小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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朝に変に早起きしちゃったときに書いてるから文章、構成ぐちゃぐちゃです。
でも、今から寝てしまうと間に合わなくなる……!

ギリギリの状態で書いてました。よろしくお願いします。


アイドル始めます!

「私、アイドルやってみようかなと思います!」

「…………は?」

 

あざとく思われるような敬礼を一切の嫌味になしにやってのけながら宣言したことりに鷹也は聞き返す。思ったより反応が返ってこなかったからか、焦ってことりが説明をしだす。

 

「な、なんかね?穂乃果ちゃんが学校を盛り上げるためにスクールアイドルやろうって言いだして……」

「言いだしたのは穂乃果か……。いかにもあいつが考えそうな単純な考えだな。」

 

ことりは理事長である母と昨日話していたようだが母は予想通り明るく振舞い、心配かけまいとしていた。そのことも考え、少しでも自分たちで動こうとなにかしてくるとは思ってはいたがこうくるとは。予想外であるもののある意味小さなころから知っているあの少女らしい考えに鷹也は苦笑する。

 

スクールアイドル。現在日本全国で有名になっている言葉である。次世代のアイドル。それはごく普通の高校生たち。ということで全国様々な高校に通う一般の生徒が学校を盛り上げるため、地域を盛り上げるためにスクールアイドルとして活動しているのだ。その規模は年々大きくなり、前年度には野球でいう甲子園、全国のスクールアイドルの頂点を決める「ラブライブ」が開催され、その模様は全国に中継された。またスクールアイドル専門のショップまでできている。その効果はすさまじく、音ノ木坂学院のそばにある、最新鋭の設備を持つがあまり最初は人が集まらなかったというUTX高校は「A-RISE」というスクールアイドルのラブライブ優勝という実績により大幅に入学希望者を増やしたとされている。まぁそのために音ノ木坂学院は入学希望者が激減。統廃合の危機に瀕しているのだが。

 

あまりアイドルに詳しくない鷹也ですらこの情報量を持っているのだ。確かにこのスクールアイドルで有名になれば、アイドルと同じ高校に入りたいという入学希望者も増えるだろう。しかし、

 

「そんなに簡単なことじゃないぞ。それ。」

 

そうこの考えの前提は『有名になる』ということ。世間に大勢のスクールアイドルがあふれているこの時代においてこれは簡単なことではない。埋もれてしまう可能性もあるどころかその可能性の方が高いまであるのだ。現に、去年のラブライブに優勝し、絶対王者とされるだけの人気を誇る「A-RISE」もここまで上り詰めるのに相当の時間を要したと言われている。

 

「うん、そうだよね……」

 

鷹也の忠告にことりはうつむく。しかし、そこからすぐに顔を上げる。

 

「でも、やるって決めたから。応援してくれると嬉しいな……?」

 

真剣な眼差しは本気であることを雄弁に語っている。最後はこちらをうかがうような声色だったが、本気で頑張ると決めたのだろう。弱気にならずはっきりと決心を口にする。ことりにこんな影響を与えただろう少女を思い浮かべつつ鷹也は笑う。本来ならば止めるべきなのかもしれない。デメリットはいくらでも思い浮かぶ。だが、

 

「分かったよ。頑張れ、応援する。」

「……!うん!」

 

鷹也の言葉に満面の笑みで答えたことりは、鷹也にはいつもよりキラキラして見えた。

 

 

 

 

 

その夜。鷹也はある少女に連絡を取っていた。穂乃果、ことりがやると決めたのならばいつもの3人娘でこの少女だけがやらないわけがない。それに状況を詳しく聞くにもこの少女が一番いいだろう。

 

『……はい、園田です。鷹也さんですか?』

「よ。遅くに悪いな、海未。」

 

園田海未。長いきれいなストレートの髪を持つ大和撫子という言葉が似合う少女だ。小さいころにことりとよく遊んでいたため、そのそばにいることも多かった鷹也とも親交がある。

 

『いえ、大丈夫ですが……。どうかしたんですか?』

「スクールアイドルやるんだって?」

『つっっっっ!!!!』

「あ、切れた。」

 

単刀直入に聞くと通話が一方的に切られてしまう。まあ、予想の範疇である。もう一度かけなおす。

 

