小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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番外編はただいま絶賛テーマに悩み中なのでとりあえず本編更新。

合宿回③
このペースでいったらいったいどれだけ話数かかることやら……

鷹也が苦しむことも悩むこともなく、合宿回は今のところほのぼのしてて書いててほっこりします。

それではごらんください。


自分のペースで、やり方で

最後に海未に怒られるということはあったが、長い電車移動も終えて別荘の最寄りだという駅についてそこから少し歩く。そしてついについた西木野家の別荘。

 

「ここよ。」

『おおーーー!!』

 

そう言って真姫が指し示す家はとても一般人が住めるような家ではないということは分かる広々とした家。部屋なんて窓の数からも広さからも何部屋あるか分かったものではない。ここを別荘として持っている西木野家のお金持ちっぷりに鷹也は改めて感心しつつ、すごいよなどと歓声を上げるメンバ―をよそに真姫に言う。

 

「本当にここを使っていいのか?」

「ええ、ママからもパパからも許可もらってるわ。」

「……元々持って行くつもりではあったけど、本当にあとでお礼の品ちゃんと持って行かなきゃな……」

 

でも何がいいのだろう。このレベルのお金持ちを満足させられるものなんて……などと悩む鷹也に涼しい顔で別にいいわよ、そんなのと言って真姫はみんなを先導して豪邸の中へ入って行く。さすがお金持ちなどと言っている凛に普通でしょと返す真姫のお嬢様っぷりに空笑いしつつ、ついていこうとしてふと隣を見る。

 

「ぐぬぬぬぬ……」

「えっと……にこ?」

「なによ。」

「あー……ドンマイ?」

「なんでよ!!」

 

そこには悔し気な顔をしているにこ。おそらくは真姫の完璧さが悔しかったのだろう。鷹也はそんな様子に苦笑して、唸っていたにこにそう声をかけて別荘に入って行く。その際に不満気に後ろからついてくるにこに声をかける。

 

「気にしないほうがいいよ。別に気にせずに使ってるし、ネガティブに思ってはないだろうけど、これは真姫としてもほしくて、望んで手に入れたものじゃないだろうし。」

「……なによそれ、意味分かんないんですけど。」

「まあ、とりあえず気にすんなってこと。羨ましいのは分かるけどね。」

 

別になんとも思ってないわよ。そう言ってそっぽを向くにこの子供っぽいところを微笑ましく思いつつ、鷹也は続ける。

 

「いいじゃんか、みんなはここで何も考えずに泊まれるんだから。俺はこの豪邸を別荘に持ってる家に何かお礼の品持って行かなきゃいかないんだよ?何持って行けってんだよ……」

「……なんていうか……元気出しなさいよ……」

 

 

 

 

 

「ここがキッチンね。」

「ぐぬぬぬ……」

「おお~……すごい。ここなら材料あれば好きに何でも作れそうだな。」

「晩ご飯はお兄ちゃんが作るの?」

「まあ、それがいいんじゃないかとは思ってるけど……」

 

とりあえずは練習も遊びも何も全部荷物を何とかしてからということでたくさんある客間に分かれて部屋に荷物を置いてから、少しの間別荘を見て回ることに。穂乃果と凛が探検だー!とか言って勝手に歩き回りだしてしまったのが原因だが、広いとはいえ把握しきれない広さでもないので少し見て回る分には問題ないだろう。真姫にも許可をもらって各自好き勝手に見て回る。その中で鷹也はことり、にことともに真姫にキッチンに案内してもらっていたのだが、ここも例にもれずとても広い。

 

「でも、普段と違って10人分もだし……作るの大変じゃない?手伝うよ?」

「まあカレーとかサラダ程度になるけど、そのくらいなら何とでもなるだろ。でかい鍋とかもあるし。大変そうなら頼むよ。」

「……自分たちで普段から作ってるの?」

 

またも悔し気に唸っているにこは放っておくことにして、ことりと鷹也が晩ご飯について相談していると不思議そうな顔をして真姫が話に入ってきた。自分から話に入ってくるのは珍しいなと思いつつ、鷹也は答える。

 

