小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

42 / 75

年末ですね。忙しいですね。スクフェスの凛ちゃんもほしいのに時間がいくらあっても足りないですね。

ということで今回は真姫ちゃんの伏線回収を前回に引き続き少し。それから久しぶりの彼と彼女も登場です。不良くんたちに関してはもう少し出番は待っていただこうかなと思ってます。

今回は何となく書くのに苦戦しました。
それではご覧ください。


本番はここから

風に吹かれて錆ついた音を鳴らすブランコ。

その古びた音は懐かしい記憶を呼び戻す。

普通なら嫌な、でも自分としては嫌でも何でもない。自分としてはただただ普通のこととして処理された出来事。

そうだとはしても、普通のこととして処理されているけれど、でも思い出したくはない。

そんな自分の人生で確実に重要な部類に入ってくる出来事。

 

「なんの……こと?急にどうしたのさ。」

 

目の前の少女に対して顔に笑みを貼り付ける。誤魔化すことに、嘘をつくことになれたことで習慣化された完璧な笑み。

 

「訳もなくそんな必死に走ってきて。真姫らしくもない。」

 

真剣な顔の真姫を茶化すように鷹也は言う。走ってきたことで少し頬を赤くし、息を乱す彼女は鷹也から一切目をそらさない。

 

「私らしいか、私らしくないかは私が決めるわ。」

「まぁそれはそーだよね。」

「誤魔化さないで!」

 

ふざけたように笑いながら言ってやると真姫が少し声を大きくして言う。その顔に浮かぶのは真剣な表情だが、鷹也は気づいている。不安に思っている。その目はなにか不安に思うように揺れていた。

 

「誤魔化すも何も。人違いじゃない?」

「誤魔化してるじゃない。」

「いや、別に何も誤魔化してなんか……」

「…………」

 

無言の真姫に対して、困ったように頭をかいて鷹也は苦笑する。なぜここまで確信をもっているのかは分からない。そもそもまだはっきりしないが、もしあの出来事を知っているのなら、なぜ知っているのかと言う前に誤魔化さなくてはいけない。ここで余計な自分のことがばれてはいけない。鷹也はため息をついて言う。

 

「真姫が何のことを言ってるのかは知らない。でも、それは俺と関係ない。」

「……確かに私の勝手な記憶違いの可能性はあるわ。」

「それなら、きっとそうなんじゃない?」

「でも」

 

誤魔化そうとする鷹也に、一切真剣な顔を崩さない真姫が言う。

 

「そうだとは思えないのよ。あなたは何か隠してるのがはっきりしてる以上はそうは思えない。隠してるのって……このことと関係あるんじゃないの?」

「別に何も隠してないって。」

「合宿の時の電話。あのこととかは確実に隠し事でしょ。」

「なんで電話内容まで真姫に言わなきゃいけないのさ。」

 

少し心がざわつくのを感じさせないように、あくまで笑顔のままで真姫に応対する。今はダメだ。ことりの留学。何もできない自分。少し心が、気持ちが波打っている。その心を必死に抑えつつ、顔に貼りつけた笑顔は崩さない。

 

「あの電話してた時とそのあとに少し。何か考え込んでた。感傷に浸ってたとか言ってたけど……そんな風には見えなかったわ。」

「それは真姫の個人的な考えでしょ?自分のことは自分が1番分かってる。あれは何でもないよ。」

「周りからの方が分かることもあるわ。」

「今回はそうじゃない。」

 

お互いに譲らないで言い合う。鷹也はにこやかに、真姫は真剣な表情で。どちらも譲る気は無い。それが分かっているのだろう。真姫はため息をついて言う。

 

「何も教えてくれる気はなさそうね。」

「教えることもないからね。」

「……強情ね。」

「真姫に言われたくないよ。」

 

笑いながら言う鷹也に向けて、真姫は少し悲しげな表情を見せる。しかし、すぐにその表情を引っ込めて真剣な表情になって口を開く。

 

「1つだけ教えてくれない?」

「答えれることなら。」

「『だってそれが自分だから』……この言葉を……どう思う?」

 

不安げに、こちらを伺うように紡がれた言葉。鷹也は少し黙って真姫を見つめる。この言葉。自分がよく言う言葉。そして、昔この場で言った言葉。

真姫の考えが分からない以上は自分の思ったことを言うしかないだろう。真姫の表情を見てたらきっと誤魔化しはきかない。内心でため息をついて鷹也は言う。本来ならば真姫に言うべきことではないのだが、しかたない。

