文法やキャラ崩壊などは大丈夫だとは思いますが、後からよみなおして酷かったら改稿します。きっと大丈夫だと思いますが。
今回も絵里がダンスを教えに来るところまでたどり着きませんでした。
9000字以上書いたのに……
そんな感じですが、今回は色々と展開や描写が難しかったので大変でした。
では、ご覧ください!
それから1週間。鷹也はμ’sのダンスレッスンに関してのアドバイスを少しずつ変えていっていた。沙希が言っていた揃いすぎてるということ。それはおそらく鷹也のダンスのしかたが影響してしまっているから起こっているだろう問題。そして、きっと揃いすぎと言うそれは上に行くにつれて基盤とはなっても進化には繋がらない。これ以上自分のアドバイスで影響してしまえば時間的にも技術的にも彼女たちが目指すものにはたどり着けなくなる。
「1!2!3!4!5………」
手拍子でリズムをとりながらメンバーそれぞれを見ていく。綺麗に揃ってきているように見えているのだが、まだ少しズレている。それは鷹也でも分かることだ。
「ラスト!」
声に合わせて全員が最後のポーズを決めて、今日は練習終了。ずれているとはいえ、この1週間は揃えるという点に関してのアドバイスを鷹也は控えていた。外から海未が見たときに海未が注意していたくらい。鷹也はそれ以外の明らかなステップの間違いなどの気になるところを注意していただけ。鷹也は着替えに部室に向かうメンバーを見送りながら屋上の柵にもたれかかる。
(影響を与えているのは自分では分からない俺のダンスのしかた。でも、それは影響しててもまだ完全に同じな域に達していないから悪いことだとは……)
鷹也は考える。完全に自分のダンスの影響がみんなに出てきていていれば、もしくはみんなのダンスがきっちり揃うということになれば揃いすぎているとも言えるだろう。しかし、まだ完全に揃いきっていない以上は鷹也のダンスの影響が揃いすぎているというところで現れているとは鷹也には思えない。
(揃いすぎてる……。グループのダンスで揃えるってことは最重要課題でもあるはずなのに……)
グループのダンスであれば揃って踊ることで見た目からすれば格段に良くすることができる。個性が死んでいくとも言われたが、その中で個性を出していくことが重要なことで全く揃っていない中で個性を優先することがいいとは思えない。鷹也はため息をつく。おそらく沙希が問題にしているのはここなのだろう。揃える中で、踊る1人1人によって違う個性を表現する方法を絶対に自分の中では確立できないだろう鷹也ではアドバイスしつづけることは逆効果。彼女たちがもし個性を発揮しようとしたところで、鷹也は揃えることを優先してしまっていた結果、その個性を違和感として注意を飛ばすことになる。
(でもな……個性を出すって言ってもどこまでがいいのかも分からないし……)
その加減が重要なのだ。個性を出そうと各自が動きすぎてはダンスがバラバラになってしまう。それではグループとして踊っている意味が一切ない。でも、個性が一切ないというのも沙希が言う『つまらない』に繋がっていく。鷹也はそれを無視するわけにいかない。そこまで考えたところでポケットの携帯がメッセージの受信を告げた。送信者は理事長である母。確か今日は例の会議の日。
『今回の会議でオープンキャンパスの結果次第では生徒募集をしないことが決まったわ。明日絢瀬さんにも伝えようと思います。』
「やっぱりダメだったかぁ……」
文面からも理事長が本当に苦しい心境でこの決定を受けたのかが分かる気がして、鷹也は空を見上げる。最善を尽くしている理事長だけでは解決できない問題なら今度は彼女たちの出番。だが、夕闇に染まり始めた空の下に立ち尽くす鷹也の中で解決策はまだ見つからない。
次の日の放課後。鷹也はμ’sの練習にすぐ行くのではなくて理事長室にいた。目の前の椅子に座る理事長に向かって口を開く。
「お疲れさま。母さん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。」