「まあ、交代でだけどね。母さんが遅い時は自分たちで用意してるかな。」

「真姫ちゃんは自分で作ることないの?」

「そうね。手伝い程度なら小さなころにほんの少しだけやったことはあるけど……」

「真姫のお母さんも医療系の仕事だろ?忙しいのにすごいな。」

 

確か真姫の家の家族は医療系の仕事を全員しているはずだ。そんな中で家事をおろそかにせずにいるというのはすごいと思う。自分たちの母親がダメだというわけではなく、純粋に真姫に辛そうなところを見せずに続けているのがすごいと思ったのだ。自分たちの母親に関しても、自分たちが勝手に作り始めて、それからそれに関して何も言わないという約束を取り付けたので今は何も言わないが、前までは母親である自分の仕事なんだからと言ってなかなか譲ろうとしなかったのだから母親というのは尊敬すべき人である。そう思って鷹也は言ったのだが

 

「……?ママも作らないわよ?」

「「「え?」」」

 

きょとんとする真姫に、にこも加わって3人できょとんとする。

 

「じ、じゃあお父さんが作ってるの?」

「パパ?まさか。パパも作らないわよ。」

「じゃあ……誰が作ってんの?」

 

母親が作らないのならば父親という当然の思考でことりがきくも、それも違ったようで真姫が何言ってるのとでも言うように言う。じゃあ誰なのだろうかと思って鷹也がきくと真姫は何でそんなに思いつかないのだろうと言うように首を傾げながら言う。

 

「誰って……料理人だけど?」

「「料理人!?」」

「うわぁ……またハードル上がった……本気のお金持ちだよ……料理人さんから極上の料理作ってもらってるパターンだよ……適当なお菓子とか持ってったら後が怖いよ……あぁ~どうしよう……」

 

驚くことりとにこ。それにどうしよう……と頭を抱える鷹也を見ている真姫だがいまいちこの状況がピンと来ないという様子で怪訝そうな表情。

 

「……そんなに驚くこと?」

「驚くよ!家にそんな人がいるなんて……すごいよねっ?」

「……あの家の雰囲気なら普段から洋菓子は食べてるのか……?それなら和菓子……だけど、家の外観が洋風ってことは洋菓子のほうがオシャレって思ってるかも……いや、でも中途半端にオシャレなもの持って行ったら逆に……いやそもそも定番とはいえお菓子である必要もないわけで……あはは~……もう何も考えたくないなぁ……」

「わわっ!お兄ちゃ~ん!帰ってきて~っ!!」

 

そんな真姫にことりはそう返すも、鷹也としてはそれどころではない。持って行くお礼のハードルがどんどん上がっていっている。これはいよいよ母のコネを使っていい物を取り寄せてもらうことも考えなくてはいけないかもしれない。もはや考えることを放棄しかける鷹也をことりが必死に揺さぶって正気に戻そうとしている中、何を思ったのかにこが口を開く。

 

「へ、へぇ~真姫ちゃんの家もそうなんだ~。にこの家にも専属の料理人がいて~……だからにこも全然料理なんかできないの~……」

「にこも!?それならまだ何とかハードルは上がりきってない……のか?にこの家がものすごいお金持ちとはなんとなく思えないから……」

「え?あ、えっと……」

「にこ先輩もそうだったなんて……すごいですねっ!!」

「あ、あはは……そ、そうなのよ……」

「ことり、先輩禁止だよ。」

 

正常な判断はできていないだろうがとりあえずは鷹也がなんとかにこの言葉で復活し、尊敬の目でにこを見ることりに注意する。ことりは一瞬きょとんとするもすぐに思い出したようではっとした様子で口を覆う。それを見て、それまで引きつった笑みを浮かべていたにこが真剣な顔になって言い聞かせるように言う。

 

「そうよ、にこ先輩じゃなくて“にこにー”。」

「うん、ごめんね。にこちゃん。」

 

素直に謝って言いなおすことりにそれでいいのよと頷くにこを見てから、そこでちらりと鷹也は真姫に視線を向ける。

 

「…………なによ?」

「別に。真姫はいいのかなって。」

「……いいも何も名前呼ぶ機会なかったでしょ、今。」

「まあ、そーだね。」

 

