小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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少し遅れました。すみません!!
ちょっと忙しくて……

今回は伝説のメイドさんの回
どうぞご覧ください!


彼女の悩み

「で、なんでこんなことになってたの?」

「アイドルに必要なことよ。いつでも人に見られてるということを意識して……」

「うん、そっか。もういいや。」

「聞きなさいよ!!」

 

制服に着替えて戻ってきた8人の中で主犯であろうにこに聞くが、アイドルの情熱が偏った方向に行ってしまった結果のことだったようなのでスルー。これに関しては鷹也もあまり口をはさめないし、できればはさみたくない。

 

「うぅ……暑かったね……」

「そうね……なんで乗せられちゃったのかしら……」

「そうだよ。海未とか西木野さん、絢瀬さんあたりが止めなきゃダメだろ?」

「すみません……」

 

相当暑かったのだろう。ぐたっとしている穂乃果とそれに返事をしながらうなだれる絵里を見て、鷹也は言う。実際、自分がいない時にこんなことを止めるならこの3人しかいないと思われるのだからしっかりしてもらいたいところではある。すみませんとうなだれる海未となんで私が……とそっぽを向く真姫もそれは分かっているだろう。

 

「そうでもしないと残りはアホなことしかねない矢澤さんと……」

「アホなことって何よ!!」

「それを面白がる穂乃果、星空さん、希。後は止められないだろう小泉さんと……って1人いないのはことりだったな。どうしたの?」

「ぜんっぜん聞く気ないわね……」

 

抗議してくるにこだが、今回の件をアホなことと言わずになんと言うのか。騒ぐにこを完全スルーしながら穂乃果に視線を向けると暑さから立ち直った穂乃果が首を傾げながら返事をする。

 

「なんか用事があるって言ってたよ?鷹也くん何か聞いてないの?」

「聞いてないけど……最近やけに練習終わりに早く帰るのに帰りが遅いことがあるんだよね……」

 

穂乃果の言葉に鷹也は少し考えてから答える。最近は特にそういうことが増えているのだ。前までは早く練習を抜けて帰ることもなく、帰りが遅くなる日もほとんどなかったのだが。今まではことりが何も言いたくないようであったし聞かないでいたが、さすがに何かあるのだろうか、それならば話を聞いてみなくてはと鷹也が考え始めた時、いつの間にかメンバーの周りからいなくなっていた凛と花陽の歓声が聞こえてくる。しかし、姿が見えない。

 

「どこ行ったんだ?」

「んーと……あそこやない?」

「あ、ほんとだ。えっと……スクールアイドル専門店?」

 

希が指さした店の中をのぞき込むと、そこには目を輝かせて店内を見て回る花陽とそんな花陽を楽しそうに見ながら一緒に店内の散策をしている凛。なんの店だろうかと思って看板を見てみると、そこにはスクールアイドル専門店の文字。こういうのはよく知っているであろう人物に聞くのが1番と鷹也は首を傾げながらにこに視線を向ける。するとにこは驚いたように、信じられないといった様子で説明する。

 

「知らないの?ここはスクールアイドルのグッズを専門に取り扱う店よ。」

「そんなものまであるのね……」

「まぁ、ラブライブが開催されるくらいだしなぁ……」

「まあ最近増えてきてるってだけで、まだ秋葉に数件ある程度だけどね。」

「見て見て~!!」

 

にこの説明に絵里とともにスクールアイドルの広まりの凄さを感じて鷹也は感心したように呟く。少しはスクールアイドルについて調べているとはいえ、まだまだだったらしい。そんな会話をしていると、店内を見て回っていた凛が何か缶バッチのようなものを手に持ってこちらに寄ってくる。

 

「星空さん、店の中であんまり騒ぎすぎない……ってそれ……」

「この子可愛いにゃ~。まるでかよちん!」

「いや……それ花陽みたいじゃなくて……」

 

そう言って口を開けて驚いているにこと鷹也は顔を見合わせる。そして穂乃果が凛の持つ缶バッチを指さして言う。

 

「それ……花陽ちゃんだよ!!」

「え?えええーー!!!」

 

 

 

 

 

「う、うううう海未ちゃん!!こここここれ、私たちだよ!!」

「お、おお落ち着きなさい!」

「みみみみμ’sって書いてあるよ!!石鹸売ってるのかな!?」

「な、ななななんでアイドルショップで石鹸売ってるんですか!!」

「海未も大慌てじゃんか。落ち着け。」

 

