小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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また更新少し遅いですね、すみません……
もう更新の頻度がよく分かんないことに……できるだけ早めに更新はしていけるようにします……
(こっちの更新の前に1時間かからずに書いたオリジナルの超短編小説を投稿してたなんて言えない。)

それでは今回は学園祭前日の話です。短めになってますが書けなかったとかではなく、きりのいいところを上手く見つけれなかったが故の短さです。

それではご覧ください。


強い想いはいつもどおり

学園祭前日。ここまでことりに違和感を指摘されることも、たまに表情が暗くなるという以外に真姫の様子にほとんど変化もなく数日が過ぎていた。真姫に関しては自分が何もない様子を見せていれば大丈夫だろう。そんな日に鷹也が屋上に着くと珍しくメンバーがもめていた。もめているというよりは困惑しているといった様子だろうか。

 

「お疲れ様、どうした?」

「鷹也さん、お疲れ様です。それが…………」

 

鷹也に気が付き、挨拶してくるメンバーに答えつつ近くにいた海未に声をかけると、海未はどうしようとでも言うように1人みんなの前に立つ少女に視線を向ける。その視線の先にいるのは当然とでも言うべきか。みんなを引っ張る立場の高坂穂乃果。

 

「穂乃果?」

「鷹也くん!見て見て!!」

 

何してるのとでも言うように視線を向けると、そこで穂乃果は満面の笑みを見せるとダンスのステップを踏んでジャンプ。それはいい。ダンスにやる気があるのは本当にいいことだ。しかし

 

「そんな振り付け、今回やる曲にないよな……?」

「新曲の振り付けに入れようって言ってるのよ、この子。」

「は?」

 

首を傾げる鷹也に補足したにこの言葉に驚き、穂乃果に確認の視線を向けると満面の笑みはそのままに頷く。どうやら本気らしい。他のメンバーにも視線を向けると、全員困惑の表情。それはそうだろう。この数日間、みんなはこれまでにないほどのハードな練習をしてきた。それこそ珍しくにこが泣き言を言い、いつも厳しい海未が穂乃果に少し休めと言ったくらいだ。その中でギリギリでライブで披露できる完成度まで持って行けた程度の完成度の新曲の振り付け。それを穂乃果は変えると言っているのだ。

 

「さすがにそれは厳しいだろ。今になって余計に変えても混乱するし……」

「えー!でも、こっちの方が絶対盛り上がるよ!」

「盛り上がるのはそうかもしれないけどな。それでも今回はそれは難し……」

「い、いいんじゃないかな。」

「ことり……?」

 

さすがにこれは無理があると止めようとした鷹也の言葉を遮ったのはことり。全員の視線をまっすぐに受けて、ことりはぎこちない笑みを見せる。

 

「穂乃果ちゃんがそうしたいならそうしてもいいと思う……な。」

「ありがとう!ことりちゃ~ん!!」

「………………………………」

 

わーい!とことりに抱き付く穂乃果。その様子を見つつ、鷹也は少し考える。正直無茶ではある。ここでミスはできない以上はリスクは避けるべきだ。海未も同じ意見なのだろう。難しい表情で考え込んでいる。他のメンバーも悩まし気な表情だ。しかし、そこで穂乃果がみんなに向き直る。

みんなの手を引っ張る。

 

「これは集大成だよ。できることは全部したい。後悔したくない!」

 

一切の迷いのない瞳、声、表情で告げられたその言葉で他のメンバーも苦笑して顔を見合わせる。海未だけは複雑そうな表情のまま。なにか考え込むような様子だったが。鷹也はそれを見て、決める。

 

「…………分かった。」

 

意外そうな視線を向ける海未を無視しつつ、穂乃果に頷く。考えてみればいつも通りだ。みんながためらうところに穂乃果がまっすぐに進み、ことりがそれを支えるように肯定し、みんながそれに感化されながらついていく。スクールアイドルを始めようと穂乃果が言い出した時と同じだ。いつも通りの流れだ。ならば変える必要もない。これまでにない無茶だけど、これまでもそういうことを何とかしてきたのだから。

 

「いいのですか?明日は本番なのに……」

「リハーサルとしてやるほかに少しだけ新曲の練習の時間をとろう。変わった部分を重点的にやればそこまで時間かからないはず……ただやるからには中途半端にはできない。」

「大丈夫!!」

 