『…………はい』

「いきなり切るなよ、まったく。傷つくぞー」

『絶対傷ついてないじゃないですか、鷹也くんが原因ですし。それよりなんで……なんで鷹也くんが知ってるんですか!』

 

嫌なら出なければいいものの。先ほどより数コール遅れてだが律儀に電話にでる海未を面白く思いながらも鷹也は海未の大声に顔をしかめる。今では多少マシになったとはいえ、元来恥ずかしがりやで人見知りな海未のことだ。恥ずかしくてテンパっているのが電話越しでも容易に想像できる。鷹也の呼び方も小さいころのくん付けに戻っている。

 

「ことりから聞いたんだよ。」

『そ、そうですよね……。うう……恥ずかしすぎます……』

「……お前、そんな調子で大丈夫かよ。」

 

電話越しの海未の様子に鷹也は苦笑い。これからスクールアイドルで有名になろうというのだ。恥ずかしがっていては先が思いやられる。

 

『返す言葉もないです……』

「そこまでしてよくやろうと思ったな。海未はこういうこと苦手だろうに。」

 

これは鷹也の純粋な疑問。2人がやると言っても海未が反対して止めている可能性もあったのだ。というよりはいつもの海未ならば確実に止めているだろう。なにが海未に苦手なことをさせたのか。

 

『……穂乃果の気持ちにあてられたんです。』

「穂乃果に?」

『はい。いつも以上に真剣な穂乃果に。私個人としても音ノ木坂がなくなってしまうのは悲しいですし……。穂乃果はいつも私とことりの前にいて後悔しない方に引っ張ってくれますから。』

 

落ち着いたのだろう。真剣な声音で話す海未。その声は静かで、穂乃果に全幅の信頼を寄せているのが分かった。そして真剣に頑張ろうとしていることも。

 

「本当にやる気なんだな……」

『はい!』

 

穂乃果のことを思い出したのだろう。恥ずかしがっていたのはどこへやら。元気よく返す海未。鷹也はことりだけでなく海未にもここまで影響を与えている穂乃果の影響力の強さに内心舌を巻きつつ海未に現状をきく。

 

「そうか。で、今の状況ってどうなんだ?もう学校側に申請したのか?」

『いえ、生徒会に掛け合ってはみたのですが……』

 

それから状況を聞くに、どうやら音ノ木坂の生徒会長は彼女らのスクールアイドル活動を快くは思っていないらしい。表向きは人数が足りていないということだったが、人数がそろっても活動をさせないとはっきり口にしている時点で嫌われているだろう。理由までは察することはできないので何とも言えないが。

 

「生徒会を納得させる。メンバーが足りない。問題は山積みか。」

『はい……』

「とりあえず穂乃果にも話聞きたいし明日もなにかしら練習するんだろ?その時、俺も少し顔出すことにするよ。ついでに差し入れでも持っていく。」

『えっ?』

「なんだよ。何か問題あり?」

 

鷹也の言葉に意外そうに返した海未に鷹也はそう聞き返す。

 

『いえ、大丈夫ですが……。どうしてわざわざ手伝いのようなことを……?』

 

言外にこめられているのは、あなたは関係ないのではないのか。という疑問だ。鷹也はそれを察する。まぁ当然の疑問だ。どこからどう見てもことりの兄という以外の関係はなく、学校の存続はいまいち関わりがないように思われるはずであるのだから。

 

「そんなの家族のため。大事な人のためだよ。」

 

だけど鷹也が動く理由。それはこれだけだ。

 

「母さんは理事長として頑張ってる。妹は昔から知ってる妹のような2人と一緒に存続を望んで頑張ろうとしてる。」

 

音ノ木坂学院が廃校しようが存続しようが鷹也には正直関係ない。でも、昔から知っている人たち。大事な人たちが悲しむのならそれは鷹也にとって大きな悲しみだ。

 

「それなら手伝うのが息子として、兄として、兄のような人として、家族として当然だろ。」

『……あなたらしいですね。自分に利益はないのに周りの人のために動こうとするところが。』

 

電話越しの海未が笑う。あまりにも鷹也らしい行動理由。普通ならそんなの偽善だという人もいるかも知れないが、海未はそこに一片の曇りも感じなかった。

 

『そういうことならサポートはお願いします。』

「任せとけーい。」

 