 

「んー……ある意味で俺に最も似合う言葉で、ある意味では俺に最も似合わない言葉。かな。」

「どういう……意味?」

「この言葉を使う人はきっと自分をとても大事にして、貫ける自分を強く持ってるんだと思う。それこそ真姫みたいにね。」

 

真姫は何も言わずにそっぽを向く。実際にこの少女にはこの言葉が似合う。自分を曲げない。自分をしっかりと貫く強さがこの少女にはある。真姫の照れたようなその態度に苦笑しつつ続ける。

 

「でも……俺はその言葉を使う時はそんなこと思ってない。」

「…………じゃあ、何を思ってるの?」

 

少し躊躇いつつ聞いてくる真姫。その表情からは彼女がどう思ってるのか、何を考えてるのかは分からない。

 

「俺は『自分の価値のなさ』に確信を持って、それを強く持ってる。ここまで言えば分かる?」

「……あなたはあの言葉を使う時には自分を強く持ってるんじゃない。貫く自分なんてない。自分には価値なんてない。その思いを強く持ってるだけ。それをあらわしてるだけ。そういうことなのね?」

「そういうこと。さすが真姫。」

 

手を叩いて軽くふざけるように真姫向かって鷹也は言う。自分のことを話してしまった以上は自分がそのことを何とも思ってないように、真姫に気にさせないようにしなくてはいけない。

 

「まぁ最近はみんなのおかげであんまりそういうこと考えることもなくなってきたけどね。」

 

実際にそうではある。ことりに、穂乃果に、海未に、μ'sのみんなによって、自分の意識は変わってきていた。彼女たちが大事にしてくれている自分。彼女たちの中の自分を犠牲にしないようにと。少しは自分の意識が前よりは変わってきていた。

 

「だから、その言葉に関してはそう思ってるけど今はその考えに関しては少しマシになってきてるよ。」

「……そう。」

 

実際には結局のところ彼女達にバレなければいいだろうという考えになっているからあまり変わっていないかもしれない。しかし、彼女たちにはそれは関係ないことだ。あくまで自分が少し変わってきていること、それだけを軽い口調で伝える。

 

「そういう……ことだったのね。」

 

しかし、真姫はそんな鷹也の言うことには何も反応せずに少し俯いて言う。その表情は影になっていて鷹也からは見えない。

 

「そんな暗い雰囲気ならなくてもいいだろ?別に俺はなんとも思ってないし、真姫が気にすることでもないよ。俺の問題なんだからさ。」

「別に気にしてないわよ。」

 

鷹也の言葉に真姫はそう言って背を向ける。ブランコがもう1度古びた音を響かせた。

 

「………………して、ごめんなさい。」

「え?真姫、なに言って……」

「もう帰るわ。また明日から練習で。」

「う、うん。またな。」

 

少し聞こえなかった言葉を聞き返すことは叶わず、真姫は鷹也の言葉に振り返ることもせずに歩いていってしまう。

 

「なんなんだよ……」

 

結局真姫の考えていたことは分からずじまい。少しため息をついてつぶやくと鷹也は家に帰るために歩き出す。少し強くなり始めた風が揺らすブランコの音に、心がざわつく感覚がした。

 

 

 

 

 

(別に関係ない。関係ない。関係ない。)

 

頭の中で繰り返す。彼のそういうところは分かっていた。少しずつ変わり始めているのも分かっていた。ことりや穂乃果、海未に比べたら彼とは付き合いは浅いし、彼については彼女たちに比べれば知らない。でも、彼の問題と彼の変化は分かっていた。

 

(あの人がああいう考えなのは知ってた。分かりきってたことじゃない。)

 

どこに行ってたのと聞いてくる母に適当な言い訳をしてから部屋に入って、広すぎるかもとも少し思っているベッドに仰向けに倒れ込む。

 

「あの人がどういう意味で言っていようが私には関係ないじゃない……」

 

自分に大きな影響を与えた出来事。言葉。それは自分のものだ。そもそもまだ彼は認めていない。それならばあれが彼か分からない。確信を持っている自分の考えを誤魔化すように頭で理論を構築していく。穴だらけの理論を構築していく。それで何とか少し落ち着く。その場しのぎだろうという自覚はある。でも、今はまだその場しのぎだろうといいから、何も考え続けたくなかった。