大慌てで会話する穂乃果と海未の頭に軽くチョップをしつつ、目の前のグッズを見る。『人気爆発中!』や『大量入荷いたしました!』などと書かれたポップの下に大量に用意された缶バッチ、Tシャツ、リストバンドなどの様々なグッズ。それぞれにμ’s文字やメンバーの写真などがプリントされている。

 

「鷹也さんはこのこと何も聞いてなかったんですか?」

「んー……多分聞いてないけど……いや、それっぽい話はあったな。」

「そうなん?」

 

絵里に聞かれて、最初は何も思いつかなかったが少し考えて思い出す。サイトへの登録の際にあったのだ。ここにアップされた動画、画像にて作られたグッズに関しては容認すること。過度な悪意のあるグッズがあった場合は学校側と要相談。そんな規約。グッズの販売に関してはどうなるのか分からないが、いつも鷹也が提出している書類のチェックなどをしてくれている先生がそのうち確認してもらいたいことがある先日と言っていたのでこのことだったのだろう。希にきかれて、鷹也がそう言うと絵里と希は顔を見合わせて苦笑する。

 

「そういえばそんな規約あったわね。」

「まぁ、悪い物でもないし学校側としても後で確認にしていいと思ったんやない?」

「販売前に確認させるべきだったんだろうけど、規約的にはグッズ作ることに問題はないし販売の利益に関して学校と話がついていれば店側としても販売をためらう理由はないしね。」

 

そう言って鷹也は自分のグッズを見つけて大はしゃぎするにこを見る。嫌がっているのなら店に交渉して販売を止めてもらうということも考えなくてはいけないが、感激の涙までながしそうになっているのだ。悪いことでは確実にないだろうし、本人たちが嫌がっていないのなら店に交渉する必要はないだろう。他のメンバーも注目されていることが分かって勇気づけられたようで、泣き虫の花陽と凛は目元に涙を見せている。

 

「よかったな……って穂乃果?どうした?」

「あ、うん。これなんだけど……」

「あの!!」

 

鷹也がメンバーによかったなと声をかけてやろうとしたところで、真っ先にこういうことではしゃいでもおかしくない穂乃果の声が聞こえないことに気が付いて穂乃果に声をかける。μ’sコーナーの隅に貼られていた1つの写真の前で考え込むように顔を寄せていた穂乃果は鷹也に聞かれてその写真を指さす。その写真をのぞき込もうとしたところで店の外から聞いたことのある声。鷹也にとっては聞いたことのあるどころか、これまでの人生で1番聞きなれている声。

 

「ここに私の生写真があるって聞いて……あれはダメなんです!すぐになくしてください!!」

「ことり……?」

「ひゃあ!!」

 

店の外にて店員に必死に話していたのはメイド服という見覚えのない格好の見覚えのある少女。鷹也が声をかけると、口元に手を当てて飛び上がった彼女はこちらに背を向けて固まる。こちらの様子に気が付いて出てきた他のメンバーに、これってことりだよね?と確認するような視線を向けて全員が頷くのを確認して鷹也は少し顔を引きつらせながら声をかける。

 

「ことり、何やってんの?」

「………しゅばっ!!コトリ?ホワット?ダ~レデスカ?」

「うわぁ!外国人!?」

「うん、星空さんはその純粋なままでいいんじゃないかな。」

 

素早い動作でガチャガチャのカプセルを目に当てて、片言で話すことによって誤魔化そうとすることりの相変わらずの誤魔化しの下手さに呆れ、冗談なのか本気なのか誤魔化されそうな凛の純粋さに苦笑しつつ、鷹也は穂乃果と海未と顔を見合わせてからことりに近づく。

 

「ことりちゃん……だよね?」

「ちがいマース!」

「ことりですよね?」

「ちがいマース!!」

「俺の妹だよな?」

「ちがいマース!!!!」

「……うわ、なんかすっごい傷つく……」

「あ!ち、違うくて、いや違わないんだけど、でも違うくて……!うわぁ~ん!もう分かんないよ~!!」

「よし、みんな。これことりだ。」

「知ってるわよ!!」

 

穂乃果と海未に聞かれても誤魔化そうとすることりに鷹也が妹を否定されて凹んで見せることで慌てさせ、反応したところで簡単に復活してみんなに報告。にこに全力で突っ込まれる。鷹也としては本人に認めさせるのが大事だと思ったのだが。だまされたと思ったのか、ことりは焦った際に目元から離したカプセルを再度眼鏡のようにしつつ気を取り直して口を開く。