そう言うひな子だが、明らかにその顔には疲労の色が浮かんでいる。文字通り全身全霊でこの決定に反抗しようとしたのだろう。結果は伴わなかったようだが、その後もずっとここからの改善策を探して実行できないか検討していた。
「オープンキャンパスの方はこっちに任せてよ。母さんはその後のことを考えてて。」
「ええ、オープンキャンパスに関しては実際に動くのは基本的に生徒になるわけなのだし……またあの子に負担をかけることになってしまうのね……」
「母さん。」
苦しげな母親に向かって鷹也は言う。
「それ以上は母さんが抱え込むことじゃないよ。抱え込みすぎてこれからに支障が出たらそれこそまずい。」
だから頼ってもいいよ。そう言って鷹也は微笑む。理事長として頼れないのは分かっている。それでも、そう言ってもらえるのともらえないのではだいぶ変わるはずだ。自分は何もできないけど、彼女たちの手伝いはできる。彼女たちなら頼ったら何とかしてくれる。
「あいつらならきっと大丈夫なはずだよ。俺は何にもできないけど、それでも俺も見守ってるつもりだから。」
「……そうね。ありがとう。」
そう言った鷹也にひな子がようやく微笑んだ時、理事長室のドアがノックされる。
「失礼します。」
入ってきたのは生徒会長の絢瀬絵里。鷹也がいることに一瞬驚くものの、すぐに表情を引き締めて理事長に視線を向ける。
「何かありましたか?」
「ごめんなさいね、急に呼び出してしまって。私からもお話はあるのだけれど、その前に鷹也からお話があるそうだからそちらから聞いてくれないかしら。」
「南さんがですか?」
怪訝そうにこちらに視線を向ける絵里に頷いて見せる。これが鷹也が理事長室に来た理由。もう時間がないのだ。ためらっている余裕はない。期限が確定した時点でこうするのがいいと昨日決めた。
「いきなりごめん。でもちょっと聞きたいことがあってさ。」
「……何ですか?」
そんな警戒しなくてもと思いつつ口を開く。
「μ’sのダンスの問題点を教えてほしい。」
絵里は目の前の青年を複雑な感情を抱きながら見る。μ’sの活動に関してのことだとは思っていたが、それでもダンスの問題点を聞いて来るとは思わなかった。
「なぜ私なんですか?ダンスの指導は南さんが行っているはずですよね?」
「俺よりも絢瀬さんの方がダンスに詳しいと判断したからだよ。昔、ダンスやってたみたいだし。」
そう言われて一瞬驚くも、絵里はすぐに表情を戻す。昔のことなんてどうやって知ったのかは気になるが些細なことだ。情報の出所になりそうな人間もすぐに思いつく。だが、
「だからと言って南さんの指導方針に部外者である私が口を出すものではないと思いますが。」
「別にそんなことないさ。自分のダンスに問題があることは分かってるんだけどどこをどうすればいいか分からない。それなら分かりそうな人に聞くのは自然なことだろ?」
「そうかもしれませんが……」
絵里は口ごもる。この人はプライドというものがないのだろうか。コーチとして自分が指導しているグループのダンスの問題点を年下である自分に聞く。自分の作り上げてきたものを自分のような年下の女子にある意味否定されるというのはどんな心境になるかは想像に難くない。少なくともいい気分ではないのではないか。普通なら自分からそんなこと頼むのはためらってもいいと思うのだが。そんな絵里の考えが伝わったのだろう。鷹也は苦笑して言う。
「残念なことに俺にはほとんど素人よりマシくらいの知識しかないからさ。それに、あいつらのためになることなら自分がどう思われようが知ったことじゃないし。別に俺が情けないと思われようが、どう思われようが、どれだけ自分がみじめになろうがどうでもいいんだよ。」
ま、みじめになるってのはちょっと違うのかな。と続けた鷹也の言葉に絵里は何とも言えない複雑な感情を抱く。自分より他人のために行動できる。この言葉は優しい、他人想いの人間に対して使われることの多い言葉。しかし、この青年のはどこか異質な気がした。
「それはともかく。」
とそこで思考を遮るように鷹也が声を大きめにして言う。