 

「『だってそれが自分だから』」

 

自分には言い聞かせるように呟く。この言葉に感じたこと、憧れたこと。それは自分だけのものだ。それを言い聞かせるように。仰向けの状態からうつ伏せになって、目を瞑ってまくらに顔をうずめる。真っ暗になった視界で先ほど公園で彼に向かって言った言葉。聞こえていなかった様子の言葉を呟く。手と、言葉を紡ぐ唇は震えていた。

 

「…………勝手に憧れて、期待して、失望して、ごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

それから数日たって高校の夏休みは終わりになる。彼女たちは長い休みを終えて日常へと復帰していく。しかし、大学の夏休みは高校より1ヶ月も長い。鷹也は朝練後、学校に向かったことりを家で見送ってからソファで座ってすることもなくパソコンを見ていた。

 

「……暇だなぁ……」

 

夏休み中は彼女たちの練習に付き合っていたために、基本は時間がなかった。文化祭が夏休み明けにあって、彼女たちはラブライブ出場のための最後のアピールに向けて必死に練習していた。真姫の態度にも特に変化はなし。少し考え込むことや、鷹也に対する態度が少し素っ気なくなることがあったがほとんどいつも通り。

 

「放課後まで何して時間潰すかな……ん、電話?恭介くんかな。」

 

いつもみたいに母の手伝いもないので暇で仕方ない。ことりに関してもいつも通りの態度が続いているので何もできない。そんななか、少しは彼女たちの力になれるようにダンスの勉強をしてなけなしの知識をつけていた時に電話がなった。合宿後も結局続いている恭介の呼び出しかとも思ったが画面を見ると、北岡和樹の文字。珍しいなと首をかしげながら電話にでる。

 

「もしもし、和樹?どうし……」

『鷹也!スゲーじゃん!!やったな!!!』

「うるさっ……!なんだよ、いきなり……」

『なんでそんなに落ち着いてるんだよ!……もしかして気がついてないのか?』

「だからなんのこと……」

 

うるさいぐらいにテンションの高い和樹に少しゲンナリしていると、最初に大声をだして落ち着いたのか、和樹が言ってくるので聞き返す。

 

『μ's、19位まで来たぞ!』

「え……?」

『海で撮ったらしいPVが大好評でさ、一気にラブライブ出場圏内の19位!』

「ちょ、ちょっと待って!」

 

一瞬和樹の言葉に呆けてから、慌ててパソコンの画面をスクールアイドルのランキングが表示されるページに切り替える。そして合宿から帰ってきて数日後に海でのPVをアップしたμ'sのページへ。和樹に教えられてから確認するという流れにデジャヴを感じつつも呟く。

 

「うわっ……ほんとだ……」

『ちゃんと確認しとけって前も言ったろ?……やったな。なんか悩んでたみたいだけど良かったじゃん。』

「……あの子たちの努力の結果だよ。」

『まぁそれはそうだな。うーん……よしっ!今日はお祝いだ!』

「は?いや、今日は……」

『どうせμ'sの練習は放課後だろ?じゃ、今からメンバー集めて場所連絡するからなー』

「ちょっ……待って!って切れたし……」

 

ため息をついて電話を置く。そして少しの間パソコンの画面を見つめる。ラブライブ。目標が、彼女たちの夢が近づいてきた。ランキングを上にずらしていくと、そこには絶対王者のA-RISEの文字。

 

(A-RISE……)

 

天才がサポートにつく、天才3人の絶対王者のグループ。その堂々とした様子が映された動画を見て思う。正直自分は勝てる気がしない。でも、

 

(みんなならきっと……)

 

自分は何も出来ないかもしれない。でも、自分がいなくても彼女達ならきっと。

 

『やっぱ鷹也って……つまらないよ。』

 

沙希の言葉が何故か鷹也の頭に響いた。

 

 

 

 

 

「たっかやー!!」

「声でかいっての……わざわざお祝いなんかしなくてもいいってのに。」

「そういうわけにもいかないだろ?どんだけすごいことしてると思ってるんだよ。」

 

その後、電話で指定されたカラオケ店の前で待ち合わせする。そんなに騒ぐ気なのかと少し思うも、特にやることもないので、とりあえずそこに向かうと和樹が大声で声をかけてくる。

 

「で、他に被害者は誰を呼んだの?」

「被害者って言い方やめろよ……いきなりだから結局あと1人しか集まらなかったよ。」

「その1人に非常に申し訳ない気分だよ……」

 

