小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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合宿編⑤
今回は凛ちゃんの出番が多いです。
これで合宿編で1年生組と鷹也の会話は結局全部書いたことになりますね。

まさか1年生にここまで出番がくるとは……

それではご覧ください。


なんとなくじゃなくて

真姫との会話を終え、シャワーを浴びて少し気持ちが落ち着いた鷹也は髪をタオルでくしゃくしゃと拭きながら廊下を歩く。恭介との電話に関しては誤魔化せた。このまま誤魔化していればバレることもなく過ごせるだろう。恭介との話し合いも上手くいったので、あの様子ならもはや電話してこないと思われる。

 

「ふう……それにしても広い風呂だったなぁ……」

 

西木野家の別荘は風呂も例にもれず豪華。露天風呂まであるとか聞いていない。ゆっくりと浸かりたい気持ちもあったのだが、怪我がしみるのも嫌でやめておいた。そうでなくても浸かる機会は後であるだろう。長袖のパーカーを着こみ、打撲や腫れている箇所、青あざになっている部分が見えていないか確認して、軽く腕を回して体の調子を確かめながらみんなのいるリビングのドアを開ける。

 

「みんな、買い出しに……ってあれ?真姫と希は?」

「2人ならもう買い出しに行ったよ~ってああ!それ取ろうと思ってたのに!」

「ふふん、取った者勝ちよ。」

 

トランプで神経衰弱をやっているらしく、にこに文句を言っている穂乃果の言葉に鷹也はそっかと言って苦笑する。買い出しに行くなら自分が行こうと思っていたのだが、真姫に気を使われたらしい。本人は絶対に認めないだろうが。それにしても

 

「珍しい組み合わせだな?」

「私とか穂乃果ちゃんも行こうと思ってたんだけど、希ちゃんが自分からついていくって言いだして……」

「へえ。そうなのか。」

 

穂乃果の隣でアドバイザーという名の実質的なプレイヤーになっていることりの言葉に首をひねっていると、ふと神経衰弱をやっているメンバーに混ざっている絵里と視線が合う。絵里は鷹也の考えていることが分かったのか。こちらにウインクを飛ばしてくる。その安心してとでもいうような合図から考えるに、希にも考えがあってのことのようだ。それならば任せておいても大丈夫だろう。絵里に分かったというように頷くと絵里も微笑んで返してくれる。

 

「次、絵里ちゃんの番だよ?」

「あ、そうね……」

 

穂乃果に促され、こちらにアイコンタクトをしていたために全く見ていなかったであろう絵里が見事にバラバラのカードを引き当てるのを見ながら、鷹也が半乾きの髪をタオルで拭きながらおそらくこのメンバーでトランプが最も苦手であろう海未のもとに向かおうとする。荷物の片づけは夜でいいだろうし、買い出し班が帰ってくるまでどうしようもない。海未のサポートにでも入ってやろうという判断だ。鷹也がサポートに入ったところで勝てる気はしないのだが。しかし、その前に

 

「あ、鷹也くん!髪ちゃんと乾かさなきゃダメにゃ!」

「凛?いや、別に自然乾燥で充分だって。」

「ダーメにゃ!」

 

その海未の隣、花陽というアドバイザー兼実質的なプレイヤーを後ろに控える凛が声をかけてくる。鷹也としてはそこまで髪は長くもないし、暑いのでドライヤーまで使うのは面倒なのだが。しかし、凛はそうは思わなかったらしい。他のメンバーも同意見のようでうんうんと頷いている。

 

「確かに今日は海に言っていたから髪パサパサになってるわよね……」

「っていうか、お風呂上りに髪乾かさないのは髪痛みやすくなるからいつでもよくないわよ。」

「髪が長いと特に苦労しますよね……」

「ほら!早く髪乾かしてきた方がいいにゃ!」

「まぁそうかもしれないけど……」

 

女子としては苦労しているのだろう。絵里とにこと海未の言葉に共感して大変だよねと言って頷いているメンバーを見て、賛同を得て嬉しそうに凛が言ってくるのを見る。すると、その視線をどう受け取ったのか。凛がジト目を向けてくる。

