今回から合宿編。
これまでなんというか重めの話が続いていたので、今回の合宿編は気楽に進めたいと思ってます。鷹也の問題に関しても変化は少し起こるかもしれませんが、アニメの話と同様にこの合宿編は仲良くなるということに重点を置きたいと思ってます。
まあ、合宿編と言いつつ今回90000字書いても合宿に出発するところまでしか進まなかったんですけどね。
安定の話の進まなさ。
それではご覧ください。
「あっづい~……」
「なにこれ……」
昨日の休みを経てから、本日は練習日。しかし穂乃果とにこが屋上に出ていくのをためらいつつげんなりとした表情で言う。
「まあそうなるよな。いい加減夏真っ盛りだしなぁ……」
「でも、そんなこと言ってられないですよ。ほら、2人とも始めるわよ。」
屋上へ出ていくドアを塞ぐ2人とそれに阻まれるメンバーの後ろで苦笑する鷹也に向かって言いつつ、絵里はにこと穂乃果を促すが2人は不満気に頬を膨らませる。
「こんなにあっついのに外で練習なんてバカじゃないの!?」
「そうだよ~!」
「でも練習はしなきゃいけないですし……」
真面目な性格だし練習しなくてはという思いがあるのだろうが先輩相手だからか、花陽が控え目に言って鷹也に助けを求めるように視線を向ける。夏休みど真ん中。夏真っ盛りのこの時期の練習ではこうなるのもしかたないとは思うが、この2人としても練習したくないというわけではないだろう。おそらくはただ少しだけ駄々をこねて気持ちを誤魔化したいだけというところか。それは希や絵里、ことりも感じたことのようで苦笑いしている3人と顔を見合わせてからため息をついて2人に言う。
「小泉さんの言う通りだよ。それとも練習しない?」
「それはするけど……っていうかなんでそんな格好で暑くないのよあんたは。見てるだけであっついのよ!」
「……ああ~……え?あっつくないよ?」
「汗だらっだらでよく嘘つくわね……」
鷹也は少しふざけながら言うとにこがそう言ってジト目でこちらを見る。鷹也はここ最近の例にもれずに長袖長ズボン。日焼けを極限まで避ける女子並の肌の露出の少なさを誇っている鷹也は苦笑する。夏休みに入って恭介の呼び出しは増えたが、その時間と練習時間の被る回数が少なくなったために練習にはほとんど毎日顔を出せている。しかし、その分長袖に突っ込まれる回数が増えた。これに関しては散々誤魔化しているがそろそろ限界なのだろうか。夏に長袖でいるなんて理由が特に思いつかないので理由を言わずにまあいいじゃんで誤魔化していたのだが。
「まあ、長袖長ズボンの方が好きなんだよ。日焼けすると真っ赤になってひりひりするのがひどいタイプだから嫌だし。気にしない気にしない。」
「っていうかにこっちのはただの八つ当たりやん。」
「それは………………」
結局いい言い訳が思いつかなくて適当な言葉で誤魔化す。長袖が好きなんてことこれまでの人生で一回も言ったことがないし、日焼けがひどいのは事実だが気にしたことなんてない。ことりや海未、穂乃果は怪訝な目を向けてくるが、何か言う前に希がフォローしてくれたおかげでみんなの視線が言い淀むにこに向く。にこはその視線に耐え切れなくなったようでそっぽを向いてむくれる。
「わかったわよ。悪かったわ。」
「いいよ、別に。特に理由ないのに暑苦しい格好してる俺も悪いしね。」
そう言ってから鷹也はさっさと話題を変える。これ以上引っ張ってはことりたちに突っ込まれてしまう可能性がある。家で何回かことりに聞かれても誤魔化し続けていて、長袖でも違和感のない時期になるまで誤魔化しきれるかすでに微妙なのだからこの話を続けるのは得策ではない。
「さ、早く練習しよう。ラブライブまで一か月と1週間くらいだ。時間がもったいないよ。」
「……時間がない……暑い……」
「穂乃果?」