やっぱり素直じゃない真姫に苦笑し、鷹也は時計を見て練習の時間が近づいていることを確認。彼女たちに着替えてくるよう言って先に玄関で待つことにした。

 

 

 

 

 

1番先に来たのは花陽だった。穂乃果か凛がまっさきに張り切って、もしくは練習そっちのけで遊ぶために水着で駆け出してくるものだと思っていたので意外に思いつつ、少し段差になっていた部分に座ってメンバーを待っていた鷹也は片手を挙げる。

 

「や、花陽。みんなは?」

「お、お疲れ様……です。そろそろ来ると思いますけど……あっ……!」

「そっか。じゃあもう少し待ってなきゃな……」

 

途中で先輩禁止ルールを守れていなかったことに気が付いたのだろう。手で口を抑えて小さくなる花陽に苦笑しつつ、鷹也は暑いな……と言って一切腕まくりも何もしていない長袖に包まれた片手をかざしながら空を見上げる。雲一つない青空。夏絶好調である。

 

「鷹也さ……く……ん……は……」

「いいよ、無理しなくても。さん付けで呼びな?」

「で、でも……」

 

そんな鷹也の様子になにか言おうとしたのだろう花陽が何回も言い淀むのを聞いて鷹也は笑って言う。しかし、みんなで決めたことなのだ。守らなくてはという意識が強いのだろう。花陽が不安げにこちらを見ながらためらうので、鷹也はそんな花陽に微笑んで言う。

 

「別にこのルールは俺にまで無理に適用する必要もないしね。それに本質としてはみんなの距離を近づけようってものだよ。メンバー間ならまだしも、俺と花陽じゃあ仲良くなっても多分くん付けにはならないし、くだけた口調にもならないでしょ?」

「それはそうかもしれないですけど……でも他のみんなは……」

 

他のメンバーは、みんなに丁寧な言葉で接し、昔に変えたものを今さらもう1度変えるのもいやということでさん付けを続けている海未、素直でなくて先輩や鷹也を呼び捨てすることに抵抗を持っている様子の真姫を除けば鷹也をくん付けや呼び捨てで呼ぶことに慣れてきている様子だった。それを考えると自分も頑張らなくてはと思っているのだろう。花陽はうつむくが、そんな花陽を鷹也は隣に呼び寄せて座るように促す。し、失礼しますと言って座る花陽のかしこまった様子に苦笑しつつ口を開く。

 

「別に他のメンバーのことを気にする必要はないよ。花陽は花陽のペースでいい。」

「私のペース……ですか?」

「そう。ねえ、花陽は俺と話すとき、前と同じくらい緊張する?例えば……真姫の家に行こうとして迷子になってた時くらい。」

「そ、そんなことないです!私、話すの苦手だからちょっとは緊張しちゃいますけど……でも、鷹也さんはいい人だって分かってますし……すごく自然に話せます。」

 

そう言ってくれる花陽に鷹也は微笑む。花陽はことりたち3人を除けば1番早いうちから会話してきていて、μ’sのメンバーになってくれた子だ。鷹也とはだいぶ打ち解けてきていると鷹也は思っている。

まだ今のように2人きりになると少し緊張してしまっているが、前ほど鷹也に緊張することもなくなってきていたし、普通に会話できていた。そもそも、前ならば呼び寄せてもこんなに自然な距離感の隣に座ることなんてなかったはずだ。慣れてない時ならばこの子は2人分くらい開けて隣に座りそうなそんな気がする。

実際に初めて会った時に真姫の家まで案内しているときは隣に自分から並ぼうとはせずに一歩後ろを歩いていた。話しかけるために隣に並ぶのを避けるわけではなかったから、無意識なのかもしれないが一歩後ろを歩くその様子は引っ込み思案の彼女の性格の表れであったのだろうと思う。

そんな花陽が自分に対しては自然に話せると言ってくれたことに微笑みながら鷹也は口を開く。

 

「それならよかった。大丈夫。花陽と俺は仲良くなってる。それなら口調何て関係ないよ。花陽と俺のペースで、やり方で仲良くなっていこう?」

「鷹也さん……」

「このルールは他のメンバーには悪いとは思わないけど、俺と花陽にはちょっと合わなかったってことだね。逆に距離感分からなくなってたみたいだし。」

 