心配そうな海未に鷹也がそう答えると、穂乃果が元気よく言う。

 

「この9人ならできるよ!!」

「……そうね、やりましょうか。」

「凛も頑張るにゃー!!」

「わ、私も頑張ります……!!」

 

みんながその穂乃果の言葉に微笑み、やる気を見せる。圧倒的リーダーシップ。その想いでここまできた。いつも強い想いを持ってここまで来た。この少女の強い想いを導きに、みんなが強い想いで変えてきたのだ。その導きはここでも発揮される。それを自分は見守るのみ。それがいつも通り。

 

 

 

 

 

ステージの組み立てはすでに昨日のうちに終わらせていた。なので前日のリハーサルをステージの上で行い、新曲の練習もなんとか形になるようになった。ここに関しては彼女たちの才能というものが見えた気がした。後は休憩をはさんで、1度通してみて終わりだ。

 

「すごいな。みんな前の振り付けと同じくらいのクオリティまでは今回の振り付けも持ってこれたんじゃないか?」

「そうだといいんやけどね。」

 

感嘆して言うと、隣でそれを聞いていた希が苦笑しながら言う。ダンスが苦手な方である希や花陽やことりも苦労しつつもなんとかみんなについていっていた。純粋にそれはすごいと感じて褒める。

 

「そうだと思うよ。みんな頑張ったな。」

「そんな手放しで褒められたら、なんや照れるやん。」

 

そう言って希は飲み物を口に含む。全身汗だくの彼女はそれでも笑顔を絶やさない。正直ここまで前日にやらせるのはどうかとも途中で思った。しかし、中途半端にはできないという状況。そして穂乃果のやる気でここまで練習してしまった。おそらくみんな結構な疲労が全身に来ているはず。それでも、みんなが頑張れて明日もなんとかできそうなのはひとえに彼女の引っ張りのおかげ。想いのおかげで。

 

「希は大丈夫?そろそろ休憩終わるけど……」

「うん、大丈夫だよ。うちよりも穂乃果ちゃんとかの方に確認した方がいいんやない?」

「それはそうだけど……」

 

ちらりと話題にでた少女に視線を向ける。そこには張り切って練習の再開をしようとして、海未にたしなめられている穂乃果の様子。ことりはそのそばで苦笑いするのみ。穂乃果のやりたいようにすればいいとでもいうような言葉をかけているのが聞こえてくる。

 

「あの様子じゃ止まらないし止めれないよ。」

「あはは………そうやね。花陽ちゃんの方はえりちと凛ちゃんが見てくれてるし……」

 

希に言われてそちらに視線を向けると、休憩しながら最後の確認をしていたらしい3人が笑顔で頷く。花陽は緊張気味に頑張らなくっちゃと自分に言い聞かせるように呟いていたが、それに凛がかよちんならだいじょーぶと声をかけてやっている。

 

「やっぱり真姫ちゃんかな。真姫ちゃん、最近なんだか様子がおかしい気がするんよ。」

「真姫は……あそこか。」

 

希に言われて、残った少女の方に視線を向ける。最近はみんなに溶け込んでいたはずの少女は今は1人で柵の下に座り込んで飲み物を飲んでいる。耳にはイヤホン。前からたまにそのような様子はあり、その時は楽曲のおさらいをしているときなどなので放っておくのだが。鷹也は心当たりがありつつも、そこまで不自然とも言えない様子に見える真姫を見つつ首を傾げる。

 

「そこまで変か?別にいつも通りだろ。」

「う~ん……表面上はいつも通りに見えるけど何か違うっていうか……」

「まあ、気にしても仕方ないよ。よし、みんな!最後に1回通すよ!!」

 

よく分からないんやけど……と首を傾げる希の言葉を振り払うようにして立ち上がってみんなに声をかける。元気よく返事をするみんなに指示を出して学園祭前の最後の練習を進める。彼女たちの目標まで、夢まであと少し。

 

 

 

 

 

「ことりの様子が変?」

 

そうして練習が終わり、家に帰って晩ご飯も食べ終えて後は寝るだけといったような時。部屋で過ごしていると海未から連絡が入った。内容はことりについて。

 

『はい。何か思いつめているような、そんな気がして……なにか知りませんか?』

「んー……」

 