ラブライブという言葉を出してみんなの意識を練習に向けるという鷹也の考えは成功したようで、全員の顔つきが真剣なものになる。実際に時間がない。まだμ’sは出場権獲得の20位にはたどり着いていないのだ。今が大事な時期。しかし、そこで穂乃果が少し考え込むような表情になる。鷹也が声をかけると満面の笑みを見せる。
「鷹也くん、合宿しようよ!!」
「……はい?」
「合宿だよ、合宿!!」
なんで思いつかなかったんだろうと言って満面の笑みを見せる穂乃果をため息をついて見る。おそらく完全な思い付きで言っているのだろう。とりあえず話の流れを見てみることにする。
「合宿かぁ……面白そう!」
「そやんね。こう炎天下の中での練習ばっかりっていうのもつらいし。」
「でも、どこに行くんですか……?」
「海だよ海!夏だし!」
「費用はどうするのですか?」
楽しそうなことに真っ先に反応する凛と希は置いておくとして、花陽の言葉に答える穂乃果に海未が聞く。すると案の定考えていなかったようで穂乃果はずっと笑顔になっていた穂乃果の顔が少しひきつる。そしてことりに声をかけようとしているのに鷹也は釘をさす。
「ことりのバイト代あてにするなよ?」
「うっ……!!」
「ちなみに俺が把握してる限りは部費にもそんな余裕はない。」
「うぅ…………そうだ!」
崩れ落ちそうになる穂乃果だったが、何か思いついたようで1人関心なさげに階段の手すりで頬杖をついていた真姫に視線を向ける。
「真姫ちゃんの家なら別荘とかあるんじゃない?」
「え!?あるけど……」
「本当!?」
「おい、穂乃果。まさか……」
「真姫ちゃんお願い~!!」
穂乃果の思い付きは真姫の家をあてにするということらしい。確かにあの金持ちの家なら持っていてもおかしくないが、あっさりと別荘の存在を肯定した真姫に驚きつつ鷹也は慌てて穂乃果を止める。
「ちょっと待てって。西木野さんは自分の家の別荘だからまだしも、俺は行かないとしても8人も押しかけるわけにもいかないだろ?」
「そうよ、9人も押しかけて急に迷惑かけるわけにもいかないし……」
「そう……だよね……」
鷹也と、一緒に止めに入ってくれた絵里の言葉で引き下がる穂乃果の目はうるんでいる。おそらくそれに気が付いたのだろう。真姫がうっ……と言葉に詰まるのを見つつ、鷹也は周りを見渡す。穂乃果はもちろん。楽しそうと最初から乗り気だった凛と希を筆頭に他のメンバーも期待の視線を真姫に向けている。絵里や海未も真姫の許可が出れば行きたいことは行きたいのだろう。鷹也は困惑する真姫に苦笑する。
「これはどうしようもないかな。西木野さんさえよければいかせてやって。練習に集中して、ついでにそこでPVでも撮れば結構有意義に過ごせるだろうし。」
「………分かったわよ。聞いてみるわ。」
やったーと歓声を上げる穂乃果と凛に苦笑しつつ、真姫にごめんな、急にと言うと別にと顔を逸らされる。そんな様子に苦笑しているとことりが横から話しかけてくる。
「それより、さっき8人って言ってたけどお兄ちゃんは行かないつもりなの?」
「え?ああ!そうだよ、鷹也くん行かないの!?」
「いや……無理に行くメリットもないだろ?」
「ダメだよ!μ’sの合宿なんだから鷹也くんも来なきゃ!」
「μ’sは9人であって俺はμ’sじゃないんだけど……」
穂乃果の言葉に困ったような顔で周りを見渡すも、味方はいないようで。先ほどの真姫の気持ちが分かったような気がしつつため息をついて頷く。女子9人の合宿に混ざって海に行くなんて気まずいのだが、まあ今さらだと開き直るしかない。
「……わかったよ。俺も頼むよ、西木野さん。」
歓声をまたも上げる穂乃果と凛、嬉しそうなことりと花陽を見て鷹也がやれやれと肩をすくめていると絵里が話しかけてくる。
