今回はことりのアニメ9話における成長と鷹也とのやりとりによる心情を書きました。
ことり回ということで張り切りすぎて、鷹也の過去の問題にまで風呂敷を広げすぎたのが問題だったのか。ここからどう展開させていくか大まかな案はあれども形にできる自信がなくなってきました。
ですが何があろうときちんと形にはするつもりではあるので温かい目で見守っていただければ幸いです。
今回の話うまく描写できてる自信はないですが、今回は書くのなぜか難しかったんで多めに見てください……
それではご覧ください。
その日の夜。今日もことりは部屋で歌詞の執筆作業。だとばかり思っていたのだが、晩ご飯も食べ終わって家事も大体終わり。風呂にも入り終えて後は各自の時間となってから、ことりはリビングのテーブルに座って作業をする鷹也の向かいに座る。
「どうした?最近は部屋ですぐ歌詞書いてるんじゃなかった?」
「うん。今日も書くよ。でも聞きたいことがあって……」
いいかな?とこちらを伺うように言ってくることりに、鷹也はパソコンから視線をはずしてことりと目を合わせる。最近はよくこちらの内面のことにも踏み込んでこようとするようになったなと思いつつも、大体予想はついている。おそらくはメイド喫茶でのことだろう。ためらうように、言葉を選ぶようにことりは口を開く。
「あの人たち、お兄ちゃんの知り合い?」
「中・高って同じだった人だよ。」
「そうなんだ……」
鷹也の答えにことりはそう返して唇をきゅっと引き結ぶ。ことりが聞きたいことはこれではないだろうことは鷹也も分かっている。そしてそれを聞くのをことりがためらっているのも。鷹也は小さく笑って言う。
「大丈夫だよ、ことり。」
「でも……」
「俺が遮った時にあいつが何を言おうとしたのか気にしてるんでしょ?」
そう言ってやるとことりは少しうつむきながらも頷く。聞こえないようにはしようとした。でも、少しは聞こえてしまったのだろう。恭介の言葉。鷹也は小さくため息をつく。こんな時に過去が邪魔になるとは思わなかった。こんなことで煩わされることはないと思っていたのだが。鷹也はうつむいてしまったことりに言う。
「ことりが何を聞いて、それを勘違いしてるのかは知らない。そもそもことりの気にするようなことは何も起こってないし、所詮は昔のことだよ。」
「……本当?本当に何もない?」
「何もないよ。だから大丈夫。気にしないの。」
鷹也はそう言って微笑んでやる。これは嘘ではない。ことりが気にするようなことでもない、何もない。それは鷹也が本当に、本心から思っていることだ。鷹也はなおも納得していない様子のことりから視線をはずして立ち上がる。そしてことりの後ろに立ってその頭を撫でてやる。普段ならやめてと言いながらも特に不満気な顔はしないのだが、このタイミングでは子供扱いされてるように感じたのか。少し複雑そうな表情で見上げるようにこちらを見ることりを見下ろして笑う。
「心配してくれてありがとね。」
「…………うん。何かあったら言ってね?」
「分かってるよ。」
絶対だよと念押ししてくることりの頭をもう1度撫でてから鷹也は分かったから早く歌詞の方に集中しなと言って、ことりを急かしてリビングから部屋に追いやる。そうして部屋に1人になった鷹也は立ち上がったついでにコーヒーでも飲もうと、コーヒーメーカーをセット。ひな子も帰ってきてから飲むことを考えて少し多めに作っておく。鷹也は湯気とコーヒー独特のいい香りに目を細め、それから服のポケットに入れていた携帯を取り出してメールを確認する。恭介から渡された紙に書かれていたアドレス。メールを送ってみると、返ってきた返信の内容は明日の夕方にとある場所に来るようにというもの。その時間ならμ’sの練習も終わっているし夜遅すぎるわけでもないから問題はない。行ってからどのような展開になるかはおおよそ予想はつく。だが
