小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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もうこの更新ペースで落ち着きかけてるのが不本意でしかたない。すみません……
少し寒くなるとすぐ体調崩すこの体をなんとかしたい……!!

今回は学園祭当日の話です。
それではご覧ください。



変化を恐れた代償

カーテンが開く。

朝日が目に入ってくると思ったそこに光はなく、目に入るのは窓にたたきつけられる水滴と厚い雲。

 

「お兄ちゃん、起きてる?」

 

返事をすると、ことりがドアを開けて隙間から顔を覗かせる。いつもより少し不安げな、緊張したような表情は笑顔を無理やり形作っている。

 

「朝ごはんできるから一緒に食べよ?今日は一緒に行くんだよね?」

「うん、分かった。今行くよ。」

 

返事をして、カーテンのそばから離れてことりに向き直って、出ていこうとしたことりに向かって声をかける。

 

「ことり……今日だよ。」

「うん……」

 

そう今日だ。ことりにとっての重要な日。ライブの日であり、留学の選択の日。その2つの意味の込められた鷹也の言葉にことりはうつむきながら頷く。そんなことりに鷹也は近づいて、その頭に手を置く。

 

「大丈夫。ことりが後悔しない方を選んで。穂乃果と海未に相談すればきっと選べるから。」

「…………………………………うん。」

 

答えるまでの沈黙の間、何かことりの口が動いた気がしたがそれを鷹也は聞き取れない。最終的には頷いたことりは顔を上げて微笑む。そのことりの頭から手を放して、ドアを完全に開いて廊下に出る。そして振り返ってことりに笑いかける。

 

「俺はことりがどんな選択をしてもそれを支える。だから、今日はライブにまずは集中して。それから自分の選択をしよう?」

 

ことりは何も言わずにただ頷くのみ。

 

 

 

 

 

朝食は2人でとった。すでに母親は学校に向かったようだ。学園祭の仕事もいくつかあるのだろう。最近は何やら特に忙しい様子で、鷹也とことりが部屋で寝る準備を整えたころに帰宅し、朝は朝練をやっている間に出かけていく。さすがに手伝いを再開すると申し出たのだが、ひな子はそれをよしとしなかったために最近はほとんど顔を合わせていない。それはことりも同じようだ。そんな中で鷹也は今日はことりとともに学校に行き、ステージの確認をしながらみんなのリハーサルに付き合う予定だ。

 

「うっわ……やっぱやんでないか……」

「そうだね……」

 

ことりとともに外に出ると、昨日から降り続ける雨はまだやんでいなかった。それどころか少し強くなってきているのではないだろうか。2人で不安に顔を見合わせてから、鷹也は傘を開きつつ考える。今日のライブは屋上でやることになっている以上は天気の問題は重要。このまま雨が降り続くとなると少し厳しいかもしれない。

 

「まあこればっかりは考えても仕方ないか……やめっていってやむもんでもないしなぁ……」

 

鷹也は小さくため息をついて首を横に振って気持ちを切り替える。こればっかりは誰にも何ともできない問題である。自分がテンションを下げていてはいけない。そうしてから隣のことりに苦笑しながら言う。

 

「きっとライブの時にはやんでると思っておこ。考えても仕方ない。」

「うん、じゃあいこ?」

 

ことりとともに歩き出す。手に持つビニール傘越しに空を見上げる。一向に晴れ間の見えない空から光は一切ささない。

 

 

 

 

 

途中で海未と合流する。穂乃果に関しては先ほど寝坊との連絡が雪穂から入っていた。その連絡に海未とともにため息をつき、ことりが苦笑する。そして学校に向かって歩き出すと、海未が真剣な表情になって口を開いた。

 

「ことり……その……」

「ごめんね、海未ちゃん。急なことになっちゃって……」

「それはいいのですが……」

 

ちらりと海未が歩きながら鷹也に視線を向ける。その視線の意味が分からないほど、鷹也は無神経でもない。鷹也は海未の方に視線は向けずに言う。

 

「これはことりが決めることだから。俺が勝手に海未たちに相談するわけにもいかないだろ。」

「それはそうですが……その間にことりはずっと1人で……」

「海未ちゃん!」

 

鷹也の言葉に少し不満げに返そうとした海未の言葉をことりが慌てたように海未を呼ぶことで遮る。その顔に浮かぶのは、無理して作ったことがバレバレの笑顔。

 

「大丈夫だよ。今日のライブが終わったらちゃんとみんなに相談するね。だからその時は相談に乗ってくれたら嬉しいな。」

「ことり……」

 