 

「……凛がこんなこと言うの意外って思ってる……」

 

ジト目で睨んでくる凛に苦笑しつつ、そんなことないよと首を横に振るも、凛は信じてくれないらしい。隣の花陽が心配そうな視線を向けているのも気にせずに頬を膨らませる。

 

「ふーんだ。どうせ凛は女の子っぽくないもん。こんなこと言いだすの変だよね。鷹也くんなんか髪ぱっさぱさになっちゃえばいいんだ!」

「そういうわけじゃないんだけどなぁ……」

 

すねるようにそっぽを向く凛にどうしようと思っていると、ことりが心配そうに鷹也を見てくる。それに大丈夫と微笑んで見せてから凛に声をかける。

 

「凛、誰もそんなこと思ってないから大丈夫だよ。」

「どうせ凛は髪も短いし、女の子っぽくないもん。」

「そんなことないよ。」

 

鷹也は凛の頭にポンと手を置いて笑いかける。この少女にはそういう思い込みがあることは、μ’s加入の時点で花陽から聞いて知っている。自分と同じような思考。自分に自信がもてないというもの。でもまだ大丈夫。凛は自分に価値がないとまでは思っていない。それならば言ってやれる。説得力は少ないかもしれない。でも、言える。ことりをチラリと見る。できることなら、凛のその思い込みをなくしてやるのは自分の役目だ。

 

「凛だって女の子してるよ。可愛い、女の子っぽい女の子だよ。そもそも、凛が女の子っぽくないなら俺に髪乾かせって言わないでしょ。」

「でも……」

「いいから。俺だけじゃなく、それはみんなが思ってる。凛が自分は女の子っぽくないって思ってても、周りは凛のこと女の子って思ってる。それは忘れないで。」

 

自分で信じられなくてもそんな自分を思ってくれる周りのことは忘れないで。この言葉に関しては鷹也は肯定した。この言葉で自分は彼女たちの気持ちを無視せずに最善を目指そうと思うことにした。だからこれだけは言えるのだ。凛がこれで自分のことを女の子っぽくなくなんかないと思えるとは思わないし、そう完全に自信を持てとまでは自分は言えない。自分だってことりに同じように言葉をもらっておいて自分の価値感を変える気がないのだから。だから、ことりに何も言えず、悩む必要はないと思うとだけ言っていつも通りを続けているように、自分は凛が女の子っぽいと思っているということだけ伝える。それだけでも多少は力になると信じて。凛に届くと信じて。

いいな?と言って凛の頭を軽く撫でてからまだ半乾きの前髪を手でつまみ、ため息をつく。さすがにこの流れで乾かしに行かないという選択肢はないだろう。

 

「確か洗面所にドライヤーあったな……ったくもう……」

「お兄ちゃん、家でもいつも自然乾燥だもんね。」

 

めんどくさそうな鷹也にことりがそう言って苦笑する。そんなことりにそうなんだよなぁとため息をついて返しつつ、リビングから出ていこうとすると凛から声がかかる。

 

「……鷹也くんは凛が女の子っぽいって思う?」

「うん。少なくとも俺の周りにいる女子と同じくらいかそれ以上には。」

「そっか……」

 

実際に凛は元気で、明るくて、それでいて女の子っぽい少女だと思う。人懐っこく、天然で可愛らしい言動も多いうえに、そもそも『にゃ』なんて語尾を男がつけてもほとんど確実に可愛らしくならない。それでいて髪を乾かすことにきちんとしているなどというどちらかといえば女子特有のところもちゃんとしている。外見も性格も可愛らしいと言えるものがあるのだ。これで女の子っぽくないも何もないだろう。鷹也が凛の問いかけにそう考えつつ即答してやると、凛はすこし考え込むようにうつむくと、うんと頷いて立ち上がる。

 

「鷹也くん!凛が髪乾かしてあげるにゃ!」

「は?いや、自分でやるか……」

「いっくにゃー!」

「凛、聞いて!自分でやるから……って引っ張んな!」

 