結局相談せずにここまで来ていたことに少し驚きつつ、ことりの隠し事の下手さからバレそうになっていることに迷う。海未に話すべきか話さないべきか。ことりが行くか行かないかを決める期限は明日まで。決心はまだついていないようだった。

 

「ことり本人に聞くか、ことりが言うまで待ってやって。」

 

結局鷹也はそう答えた。ことりが海未にも穂乃果にも相談せずにいる理由は恐らくμ'sの学園祭ライブに影響がでることを恐れて。それならば明日のライブ後まで黙っている気なのだろう。ライブ後にすぐ言えばギリギリだが間にあう。相談して答えを出すこともなんとかできるだろう。それがことりの意志ならば鷹也が口をはさむわけにはいかない。自分は何事もないようにいつも通りでいるのみ。

 

『ですが……』

「大丈夫、ことりだってちゃんと考えてる。上手くいくよ。」

『…………鷹也さんはこの状況をどう思っているんですか?』

「この状況?」

『穂乃果は頑張るのはいいですけど無理しすぎてますし、ことりと真姫は何か考え込むようなことが多くなったように見えて……何か不安なんです……何か見逃しているんじゃないか、放っておいてはいけないものに気が付いていないんじゃないかって……』

 

少し躊躇いつつ聞かれたその問いに聞き返すと、海未はそう少し弱々しい声で言う。賢くて優しい彼女の不安。それはみんなのことを考えているからこその不安で。鷹也はそんな海未のやさしさはとてもいいものだと思っている。しかし、だからこそ。

 

「大丈夫。」

 

そう言い切る。海未の心配はもっともなのかもしれない。鷹也はみんなの問題を把握しているうえで考えてもそう思うところはある。みんなつらい状況なのかもしれない。でも、大丈夫。

 

「いつも通りのことじゃんか。穂乃果が引っ張ってことりと海未とみんながついていく。ことりや真姫だって本当に何か悩んでいたらちゃんとお前らに相談するだろ?」

 

真姫に関しては分かんないけどさと付け加えて苦笑する。そう、いつも通りだ。穂乃果が無茶しつつも最終的に何とかしてしまうのは。そして穂乃果の無茶がいったん落ち着く学園祭のライブ後。そこならことりはきっと話せる。そしてことりのことがみんなに伝われば、その対処で真姫の気もそれて恭介との件がバレたことは鷹也自身が気を付けていればいずれ何とかなる。

 

(ほら簡単じゃん。結局は穂乃果が中心で何とかなる……)

 

そんな思いの奥で、じゃあ自分は?という心の奥底で浮かぶ問いを無視しつつ、海未に言う。自分がどうしようが穂乃果程の影響力も何も持てない。それならばいつも通りに。穂乃果の邪魔をしないように。ことりの邪魔をしないように。みんなのいつも通りでいる。それしか自分にはできない。それだけは自分は壊してはいけない。

 

「だから、ことりが相談してきたらことりの力になってやって?それできっと全部何とかなるよ。」

『……わかりました。すみませんでした、夜遅くに。』

「そんな遅い時間でもないだろ。早く寝なよ?」

『はい、おやすみなさい。』

 

おやすみと返して通話を終える。複雑な心境に揺れる心を落ち着かせようとコーヒーを飲みにリビングへ。コーヒーメーカーをセットするとほどなく水の落ちる音が聞こえてくる。溜まっていく黒いコーヒーをぼーっと眺める。ポケットで振動。携帯がメッセージの受信を告げる。

 

『明日って音ノ木坂の学園祭でしょ?見に行くからよろしく~(^▽^)/』

 

沙希からのメッセージにため息をつく。ここで断っても勝手に見に来るのは目に見えている。お待ちしておりますと適当に返信すると、続けてもう一通。今度は雪穂。

 

『お姉ちゃんがたった今また走りに行っちゃったけど大丈夫?止めようとしたんだけど聞かなくって……』

「は?」

 

雪穂のメッセージに驚いて、窓に近づいて外の様子を確認。もう結構遅い時間。そろそろ寝なくてはいけない時間。案の定外は真っ暗。それだけでなく

 

「すっご……この雨で外出ていったのあいつ……」

 

外は大雨とも言える天気。それこそバケツをひっくり返したようなとでもいうような勢いで水滴が空から降ってきている。雪穂からのメッセージをもう一度見て、少し考える。止めるべきだ。ここで体調を崩してもしょうがない。そもそも今さらランニングなんてしても明日に意味はほとんどない。しかし、

