果が先頭で駆け上がっていく中、屋上に向かう階段でことりが言った言葉に海未と真姫が答える。どうやらちゃんと分かって、納得しているようで鷹也は安堵する。これで本当にリーダーなしと言うなら、止める必要があったがその心配はなかったようだ。みんながセンター。その考えは素晴らしいし、実際そうなるようにはしていくがグループである以上、中心になるリーダーは必要だ。なしというのはさすがに難しい。

 

「なんにもとらわれずに、やりたいこと、楽しそうなことにまっすぐに向かって行く。それは穂乃果にしかないものかもしれません。」

「お兄ちゃんも同じ考えだったの?」

 

海未の言葉を聞いて全員が微笑む中、ことりが鷹也に聞いてくる。みんなも興味があったのだろう。視線を向けてくる中、鷹也は少し考えてから口を開く。

 

「確かにみんなもすごい才能を持ってるすごい子たちだよ。でも、最初は穂乃果だ。始めようって言ったのは穂乃果で、それがなかったらみんなは集まらなかった。それなら間違いなく中心にいるのは穂乃果で、中心にいるべきはリーダーじゃないかな。」

 

鷹也はそう思うのだ。みんなを集めたのは穂乃果の気持ち。ならば、集めたメンバーの中心にいるのは穂乃果で、いつもその前向きさでみんなを引っ張っていけるのは穂乃果だろう。そう鷹也が言い終わると同時に階段の上の方から穂乃果の声が聞こえてくる。

 

「みんな!早く練習始めよう!」

 

6人と鷹也は顔を見合わせ、階段を急いで上へ。リーダーが待っているのだ。早く練習を始めよう。

 

 

 

 

 

数日後。生徒会室でμ’s公式ページをパソコンで開いていた絵里は新しくアップされた動画を見て、厳しい表情を見せる。今回新しくアップされた動画。前回のものよりは確実に出来がいいうえに、今回からメンバーが増えたことで懸念されたメンバー間の格差も特に見当たらない。否定材料がパッと見は見当たらないその動画はすでに多く視聴され、悪くない評価を得ているようである。だが、絵里の心には何も残らない。なぜこの動画が高い評価を得られるのか全く分からないのだ。

 

「お~、いい評価得てるみたいやね?」

「希、なにを言ったの。」

 

隣から画面をのぞき込んできた希に絵里は厳しい表情のままに聞く。これまでの彼女たちならばこのようにまとまってはいなかった。最近は取材の件で近くにいたようだし、希がなにか肩入れしたのではないかと思った。しかし、希は肩をすくめて笑う。

 

「うちは素直に思ったことを言っただけや。誰かさんとは違うて……。」

「…………」

 

素直に思ったことを言う。それができたらどんなに楽か。できないから苦しんでいるというのに。絵里はそんな憤りを内面に抱えつつ、希に視線を向ける。

 

「もう認めたらどう?えりちが力を貸してあげればあの子らはもっと……」

「なら希が力を貸してあげれば。南さんのお兄さんも協力しているようだし、私は力を貸す気はないわ。」

 

つい強い口調になってしまう。でも仕方ない。希はいつもこうだ。自分の味方であるはずなのに、こちらの気持ちを揺さぶるようなことを言う。

 

「うちやない。鷹也さんはもちろんやけど、あの子らには必要なんは、えりちや。」

「無理よ……」

 

タロットカードを取り出してそう言う希に背を向けて、お手洗いに行くと言って席を立つ。自分はあの子たちに力を貸す気にはどうしてもなれない。それにあの南鷹也という人物。少ししか会話していないが、1番最近会話した時の彼は自分の内面まで見通しているような、そんな気がした。彼とあまり関わってはいけない。自分の気持ちが、覚悟が揺さぶられてしまう。それは初めて会った時、なんとか聞こえないふりをしたが聞こえていたあの言葉をたまに思い出すことからも証明されている。その言葉を思い出す。

 

『そんな辛そうなのになんで頑張ってんの?本当に君のやりたいことはそれ……?』

 

「つらくなんてないわよ……。やりたいことなんてやってる余裕ないんだからしょうがないじゃない……!!」

 

今言ったことが矛盾していることは分かってる。でも、こうするしか自分には思いつかないのだ。

そう呟いた絵里は、お手洗いにある鏡に映る自分を見つめる。

 

「……………………………………」

 

鏡に映る自分の顔は、自分でも分かるくらいにひどい顔をしていた。

 

 

 

 

 

「もう少しなんよ、えりち。」

 

生徒会室に残された希は呟く。自分の考えること、願い。それは見えてきている。後はもう少しなにかきっかけがあれば形になる。希はタロットカードをシャッフルしながら窓際に向かう。

 

「えりちが力を貸すだけやない。きっとあの子たちもえりちのことを……」

 

どこからか彼女たちの声が聞こえてくる。またなにかあったのだろうか。本当にいつもいつもなにか頑張ってるなぁと苦笑しつつ、希は呟く。

 

「きっとあの子たちも、それにあの子たちを支えている鷹也さんもえりちのこと支えてくれるはず。そうすれば……」

 

私の願いは形になり始める。

 

 

 




やっぱりリーダーは穂乃果ですよね。
あのまっすぐさや明るさはすごいと思います。

というわけで次はえりち回。そしてお勉強回。
絵里の加入の際の心情の描写は頑張っていい物にしたいと思っております。
ここから加入に今度は何話かかるかな……

それでは感想、評価などもお待ちしております。
次回もよろしくお願いします!


※海未の鷹也のよびかたですが、昔は鷹也くんと呼んでいて、中学生、高校生となるにつれて鷹也さんと変化していったために、今でもテンパったりすると昔の鷹也くん呼びが出てきてしまうという風にしたかったのですが、
コメントで混ざっているから確認した方がいいというものをいただき、分かりづらかったかなと思い、ここで補足させていただきます。
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