す、すみません……と言って小さくなって謝る花陽にいいよいいよと鷹也は笑いながら言う。先輩禁止ルールを出してからここまでで感じていたことだ。電車でのゲームが始まる前や始まってすぐ、そして先ほどの会話。花陽は先輩禁止ルールを気にしすぎていた。鷹也は4つも年上の男の人で、普段ならくだけた口調で話す、ましてやくん付けなど花陽からしたらとんでもないことだろう。でもそれをしなくてはいけなくて、でもとんでもないことだからどうしても普段の口調で“~です”やさん付けをしてしまって、それに気が付いて落ち込むを繰り返していた。そんなことをしていては逆に距離が離れていってしまう。

 

「だから無理しないでいいよ。これまで通りの口調でオッケー。そのままでも遠慮しないように仲良くなっていこう。」

「…………はい!!」

 

実際電車でのゲームの途中からは、鷹也が焦らなくてもいいと言って許可を出したのでいつも通りの口調で話していたのだが、そこでは自然に、遠慮せずに会話できていた。それならば無理をすることはないだろう。これが花陽の普通で、鷹也に対する普通。他のメンバーが人懐っこかったり適応能力が高すぎるだけなのだ。花陽は花陽のペースで、やり方で鷹也に対して遠慮しないようになればいい。鷹也は笑顔で話しながら花陽の頭にポンと手を置く。

 

「よし、もう大丈夫だな。」

「はい、ありが……てゅ!?」

「っと……ごめん。いやだった?」

 

お礼を言おうとしたのだろうが、途中で鷹也の手が頭に触れて変な声が出たことに気が付いて鷹也は慌てて頭から手を離す。ことりや穂乃果、海未やるようなノリでついやってしまったがふつうは異性に頭を撫でられるのは抵抗があってもおかしくないのだろう。謝る鷹也に、顔を真っ赤にした花陽は慌てながらも首をぶんぶんと横に振る。

 

「え、あ、えっと!いやだったとかじゃなくって……!いきなりだったからびっくりしちゃって……!!」

「そ、そっか。嫌じゃないならよかった。急にごめんな?ついくせで……」

「あ~!!鷹也くんがかよちんの頭撫でてた気がする!!凛も~!!!」

 

すると上の階からそんな声が聞こえてきて、鷹也が立ち上がって上を見上げると上の階の窓から顔を覗かせている凛の姿。見たところ水着姿な気がするのは気のせいだろうか。

 

「え!?花陽ちゃんずるい!!私も!!」

「おい、凛!穂乃果!急に撫でられたがるのやめろ!!今までそんなこと言ったことなかっただろ!?っていうか危ないから走らない!!」

 

奥から聞こえてきた穂乃果の声に抗議する鷹也の声に聞く耳持たず、凛と穂乃果が部屋から飛び出したであろうドアの音が聞こえてくる。穂乃果に関しては昔はことりと一緒にいるときにことりだけ撫でると対抗して撫でられに来ていたことがあったので撫でられるのは好きなのは知っていたが、凛は完全にノリだろう。遠慮がなくなるにしてもあの子はなくしすぎではないだろうか。穂乃果も最近撫でられたがるということもなくなっていたので8割方その場のノリで行動している気もしなくもない。

 

「ったくもう……」

「ふふっ……鷹也さん。」

「どうした?」

 

2人の行動に呆れて鷹也がため息をついていると花陽が笑いながら声をかけてくる。凛と穂乃果に振り回される自分を見て笑っているであろう花陽は立ち上がってこちらを見ると、まだ少し頬を赤くしたままに口を開く。

 

「私……自分のペースで頑張ってみます。鷹也さんとの距離感もしっかりできるようにします。」

「うん、そっか。」

「はい、だから……」

 

鷹也が花陽に笑いかけてやると、そこまで言って花陽は頷く。そして、先ほど鷹也が撫でたあたりに両手をあててから笑う。

 

「ありがとう。」

 

その笑みはとても自然で、魅力的な笑みだった。

 

 

 

 

 