鷹也がそう言っていると、和樹がそう言うなってと肩を叩いて笑う。恐らく鷹也のことを少しでも祝おうとしてくれてるんだろうと思うので、鷹也もそれに感謝しつつ苦笑する。すると、そこで2人に声をかける人物があらわれる。

 

「やーやーお待たせー」

「え……?」

 

和樹が返事を返す中で、何も返せないで鷹也はもう1人の参加者らしい人物を見つめる。そんな鷹也を見つめ返し、彼女は微笑む。

 

「や、久しぶりだね、鷹也。」

「沙希先輩……」

 

そこには、こちらに興味を無くしたという沙希がとても綺麗な笑みをこちらに向けて立っていた。

 

 

 

 

 

「それじゃあμ'sのラブライブ出場圏内昇格を祝ってー……かんぱーい!!」

「かんぱーい!!」

「ん。」

 

テンション低いな、鷹也。と和樹が苦笑するのに適当に返しつつ、ドリンクバーから取ってきた飲み物を口に含む。和樹の気持ちはありがたいが、正直そこまで盛り上がる気分ではない。その原因ともなっている人物に視線を向ける。

 

「私これ歌おうかな。」

「あ、それ俺も知ってます!いい曲ですよね。」

 

そんな鷹也にお構い無しに和樹と会話する沙希。鷹也はため息をつきつつ、ノリノリで歌い出した沙希に合わせるように手拍子を始める。ここまでの様子はいつもの沙希。本当に何か用があったとか、何か言ってくるとかでもない。それならば、あちらが何も言ってこないならこちらも尊敬する、仲のいい先輩の沙希と遊んでる気分で応対していていいだろう。そう思っていた。

 

 

 

 

 

「μ’s、意外と上がってきたね?」

「……あの子たちの頑張りの成果ですよ。」

 

沙希が話しかけてきたのは和樹がドリンクバーに飲み物を取りに行ったことで部屋に2人きりになった時のこと。ひと通り3人でカラオケでそれぞれに歌って盛り上がった後だった。今日は何も言ってこないものだと思っていた鷹也は少し意外に思いながらも答える。

 

「A-RISEも余裕そうですね?」

「当たり前じゃん。あたしたちが負けるわけないでしょ。張り合いある相手もいないんだし。」

「…………」

「あれ?怒らせちゃった?」

 

ニヤニヤと笑う沙希に対して、別にそんなことないですと首を振る。内心ではμ'sをバカにされている気がして少し頭に来ていたが何も言う気は無い。彼女達ならきっとすぐに追いつけるはず。だから、それだけ伝える。

 

「ただ……調子乗ってると足元すくわれますよ?」

「μ'sは確かにすごいね。ある程度の才能も、実力もある。でも、足りない。」

「…………」

「変わり始めてるし、変わり続けようとしてる。でもそれだけじゃダメだよ。」

「……なにがですか。」

 

聞き返す鷹也に対して、今日最初に会った時とは違う笑みを沙希は見せる。

 

「ツバサやあんじゅ、英玲奈だけだったらあの子たちだけでも対抗できるだろうね。でも、あたしがいる。」

「…………」

 

沙希の声色は冷たい。何も言えずに鷹也は沙希の言葉を聞くことしかできない。

 

「あたしがツバサたちをあの子たちがたどり着けないところまで引き上げる。絶対に負けないように。」

 

冷たい笑みを見せたままに言う沙希。そんな沙希を鷹也は何も言わずに見つめ返す。何も言い返せなかった。沙希の言う通りだったから。沙希に勝てるイメージが湧かない。A-RISEだけなら何とかなるかもしれない。でも、そこに沙希が加わる。そうすると、もはや手が付けられない。そんな気がするのだ。μ’sのメンバーのことは信じている。自分には思いつかなくても、彼女たちなら何とかしてしまう。きっとできると思っている。だが鷹也には勝てるイメージはわかない。

 

「あの程度の才能ならあたし達は負けない。それなら……あの子たちがあたしたちに張り合える位置に来るためにはどうすればいいか。分かる?」

「……俺はいつも通りに誰でも出来るようなサポートをするだけです。」

「……分かってないのか、分かってないふりをしてるのか。やっぱりつまんないね。」

 