それは当たり前ですが……と言って黙り込む海未にことりは微笑むのみ。鷹也も何も言わない。何も言えない。そのまま少しの間黙って歩く。

 

「鷹也さん。」

「ん?」

 

そしてもう少しで学校につくという時、海未が鷹也に声をかける。鷹也が海未に視線を向けると真剣な表情で海未が見つめ返してくる。その瞳は不安げに揺れていて。当たり前だ。この少女は強い。でも、昨日急に幼馴染の大事な子が留学するかもしれないといわれたら困惑し、不安になるだろう。しかし海未はその心の内を押し殺すように表情を引き締めて言う。

 

「鷹也さんはどう思いますか?」

「……何が?」

「………………………………」

 

分かってはいるが、分からないふりをして聞き返す。それに海未は答えない。まっすぐにこちらを見つめるのみ。ことりが不安げに、でもどこか期待するようにこちらを見ているのに気が付きつつも鷹也はため息をつく。

 

「…………俺は何も言わないよ。」

「っつ……!」

「……何でですか……ことりのことですよ?妹のことですよ?」

「分かってるよ。」

「だったら……」

「分かってるからこそだよ、海未。」

 

一瞬唇をかみしめていたことりに気づき、心配そうな視線を向けるも何も言わずにまずはこちらに問い詰めようとする海未を止めて鷹也は続ける。

 

「ことりの将来に関わることだ。大事な人だからこそなおさら俺が口を出すわけにはいかないんだよ。」

 

海未は悔しそうに唇をかみしめる。きっと分かっているのだろう。鷹也に生まれつきあると思っているあり方。それを考えれば分かることだ。この賢い少女が気づかないわけがない。その様子に苦笑しつつ鷹也はそれ以上何も言わずに2人の一歩先に出る。気づけば音ノ木坂学院に到着していた。

 

「鷹也さん!」

「先に屋上のステージの確認してるな。クラスの方に顔出したら早めにリハーサルの準備しといてね。」

 

後ろからかけられる声を無視して、一方的に指示を伝えて階段を上に。ことりはその間、一言もしゃべらなかった。

 

 

 

 

 

その後、みんながクラスに顔を出し終え、生徒会の仕事のあった2人も合流してから室内でステップの確認を軽く行う。確認といっても昨日やりすぎたぶんほんの少しだ。後は時間までストレッチなどをして過ごすこととなる。そうしてみんなが部室でストレッチをしたり、クラスの準備を少しでもと手伝いに行ったりと各自で過ごす中、穂乃果は一向に部室に姿を見せない。

 

「鷹也、さすがにこれ以上はまずいわ。あまりギリギリになるのもよくないし……」

「そうだな……」

 

先ほど雪穂に電話したところ、すでに家からは出発しているとのこと。その割には到着が遅い。部室でみんながストレッチをしているのを確認しつつ、曲順やダンスの不安な点を確認していた時に絵里に声をかけられて鷹也は小さく頷きながら外を見る。窓にたたきつけられる水滴は朝から減ることはない。

 

「穂乃果ちゃん、どこかで事故にあったとか……」

「えー!そんなぁ……うう……かよちんがそんなこと言うから余計に心配になってきたにゃぁ……」

「花陽ちゃんも凛ちゃんも落ち着いて。そんなことあったらきっと連絡がくるはずやし雪穂ちゃんにも何も連絡きてないならきっと大丈夫やって。」

「そうね。穂乃果のことだし、どこかで寄り道してるとかじゃない?」

 

心配そうな花陽と凛を安心させるように希が言い、それににこが同調して呆れたように首を振りながら言う。きっと2人も心配なのだろうが3年生である彼女たちまで不安げな様子を見せたら花陽たちも余計に不安がってしまうだろうと思って、わざと軽い調子で話しているのだろう。その様子を見て、絵里と顔を見合わせる。

 

「絵里、ちょっと頼むな。」

「ええ。分かったわ。」

 

その言葉だけで察してくれた絵里に感謝しつつ、部室を出る。さすがに遅すぎる。心配でもあるし、穂乃果の通学路は把握しているのだから様子を見てくるべきだろう。そう考えて歩き出そうとして、チラリと海未とことりが屋上に続く階段を上がっていくのが目に入った。おそらく留学の件に関しての相談だろう。少し考えるも、追いかけるのをやめて反対に階段を下る。自分が彼女たちの選択に口を出すわけにもいかない。階段を一段一段、彼女たちから離れるように下っていく。