「ぶー!花陽ちゃんだけずるいよー!!」

「そうだにゃー!凛たちも褒められたいにゃー!!」

「えっと……あはは……」

「褒められるどころか反省しろ。」

「「痛っ……」」

 

それから全員降りてきたところで、横に一列に並ぶメンバーの向かい、鷹也の目の前に一歩でてきてむくれる穂乃果と凛の頭にチョップを振り下ろす。結局駆け下りてきた2人は案の定階段辺りで穂乃果が躓き、凛を巻き込んでドアに肩をぶつけて悶絶していた。大した怪我ではないので良かったが一歩間違えば本気で怪我をしかねない。苦笑する他のメンバーの前で反省させるためにそうしてから、鷹也はため息をついて他のメンバーと違って水着を着ている2人とそしてにこを見る。にこは何を勘違いしたのかどや顔でこちらに着ているものを見せつけるようにしてくるが、触れてはいけないと判断。凛と穂乃果に視線を戻してもう1度、反省しろよと言ってからみんなの横に戻らせる。にこが抗議してくるが無視。穂乃果やことり、海未に連れられて毎年海に行っているおかげで女子の水着姿には耐性ができているのだ。そして海未に視線を向ける。

 

「ごめん、海未。お待たせ。」

「いえ、迷惑かけてすみません……」

 

そういう海未にいいよと言って練習メニューに関してきく。今回の合宿の練習メニューに関しては海未が自分にまかせてくれと言ってきていたために鷹也は確認していない。なんでも合宿を機にみっちりやっておきたいことが多くあるので鷹也がいつもどおりのメニューで組むつもりならば自分に1度練習メニューを組ませてくれとのことだった。特別なことを合宿だからと言ってやるつもりもなかった鷹也はそれを許可し、1度確認しに来た時にはこれは無理だろうというメニューだったので訂正させたが、その訂正版に関しては今回見るのが初めてだ。海未は待ってましたと言わんばかりに脇に抱えていた丸めていた紙を広げて壁に貼り付ける。

 

「これが今回の合宿の練習メニューです!!」

「おぉ~……」

「すごい、こんなにびっしり……」

「海未……お前は……」

 

引きつった笑みを浮かべたり、不安そうな表情を浮かべるメンバーの声を聞きつつ鷹也は額に手を当てて呆れる。前に確認させられた練習メニューは確実に死人が出るレベルのメニューだったので変えさせたのだが、海未にはそれが伝わっていなかったらしい。書かれている1日分のメニューはランニング10キロ、遠泳10キロ、精神統一、腕立て腹筋20セット、ダンスレッスン、発声。これを2日間。ある時間全部使って行うというもの。トライアスロンでもやらせる気だろうか、この少女は。真面目なところが裏目に出てしまったようだ。さすがにこのメニューを容認するわけにもいかないので鷹也が口を開こうとするも、その前に穂乃果が口を開く。

 

「って海は!?」

「……私ですが?」

「そうじゃなくて!海だよ!海水浴だよ!!」

「ああ、それならほら!」

 

穂乃果の抗議にそう言って海未が指さしたのはランニング10キロと遠泳10キロの部分。どうやら海未の中ではトライアスロンの一部は海水浴に見えているらしい。ちなみに鷹也はここで気が付いたが、2日目のメニューは1日目よりもきつくなっているらしい。ランニング15キロ、遠泳15キロの文字が見えた。唖然とした様子で引きつった表情を見せるメンバーを気にせずに海未は言う。

 

「最近基礎体力をつける練習が減っています。なのでこれを機にみっちりと……!!」

「でも、これみんなもつかしら……」

「大丈夫です!熱いハートがあれば!!」

「こりゃダメだ……海未の悪いスイッチが入ってる。」

 

絵里のもっともな言葉にも熱い精神論を目をきらきらさせながら言う海未を見て、鷹也はため息をつく。この少女の真面目なところはいいところなのだが、たまにこうやって暴走するときがある。この面も真面目な海未のいいところではあるのだが、これはやりすぎ。最初からきちんと見ておけばよかったと思いつつ、なんとかしてくれというメンバーの視線、特に穂乃果、にこ、凛の強い視線を受けて鷹也は口を開く。