「問題に見える場所ってどこかな?できれば教えてほしいんだけど。」
「……分かりました。」
再び聞かれて絵里は仕方ないとため息をつきながらそう答える。自分のことはどうでもいいとまで言われて真剣に聞かれたことを無下にできるような性格ではないし、そもそも断れる雰囲気でもない。そして自分が思っていた彼女たちのダンスの問題点を思い出していく。その問題点が大した時間もかからずにすらすらと思い出せたことで苦々しい気持ちを感じながらも、絵里は口を開く。
「まず基礎的な部分がまだまだです。それと……振り付けを揃えようとするあまりに、特徴がなくなり始めてます。」
「その特徴ってのは?」
「振り付けは揃えてもいいですが、その中で例えば決めポーズや止まった形などがきっちり揃いすぎてます。楽しそうに踊るという前提で、最後のポーズや振り付けの動きが同じでも例えば勢いよく元気に体を動かしてポーズや振り付けをとるメンバーだったり静かにキレよく体を動かしてポーズや振り付けをとるメンバーがいるというような違いがあった方がいいです。今のダンスは全員がポーズをとる時の動きや勢い、細かいところまで揃えようとしているように見えて、でもダンスの質的に揃いきっていないから中途半端なものになっていますから。」
まあ、個人の特徴の出し方は加減が必要ですが。そう言って絵里は指摘を終える。それを聞いて鷹也は考え込むように下を向いていたが、少したって顔を上げると笑顔をこちらに向ける。
「うん、ありがとう。参考になった。」
「いえ……別に思ったことを言っただけですから。」
「それでも助かったよ。」
そうお礼を言ってくる鷹也に軽く頭を下げて、今度は理事長の方に視線を向ける。すると、理事長は終わったみたいねと言ってから口を開く。いつも優し気な印象の理事長の顔が真剣なものに変わる。
「絢瀬さん、今回は学校のことに関して通告するために来てもらいました。」
「……っ!」
少し反応してしまうも続きの言葉を待つ。嫌な予感は胸の中で広がり、抑えきれない。そして、それはおそらく間違っていない。明確に、的確な予感。
「音ノ木坂学院はオープンキャンパスの結果によっては来年度の新入生の募集を募集しません。」
「そんな!」
つい大きな声を出してしまう。覚悟していたとはいえ結構なショックに視界が揺れた気がするも、何とか踏みとどまる。思考停止しそうな頭を必死で働かせる。このままではダメだ。自分ができることは何だ。自分が何とかしなくては。みんなのために、この高校で青春を過ごしたおばあ様のためにも、自分がなんとかするのだ。
「それじゃあ……オープンキャンパスの結果が悪かったら……」
しかし、本調子からほど遠い状態になってしまっている頭では考えは全くまとまらない。そんな絵里を悲し気に見ている理事長も辛いのだろう。真剣な表情で淡々とこちらに告げているようで、机の上で組んだ手は力強く握られていて。やけにそんなことばかり捕える視界の中で、理事長は口を開く。
「その場合に関しては残念ですがこれは決定事項よ。音ノ木坂学院は来年度の新入生募集を中止し、廃校とします。」
絵里はショックを振り切ろうと軽く頭を振る。ショックを受けている場合ではない。オープンキャンパスまでということは期限は短い。どうするか考えなくては。絵里は何とか思考を回復させて考えを巡らし始める。そこで急に後ろの扉が開かれた。
「それって本当ですか!!!」
急な宣告に絵里は混乱しているように鷹也には見えた。それはそうだろう。あんなにつらそうにしていても一切それを口にせず、これまで頑張ってきていたのに急な廃校までの残り時間の宣告だ。ショックを受けるのは仕方ない。鷹也はこれは理事長であるひな子の話であるということでそれまで黙っていたのだが、さすがに絵里に声をかけようとしたが、その時急に扉が開かれた。
「それって本当ですか!!!」
「穂乃果?」
理事長室に駆け込んできたのは穂乃果。その後ろには海未とことりの姿も見える。慌てて駆け込んできた3人は理事長につめ寄る。