 

 

 

 

 

穂乃果は案外簡単に発見できた。通学路の途中にある公園。その屋根のあるベンチのところで見たことのないおばあさんと一緒に座っていた。

 

「穂乃果!」

「え……?あ、鷹也くん。」

「あ、鷹也くん。じゃないっての。何してんだ、ライブの準備始まってるぞ。」

 

ぎくりとしてこちらを見る穂乃果にそう言って近づく。ごめんごめんと謝る穂乃果を見て、隣のおばあさんが鷹也に頭を下げながら口を開く。

 

「ごめんなさいねぇ。この子、私の傘が壊れちゃったのを見て傘に入れてくれたのよ。でも、さすがに雨が強くてちょっと2人で傘を使うのはやっぱりつらくって……彼女ばかり濡れてしまうし……今この公園まで迎えに来てもらえるように連絡したからそれまで一緒に待ってくれるって言って……」

「……そうだったんですか。いえ、まだ時間はあるので大丈夫です。だから頭を上げてください。」

「ごめんね、鷹也くん。もうちょっとしてからまた歩こうと思って、間に合うと思って……」

 

言いながら頭を下げるおばあさんのことを制しつつ、鷹也は謝る穂乃果にそう言うことなら仕方ないよと苦笑して見せる。よく見ると穂乃果の肩は片方だけ不自然に多く濡れてしまっている。おばあさんに雨がかからないようにと気を使って歩いていたのでそうなったのだろう。きっと見知らぬおばあさんとはいえ放ってはおけなかったのだろう。穂乃果らしいといえば穂乃果らしい。

 

「別に悪いことしたわけじゃないんだ。少し急げばまだ全然本番には間に合うから大丈夫だ。」

 

申し訳なさそうにうつむく穂乃果にそう言って、鷹也が穂乃果の頭を撫でようとする。特になんてことないいつも通りの行動。しかし

 

「っつ……!!」

「穂乃果……?」

「あ……い、いやあ、髪濡れちゃってるし……さ。あははは……」

 

その手は避けられる。いつもならむしろ撫でられたがるような穂乃果の違和感のある行動に困惑していると、穂乃果は誤魔化すようにそう言って笑う。その誤魔化すような言動を追求しようするも、穂乃果がこちらに歩いて来る人を指さしたことでそれは遮られる。

 

「あ、おばあちゃん。来たんじゃない?」

「ああ、そうだね。ごめんなさいね、忙しいのに邪魔しちゃって……」

「ううん、そんなことないよ!おばあちゃんも気を付けて行ってね。」

「ええ、ありがとうね。」

 

そんな会話をしてから、おばあさんは穂乃果にもう一度お礼を言い、鷹也にも一度頭を下げてから迎えに来てくれた人とともに歩いて行く。それを見送りつつ、鷹也は穂乃果に聞く。さすがに何も聞かないというわけにもいかなかった。

 

「穂乃果、調子悪い?」

「え?な、なんで?そんなことないよ?」

「……そっか。」

 

止める。もしくはきちんと追及するべきかもしれない。明らかに様子がおかしいのだ。ずぶぬれになってしまった時点でコンディションは最悪だろうが、それを抜きにしても今日の彼女の様子には違和感があった。声は少し枯れているし、撫でられることを拒み、頬は少し赤い。そうは思いつつも、少し動揺を見せつつなんでもないという穂乃果の言葉に鷹也は頷く。彼女が大丈夫というならそうなのだろう。

 

「さ、急いで行くよ。集大成のライブにするんだろ。」

「……うん!絶対に成功させる!!」

 

おばあさんをかばって傘をさしていたのでかなりずぶぬれながらも、そんなの気にしていないように両手でガッツポーズを作り、満面の笑みを見せて強い想いを語る彼女を止めることなんて、鷹也にできるわけがないのだから。

 

 

 

 

 

「鷹也。」

 

音ノ木坂学院に到着し、穂乃果とともに部室に向かっていると不意に声をかけられる。その声の主に一瞬で気が付いた鷹也は穂乃果を先に行かせて振り返って小さくため息をつく。

 

「本当に来たんですか、沙希先輩……」

「そりゃあ来るよ。せっかく面白いグループが出てきたんだからきっちりどうなるか見ておかないと。」

「前はつまんないって言ってたじゃないですか。」

「鷹也はね。でもあの子たちは少しは才能あるしさ。この程度の才能でもここまで見てきた情けってものもあるし。」

 