「まぁ、いっか…………」
そう呟いて携帯の電源を切る。真っ暗になった画面に反射する自分の表情はいつも通り。何も変わらない。
そして次の日。ことりはいつも通りに朝練、学校、放課後の練習の日程をこなす。今日はバイトも休みなので歌詞づくりに励んだ後に鷹也、海未、穂乃果と神田明神で練習をこなしてから帰路につこうとする。そこで鷹也が立ち止まって口を開く。
「ごめん、今日ちょっと寄るところあるから先帰ってて。」
「お兄ちゃん……?」
「そうなの?一緒に行こっか?」
「いいよ、大した用事じゃないから。」
「そう?分かった。じゃあまた明日ね~!」
穂乃果の提案も断り、またな。と言いながら鷹也はことりたちと反対方向に歩いていく。その背中をことりは黙って見送る。昨日のことで何かあったのかとも思えて心配だが、鷹也が何もないと言っている以上はことりには踏み込むことはできない。今回は完全に鷹也個人の問題だから。どうしてもためらってしまう。
鷹也がそれを望んでいないのなら踏み込むべきではない。穂乃果の言葉で自分に自信は少しは持てるようになった。このままの自分でいいと思えた。でも、兄は自分よりもなんでも上手くできて。その兄が大丈夫と言うなら自分は口を出せない。ことりはそう思ってしまう。少しでも頼ってくれたら、力を貸してくれと言ってくれたらいくらでも力になるのに。助けるのに。あの兄は全くそんな素振りを見せないのだ。
「ことり?どうかしましたか?」
「え……?あ、ううん!何でもないよ。」
心配そうにこちらを覗き込む海未に慌てて笑顔を作る。それならいいんですが……と全く納得していなさそうな海未の様子を見るに、まったく誤魔化せていないようだがこれ以上聞いて来るつもりもないらしい。ことりはその様子にほっとしつつ、先頭を歩き始める穂乃果を追って海未から一歩遅れて歩き出す。
「ことりちゃん!海未ちゃん!遅いよ~!!」
「ちょっと待ってください!もう……ことり、行きますよ。」
「うん。」
前みたいに自分たちのコーチの件で鷹也が何か問題に関わっているのなら、何か自分たちのために問題に関わっているのならことりも踏み込める。わがままでもなんでも言って踏み込もうとする。でも、昨日の口ぶりからするとこれは鷹也自身の問題で。鷹也に決定権があって。心配だけど自分には決められない。鷹也が望んでいないのならと思うとことりには関わるという選択肢を決定できない。だから鷹也のことを信じる。それしかできない。
(お兄ちゃん、信じていいんだよね……)
自分に言い聞かせるように心の中で繰り返す。誤魔化すように繰り返す。
「ただいま。」
「あ、おかえり!」
玄関から聞こえてきた声に、料理をしていた手を止めて急いでリビングから玄関に向かう。ドアを開けるといつもまっすぐリビングに入ってくるはずの鷹也がなぜか自分の部屋に入って行くところだった。閉まりそうになるドアに慌てて声をかける。
「お兄ちゃん?」
「ん?どうした?」
閉じそうになっていたドアからひょっこりと顔だけ覗かせて、鷹也はいつも通りの様子でことりを見る。ことりはそのいつもと変わらない様子にほっとしつつ聞く。
「ううん、すぐに部屋に行くの珍しいなって思って。どうかしたの?」
「もう暑くなってきたし、汗かいたからさ。風呂掃除して、シャワーだけ浴びてこようと思って。」
先にいい?そう言う鷹也に頷くと鷹也はありがとうと微笑んでから部屋に入って行く。着替えやタオルでも取りに行ったのだろう。でも今日の鷹也はそんなに汗をかいていただろうか。少なくとも練習を見てもらっていた時はそうでもなかった気もするのだが。なにかあったのだろうか。そんな考えを頭から振り払う。そろそろ暑くなってきているのは事実だ。外から見ていて分からなくても汗をかいていた可能性だってある。ことりだって今日は帰ってきてからとりあえず練習の汗を流すためにシャワーを浴びている。