「廃校ってどういうことですか!?」
「そんなこと全然聞いてないよ、お母さん!!!」
「もう少し待ってください!後1週間、いや2日でなんとかして見せますから!!!」
「いや、あのね……」
慌てている3人につめ寄られてひな子が困ったような表情を浮かべ、鷹也に視線を向けてきて顔を見あわせる。どうやらこの3人は大きな勘違いをしているらしい。というよりもわざわざここに来たのはテストはどうだったからなのだろう。確か今日が返却日だったはずだが。そんなことも考えつつ、鷹也はとりあえず理事長の机と3人の間に入り込んで3人を抑える。
「とりあえず落ち着け。あと穂乃果、できもしないことを簡単に口にしない。お前たちでもさすがに2日は無理だっての。」
「でも!」
「でもじゃない。とりあえず落ち着けって言ってるだろ。何も今すぐ廃校ってわけじゃないんだよ。」
え……?とキョトンとする3人に鷹也はやっぱりかとため息。大方最後の理事長のセリフだけ聞いて入ってきたのだろう。鷹也は呆れつつも3人にオープンキャンパスで廃校か否かを決めるということを説明する。すると3人はとりあえず落ち着いたようで安堵の表情を見せた。
「よかった……」
「今すぐ廃校というわけではないんですね。」
「びっくりした~……」
「安心している場合じゃないわよ。」
そんな3人に厳しい口調で言ったのは絵里。どうやら3人の慌て様を見て落ち着けたようだ。いつものように表情を引き締めて現状の厳しさを把握していく。
「オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこでの結果が悪かったら本決まりってことよ。」
「そっか……!!」
「理事長。」
もう1度焦ったような表情になる3人から視線をはずし、絵里は理事長の正面に立つ。
「オープンキャンパスのイベント内容は生徒会で決めて提案させていただきます。」
「……止めても聞かなそうね。」
「…………失礼します。」
そう言って絵里は3人のことも鷹也のことも見向きもせずに理事長室から出ていく。その表情は切羽詰まっていて。何か気負いすぎているような気がするが、声をかける暇もなかった。鷹也は理事長に視線を向ける。
「よかったの?」
「止めても無駄なら、せめて責任を私が取れるように許可を出してあげた方がいいわ。」
「それもそうか……」
絵里のことを止めなくてもよかったのかと思ったのだが、理事長の言葉に納得して次は穂乃果に視線を向ける。納得したとはいえ、その考えを現実にしてはいけない。今回は理事長が責任をとる=廃校決定ということになるのだから。
「穂乃果、テストは?」
「みんな大丈夫だったよ!」
まずは重要なところを確認。ラブライブの出場の条件とはいえ、これでダメだったら全員のモチベーション的に支障がでるだろう。しかし、その心配はいらなかったようで笑顔でそう言う穂乃果に、鷹也はよしと言いつつ3人を見渡す。理事長だけで行動する段階は終わり。今度は彼女たちも動く段階だ。絵里に聞いたことで少しならば鷹也も影響なくアドバイスできる。時間はないが何とかするしかない。真剣な表情の3人に向けて言う。
「時間はないけど何とかするしかない。やれるな?」
「うん!」
「はい!」
ことりと海未の返事を聞いてから最後の穂乃果に視線を向ける。いつもの能天気な雰囲気はなく、真剣な穂乃果は力強くうなづく。
「何とかしなきゃ。ううん、何とかする!!」
「鷹也さん。」
それから理事長室を出て、メンバー全員に説明をしようと部室に向かう途中、鷹也は海未に呼び止められる。その表情からうかがえるのは迷い。それを見て鷹也は軽く息を吐く。まだ納得していなかったようだ。
「海未、分かってるよな?時間がない。」
「分かってはいますが……」
「少しの間なら俺も誤魔化しながらアドバイスしつづけられる。だから、考えておいて。」
そう言って鷹也は先に歩いて行っている穂乃果とことりに追いつこうと歩みを再開する。しかし、
「ですが……この調子で頑張れば自分たちだけでもオープンキャンパスまでになんとか……」