笑顔の沙希はそう言って笑う。鷹也はその言葉の含むところを察しつつも何も言わない。そのことは不満に思っている様子ながらも想定済みだったのか。沙希は小さくため息をつきながら言う。

 

「あの子……穂乃果さんだっけ?何か様子がおかしかったけど、大丈夫?」

「……きっと大丈夫ですよ。あの子がやれるって言ってますし。」

「鷹也の判断は?」

「あの子たちが行けるっていうならやらせます。」

「……結局変わってないんだね。」

 

やれやれと肩をすくめる沙希は鷹也に背を向けて歩きだす。鷹也は何も言わない。沙希の言いたいことは理解できるが、それは自分のあり方ではあってはいけないことだから。そんな鷹也に沙希は言う。

 

「……まあ、どうなるかは見ててあげるよ。鷹也がそんなんでも、もしかしたらあの子たちが想像を超えてくるかもだし。」

 

あんまり期待できないけど。そう言って沙希は歩いて行く。きっと時間まで適当に校内を見て回るのだろう。鷹也はその背中に何も言えない。自分の判断も何も、彼女たちの判断を尊重するのが正解なはずだ。自分の判断に価値がない以上は彼女たちの判断を尊重するしかないのだから。

 

 

 

 

 

ライブ直前。みんなが着替えを終えた部室に入る。そこではみんなが窓の外を見て不安げな表情を浮かべていた。

 

「やまないわね……」

「っていうかさっきより強くなってるんじゃない、これ?」

「これじゃあお客さんがきたとしても……」

 

絵里、にこ、真姫の順で不安げに呟き、それからみんなの視線がこちらに向くのを感じて鷹也は少し考える。この強い雨の中でライブを強行するよりは少し弱くなるのを待った方がいいか。しかし、そもそも天気予報はこのまま雨は強くなる一方だという予報。迷いつつ小さく舌打ちをする。どの判断にも確実に最善と言い切れる要素がない。その時点で自分の判断で彼女たちの行動を決めるわけにはいかないわけで。

 

「やろう!!」

 

その迷いを断ち切るように響くのはやっぱり彼女の言葉。みんなの視線が穂乃果に向く。着替えを終えて、準備を整えた穂乃果は力強く、笑顔で続ける。

 

「ファーストライブの時もそうだった。あそこで諦めずにやってきたから今のμ’sがあると思うの。だからみんな……行こう!!」

「……穂乃果……そうね。」

 

みんなが穂乃果の言葉に賛同していく中、鷹也は穂乃果の顔色を見る。特に問題はなさそうに見える。ついでことりと海未に。ことりは少し心ここにあらずと言った様子だったが、海未がとりあえずライブに集中しましょうと声をかけてやっている。ライブの前に言うのはやめてライブにとりあえず全力を注ぐことにしたらしい。ここも特に問題なし。視線が真姫と合うが、真姫は真剣な表情のまま視線を逸らす。まだ少し考えてしまっているようだがきっとライブには問題ないだろう。他のメンバーもやる気充分。

 

「よし、じゃあ時間通りにやろう。」

 

鷹也はみんなにそう言うと元気のいい返事が返ってくる。この分なら大丈夫なはずだ。不安を振り払うように、いつも通りの言葉をかける。いつも通りにいるために。いつも通りにこのライブを終えるために。

 

「じゃあいつも通りに。自分も観客も最高の笑顔で。全力で楽しんでやりきる。いいな?」

『はいっ!!』

 

 

 

 

 

 

屋上は雨が降りつける中で彼女たちのステージとなる。淡いスポットライトが彼女たちを照らしている。ライブが始まるまであと少し。スタンバイは終わった。今回も動画の撮影をしながら鷹也は彼女たちをステージの外から見守る。雨の中でもお客さんはきちんとおり、少し離れた所には雪穂の姿。そして鷹也の隣には沙希。

 

「さ、どうなるかな~」

「沙希先輩、動画の撮影してるからそばであんまり私語しないでください。」

「どうせ他のところで撮ってあるライブの音源をあてるんでしょ?」

「…………………………」

 

沙希にずばり言い当てられて黙り込む。確かに音源は今他のところで録音している分を使うのでこのカメラの近くでいくら話しても問題はない。沙希はそんな様子に笑いつつ、鷹也の耳元でつぶやく。

 

「上手くいけばいいね?」

「……上手くいきますよ。いつも、あの子たちはいつもこうして走ってきたんですから。」

「いつも……ね。」

 