 

「ソレでわ、ミナサン。」

「まだ誤魔化せてるつもりなんだな……」

「それでは!!みなさん!!」

 

呆れたような鷹也の言葉をかき消すように少し大きな声をことりは出す。もはや片言の設定がブレブレである。そして、ことりはその場からゆっくりと動き出す。もはやどうすればいいのか分からないので他のメンバーはそれを見守る。

 

「ごきげんよう~……よきにはからえ~……皆の衆……」

「穂乃果、海未。きっとあれ逃げるから追いかけて。」

「うん。分かった!」

「はい、任せてください。ことり!待ちなさい!」

「うわぁあん!お兄ちゃんのバカー!!」

 

泣き声を上げながら逃げ出すことりを穂乃果と海未に追いかけさせて鷹也は周りで見ていた他のメンバーのもとに戻る。そこで不思議そうな表情をした凛に聞かれる。

 

「鷹也さんが追いかければ捕まえられたんじゃないですか?」

「無理に男がメイド追いかけたら変態扱いで社会的に死ぬ可能性があるでしょ。」

「それもそうね……」

 

鷹也の言葉に絵里が苦笑して答える。自分たちはことりが鷹也の妹だと分かっているから大丈夫だが、世間一般から見たらそんなことは分からない。他の町でも危ういのにましてやここは秋葉原。歩いている人ほとんどすべてがメイド側の味方と考えていい。そんな場所でメイドを追いかけて捕まえようとする男性。よく考えなくてもアウトである。

 

「まぁ、そういうわけだからことりの捕獲はみんな主体な。」

「捕獲って……」

「さすがにこんなところでメイド服きた妹に会ったら事情聞かなきゃいけないだろ。兄としては。」

「そう……なのかな……?」

 

呆れるような真姫と苦笑いして首を傾げる花陽にそう言いつつ、鷹也はにこに視線を向ける。このあたりの地理に最も詳しいのはやはりこの少女だろう。

 

「矢澤さん、この辺のメイド喫茶で有名なところってどこにある?」

「なんで私に聞くのよ……。有名なところって言ったらあっちに伝説のメイドがいるっていうメイド喫茶があるわ。」

「ミナリンスキーさんですよね!秋葉伝説のメイドさん!!そう言えば、あのメイド喫茶の制服とことり先輩がきていた制服って……」

 

にこに続くように花陽が言う。花陽のアイドル好きのスイッチが入っているし、どうやら相当有名なメイドがいる場所があるらしい。鷹也はその店の名前を聞いて、手元の携帯で店の位置を確認。現在位置とそこまでの道を確認する。

 

「希、星空さん。」

「はーい!」

「何かすればいい?」

「どうせことりのことだからまっすぐ大通りを逃げるなんてことはしないだろうから、きっとここだと思う。このあたりの道の出口に先回りしてきて。」

 

分かった!と元気よく走り出す凛とそれについていく希を見ながら鷹也はこちらを見ている残りの4人の視線に首を傾げる。

 

「どうした?」

「いや……なんでことり先輩の行く道が分かるのよ……」

「そんなのことりの性格考慮すれば簡単。」

 

実際、ことりの性格を考えなくてもここまで執拗に隠そうとしているのだ。脱出経路くらい考えているだろう。それを読んでみただけ。ことりの性格上、そこまで遠回りしての経路は作っていないだろうし曲がり角の多い細い道を使うくらいのものだろう。遠回りしてまでの経路を作ってもそこまで運動が得意でなくてそれを自覚していることりには意味がないだろうし、それくらいはことりも考えるはずだ。鷹也がそこまで説明すると、メンバーが納得したようなしていないような何とも言えない複雑な顔で鷹也を見る。

 

「なんか……さすが兄妹って感じですね……」

「いっそ怖いわよ……」

「西木野さん、怖いって言わないの。大したことじゃないだろ。別にことりの性格考慮しなくてもこのくらいは考えられるだろうし……」

 

別に自分は何も悪いことはしていないはずなのに、なんとなくいたたまれなくなった鷹也が花陽と真姫、そして何とも言えない複雑な表情のにこに弁解をはじめるのを絵里が苦笑いで見る。するとそこで鷹也の携帯がなる。メッセージの送信者は希。どうやら無事ことりの捕獲は成功したようだ。穂乃果たちにも連絡してもらうことにして、鷹也は画面から顔を上げて4人に向き直る。

 