満面の笑みでそう言った凛は鷹也の手を取って歩きだす。その手を無理やり振りほどくわけにもいかず、鷹也が他のメンバーを見まわすも、みんな微笑ましい視線を向けるのみ。花陽が特に嬉しそうな顔をしているのが印象的だ。誰も助けてくれないことを確認してため息をつきつつ、鷹也は凛に引っ張られていった。

 

 

 

 

 

嬉しかった。自分は髪も短いし、女の子っぽくはない。それは自分の中では変わらない。幼馴染の親友やμ’sのメンバ―はそんなことないと言ってくれるが、自分はそうは思えないから。でも

 

「にゃんにゃにゃにゃ~♪」

「ずいぶんご機嫌だな?」

「うん!」

 

鼻歌を歌いながら、目の前に座ってため息をつく青年の髪をドライヤーで乾かす。普段から自分たちのサポートをしてくれる彼はみんなから尊敬され、いい人だと言われている。自分もそう思っている。でも、自分はみんながそこまで絶大な信頼を寄せる理由が分からなかった。あくまで幼馴染の親友が信じて、信頼しているからという理由で漠然といい人なのだなと思っていただけ。

 

「なあ、あっついんだけど……」

「まだダメだよ。もう少し待って。」

「……凛って末っ子でしょ?」

「うん。そうだけど……どうして?」

 

でも、さっきの言葉。頭に手を置かれ、撫でられながら聞いた言葉は嬉しかった。自分に自信を持ってではなく、自分のことをそう思ってくれてる周りを忘れないで。その言葉はなんだか、とっても素直に受け入れられた。他でないこの自分のことを完全に否定しつづけている青年が言ってくれたからだろう。自分のことをきちんと見て、自分のことをきちんと考えてそう言ってくれている気がした。彼が自分のために本当に色々考えて言ってくれている気がした。そしてそんな言葉をくれた彼に感謝した。やっぱりかと頷いてから、彼は言う。

 

「いや、それにしてはずいぶんと今回は面倒見いいなと思って。」

「凛も小さい時にお姉ちゃんとかにいっつも怒られてたんだ。ちゃんと髪乾かしなさいって。」

「やっぱりか。そんなことじゃないかって思った。」

 

女の子っぽいお姉ちゃんたちのことを見習いたい一心でこういうことにはちゃんとするようになった。だから彼が男の人とはいえ、髪を乾かした方がいいということは知っているからお姉ちゃんにしてもらっていたことを思い出して放っておけなくなったのだ。苦笑する彼にむうと膨れる。確かに前までは髪を乾かすのがめんどくさかったときもあったけど今はそんなことはない。キチンと髪のケアだってしているのだ。最後に全体が乾いていることを確認して頷く。

 

「うん!できた!」

「っと、そっか。ありがとな。」

「鷹也くん。」

 

立ち上がる彼に声をかける。こんな簡単にこう思うのは間違っているだろうか。間違っているかもしれない。でも、嬉しかったのだ。ならその気持ちを素直に持ってもいいだろう。振り向く彼はいつも通りの人を安心させるような穏やかな表情をしていて。そんな彼に満面の笑みを見せる。自分に自信は持てないし、まだ自分が女の子っぽいなんて全く思えないけど。でも、彼の言葉は嬉しかった。だから、

 

「ありがとう!」

 

なに急にと言って笑って、リビングに戻ろうとする彼の後を追いかける。

これからは本当の意味で支えてくれている彼のためにも頑張れるように。支えてくれている彼のことをその支えの中の精一杯でこちらからも支えれるように。幼馴染の親友がそうしようとしているからとか、μ’sのみんながそうしようとしているからとかじゃない。自分の意志でそうしようと思った。なんとなくじゃなく自分の意志で。この青年は信じられるいい人だと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「ったく仕方ないわね~」

『おお~……』

 

目の前で怒涛の勢いで料理を進めるにこを見て真姫、穂乃果、ことりが声をあげる。最初はことりに手伝ってもらいながら鷹也が作っていたのだが、

 