 

「海未、これは無理。時間的にも体力的にもここまでやる余裕はないよ。」

「そんなこと!みんなきっとやり遂げられるはずです!私は信じています!!」

「いや、無理だと……」

「信じてます!!」

「でも……」

「みんなきっと熱いハートがあります!!」

「で……」

「あります!!!」

「あ、これはどうしようもないや。みんな、生きて帰ってきてな。」

「「「えーー!!!!!」」」

 

きらきらした目で語る海未に敵う気がせずに降参。こうなった海未を止めるのは骨が折れるのだ。ならば今止めるよりは練習してる途中にさりげなく練習の分量を減らさせた方が無難だろう。鷹也はそう考えたのだが、穂乃果と凛、にこの水着で遊ぶ気満々の3人はそうは思わなかったらしい。ひそひそと相談すると、頷きあう。

 

「あ!!海未ちゃん!あそこ!!!」

「え?なんですか?」

「いまだ!いっけーー!!!」

「うっわぁ……古典的な手段……」

 

しかし、それにひっかかるのが海未。海未の手をとって適当な方を指さす凛に素直につられている間に穂乃果、にこ、そしてことりが逃げ出す。そして少し遅れて逃げ遅れそうになった花陽を引っ張りながら、海未から手を放した凛がかけていく。結局のところみんな遊びたかったのだろう。ことりなんて穂乃果たちとほぼ同時に笑顔で逃げ出していった。鷹也はそんな様子を苦笑して眺めつつ、海未に声をかける。

 

「やられたな?」

「うう……遊んでいる場合じゃ……」

「まあ、今日くらいいいと思うよ?」

 

納得いっていないようすの海未にそう言ってから同意を求めるように絵里を見る。すると絵里も頷いて口を開く。

 

「そうね。鷹也の言う通りよ。」

「いいんですか?鷹也さん、絵里先輩。……あっ……」

「それだよ。」

 

途中で気が付いて口をおさえる海未に笑いながら鷹也は言う。鷹也のことはそのままでもいいが、絵里に関しては呼び方を変えるルールだ。

 

「先輩禁止。これまであった先輩後輩の関係を何とかするためにも遊んで仲良くなるってのは大事じゃないか?」

「それは……」

「おーい!!」

 

そこまで言ったところで逃げ出して海に駆け出していったメンバーから声がかかる。こちらに手を振る花陽に手を振り返しつつ、笑顔を見せる。もう先輩禁止のルールを必要以上に気にしなくなったようだ。鷹也はそう考えて安心しつつ、逃げ出さなかった組に声をかける。

 

「ほら、呼ばれてるよ。どうせPVもとる予定だったんだし、遊んでる様子もPVになるから無駄ではないよ。」

「そうね、カメラは……」

「うちが持ってるよ。鷹也くんがとってくれるん?」

「そうなるな。男にとられるのは嫌かもしれないけど、俺も抵抗あるの我慢してるから我慢してくれ。」

「そんなことないわよ、お願いね。」

 

絵里はそういってくれるが、嫌だったら希に任せようかとも思うけどと言うと、希も希でカメラを持って行く様子。それならば自分は自分で撮影しようということでカメラを希から受けとる。

 

「おーい!早く早くー!!」

 

とそこでもう1度。今度はにこから声がかかる。その声に今行くわ!と返しつつ、絵里が海未に手を差し出す。

 

「さ、行きましょ!海未!」

 

合宿1日目。スタートは海水浴から。つまりは遊びからだ。

 

 





いかがだったでしょうか。
花陽はこのルールにおいて鷹也相手に限定すれば真姫の次くらいには難しい子だと思ったのでこんな話いれてみました。

ちなみに書いてて思いました。
かよちんかわいいなぁ……

あとUA40000記念の番外編に関しては書こうとは思ったのですがただいま絶賛テーマに悩み中。何かリクエストあればそれも考慮はしたいと思います。
ちなみにクリスマスネタの話は書いてる途中で間違って消しちゃって心が折れてるなうです。

はい。それでは次回も引き続きよろしくお願いします。
感想、評価もできればいただければ嬉しいです。
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