「お兄ちゃん、晩ご飯できそうだから準備して待ってるね。」
「分かったー。ありがとう。」
鷹也の返事を聞きつつ、ことりはキッチンに戻って晩ご飯の最後の仕上げに取り掛かる。今日は鷹也の好物のものがなんとなく多くなってしまった。こんなことしかできないけど、何かあるのなら元気になってくれればいいな。そう思いつつ盛り付けをしてテーブルに置いていく。そしてしばらくしてから、ことりがすっかり準備を終えてテーブルで歌詞を考えていると鷹也が風呂場からようやく出てくる。ことりは歌詞ノートから顔を上げてその服装に首を傾げる。
「お兄ちゃん、暑いって言ってたのに長袖……?」
「今半袖奥に入ってるから出すの面倒でさ。夜はまだ冷えるしいいかと思って。暑かったら部屋で着替えるよ。」
そう言う鷹也は長袖長ズボンの部屋着で晩ご飯俺の好きなものばっかりだと言って座る。その手の甲。ことりは何か違和感がある気がして見つめる。
「手、どうしたの?」
「ん?ああ、ちょっとぼーっとしながら歩いてる時にぶつけちゃってさ。電柱って硬いのな……」
まあ、大したことないよ。とりあえず食べよう?という鷹也の言葉に従って食事を開始する。後で手当てしようねと言うことりだが、自分でやるからいいよと鷹也は言って話題を変える。
「そういえば歌詞の方はどう?」
「もうだいたいできたよ。明日にはみんなに見てもらおうと思ってるんだ。」
「へぇ……あんなに苦戦してたのにな。」
それは言わないでと頬を膨らませて見せると、鷹也はごめんごめんと笑う。
「穂乃果のアドバイスのおかげ?」
「うん、穂乃果ちゃんが言ってくれたの。私が考えたこと、思ったこと、感じたことをそのまま書いていいんだって。」
「そのまま……ね。」
穂乃果の言葉によって救われた気がした。今までの中で1番苦労したと言っていい今回の歌詞作り。でも、それを自分の思ったままでいい。そう言われて嬉しかった。苦労した。これまでで最も頑張ったであろうものを自分のそのままでも周りの人を惹きつけるものにできる。自分にはそういうものがあると感じさせてくれた。
「穂乃果ちゃんのおかげで私も何もないわけじゃないんだなって……こんな私でもこのままでいいんだって思えたんだ。」
「そっか……」
ことりが笑顔でそう言うと鷹也は一瞬黙り込むもすぐに笑顔を見せる。その一瞬の間にどんな意味があったのか。
「それなら後で歌詞見せてよ。気になるし。」
「いいけど……なんか恥ずかしいよ~……」
「海未もいつもそんな気持ちなんだろうな。」
苦笑して言う鷹也はいつも通りで。それからもいつも通り。あくまでもいつも通りのままで食事は進み、生活が進む。ことりは前に鷹也に言われたことを思い出す。
『いつも通り。ここはことりが帰ってくる場所。帰ってこなくちゃいけない場所。安心して帰ってくる場所。その場所をいつも通りにし続ける。』
「ここはお兄ちゃんが帰ってくる場所でもあるんだもんね……」
「え?」
「ううん、なんでもないっ!」
鷹也がなにも言わないのならば自分はここをいつも通りにしよう。帰ってこれる場所を作ろう。ご飯を食べ終わり、勝手に歌詞を書いたノートを見ようとする鷹也からダメ~っ!と言って慌ててノートを取り上げつつ、ことりは笑顔を作る。ここは2人が、母を合わせて3人が笑顔ですごす場所だ。これまでも、これからも。
次の日に歌詞を見せるとみんなには高評価をもらった。鷹也も褒めてくれて、真姫もこれならすぐに曲つけれそうと言ってくれた。そうして曲が出来上がり、それからはダンスの振り付け決めをしてダンスの練習と歌の練習を繰り返す。もちろん基礎の練習も疎かにはできない。練習は充実していた。そしていよいよ次の日曜日がライブとなった月曜日。しかし、