「にこ、その皿とって」

「はい。そっちのサラダできたらこっち手伝いなさいよ。」

「分かってる。」

「ごめんね。私が手伝ってたのに、もたもたしてたから……」

 

ことりの言葉に鷹也は大丈夫だよと返しつつ、必死ににこの調理スピードについていく。自分も最初からやっていて自分の役割だからということじゃなければ諦めて全部にこに任せているところだ。自分の当番でなく、手伝いというだけだったことりが諦めて任せるのも無理はない。

 

「それにしても手際いいな、にこ。」

「ふっふ~ん。にこにーならこのくらい当然よ。」

「…………………………」

「なによ。その目は。」

「別に……」

 

最初の方に料理したことないとか言っていたような気がしなくもないが突っ込まないでおいてやる。どうせあの時は真姫に対抗しようとして言ったことだろう。鷹也もあの時は混乱していて信じていたが、もはや諦めた頭で冷静に考えてみればそう考えるのが普通だ。にこのジト目を受け流しつつ、サラダを盛り付けていく。

 

「いい匂いにゃ~……」

「何か手伝うことは……なさそうですね。」

 

そこで匂いに釣られてきたらしい凛と何か手伝おうと思ったのか海未がやってくる。鷹也はそうだなと苦笑してから、盛り付けていたサラダの皿を差し出す。

 

「じゃあ、これ持ってって。ことりと穂乃果と真姫はみんなの分の取り皿持って行ってあげて。凛は………」

「凛、みんな集めてるね!」

「お、おう……お腹空いてんだな、凛。」

 

それぞれに指示を出しつつ、にこの圧倒的手際のよさで完成したカレーを皿に盛りつける。途中で花陽の分だけ茶碗に白米を盛ることも忘れない。なんでもこうでなくては白米じゃないとか。花陽に事前に頼まれていたことだ。何でわたしがと零す真姫をなだめるのはことりに任せつつ、手分けしてリビングのテーブルに料理を運ぶと、そこにはすでに全員が集合していた。

 

『おお~~!!』

「口に合うかは分かんないけど、まずくはないと思うよ。」

「お兄ちゃん、料理上手いから大丈夫だよ。ありがとう!」

 

歓声を上げるみんなに釘を刺して置き、お礼を言うことりに微笑みつつ、その隣に座る。絵里が花陽だけ茶碗なことを気にしていたが、花陽の返事は気にしないでくださいとのことなので気にしてはいけないことなのだろう。目がアイドルについて語る時並にキラキラしているのが気になる。

 

「2人とも料理上手だね!」

「まあ、そこまででもないと思うけど料理は普段からしてるしな。」

「あれ?でもにこちゃんは……」

 

穂乃果の言葉に鷹也がそう返すと、ことりがにこが何か言う前に口を開く。あ……と思ったのも一瞬。にこが止める間もなく真姫が続いて言う。

 

「料理しないって言ってたわよ。専属の料理人がいるとかで。」

「お前ら言ってやるなよ……俺は心の中でとどめてたのに。ごめんな、にこ。本当は料理できるのに料理人がいるからしたことないなんて言っていたことを隠し切れなくて……」

「あんたが1番詳しく言ってんのよ!!」

 

ツッコミを入れるにこにあははと笑って誤魔化す。どうせバレたのなら弄らなくては損かなと思ったのと、あるいはその少しのいじりでこの話は誤魔化せるかとも期待したのだが、そんなことはなかったらしい。全員の視線がにこに集中する。

 

「……い……」

『い?』

「いや~にこにーこんな重いスプーン持てな~い~」

「それではみなさん。両手を合わせて。いただきま……」

「無視しないでよ!!」

 

にこの言葉に反応せずに食事を開始しようとした鷹也の言葉をにこが遮る。ちなみに全員が鷹也の言葉に合わせて手を合わせていたのでにこの言葉に対する感想はお察しのとおりだ。そろそろ食べないとせっかくのカレーが冷めてしまうのだが。鷹也は苦笑いで言う。