「希が捕まえたって。さっき言ってたメイド喫茶で待ってると。」

「本当に言った通りの経路使ったのね……」

「いや、だから西木野さん?その複雑そうな表情は何?妹の心配しすぎな危ない人みたいな顔でこっち見ないで?」

 

 

 

 

 

「「「えーーー!!!」」」

 

場所は変わってメイド喫茶。女子9人に混ざって店内に入るのは恥ずかしいものがあったがこの際気にしていられない。そうして全員が店内に入ったところでことりが言ったことに全員が驚きの声を上げる。鷹也も少し意外なことだったので驚いた。その内容は

 

「ことり先輩が……秋葉で伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですか!!!??」

「……そうです……」

 

驚きながら聞く花陽にテンション低く答えることりを見て、鷹也は驚きを隠せないままにことりに詳しく話を聞こうとして穂乃果に先を越される。

 

「ひどいよ、ことりちゃん!!言ってくれれば遊びに来て飲み物とかごちそうになったのに!!」

「いや、そこじゃないから。」

「いてっ……も~今日チョップ多いよ~……」

 

ずれたことを言う穂乃果の頭に後ろからチョップをしつつ、鷹也は少し落ち着いた頭で考えてことりに言う。

 

「じゃあ、この写真はどうしたんだ?」

「店内のイベントで歌わされた時に……撮影禁止だったのに……」

「ならアイドルってわけじゃないんだね。よかった~……」

 

その答えに安堵してことりの隣に座る穂乃果を見ながら、海未や他のメンバーと顔を見合わせる。確かに単独でアイドル活動を行っていたわけではないというのは確信していたことだけれども確認できてよかった。だが、

 

「ことり。」

「……はい。」

「確かにアルバイト禁止なんかじゃないし、してもいいとは思うけど……」

 

言われることは、聞かれることは分かっているのだろう。うつむきながら返事をすることりに鷹也は聞く。ここまで来たのだ。聞かれたくないかもしれないが聞くしかない。

 

「なんで……黙ってバイトしてたの?」

「…………3人、ううん。お兄ちゃんも入れて4人でμ’sを始めたころ……このあたりでたまたま歩いてたらスカウトされて……衣装着てみたら可愛くて……それでやってみようと思って……」

 

そこまで説明して、ことりは少し口ごもる。ここまでは始めることになった経緯であり、気持ちではない。ことりが鷹也や母であるひな子にも言わなかった理由は気持ちの方にあるのだろう。少し躊躇って鷹也をチラリとみてからことりは口を開く。

 

「自分を変えられるかもって思ったの……。私、穂乃果ちゃんや海未ちゃんやお兄ちゃんと違って何もないから……」

「何も……ない……」

 

ことりの言葉に鷹也はどうすればいいのか分からなくなる。自分では自分のことを何もないとよくそう言っているし、それは事実だと思っている。でも、でもことりが自分のことをそう思っていると聞かされて思う。

 

「穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張っていくこともできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしてない。行き過ぎてるとは思うし、無理しすぎとは思うけど……お兄ちゃんみたいに周りのためだけに必死になることもできない。」

「ことり…………」

 

そんなことないよと言ってことりに色々声をかけるメンバーを見ながら、鷹也は何も言えずにことりの向かいに立ち尽くす。自分以外の人が、自分の大切な人が自分のことを何もないなんて思ってるのはこんなにも

 

(つらいこと……なんだな……)

 

ことりが何もないなんてことは決してない。絶対にない。変わろうとしている時点で自分とは絶対に違う。なんなら変わる必要だってない。それなのに、なぜか鷹也の口は動かなくて。ことりは分かってるからというように寂し気な笑みをこちらに向けて言う。

 

「お兄ちゃんにそんな風に言わないでって言ったの私なのにね……ごめんね。でも、私はみんなに付いていってるだけだよ。それだけだから……」

「そんなこと……ないよ……」

 

鷹也には自分の口から出たその言葉がとても薄っぺらく思えた。

 

 

 

 

 

「でも、意外だなぁ……。ことりちゃんがそんなこと悩んでたなんて……」

「意外とみんなそうなのかもしれないわね。」

 

ことりに今日は自分1人で帰るから大丈夫と言われて、鷹也は帰り道が同じである絵里と穂乃果、海未と歩く。気持ちが何か波打っているような、複雑な心境になっている鷹也の前で言った穂乃果に絵里がそう返す。

 