そう沙希が呟いたところで音が、光が辺りを包む。ライブが始まり、1曲目。新曲である曲が始まる。歓声が上がる。彼女たちはその歓声に答えるように、さらに歓声を求めるように楽し気に踊り、歌う。

 

「…………4人………」

「え……?」

 

いつも通り。彼女たちのライブが進んでいくのを見守っていると、隣で沙希が小さくつぶやいた。その言葉に聞き返すと、沙希は冷めた目で、本当に本当に冷たい視線をステージ上の彼女たちに向けて口を開く。

 

「無理してる子が4人。前に見たときよりもダメになってる。」

「……新曲だからじゃないですか?」

「それを差し引いてもだね。みんなには分からないように振舞っているのはすごいと思うけど……それじゃあダメだよ。」

 

そう言って沙希は順番にステージ上の少女を4人指さす。その沙希の表情はとてもつまらなそうで。新しく見つけたおもちゃがつまらない物だったとでも言うような。そんな表情。

 

「海未さん。ことりさん。真姫さん。穂乃果さん。笑顔が引きつってるし、ダンスにキレがない。何か別のことを無理に忘れようとしてる感じかな。」

「……………………」

「心当たりがあるみたいだね。」

 

何も言わない鷹也に沙希は冷たい視線を向ける。そして、ため息。

 

「鷹也、何してんの?」

「……俺は何も……誰にでもできるサポートをして……」

「あの子たちだけじゃ何ともならなかったからこうなってる。鷹也は何のためにあの子たちのそばにいたの?」

 

そう言う沙希に視線を向けると、そこには厳しい表情をする沙希。そんな沙希から目を逸らせず、でも何も言えずに鷹也は黙り込む。そんな鷹也に沙希は続けて言う。

 

「パフォーマンスは向上してる。技術は上がってる。だから、このまま何もなく続けていければ上には上ってこれるだろうね。」

「なら、それでいいじゃないですか。周りに認められてるなら。それなら落ちていくことはない。」

「分かってるくせに頑なだね。認めたくないのかな…………周りから落とされるんじゃないよ。それこそあたしたちが潰すわけでもない。鷹也が何もしなかったから、」

 

———勝手に自滅するんだよ。

 

「穂乃果!!!」

「っつ……!!!」

 

沙希の言葉とともに一曲目が終わり、海未の声が響く。反射的にステージに視線を戻すと、そこでは穂乃果が倒れていて。

 

「お姉ちゃん!!」

「穂乃果!!」

 

焦ったように傘を投げ捨ててステージに駆け寄る雪穂と叫ぶ絵里の声で我に返ってステージに駆け寄る。後ろからは沙希のため息と小さな呟きが聞こえていた。

 

「上に来ようとしてる時点で変化がないなんてありえない。これが鷹也が変化を怖がった代償。思ったより早く来たね。」

 

あ~あせっかく面白そうな相手になる気がしてたのに。そう言って沙希は屋上から出ていく。鷹也はその言葉に何も返せない。返す余裕もなく、倒れる穂乃果のそばにしゃがみ込む。

 

「穂乃果!大丈夫!?」

「穂乃果ちゃん!!」

「……すごい熱……こいつ、最初から無理して……」

 

穂乃果の額に手を当てて確認した鷹也は小さく舌打ちをする。この苛立ちは誰に向けてだろう。考えるまでもない。

 

「次の曲……せっかくここまで……」

 

うわごとのように繰り返す穂乃果の手から力が抜けていく。スポットライトは消え、雨の降りしきる屋上で彼女たちを照らす光はない。

 

 

 




はい、いかがだったでしょうか。

本来ならばもっと早くに対処できた問題です。
鷹也が恭介のことを隠しとおそうとするあまりにいつも通りを強行しすぎたこと。いつも通りに上手くいくはずと半ば無理やりに納得しようとしたこと。ことりがそれを察していつも通りを強行しようとして相談しなかったこと。穂乃果が無理しすぎたこと。真姫が何も言えずにいたこと。
他にも他のメンバーが何も気づかず、何も言わなかったことも原因でしょう。他にも鷹也の根本の自己否定なども含めて、様々な要因が重なってこの結果になりました。

ここからは問題がさらに進みます。最終的に進みきった問題をどう彼と彼女たちが解決していくか楽しみにしていただければ幸いです。

感想・評価いただけたら嬉しいです。
それでは次回もよろしくお願いします。


追記
遅れましたがかよちん誕生日おめでとう!(((o(*゚▽゚*)o)))
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