 

「いや、さすがに……なぁ?」

「うん、無理があるよ……」

「うぅ……」

 

さすがに普通のカレースプーンを持てないなんて言葉は無理がある。本当ならば日常生活に支障が出まくりなレベルの筋力のなさだ。そう言って穂乃果と顔を見合わせてからにこに言うと、にこは少し苦し気に唸ってから何を思ったか立ち上がる。

 

「い、今時のアイドルは料理の1つや2つ……」

「それではみなさん。いただきます!」

『いただきまーす!!』

「い、いただきます!って聞きなさいよ!!」

 

開き直るにこを無視して食事を開始。ちなみにカレーもサラダも大好評だった。

 

 

 

 

 

わいわいと会話しながらの食事を終えて、少しゆったりとした時間が流れる。もはや穂乃果などソファに寝っ転がりだす始末である。

 

「食べてすぐ横になると牛になりますよ。」

「も~お母さんみたいなこと言わないで~」

「ま、横になりたい気持ちも分かるけどな。食べ終わった後ってなんとなく気が緩むし。」

「鷹也さんまで……」

 

正論を言っているはずの自分ではなく穂乃果の味方をしたことに海未が不満気な視線を向けてくるのをまあまあとなだめつつ、これからどうするかとみんなに視線を移す。すると、それに凛が真っ先に反応した。

 

「じゃあ、みんなで花火をするにゃー!!」

「すっごい元気だな、凛……」

「まだまだ遊ぶにゃ!!」

 

元気よく返してくる凛を見て、これが例の修学旅行テンションかと花陽に視線を向けると花陽が苦笑いしながら頷いてくる。このテンションでずっといたならさぞ修学旅行は大変だっただろう。鷹也は時計をちらりと見る。今から何をするにしても何かしたらそれで寝る時間になるくらいの時間だろう。

 

「じゃあ、みんなは花火やってきな。俺が食器片付けとく。」

「え、でも……」

「お兄ちゃんは作ってくれたんだから私がやるよ。お兄ちゃんはみんなと行ってきていいよ?」

「そういうことじゃないでしょ、ことり。不公平はよくないわ。片付けはみんなでできることなんだから……みんな、自分の食器は自分で片付けて!」

「それに花火なんてやっている暇はありません。その後は練習です。」

 

海未の言葉にみんなの表情が固まる。それもそうだろう。この空気では練習なんてやっても集中できないのは目に見えている。しかし、海未はそんなことお構いなしに言う。

 

「昼間にあんなに遊んでしまったのですから……」

「いや、でも海未。さすがに今から練習は……」

「雪穂~おちゃまだ~?」

「穂乃果はこの調子だし……」

 

鷹也としても花火はまだしも、今から練習をしても意味があるか怪しいので止めようとするも、海未の決意は固いようで聞く耳を持たない。穂乃果に家ですか!と言いつつ、練習しますの言葉は撤回しない。今のところ、花火派、つまりは練習したくない派は凛とにこと穂乃果。場を伺っているのが絵里と希と花陽。我関せずと言った様子なのが真姫。練習する派は海未だ。練習する派が圧倒的に少ないのだが、その1人の意志が固いために何ともしようがない。どうするかなと苦笑いでことりと顔を見合わせていると我関せず派の真姫が立ち上がる。

 

「それじゃあ私はこれ片付けたらもう寝るわね。」

「真姫、面倒だからって逃げる気だな。」

「そうじゃないわよ。」

「え~!真姫ちゃんもやろうよ、花火!」

「凛はぶれないなぁ……」

 

この合宿の主旨も考えるとみんなで行動した方がいいはず。鷹也は立ち上がる真姫を逃がさないように声をかけるも、そっけない返事。凛はどうしても花火をやりたいようで真姫を引き留めるも、その言葉に真姫よりも、苦笑している鷹也や絵里よりも早く反応したのは海未。

 