『今日も大学の補講入っちゃっていけなそう。ごめんな。』
鷹也からのメッセージを確認してため息。みんなに今日はこれない日みたいと伝えて首を横に振る。あれ以来、鷹也は週に1、2回練習に姿を見せないことがあった。振り付けなどを相談するときや海未や絵里と練習メニューの相談をするときなどはいたので、今のところ練習内容に関しては心配はない。だが、練習に関してこれまでアドバイスしてくれていた人がいないと練習に身が入らないのも事実。やることはあらかじめ決まっているから問題ないとはいえ、練習の質に関してはさすがに少し影響がでる。
「最近鷹也さん来ないこと多いね~」
「そうだね……やっぱり大学忙しいのかな……」
ことりの言葉で今日も鷹也が来ないと知って、凛と花陽がそう言って心配そうな顔をする。ことりとしては大学の講義は口実で何かあったのではと思ってしまう部分もあるのだが、補講が入ってしまったと言われている以上はそれを疑うこともできない。最近の同級生というあの男の人達との1件のこともあったので、心配で1度聞いてみたが補講は本当だよと苦笑されてしまった。
「こうしてても仕方ないわ。ほら、ライブも近いんだから練習始めるわよ。」
絵里の言葉に全員が動き出す。
みんな分かっている。鷹也のことを気にしすぎて練習に身が入らなくなれば、何よりも彼がそれをよく思わないだろう。それは分かっているからこそ、練習に無理やりことりも集中していく。今は自分たちが頑張るべき時なのだ。最初に鷹也が休むと連絡を入れた日にみんなで確認した。普段自分たちのことを支えてくれる彼にできること。自分たちだけでも頑張る。彼がいた方がいいのはもちろんだ。だが、彼がいないから何もできなかったと彼に気を使わせることのないように。自分たちが練習に集中して、今回のライブを最高のものにして、A-RISEのお膝元、アイドルファンの聖地の秋葉原でのライブで認められて、彼に頼りっきりでない。自分たちだけでも頑張って彼のことを支えられると示す。ここで練習に集中できずに失敗してしまえば、ただでさえ今でも休んだその日に家で本当にこちらのことを気にしていたというような様子なのだ。次からは自分のこと何もかもを放ってこっちに来るようになりかねないのだから。
「1!2!3!4!……」
海未のカウントに合わせてみんなでステップを踏む。笑顔を作る。集中できていないわけではない。このままいけばライブにも間に合う。でも、鷹也のいない練習は少し静かで。メンバーみんなの中に隠し切れない違和感を与え続けていた。
そしてライブの日になった。いつものように現地でリハをするわけにもいかないので、学校から許可をもらって屋上でリハを行ってから現地に行くことになる。鷹也も直前の2日。そして当日はきちんと練習に顔を出し、リハーサルも指示を行っていた。そして移動して控え室としてもらったメイド喫茶で着替えて本番を待つ。するとそこにカメラを持った鷹也がやってくる。直前だということで様子を見に来たのだろう。今回も動画にするためにカメラ担当もしてくれている。
「おーやっぱ似合うじゃん、みんな。」
「ふっふ~ん。やっぱりにこにーってば何でも似合っちゃうっていうか~」
「さすが2年生組は着慣れ始めてるからかしっくりきてるし、1年生組も着慣れてない風だけどそれはそれでちゃんと似合ってる。希も大人っぽいから似合うし、絢瀬さんも金髪だからメイド服似合ってるよ。」
「……………………………………」
「ん?」
「ん?っじゃないわよ!!!にこ貴重なメイド姿の感想は!?」
「あー似合ってる似合ってる。」
「適当すぎるわよ!!!」