そう海未は言う。海未は信じようとしてくれているのだろう。鷹也が自分たちに教えてくれたことを突き詰めれば、オープンキャンパスまでに完璧にすればなんとかできる。鷹也は間違ってなんかいないと。だが、鷹也は後ろで歩みを止めている海未にもう一度向き直って言う。
「何とかならないよ、きっと。」
「鷹也さん……」
「俺だって最善を尽くす。もしかしたらがあるかもしれない。でも、今回はそんな分の悪すぎる賭けしてる余裕はない。」
沙希の言葉。鷹也では無理。今日の絵里の指摘ではっきりした。自分では無理だ。鷹也の根本的な部分がダンスに影響してしまっている。時間があればあるいは上を目指せるかもしれない。しかし、時間がない状態では確実に無理だ。悪影響でしかない。鷹也は海未に向けてはっきりと言う。
「お前らが自分たちで頑張るって言うなら俺も全力でその賭けに勝つために力を貸すよ。でも、生徒会長のダンスを見た海未ならどっちがリスクがなくて、どっちが正しいか分かるよな?」
「…………………………」
返事はない。融通が利かないというかなんというか、本当に頑固な子である。自分のことなんて気にする必要はないのに。しばらく沈黙が続く。そしてようやく海未が口を開く。
「……今日はいつもどおりやってみさせてください。今日の夜にみんなに相談します。」
「………そうか、分かった。」
海未の表情からはどっちを選ぶかはうかがえない。だが、鷹也はなにも言わずにただそう頷いて、海未を促して部室に向かって歩きを再開する。鷹也の中では最善ははっきりしている。絵里に指導をお願いすること。海未にもそれを伝えている。あとはそれを受けて、彼女たちがどういう選択をするかだ。
その日の練習は何かおかしかった。何か意識の、ダンスに対する意識の違いがあったのだ。自分を含め、ほとんどのメンバーは完璧だと、この調子ならばオープンキャンパスまでに間に合うと思っていた。しかし、海未だけは違った。まだダメです。まだずれています。そう言い続けて鷹也に練習の続行を言い続けた。最終的に真姫が限界になり何がダメなのか問いただした時に返ってきた答え。それは
『感動できないんです。』
ダンスの指導を行っている鷹也の横で海未はそう言い切った。そして、それを鷹也は黙って聞いているだけだった。その様子にも違和感を覚えたが、今日はとりあえず終わりだ。という鷹也の言葉でうやむやになり解散となってしまった。そして今、ことりは用事があるという鷹也と別れて穂乃果の部屋で穂乃果と海未と並んで座っている。
「海未ちゃん、話ってなに?」
ことりは穂乃果の部屋のベッドに寄りかかって座り、隣の話したいことがあると言ってきた海未にそう聞く。反対の隣に座る穂乃果も気になるのだろう。海未のことを見ている。海未はしばらく迷うように視線をさまよわせていたが、それでも口を開いた。
「生徒会長にダンスを教わろうと思うんです。」
「え……?」
「……どうして?」
意外な言葉に一瞬呆けるも、ことりは何とか理由を聞く。なぜ今更ダンスを生徒会長に習う必要があるのだろう。だって今でも自分たちには
「鷹也さんがすでに教えてくれているのは分かっています。」
「じゃあなんで?」
混乱して問いただしたい気持ちを抑えてことりは海未に優しく聞く。海未がこんなことを言い出すのには理由があるはずだ。なんの意味もなくこんなことを言い出すはずがない。それから海未がゆっくりと話してくれたのは生徒会長と話していたこと、希に鷹也とともに絵里のダンスの動画を見せてもらったこと、そのダンスに衝撃を受けたこと、そして鷹也が絵里にダンスを教わるのが最善だと思っているということ。そこまで話して海未はうつむく。
「鷹也さんが教えてくれたことを否定したくはない。でも、生徒会長のダンスが人を惹きつけるのは確実で、教われば今までよりも絶対に上手くなれると思うんです。」
「海未ちゃん……」