「いえ、練習が先です。」

「本気……?」

「ゆ~きほ~」

「そうにゃ!今日はみんなで花火しよ?」

「そういうわけにはいきません。」

「おちゃおちゃ~」

「むう!かよちんはどう思うの?」

「え!?わ、私はお風呂に……」

「お~ちゃ~雪穂~」

「ここで第3の意見だせるってある意味すごいよ、花陽。あと穂乃果、後でお茶だしてやるから黙って!」

 

意見をお互いに譲る気のない遊びたい派の凛と練習したい派の海未の間で第3の意見を出した様子を伺う派、改めお風呂派の花陽に苦笑いしつつ、いい加減うるさい穂乃果を黙らせる。お茶がもらえると思ったのか、簡単に黙る穂乃果に呆れていると希が口を開いた。

 

「じゃあ今日はもうお風呂入って寝よっか?」

 

希曰く、練習は明日の早朝。花火は明日の夜ということにすればいいとのこと。鷹也は少し考えて頷く。

 

「それがいいんじゃないかな。今から練習やっても……」

「たーかやくーん、おちゃ~」

「ちょっと待てっての!……効率悪いだろうし。むやみに練習するよりも効率よく練習しよう。」

 

渡されないお茶にしびれを切らし、今度は雪穂と言っていた部分を鷹也に変えて声を上げだす穂乃果に言い返しつつ、いいか?とみんなに確認するとみんなそれでいいという様子。それならこれからの日程はこれで決定だろう。解決案を出してくれた希に感謝の視線を向けると微笑みで返される。

 

「お~ちゃ~!」

「穂乃果、片付けてからじゃないとお茶あげないよ。」

「え~!!」

 

その後、鷹也が1人で片付けると言ったのだが、そこもなぜかみんな譲らなかったので全員で分担して片付けることに。ちなみにそんなにお茶が飲みたかったのか。穂乃果が片付けるのが1番早かった。

 

 

 

 

 

それからみんながお風呂に入った後に鷹也も入り、髪もしっかりと乾かしてから寝ることに。その寝る場所なのだがどうやらみんなはリビングにあったテーブルをどかしてみんなで布団をひいて寝るようだ。それぞれに部屋はあてがわれているはずなのだが、まあ合宿っぽくていいのではないだろうか。

 

「わーい!」

「きっもちいいにゃー!」

「わー!!」

 

穂乃果と凛が敷かれた敷布団に真っ先に飛び込み、ゴロゴロと転がりだし、さりげなくにこがそこに混ざるのを見ながら鷹也は運んできた掛け布団を床におろしてことりに確認をとる。

 

「これで全部だな?」

「うん。ごめんね?手伝ってもらっちゃって……」

「いいよいいよ。俺がついて来た理由にはこういうもの運びをするためってのもあるんだから。」

 

みんな自分たちの分だから自分たちが運ぶと言ってくれたのだが、こういう仕事までなくなってはいよいよ自分がついて来た意味がなくなってしまう。ありがとうとお礼を言うことりにどういたしましてと言いつつ、また明日なと言って部屋から出ようとドアに手をかけてから振り返る。

 

「じゃあ、俺は部屋いるからな。明日も早いんだからさっさと寝ろよ。」

『はーい』

 

みんなの返事を聞きつつ、ドアを閉める。あの凛と穂乃果の様子では寝るまでにしばらく時間を要するかもしれないがさすがに真面目なメンバーが寝させるだろう。

 

「仕方ないとは言っても若干寂しいよなぁ……」

 

呟きながら、2階のあてがわれた部屋の中へ。さすがに女子高生9人と同じ部屋では寝れないし、寝る気もないのだが寂しいのは仕方ないことで。小さくため息をつきながら部屋のついてすぐに備え付けてあった机に置いた持ってきたパソコンの電源を入れる。夏休みであろうと学校の存続のために動く理事長の仕事はあるわけで。その手伝いをしている鷹也の仕事もまたある。母から送られてきた仕事の内容を確認する。少し少ないのは母がこちらに遠慮したからだろうか。帰ったら文句言わないとなと思いつつ、仕事として送られてきたデータの整理を開始する。

 