「それならこれを機にやっておきたいことがあるんですがいいですか?」
「内容によるけど……何やるつもり?」
そう聞くと絵里は後で相談しますと言ってから希と顔を見合わせて微笑んだ。
「合宿楽しみだね?」
「ん~……あんまり乗り気ではないんだけどな……」
「そんなこと言わないでよ~……私は一緒に行けるの嬉しいよ?」
「まあ、楽しそうではあるけどね。」
練習を終えて帰り道。ことりとそんな会話をしながら歩く。鷹也が参加に積極的でない理由は3つ。1つは今更ではあるが女子高生9人の中に混ざるということの抵抗感。普段一緒にいるのは構わないが泊まりとなると別だろう。そしてもう1つ。自分が指導することにメリットをまだ見つけていない。その時点でわざわざ合宿にまでついていくメリットよりも泊まりまですることで生じる可能性のある自分が悪影響を与えてしまう可能性のデメリットの方が大きい。最後の1つは今の自分の状況。泊まりとなると気が抜けない。バレる危険が増す。
「今年は海に行けなかったから楽しみだな~」
「そういえば今年は行ってないな。毎年穂乃果の思い付きで急に連れていかれてたのにそれがなかったからな……」
そう言いながら思い出す。毎年いつも急に穂乃果が海に行きたいと言い出して、たいてい鷹也が引率兼ナンパ対策として付いていっていた。穂乃果が思いついて、ことりがそれに乗っかり、海未が水着を恥ずかしがりながらもそれに流される。その流れを毎年繰り返し、ちゃっかり便乗してついてくる雪穂がいることもあって穂乃果の母親に頼まれるのを断れずに鷹也もついていくのだ。自分としては彼女たちのために動くので問題はないのだが、美少女と言っていい外見のこの少女たちの中でたった1人の男子として動くのはなかなかに周りの視線がいたかった。それも今回ついていくのをためらった原因なのだが。
「あれはきつかった……」
「あはは……ありがとうね。お兄ちゃんがついてきてくれてたから何事もなく遊べたし。」
思い出してげんなりする鷹也にことりが苦笑する。確かに周りの男性の視線から考えても、自分がいなかったら声をかけられて楽しく遊べたかは微妙なところだったろう。だが、今回は絵里も希も真姫もいる。しっかり者の海未に加えて3人の頼れる冷静なメンバーがいるのだ。自分が行かなくてもナンパくらい簡単にあしらいそうな気もする。そうことりに話すも、ことりに確かにそうかもしれないけどお兄ちゃんも合宿なんだから参加しなくちゃダメなのっと穂乃果並の理論のかけらもない意見で話を終えさせられる。
「むちゃくちゃだな、もう……」
「むちゃくちゃでもお兄ちゃんが来てくれればそれでいいのです。」
「そーですか。」
「そーなんですっ。」
そう言って笑うことりの頭を撫でてやる。こんなこと言われたら理由ありきでどれだけいけないと言っても意味がないだろう。これだけ行くことを望まれてるのならしょうがないとあきらめて鷹也は話題を変える。
「毎年だったのに穂乃果が海に行きたいって言いださないとはね……。まぁ、結局合宿ってことで言いだしたわけだけど。」
「それもアイドル関係だもんね。穂乃果ちゃん、スクールアイドル活動に本当に一生懸命だね。」
「そうだな。ことりも含めて他のメンバーも熱心ではあるけど……穂乃果はこれまでの中で1番頑張ってる気がする。」
そう言ってあのまっすぐな少女を思い出す。自分の思ったこと、楽しそうなことにまっすぐに突き進む。周りのことに負けず、その周りのことをいい方向に巻き込みながら進んでいく。まっすぐに進むことで周りにいい変化をもたらす彼女。
「あそこまでまっすぐにわき目もふらずに頑張る穂乃果ちゃんと一緒ならなんでも上手くいきそうな気がするんだ。もちろん、海未ちゃんもお兄ちゃんも他のみんなと一緒なら。」
「………………」
「お兄ちゃん?」