本来ならば褒められて嬉しいし、少し照れるところなのだがにこをからかうために言っているのが分かるので少し複雑な気分になってことりは苦笑い。みんなも同じような感情を抱いたのだろう。苦笑している。このライブが上手くいくかいかないかでこれからがだいぶ変わると思って緊張も少しあったのだが、そんな緊張もなくなっていったようでみんなの表情がリラックスしたものになる。
「ごめんごめん、大丈夫。さすが矢澤さん。すごく似合ってる。」
「……なんか不本意だけど……まあ分かればいいのよ。」
そう言ってそっぽを向くにこの頬が少し赤くなっているのにことりは気が付いて、同じくそれに気が付いたらしい希と顔を見合わせて微笑む。鷹也もそれに気が付いたのだろう。これなら大丈夫と判断したのか、とりあえず感想はここまでと言って真剣な表情になる。
「たまに練習見てやれなくてごめんな。でも、ここ数日の最後の通しを見てもきちんと練習してたことは分かった。だから、自信もっていい。」
鷹也はそう言って笑う。この笑顔で、このライブ前の言葉で、いつも力をもらった。楽しむ力をもらった。
「今回のライブも、自分も観客も最高の笑顔で。自分の全力で」
『楽しんでやりきる!』
みんなの声が重なる。この言葉のおかげでいつも頑張れた。余計なプレッシャーを感じずに毎回楽しめている。だから今回も。みんなでピースを集める。いつもの掛け声だ。
「ことり。」
そのタイミングで鷹也に声をかけられる。いつもなら黙ってみているはずの鷹也に声をかけられて、ことりは首を傾げながら鷹也をみる。
「大丈夫。ことりの頑張りは、ことりの作った歌詞はちゃんと受け入れられる。だから、」
気負いすぎないで。その言葉で肩の荷がすっと降りた気がした。みんなを見まわすと笑顔で頷いてくれて。鷹也も微笑んでくれる。自分としては上手く隠していたつもりだったのだがバレバレだったらしい。
「ことりちゃん」
穂乃果の言葉で何を求められているのかを察して慌てる。何も考えてないし無理だよと言おうとして、穂乃果に微笑まれる。考えたことをそのまま、感じたことをそのままでいい。みんなの視線をうけながら、ことりは口を開く。
「自分には何もない。みんなについていってるだけだって思ってた。でも……」
ことりはそう言いつつ、思い出す。これまでの自分はみんなに支えられていただけだと思ってた。自分は何も返せていない。その現状に何か不安や焦りや不満を感じていた。でも、穂乃果の言葉で救われた。
「今回歌詞を書いて、とっても大変で、でもとっても頑張って、穂乃果ちゃんに言われて、今回初めて自分はこれでいいんだ。そのままでいいんだって思えたの。」
そこで一端言葉を区切って鷹也を見る。自分と同じく、自分には何もない。そう思っていると言い続ける鷹也。その鷹也のためにもまずが自分が
「このライブで何か変われる……ううん、自分をきちんと見れる気がする。だからこのライブは絶対に成功させたい。μ’sのこれからのためにも、私自身の成長のためにも。」
まずは自分が彼を支えられるように、彼のためになれるように
「私も頑張るから、楽しむから、みんなも一緒に頑張ろうねっ!!」
「「「おー!!」」」
気持ちを変える。自分のために、彼のために、みんなのために。このままの自分をきちんと肯定するのだ。変わる必要なくて、自分は何もないなんてことはないと。笑顔で返事をしてくれるみんなに感謝しつつ、ことりが穂乃果に合図すると点呼が始まる。1から9まで。9人がそろう。穂乃果が笑顔で言う。
「よしっ!行こう!」
『μ’------s!ミュージック————スタート!!!』
「上手くいってよかったね。」
穂乃果の言葉に頷く。いつも使っている神田明神の階段の1番上。そこでことりと海未、穂乃果は3人横に並んで立つ。少し後ろには鷹也の姿。
「これもことりが頑張ってくれたおかげですね。」
「ううん、みんながいたから……みんなのおかげだよ。」