「自分のことを優れた人間だなんて思ってる人はそうそういないってこと。だから努力するのよ、みんな。」

「そっか……」

「確かにそうかもしれませんね。」

 

チラリとこちらに視線を向ける3人に気づかないふりをして鷹也は黙って歩く。自分は努力すら放棄した人間だ。自分のための努力を放棄している自分にその考えは当てはまらない。

 

「そうして成長して、周りの人をみてまた頑張る。ライバルみたいな関係なのかもね、友達って。」

 

絵里はそう言って今度こそと鷹也と目を合わせようとする。ため息をついてその視線を受け止めた鷹也は口を開く。

 

「確かにそうだろうね。みんなを見てて思うよ。ギスギスした関係じゃなくて、友達としてお互いに高め合う。その関係ってライバルに見えなくもない。」

「そういうことを伝えるために絵里先輩は目を合わせたんじゃないと思いますよ?」

「知ってるけど考えを変える気はないよ。今でも俺はお前たちに望まれなくなればすぐにサポートをやめるべきだと考えてる。」

 

かたくなな鷹也に少し悲し気な表情で苦笑しつつ、絵里と穂乃果は顔を見合わせる。海未だけは探るような視線を向けてくるがその視線から目を逸らす。自分の本心は悟られないように、彼女たちに言われなくてもサポートをいつまでも続けたいという想いが湧き上がりそうになるのは押し殺す。消す。自分のあり方からすればその感情はあってはならないものだ。それは何があっても変わらない。あくまでも彼女たちに望まれているから協力しているのみ。

 

「でも、そんな風にみんなのことを考えて話せる絢瀬さんにμ’sに入ってもらえてよかったな。」

「そうですね。私もそう思います。」

「な、なんですか、いきなり……。2人も一緒になって褒めたって練習軽くしないわよ?」

 

話題を変えるために褒めてやれば、絵里は照れつつ、鷹也の言葉に賛同した穂乃果と海未にそう言ってじゃあねと3人とは違う道に歩いて行く。それを見送りながら、穂乃果が口を開く。

 

「ねえねえ、海未ちゃんと鷹也くんは私のこと見てもっと頑張らなきゃって思ったことある?」

 

その言葉に海未と顔を見合わせる。自分の思ったこと、楽しそうなことにまっすぐに、みんなにいい影響を与えながら進んでいく穂乃果。彼女に影響を受けた人間なら、この質問の答えはみな同じだろう。

 

「数えきれないほどに。でも、何がかは悔しいから教えません。」

「そうだな……。頑張ろうとは少し違うけど……俺も少しはあるんじゃないか?」

「ええー!!2人とも私よりなんでも上手くこなすのに?」

「そうでもないよ。」

 

驚いたような穂乃果に苦笑して海未と顔を見合わせる。海未はいつも穂乃果に引っ張られて頑張ろうと思うことがたくさんあるのだろう。先ほどのメイド喫茶でことりも同じように思っていると言っていた。その関係はとても良い物だと鷹也は思う。そんな自分にはない物を多く持つ彼女たちに憧れ、すごいと思ったからこそ、自分は彼女たちのために自分を使おうと決めた。これは絵里の言いたかったこととは違うかもしれないが、穂乃果を見て頑張ろうと思ったことには変わりないだろう。穂乃果になんで教えてくれないのと詰め寄られて、穂乃果とことりが1番のライバルだからと答える海未を見て微笑みつつ、鷹也は思う。自分がいなくても妹にはこんなにいい友達が、ライバルがいる。

 

「よし、穂乃果、海未」

 

振り返る2人の頭に手を置いて頼んだよという意味も込めて言う。自分はライバルにも、友達としても、目標にもなれないけど支えるから。だから2人にはことりと支え合ってほしい。一緒に大きくなって、高くまで羽ばたいて、輝いてほしい。

 

「1人で頑張ろうとしてたことりにもちゃんとつたえてやらなきゃな。ライバルだけど……友達なんだから支え合って一緒に頑張ろうって。」

「うん!でも、鷹也くんもだよ?」

「そうですね。鷹也さんもです。一緒にことりに示せるようにしなくちゃいけませんね。」

 

そう言って微笑む彼女たちの言葉に苦笑しつつ、鷹也は2人の髪をくしゃくしゃに撫でることでその言葉を誤魔化した。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか
自分には何もないと思ってしまうところがなんというか程度は違えど兄妹。

お気に入りがまだ増え続けてて嬉しいです!
感想、評価などもお待ちしております。

それでは次回もよろしくお願いします。
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