「あ……いや、そうだな。」
空を見上げて言ったことりに少し遅れて反応を返す。思い出していた。昨日の話。昨日母親と決めたこと。
「だから、上手くいくためにもまずは合宿での練習がんばらなくっちゃ!」
そう言って笑うことりに鷹也は微笑んで頷く。ことりにはまだ話していない。
昨日母と相談して決めたのはことりに話すのは事実確認と相手校の条件の確認。こちらの学校でどうこの留学を処理するかをはっきりと決める。それを完全にこなしてからということになった。ことりに行くかどうか決めてもらってからの方がいいのではないか。鷹也はそう言ったのだが、ひな子は首を横に振った。
『あの子に話を通す前に全部決めてからじゃないと上手く調整できませんでしたということになってもいけないし……ことりも条件も何も決めきってないこの段階では答えを出せないでしょう?それなら余計なことで気持ちを揺さぶるのもいけないと思うの。』
その言葉に鷹也はそれもそうかと言うしかなかった。自分には学校同士の調整なんてものは完全に何をすればいいのか把握できていないし、難しいものでもあるというイメージしかない。それなら母親の意見に従うのが無難だろう。母親としてもことりのことを考えたうえでの決定であるだろうし。
ということでことりには留学のことを話さないようにしている。前にも感じた不安感がつのる。ことりにとって穂乃果や海未、他のメンバーはとても大きな存在になっている。それは前に自分の悩みをメイド喫茶で吐露した件や先ほどの言葉で充分伝わってくる。その彼女たちと離れる決断を迫られる。その時ことりはどうするのだろうか。そんなこと全く考えていないのだろう。楽し気に、合宿を楽しみに歩くことりを見て鷹也は心がチクリと痛むのを感じた。
そして結局真姫の家の許可もとることができ、みんなで海の近くにある西木野家の別荘にて合宿を行うことが決定した。鷹也としては不安はいくつかあったが仕方なくの参加。恭介の件に関しては呼び出されないことを祈るしかない。呼び出された場合には面倒だが、1度こちらに戻ってくることも考えなくてはいけないだろう。
(不安しかない……)
一歩間違えば体の傷がバレる危険が増大。9人のスクールアイドルと海というファンに殺されかねない状況。合宿に行くだけで自分だけリスクが高すぎる気がするがそんなことも言っていられないだろう。合宿の提案がなされた日に絵里から送られてきたやっておきたいことに関しては自分も関わる内容だったので参加の理由が増えてしまっているのだ。
「「「先輩禁止?」」」
「したいらしいよ。」
それがこれである。穂乃果が合宿を提案してから1週間たった合宿当日の土曜日。別荘に向かうために駅で電車を待っているときに説明を聞いて、驚きの声を上げるみんなに言って絵里を見る。説明は自分ではなく絵里の方がいいだろう。言い出した本人でもあるしと言うことで絵里も自分が説明する気だったのだろう。頷いて口を開く。
「ええ、少し気になってたのよ。先輩後輩はもちろん大事だけど、ステージの上で踊ってる時は先輩後輩なんて気にしてたらいけないでしょう?」
「そうですね……。確かに私も3年生に合わせてしまうことがありますし……」
「ちょっと、そんな気遣い全く感じたことないけど。」
「矢澤さんはなぁ……」
「なによ?」
海未の言葉に反応して話に入ってくるにこに向けて言うとジト目で見てきたので、他のメンバーを指し示してやる。すると凛、穂乃果、希が口を開く。
「先輩っていうか……後輩?」
「っていうか子供?」
「マスコットかと思ってたけど?」
「というわけだよ。後輩兼子供兼マスコットの矢澤さん。」
「どういうわけよ!!」
いじられて騒ぐにこに苦笑しつつ、希はともかく自分の意思をくみ取って真っ先に口を開いた凛と穂乃果を見て思う。すでに先輩禁止なんていらないくらいなんじゃないだろうか。それを見ていた絵里も大丈夫そうねと苦笑して言う。