 

『できることは全部したい。後悔したくない!』

 

今日穂乃果が言っていたその言葉を思い出してしまって。ファーストライブの時もそうだった。ダンスの振り付けを妥協しようとした自分に向けて穂乃果は同じようなことを言っていた。ファーストライブの時からここまで。その想いのままにきた。ならば、その想いと自分の判断のどちらが正しいのか。考えるまでもない。

 

 

 

 

 

「はっ……はっ………」

「何してんだ?」

「うへあ!!…………えーっと……」

 

鷹也の目の前でフードを被って先ほどまでランニングしていた穂乃果はこちらを見て、立ち止まると罰の悪そうな顔をして見せる。穂乃果の家と鷹也の家はそこまで遠くない。走りに行く場所も大体見当がつくし、家をでてからすぐに穂乃果を見つけた。

 

「…………………………………」

「あ、あの……」

「何?」

「すみません。ちょっと落ち着かなくて走ってました…………」

 

黙って穂乃果のことを見つめていると、穂乃果は小さくなって言う。さすがに怒られると思っているのだろう。雪穂から鷹也さんに怒られるよとでも言われたのだろうか。その様子にため息をつく。

 

「……ほら。」

「え……?」

「入んないのか?」

「あ……うんっ!」

 

さしていた傘を少し持ち上げて横にずれて、穂乃果の入るスペースを作ってやる。一瞬呆けてから慌ててそこに入ってきた穂乃果の頭のフードを取り、その頬に貼りついていた髪を払ってやる。そして言う。

 

「別に怒んないよ。」

「鷹也くん?」

「穂乃果はいつもここまでこんな感じで無茶して、頑張ってきた。俺はそれを見てきた。」

 

いつも見てきた。それこそことりと同じように妹のような感覚で接してきたのだ。この少女の成長はずっと見てきた。

 

「いっつもお前は何とかしちゃうんだよ。俺が止めても無視して頑張る時は結果何とかしちゃうんだ。」

「…………………………………」

「それがいつも通りの流れだろ?だったら、今回も同じだ。変わらない。」

 

そう言って鷹也は穂乃果に微笑む。自分は決めていたはずだ。自分のことは信じれないし、なんの価値も感じていない。でもその代わりに、この少女たちのことは信じて、この少女たちの力になると。

 

「だから信じてやる。頑張れ、穂乃果。」

「……鷹也くん……」

 

隣の穂乃果が見つめてくるのを感じて、気恥ずかしくなってそっぽを向く。別に特別なことをしているわけではない。ただのいつも通り。彼女たちの頑張りに頼っているだけ。しかし、穂乃果はやはりそうは思わないようで。

 

「うんっ!ありがとう!頑張るね!!!」

 

両手でガッツポーズを作って満面の笑みを鷹也に見せた。

 

 

 

 

 

「ただいま~……」

 

穂乃果を送っていってから家に帰り、小さな声で言って玄関を開ける。ことりももう寝ているくらいの時間だろう。音を立てないようにリビングに向かう。キッチンに入り、冷蔵庫から飲み物を手に取る。

 

『ことりから聞きました。後で相談したいです。』

 

雨の中歩いていて気が付かなかったが、携帯にそんなメッセージが海未から来ているのに気が付き、ことりは相談したんだなと少しほっとしながら思い、ライブの後に相談しようと返信。そして飲み物を飲みながら、先ほど雪穂からきたメッセージにも返信する。

 

『お姉ちゃんのこと探してくれてありがとね。鷹也さんが止めてくれたから、もうゆっくり寝るって言ってたよ。』

『そっか、それならよかった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()早めにあったかくして寝ろって言っておいて。』

 

視線を少し横に向ける。目に入るのは丁寧に、きれいに洗われたコーヒーメーカーと鷹也がコーヒーを飲んだカップ。

 

 

 

 

当日の朝が来る。

 

音ノ木坂学院の学園祭。μ’sの、ことりのターニングポイントとなるだろう時。

 

ライブの時までもう少し。

 

 

 





はい、いかがだったでしょうか。
鷹也の問題がμ’sのメンバーにもどんどん影響していくといった感じになってきています。いつから鷹也はこんな問題児に……最初からな気もしますが……

それでは次は学園祭当日の話になると思います。
感想・評価もいただけたら嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。
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