沙希は不満げな顔で飲み物を口に含む。その一口で残りの飲み物がなくなってしまったようで、帰ってきた和樹と入れ替わるように飲み物を取りに部屋から出ていく。その際に一言。

 

「誰にでもできるサポートは誰にでもできるわけじゃないんだよ。鷹也は誰にでもできるサポートをしっかりできてる?ちゃんとあの子たちのことを見て、力になれてる?」

「……………………」

「あの子たちはあたしたちの所まで来れるものを持ってる。それを無駄にしないでよ?」

 

ここからが本番。何が起こるか分からないんだから。そう言って出て行く沙希には何も言わずに、鷹也は飲み物を無理やり飲み干す。興味なくしたとか言っていたのにこれだ。天才の思考は分からない。何を考えて敵であるはずの自分にこんなことを言ってくるのだろうか。

 

「……もう練習に顔だしてやんなきゃいけないから。ごめん、そろそろ行くな。」

「え?あ、ああ。」

 

沙希が何を言っているのか理解できなかったのだろう。不思議そうな顔をしている和樹に声をかけ、鷹也は部屋を出る。こんな自分でもあの子たちは必要としてくれているのだ。さぼるわけにはいかない。自分は誰にでもできることしかできないけど。それでも、彼女たちの力になると決めているのだ。

 

「鷹也!」

「なに?」

 

その背中にかけられる声。ドアを開けて、振り返る鷹也に和樹はニッと笑って言う。

 

「本当によかったな。応援してるから頑張れ。」

「……ありがと。」

 

和樹は鷹也に向かって満面の笑みで親指を立てて見せた。

 

 

 

 

 

「鷹也くーん!!!」

「見て見てーー!!」

 

今日は新学期最初ということでミーティングから始めようと部室に集まることになっていた。そのために屋上ではなく部室に顔を出すと、早々に穂乃果と凛が満面の笑みでパソコンの画面を見せてくる。そこに映っているのはμ’sのランキングのページ。もちろん先ほどと同じく19位。知ってはいたものの、本当に嬉しそうに見せてくる2人を微笑ましく思いつつ、褒めてやる。

 

「ん、よかったな。頑張った頑張った。」

「「えへへ~……」」

 

合宿の時に撫でなかったことを根に持っていたのだろうか。撫でてやるとご満悦の表情を見せる2人に苦笑しつつ、周りを見る。どうやら他のメンバーも揃っているようで自分を待っていたようだ。

 

「ごめん。遅くなったみたいだね。」

「ううん、大丈夫よ。それより穂乃果、凛。そんなに浮かれてもいられないわよ?」

「そうよ!ラブライブ出場くらいで…………喜んでる場合じゃないわ。」

 

ミーティングを基本的に一緒に仕切ることになる絵里に向かって謝ると、微笑んで鷹也にそう言ってから絵里は穂乃果と凛に言う。その言葉に同意したのはにこ。一瞬言葉に詰まり、窓を向いてから何事を呟いていたが喜びでもかみしめていたのだろうか。しかし、絵里とにこの言うことは正論だ。鷹也はにこの様子にはつっこまずに頷いて言う。

 

「そうだな。出場枠が決まるまでは後2週間。それまでにみんな追い込みを始めてる。」

「20位以下に落ちてしまったグループもまだあきらめてはいないでしょうし……」

「うかうかしてたらすぐに20位以下に逆戻りってわけやね。」

「そういうこと。ここからが本番。」

 

反応する海未と希に答えつつ、鷹也はA-RISEのページを開く。そこに表示されるのは彼女らの絶対的王者たる証明のランキング1位の文字と今後のライブのPR動画。

 

「7日間連続ライブ!?」

「そんなに!?」

「さすがA-RISEですね……!!」

「というのが追い込みの例。ここからがどれだけ大変か分かった?」

 

驚く穂乃果と凛、そして動画に尊敬のまなざしを向けている花陽に鷹也が言うと、3人を含めて、他のみんなも全力で頷く。さすがに7日間連続ライブなんてもの見せられたら浮かれ気分は吹き飛んだらしい。その様子に苦笑しつつも、満足そうに頷くと絵里は言う。

 

「さすがに7日間連続ライブなんてやるわけにもいかないし……私たちはとにかく目の前に迫っている学園祭のライブに集中しましょ。」

「……そうね。そこで成功すればきっとこのまま出場圏内に残れるはず。」

「よーしっ!頑張らなくっちゃ!!」

 