さっきの自分の発言が恥ずかしくなって、少しゆるめの返事をして誤魔化す鷹也を微笑ましく思いながら海未は頼もしい味方の存在に頬をゆるめた。

 

 

 

 

(とめれないよなぁ……)

 

鷹也は電話を切った後にため息をつく。ことりにあのように言った手前、どっちにしろとめるという選択肢は取りづらい。しかし、スクールアイドルで盛り上げるという方法はリスクが大きすぎることであるのは確かだ。上手くいく確率も低い。海未が本気になりきれていなくとめる余地があったのならばとめていたかもしれない。この後に及んでそう思ってしまうくらいには。しかし、海未も頑張ろうとしている。ことりも頑張ろうとしている。まだ聞いていないがこの調子なら穂乃果も間違いないだろう。ならば自分が彼女たちにできること。

 

「とりあえず情報だな。」

 

彼女たちのサポートをしっかりできるように。まだ学校にも認可されず、メンバーも足りていない現状では母である理事長の力を借りるわけにもいかない。ならば自分がしっかり支えてあげなくては。

鷹也はネットの海に情報に没頭していく。少しでも彼女たちの力になれるように。

 

 

 

 

 

「で、1か月後にライブすることになった……と。」

「うん!」

 

元気よく返すのは高坂穂乃果。和菓子屋『穂むら』の看板娘であり、元気が有り余っているような少女である。今回のアイドル活動の発起人であり、海未、ことりをいつも引っ張っていく存在。そんな彼女は今、目の前のテーブルの上の団子を頬張りながらことりと談笑している。ここは穂乃果の部屋。いつ練習などするのか聞いてもいなかったためことりに連絡を頼んだところ、夕方にこことしていされたのだ。

 

「お前らな……。確かに学校でライブするっていう考えは正解だよ。学校内の知名度がなくちゃどうしようもないし、知名度が上がればメンバーも集まりやすくて生徒会の説得にも役立つだろうよ。」

「でしょー?我ながらいい考え!」

「穂乃果ちゃんすごい~!」

 

えっへんと胸を張る穂乃果に、拍手することりをみて鷹也はため息をつく。なにかおかしいとも思ったのだ。アイドルの練習と言えば歌や踊り。このお世辞にもそのために十分とは言えないスペースの穂乃果の部屋に呼び出された時点で察するべきだった。

 

「でも、曲、歌詞、振り付け。あげくグループ名も決まってないんじゃどうしようもないだろーが!」

「あう……!うう、ことりちゃ~ん、鷹也くんにでこぴんされた~!」

「よしよし。痛いの痛いのとんでけ~!」

「お前ら、緊張感とか焦りって知ってる……?」

 

ことりに泣きつく穂乃果から目を離し、鷹也はパソコンに目を向ける。そこには全国のスクールアイドルが登録してあるサイトの画面が映し出されている。昨日集めた情報のなかに、前回のラブライブは本選に出場するにはネットの投票が必要で、そのためにもこのサイトへの登録は必須のようだった。このサイトにはファンの数や作ったpvの再生数によって出されたスコアがあり、そのスコアによってランキング付けがなされている。ちなみに現在の1位はダントツで前回のラブライブ覇者「A-RISE」である。

 

「だって、昨日やるって決めたばっかなんだよ?まだちゃんと考えてなかったんだもん……」

「それでよく1か月後にライブやることにしたな……。まあいい。とりあえずは海未も来てからだ。」

 

そう言って鷹也は登録を仮登録にしておく。登録名は「音ノ木坂学院アイドル活動部」。絶対にこのまま公開してはいけない登録名である。その後、海未が弓道部の活動を終えて合流。話を再開することになった。海未はダイエットをする予定だったらしい穂乃果とことりにあきれていたが、そこはもう鷹也としては最重要ではないのでスルー。

 

「で、穂乃果。曲はどうするんだ?」

「うん!1年生にすっごく歌とピアノが上手な子がいたんだ!その子に頼んでみる!!」

「歌とピアノが上手いことと作曲は別だけど……。まあいいか。その子しかあてはないし。」

 

不安は残るが曲はその子に賭けてみるしかない。先ほど穂乃果たちに聞いた話ではグループ名は校内で募集という形をとったそうでこれも不安は残るがとりあえずはオッケー。で、あればあとは歌詞だが、