「とにかくこれからは先輩後輩関係なく協力していかなくちゃいけないわけだし……じゃあ始めるわよ、穂乃果。」
「あ、は、はい!いいと思います!え、絵里……ちゃん!」
「うん!」
うわぁ……緊張した……と胸をなでおろす穂乃果に鷹也は苦笑するも、案外なんとかなりそうだなと見守る。穂乃果に関してはこういうことへの適応力も高いだろうし大丈夫だろう。そして穂乃果が大丈夫そうということは似たような性格の元気っ子のこの少女も大丈夫ということで。
「じゃあ凛もー!!えっと……ことり……ちゃん?」
「はい!よろしくね、凛ちゃん。」
もはや自分から適応しだす凛に感心しつつ、その性格から上下関係にこだわらないことりも笑顔で返す。そして、そのついでに思いついたのかことりは凛に微笑んで返事をした後にもう1人の1年生に視線を向ける。
「真姫ちゃんも。」
「え……!?」
戸惑いつつも、期待するようなみんなの視線を受けた真姫はそっぽを向いて口を開く。
「べ、別にわざわざ言わなきゃいけないものでもないでしょ!」
「あはは……まあ、みんなゆっくり慣れていけばいいよ。」
「まあこれから合宿やしね、鷹也くん。」
「「「え?」」」
このルールで1番苦労するだろう素直じゃない真姫に苦笑しつつ言った鷹也。その言葉に同調した希にみんながきょとんとする。希は鷹也のことを鷹也さんと呼んでいたはずだ。鷹也も一瞬聞き間違いかと思ってきょとんとするも、すぐに希の意図するところを把握してため息をつく。
「希、俺までそのルールの対象に入れられるわけ……?」
「あれ?違うん?」
「いや、知らないけど……」
おもしろそうに言う希に額に手を当てて呆れながら、鷹也は他のメンバーを見渡す。他のメンバーも迷っているようである。それもそうだろう。グループ内の先輩後輩なしにはなんとか納得できるし、歳もちかい女子相手だからなんとかなる。だが、外部コーチとしての立場をもち、1年生からしたら4つ上の男性である自分と上下関係なしというのは少し違う抵抗感があるだろう。しかし、希はそう思わなかったようで続きを話し始める。
「だって、鷹也くんはことりちゃんのお兄さんで、穂乃果ちゃんと海未ちゃんの幼馴染やろ?会話するときとか名前の呼び方もその3人と他のメンバーとでなんか違う気もするし……それってグループとしてはダメなんやない?」
「まぁ……そうかもしれないけど……ていうか希に関しては希って名前で呼んでるじゃんか。」
「でも、他のみんなは苗字やろ?そこは統一しとかなくちゃいけないんやない?」
そう言って希はにこを見る。なぜにこを見るのかとも思ったが、にこが口を開いたことでその理由がはっきりする。
「そうね。メンバー間で人気の格差があるのは仕方ないけど、コーチからひいきされているみたいなことになるとファンの印象も良くないわ。」
「矢澤さんのアイドル知識に頼ったな……!説得力半端ない……!」
「そういうこと。どうするん?」
にこの言うことは正論である。自分がことりたちと他のメンバーで対応を変えすぎていると判断されても現状しかたないということだ。自分も関わっていることはしばらく前に撮った部活紹介の映像で世間にも知られているので下手なことはできない。だが、自分が近い距離感をとりすぎるのも自分としてはいいことだと思わない。
「それなら、俺がことりたちのことを苗字で……」
「ええー!なんか嫌だよー!!」
「家と練習の時で違うのは違和感ありすぎるよ~……」
「私も今さら苗字で呼ばれるのは……」
「だって。」
「どうしろと……」