苦し気な海未の様子にどうすればいいか分からずにことりは複雑な表情で海未を見る。かなり悩んだのだろうことは分かる。でも、それを聞いてもことりには答えが出せない。ことりは絵里のダンスは見ていないし、鷹也が教えてくれたことを否定するようなことは絶対にしたくないとそちらの方を強く思ってしまう。だが、鷹也の判断は絵里にダンスを教わるという判断で、海未がここまで悩むということは実際に絵里のダンスはそれだけのものだったということだろう。穂乃果もいつもとは違って真剣な表情で考え込んでいる。しばらくはそのままだった。そしてようやく穂乃果が口を開く。
「いいんじゃないかな、教えてもらっても。」
驚いてことりと海未は穂乃果を見つめると穂乃果は笑って言う。
「海未ちゃんは生徒会長のダンスを見てすごいって思ったんでしょ?鷹也くんも。」
「それは……これまでの自分たちはなんだったんだろうと思わされるくらいでしたが……」
「だったら教わろうよ。上手くなりたいならそれが1番だよ。」
「でも、それじゃあお兄ちゃんとのことがなんだか……」
ことりはそう言って不安になる。兄である鷹也はただでさえ自分のことをかえりみないで周りの、ことりたちのためだけにでも動いてしまう人。周りを肯定して支え、自分を否定してないがしろにするような人なのに、ことりたちまで鷹也のことを否定する。自分の大切な人を否定するのは、そんなことになってしまうのはどうしてもいやだった。海未も同じようなことを考えたからこんなに悩んだのだろう。だが、穂乃果はそんな2人に言う。
「大丈夫だよ。鷹也くんのことを否定してるわけじゃないよ。私たちの中で絶対に鷹也くんに教わったことはなくならないもん!」
そう言って穂乃果は立ち上がり、くるりとその場できれいに一回転して見せる。これだって前はころんじゃったり、きれいにできなかったけど鷹也くんに教えてもらってダンスしてたおかげで今ではできるよ?そう言って穂乃果は笑う。
「だから大丈夫。鷹也くんに教わった意味はちゃんと残ってる。なら、そこからさらに鷹也くんに頼りっきりにならないで支えられるようになるためにももっとうまくなるチャンスがあるなら使うべきだよ。」
「穂乃果ちゃん……」
「穂乃果……」
穂乃果に言われてことりは思い出す。自分たちは鷹也に教え続けてもらって鷹也に依存しつづけて成長するのではいけないのだ。自分たちでも成長するきっかけを逃さずつかんで、鷹也のことを支えられるようにならなくてはいけないのだ。鷹也がしてくれたことを否定して1から成長を始めるんじゃない。鷹也がしてくれたことを支えに、自分たちでも成長するのだ。あの周りのことだけを考える兄を自分たちが支えられるように。
「どうかな?」
「そうですね。穂乃果の言う通りです。」
「うん、お兄ちゃんが悪く思わないならそうしたほうがいいと思う。」
じゃあ、みんなにも連絡しようと言って、部屋のどこかに置いた携帯を探し始める穂乃果を見てからことりは海未と顔を見合わせて笑う。いつものことだ。本当にすごいと思う。迷っていたが穂乃果のおかげで前に進める。
「あった!じゃあ、みんなで手分けして……」
穂乃果の携帯が見つかったところで手分けしてメンバー全員との通話をつなげる。
これは前に進むための選択。
音ノ木坂学院の廃校を阻止するために、オープンキャンパスのライブを成功させるために。
彼女たちは自分たちで決めた最善の選択を進む。
彼の教えてくれたことを否定するのではない。無駄だったというのではない。
彼の教えを生かすために。
自分たちのためだけに動いてくれている彼に支えられるだけでなく自分たちも彼を支えられるように。
彼女たちは前に進み始める
はい、いかがだったでしょうか。
ちなみにこの物語でよく出てくるダンスの上手い下手の基準はこんな感じかなで書いているので正確ではないかもしれません。
なるべく正確であるよう書いていますが、少し違うかなと思う場所があったらそこはご容赦いただければ……
次は絵里がダンスを教えに来るところからになると思います。
さあ、そこから加入まで一気に行くのか。作者的にはおそらくいかない気しかしてません。
それでは次回も引き続きよろしくお願いします。