そう言って穂乃果と海未に微笑んでから、後ろにいる鷹也にも視線を向ける。自分の帰る場所になってくれた。そんな鷹也は自分たちの方に視線は向けず、何かぼーっとしたような、何も見ていないような瞳を何もない空間に向けている。
「そんなこと……でも、そういうことにしておこうかな。」
「穂乃果!」
「うん!その方がうれしいっ!!」
「ことりも……」
おどけて言う穂乃果にことりがそう返すと、海未が呆れ気味に苦笑する。そして3人で笑顔になる。後ろには支えてくれる鷹也。表面上はいつもの光景。
「こうして並んでると、ファーストライブのこと思い出さない?」
「うん。」
「あのころは私たちだけでしたね……」
3人はそろって鷹也を見る。今度は鷹也も気が付いたのか。視線をこちらに向けて頷く。
「そうだな。あのころに比べたらだいぶ変わった。」
微笑みながら言われたその言葉に不安が煽られる。なぜか急に心配になった。
「ねぇ……いつまでみんなでいられるのかな……?」
「……どうしたの、急に?」
一瞬の間の後に穂乃果が笑いながら聞いて来る。鷹也は何も言わずに視線を逸らす。そんな様子に不安を覚えながらも、ことりは口を開く。
「だって……高校もあと2年もないんだよ?そうしたら……」
「それは仕方のないことです……」
海未らしい答えが返ってきて、少しの沈黙が生まれる。誰も何も言わない。そこで穂乃果が急にことりに抱き付いた。
「だーいじょうぶ!ずっと一緒だよ!」
「穂乃果ちゃん?」
先ほどまでの寂し気な表情は消え、満面の笑みで穂乃果は言う。
「だって、私これからもずっとずーっとことりちゃんと海未ちゃんとそれに鷹也くんとも一緒にいたいって思ってるよ?大好きだもん!」
「穂乃果ちゃん……うん!私も大好き!」
穂乃果の言葉に泣きそうになりつつも笑う。この少女の言葉は本当にすごい。自分の不安を一掃してくれる。
「ずっとずっと一緒にいようね!」
「うん!」
「ええ!」
そう言ってから3人で手をつないで鷹也を見る。そんな3人を黙ってみていた鷹也の目はこちらに向いているが、どこか感情が読みづらくて。先ほどから見せるその表情にことりは不安になり、鷹也に手を差し出す。自分のいつも通りの光景には、これからもずっと続けていきたい光景には鷹也もいてほしい。だから差し伸べる。
「お兄ちゃん!」
すると鷹也はその差し伸べられた手を見てゆっくりとことりに近づく。相変わらず感情は読みにくいが、その表情に少し苦し気なものが混ざっている気がして。
「そうだな。……ずっと一緒にいれたらいいよな。」
しかし、それもすぐに打ち消してそう言って微笑むと鷹也はことり、穂乃果、海未の頭を順番にポンと叩く。そして、そのままことりたちに背を向けると階段を下り始めた。
「ほら、いつまでもこうしてたら帰るの遅くなるよ。」
「もーいいところなのに。待ってよ~!!」
「あ、穂乃果も鷹也さんも待ってください!ことり、行きますよ?」
「あ……うん。」
むくれながら背中を何度もたたく穂乃果に苦笑する鷹也を見て、海未に促されてことりは歩き出す。穂乃果に握られてあったかくなった右手と違い、差し出したものの握られなかった左手は冷たいままだった。
いかがだったでしょうか。
ことりって問題に直面すると、相手のことを考えなくちゃいけない場合は自分の意見を押し込めて保留などの保守的な選択をしてしまうことが多いと思うんです。
それは相手を思いやれるといういい点ではありますが、一歩間違えば問題をそのまま見過ごしてしまって収集をつけられなくなる。ことりのやさしさゆえの問題だと思ってます。
次回は今回の話の時間軸での鷹也の行動を描写してから次に行きたいと思います。
同じ時間軸でも飽きないようには書くつもりです。
次回は長めになるのかな……?
それでは感想・評価などもお待ちしています。
次回も引き続きよろしくお願いします。