そこでことりたちとの距離感を他のメンバーに合わせようとするも、穂乃果とことり、海未の反対にあって却下。最初は3人だけだったからサポートの時も距離感を変えなくてすんでいてそのままで続けてきてしまっていた。こんなことになるならば正式にサポートすることが決まった時に変えとけばよかったとうなだれながら希に視線を向ける。すると希は悪戯成功とういうような楽し気な笑みを浮かべて言う。
「さっきも言ったやん?鷹也くんにもルール適応。」
「……………………」
希の言葉に答えずにみんなを見渡してみるも、みんなは希やにこの言葉の説得力に懐柔されてしまっているようで困惑しつつも納得の視線を向けてくる。こうなっては仕方ない。自分としてはするべきではないと思うのだが、彼女たちが望むのなら仕方ないだろう。鷹也は自分の中でまたもそう誤魔化しつつ、口を開く。
「……分かったよ、希。他のみんなもこれから俺にもその先輩禁止ルール適応するように。絵里、それでいい?」
「えっ!?は、はい、あ、そうじゃなくって、えっと……えっと……い、いいんじゃないかしら、た、鷹也……?」
「うん。よし、不本意だけどこれで決定にしよう。」
自分もまさかみんなと同じように年上に遠慮なしに話すことを要求されると思っていなかったのだろう。鷹也は戸惑いつつも返事をする絵里に苦笑しつつ、この状況の元凶である希をにらんでから言う。そろそろ電車の時間だ。移動を始めなくては。なぜか嬉しそうなことりと穂乃果と海未は極力視界にいれないようにしつつ、八つ当たり気味ににこに話をふる。
「それじゃあ、これから合宿に向かうので改めて部長のにこから一言。」
「ええっ!にこ!?っていうか名前で呼ばれるのすごく聞きなれないわね……」
「その文句は希にどうぞ。っていうか電車の時間もあるから早くして。」
「急かさないでよ!えっと………」
おそらくなにも考えていないだろうという鷹也の予想は当たっていたようでにこは、鷹也に名前で呼ばれて違和感を感じる様子ながらも円になって話していたみんなの中心に進みでて立ち止まる。
「しゅ……しゅっぱ~つ!!」
「………………それだけ?」
「考えてなかったのよ!!」
騒がしくなるメンバーを笑って見つつ、にこを八つ当たり気味にからかって少し気持ちの晴れた鷹也はため息をつく。どうやら、メンバー同士が仲良くなるのを見守りながら自分はダンスのサポートやPV撮影の手伝いだけのつもりだった今回の合宿。自分も練習のサポートの部分以外でも少し考えて動かなくてはいけないらしい。気持ちを切り替えて、メンバー全員を見渡す。
「よし。にこのありがたい出発の声もいただいたし、μ’sの合宿、ちゃんと有意義なものにしような。さ、行くよ。」
「おお……さすが鷹也くん。にこちゃんよりもまとめるのうまい……」
「だから考えてなかったんだからしょうがないでしょ!っていうか、あんた絵里の名前呼ぶ時に比べてものすごく自然に先輩つけないでよぶわね……!」
「いやあ……にこちゃんって先輩っぽくなくって子供っぽいから気楽で……」
「っていうか後輩?」
「マスコットかと思ってたけど?」
「それ2回目よ!」
いえーいとハイタッチする穂乃果と凛と希に突っ込むにこ。その4人を苦笑して見る他のメンバーと一緒にはいはい、いくよと促しつつ電車に乗るために移動を開始。μ’sの夏合宿。ラブライブまであと1か月の追い込みのスタートだ。
いかがだったでしょうか。
以前の鷹也ならば彼女たちと名前で呼び合うのは断固拒否していたかもしれませんが、これまでの変化で、自分が思う自分が関わらないという最善よりも、彼女たちの気持ちの最善を優先すると決めているのであきらめて納得しました。
そしてここからようやく合宿編本番。
今回で合宿スタートのところまでしか進まなかったのに、終わるまで何話かかるのか……
感想・評価お待ちしています。
それでは次回も引き続きよろしくお願いします。