「ここは……っていうか、この書類はこの日に使うものだから……」

 

寂しさを誤魔化すように使う日別に整理し、データの数値を整理し、文章によって補足していく作業に没頭していく。そうしてしばらくしただろうか。いつもより量が少ないこともあって早めに終わりそうなため、明日までに終わらせて次の仕事を催促しようかと考えながら、少し休憩と伸びをしたときに気が付いた。下の階が何やら騒がしい。さっきまで静かだったから寝ているものだと思っていたのだが。

 

「うるさいなら寝てないだろうし、飲み物取りに行ってもいいだろ……」

 

飲み物が置いてあるキッチンまではリビングを嫌でも通らなくてはいけない。持っているお茶でもいいのだが、もう少し作業を続けるならコーヒーを飲みたいところだ。気分的に。鷹也はそう考えて、吹き抜けになっているリビングの階段の上部分に続く2階のドアを開ける。すると、

 

「お、お兄ちゃん!」

「鷹也さん!助けてください~!!」

「にゃ!来るにゃ~!!」

 

こちらを見つけて慌てた様子で階段を上って逃げてくることり、花陽、凛の姿。何事かと思って、手すりから身を乗り出して階下に視線を向けると

 

「逃がしません……!」

「くっ……生き残るには闘うしか……ぶふうっ!!」

「穂乃果!?」

「そっちですか……」

「つっっっ!!!」

 

見てはいけないものと目が合った気分。何かを顔面に受けて布団に倒れ込んで目を回す穂乃果の無事を確認することもできずに、慌てて口をおさえて乗り出していた体を手すりの下に隠す。なんだろうか。海未の外見をした人が目を赤く光らせて禍々しいオーラを放っていた気がするのだが。横に視線を向けると涙目になった3人。

 

「何あれ…………?」

「海未ちゃんが怒っちゃって……」

「あれってやっぱ海未か……」

 

花陽の言葉に呟いてもう1度視線をこっそりと下に向ける。すると、今度はにこが吹き飛ばされる姿。その隙にこちらに駆けてくる絵里、希、真姫の姿が見えた。何が顔面に当たってるのか。鷹也はにこのそばに転がっている物に視線を向ける。そこにはみんなが寝るときに使っていたはずの枕。さっき鷹也が運んだものなので間違いない。体をもとの位置に戻して恐る恐る確認の視線を3人にむけると涙目で頷く。

 

「超音速まくら……あれってまくらの当たった音?結構な破壊力の音してたぞ……?」

「海未ちゃん、寝てる時に起こされるとすごく機嫌悪くなるから……」

「誰だよ、起こしたの……!!ってか起こすほど騒ぐなよ、みんなして……!!」

「真姫ちゃんにゃ……!真姫ちゃんが始めたから……」

「だから私じゃないって何度も……!」

「ってそんなこと言ってる場合じゃないわよ!みんな!逃げて!」

「「「「え?」」」」

 

ことりの言葉にそう言えばと思い出して文句を言う鷹也に凛が言う。その言葉にいなかったはずの真姫の反論が聞こえてきて、続く絵里の声に4人で呆ける。そういえばこっちに逃げてきていたなぁ……と半ば現実逃避気味に思いつつ、恐る恐る階段の方に視線を向ける。絵里、真姫に比べれば足は遅い希の後ろから来ていたのは

 

「逃がしません……!!」

「つっっ!!逃げろ!!まくらに当たんないように!!」

「にゃーーー!!!」

 

超音速で飛んでくる枕を階段の手すりを盾にして避けつつ、夜の枕投げ(ずっと海未のターン)が開始された。

 

 





凛ちゃんがキャラ崩壊してないか不安ですが、きっと大丈夫……ですよね?
きっと大丈夫だと信じてます。

というわけで次は枕投げ回ですかね。
書いてたら楽しくなって気が付いたらこうなってました。

感想・評価もできればいただけると嬉しいです。
お気に入りも240を超えていて250が見えてきています。本当に読んでいただいている方ありがとうございます。

それでは次回もひきつづきよろしくお願いします。
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