絵里の言葉に答えた真姫と穂乃果のやる気に感化されたのだろう。みんながやる気にあふれる表情をする中、鷹也はそういえばと最近聞いたことを思い出す。当たり前のように学園祭のステージに立てるものだと思っていたので衝撃を受けたこと。いつもサポートを続けるために行っている書類提出の確認をしてもらっている先生からコーチにはちゃんと伝えておかなくちゃということで聞かされていたのだ。鷹也は絵里をチラリと見る。

 

「そこでなんだけど部長にやってもらうことがあるわ。」

「任せて!なんでもやるわ!」

「……にこで大丈夫?」

「大丈夫よ!なんでもドンと来いってもんよ!!」

「にこちゃん頼もしいにゃ~!!」

 

凛に持ち上げられて、ふふんと胸を張るにこを見てから絵里に視線を向ける。そこで鷹也も知っていることに気が付いたのだろう。絵里は苦笑して言う。

 

「誰に任せるにしてもプレッシャーになっちゃうし……。もともと誰がやっても文句は言うはずがないけれど、それなら部長のにこに任せるのが普通じゃないかしら。」

「確かにそうだけど……にこってくじ運なさそうなんだよなぁ……」

「ちょっと!このスーパーアイドルのにこにーが運がないわけが……ってくじ?」

「ええ、そうよ。よろしくね、スーパーアイドルの部長さん?」

 

にこやかに言う絵里ににこはきょとんとして、首を傾げた。

 

 

 

 

 

学園祭というのは1年に1度の大きな学校行事である。生徒はみんなその学園祭を目いっぱい楽しみたいと思うものだ。そして、普段発表の場が少ない部活動において発表という楽しみを学園祭で得ることは重要であり、普段から活動の場を持っていても青春の1ページを学園祭の発表で刻みたいと思う人は多いだろう。そうなるとどうなるか。

 

「なんで……講堂の使用許可がくじ引きなわけ……」

「伝統らしくて……」

 

講堂を発表に使いたい部活が多くなり、抽選になる。というわけだ。この学校では成績などに関係なく、平等なくじ引きで講堂の使用許可権が割り振られるらしい。抽選会場の生徒会室に向けて、ムスッとして言いながら先を歩くにこを苦笑しながら絵里がなだめているのを見つつ、鷹也は少しみんなから遅れて歩いている少女の隣に行く。

 

「ことり。顔暗いよ。」

「え?あ、お兄ちゃん……」

「さっきもぼーっとしてた。大丈夫?」

 

ぼーっとしてみんなから少し離れて歩いていたことりの顔を覗き込む。先ほど部室で話していた時も、ことりは一言もしゃべらなかった。最近ずっと続いているそんな様子に心配しつつ、鷹也は言うがことりは笑顔を見せる。明らかに作っていることが分かる笑顔。

 

「うん。大丈夫だよ、ごめんね?心配かけちゃって……」

「本当に大丈夫か?何かあったら相談に……」

「ほんとに大丈夫だってば。お兄ちゃん、心配しすぎだよ。」

 

早くいこ?置いて行かれちゃう。そう言って少し早歩きになることりに鷹也は心配そうな視線を向ける。しかし

 

「ん、そうだな。」

 

鷹也は何も言わずにことりの後を追う。ことりが何も言わずにいつも通りに過ごそうとしているならば、それを自分は尊重する。尊重していつも通りでいつづける。何もない、誰にでもできることしかできない自分には、誰にでもできるいつも通りでいるということしかできないのだから。

 

「ことりはにこにくじ運あると思う?」

「えっと……あはは……」

「聞こえてんのよ!見てなさいよ!!」

 

あくまでもいつも通りを続けることしかできないのだから。

 

 





はい、いかがだったでしょうか。
真姫ちゃんに関してはキャラ崩壊の心配。小説って難しいですね……

お気に入りも増えていて、お気に入り登録してくださっている方には感謝の気持ちでいっぱいです!ありがとうございます!
感想や評価もできればもらえたら嬉しいです。

今回が年内最後の投稿になるかもしれません。
もしかしたらあと1、2話投稿するかもしれませんが、時間がとれるか分からないのです……

というわけで一応
今年は10月ころから投稿し、本当にこの小説を多くの人に読んでいただいてとても嬉しい年でした。来年もより一層多くの方に楽しんでいただけるよう頑張るのでよろしくお願いします。
それではよいお年を!!ヾ(≧▽≦)ノ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。