 

「歌詞は海未だな。」

「海未ちゃんだね。」

「な、なんでですか!!」

 

海未が慌ててテーブルを叩く。その際にこぼれそうになった飲み物をちゃっかり避難させていた鷹也がまあまあと海未の声をかける。

 

「お前ならできる。中学時代、詩を書いていた海未、お前なら。」

「な、なんでそれを……。見せたことのある穂乃果とことりならまだしも……はっ!」

 

思いついたようにことりを見る海未。てへっと可愛らしく笑うことり。顔が真っ赤になる海未。

 

「……!!」

「あ、逃げた。逃がすな、穂乃果!!」

「こらー!待て、海未ちゃーん!」

 

昔、3人が中学生だったころ鷹也は海未がことりに見せた詩を見たことがあったのだ。海未は見られたくなかったのかもしれないが、ならば南家に遊びに来た時にことりに見せ、ましてやリビングに開いたまま忘れてことりの部屋に行くようなことをしなければよかったのだ。そりゃあ、リビングに見覚えのないノートがあれば鷹也だって中身を確認する。その後、ノートを取りにきた海未に見たかと聞かれ、見てないと答えた時の胸の痛みから見なきゃよかったと全力で後悔したが。

 

「あきらめろ、海未。聞いたところ衣装はことりが作るんだろ?手が空いているのはお前だけだ。」

「それなら穂乃果だって……」

「できると思う?こいつに」

「……」

 

ん?といったように自らを見る鷹也と海未を見返す穂乃果。自分はできないと自覚はあるのだろう。苦笑いで誤魔化している。

 

「うう……なら鷹也さんが……」

「お前らがやるって決めたことだろう。俺はあくまでもサポート。どうしてもというなら仕方ないけど、部外者に思われる男子大学生とメンバーの女子高生。どちらも素人である以上、どっちが考えた歌詞のほうが印象がいいかなんて言われなくてもわかるよな?」

「うう……」

 

最終手段の鷹也に断られてもなかなか観念しない海未に鷹也は最終手段を使うことにする。ことりに目線で合図。うんと頷いたことりは海未に向き直る。

 

「海未ちゃん……おねがい!」

「…………わかりましたよもう」

 

ことりの、エコーがかかってるんじゃないかと思う程の迫真の「お願い」。海未は昔からこれに逆らえた試しがないのである。多少強引にだがようやく許可を得て喜ぶ穂乃果とことり。しかし、問題はまだある。

 

「で、もう1つ。振り付けだけどこれはとりあえずみんなで考えるしかないだろ。」

「鷹也くん、大学でダンスやってるんだし手伝ってよー」

「手伝うけど大学のサークルなんて遊びみたいなもんだしな。みんなで考えたほうが効率がいい。」

 

穂乃果の言う通り鷹也の所属するサークルはダンスサークルである。本腰をいれてダンスに取り組むサークルもあるかもしれないが、鷹也の大学のダンスサークルは遊び程度のサークルだ。専門知識もほとんどない。ならば、多少のアドバイスだけで、最初からみんなで考えた方が無難だろう。

 

「そうですね。あと、練習メニューですが、穂乃果とことりの分も私が考えます。」

「練習メニュー?」

 

不思議そうな顔をする穂乃果とことりにあきれる鷹也と海未。そこでパソコンの開いてあるサイトでA-RISEの動画を流して説明する。腕立てを笑顔でやらせることで納得させる。全くできなかった穂乃果に海未は明日から3人で朝練をやると告げ今回の会議は終了。最後にいまだ腕立てができなかった体制のままの穂乃果を上から見下ろし鷹也は確認する。

 

「穂乃果、本気なんだな?」

 

うつ伏せだった穂乃果は仰向けに向きを変える。その眼は真剣で、先ほどまでの話し合いの緩い空気の時には見られなかった眼差し。緩い空気で話し合っていた。でも、決して本気じゃないわけではないのだ。真剣なのに変わりはない。頑張るという決意はもうすでに決まっている。そう鷹也が感じたのもつかの間。穂乃果はにっと笑顔を作る。その眼に強い意志を宿らせて。

 

「うん、私やるよ。やるったらやる!」

 

 






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