小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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最近寒いです
作者はBiBiの冬がくれた予感が大好きでそれを聞きながら今回は書いてました。まだ真姫ちゃんしかBiBiのメンバー出てきてないけど……

今回は長めです。
文章的にはまだまだですが楽しんで読んでいただけたら嬉しいなと思います。


ライブ準備!

鷹也が説得するまでもなく、真姫が穂乃果に影響されていたことがわかった先日の出来事。それからは忙しかった。まずは次の日の朝、穂乃果の家にμ’s宛でCDが届いた。

 

「ねえ、こんなの届いてたよ!」

 

そう言って朝練の時に穂乃果が見せてきたCDを4人で聞いてみると、そこからは聞いたことのない音楽、そして聞き覚えのある歌詞と声が聞こえてきた。

 

「これって……」

「穂乃果ちゃん!この声!」

 

海未とことりが嬉しそうに声をあげる。穂乃果の顔ももちろん満面の笑み。歌詞だけでは正直自分たちの歌だと実感はなかっただろう。しかし、曲がついた。歌になった。自分たちの、自分たちだけの歌になったのだ。鷹也は3人の頭を順番にポンと叩く。一瞬縮こまって驚き、鷹也を見る3人に笑顔を見せる。

 

「よかったな。」

「「「……うん!(はい!)」」」

 

満面の笑みで頷き、よーし!練習だ!とはりきり出した3人を鷹也は笑顔で見守りながら、もう一度パソコンから流れる曲に耳を傾ける。隠れて手伝っている体のはずなのに、そこから流れる綺麗な声は明らかにあの少女のもので。こうしなければ作曲者として曲と歌詞が合わさったものが伝えられないとはいえ、文字で伝えたりと方法は他にもあったはず。

 

(ほんとにいい子だな、あの子……)

 

なんだかんだ言いながらも無償で作曲してくれて、曲に合わせて歌詞を歌ってくれていて、しかもそれを1日で完璧に作り上げてくる。すごい才能で、すごい優しさだ。キツイ性格、気の強そうな口調の彼女を思う。容姿端麗、病院の跡取りで音楽にも才能を持ち、性格は少し素直じゃないが根はとても優しい子。本当に完璧な子だなと鷹也は思う。だが、

 

(そんな子が1人で音楽室で弾き語りか……)

 

嫌な想像をしてしまう。人間の他人の才能に対する妬み、恨み、嫉妬。可能性はある。可能性はあるが、

 

(考えたってしかたない。)

 

いくら考えても想像の域をでないのだ。ならば、考えてもしかたない。今は曲ができたことを喜び、感謝しよう。鷹也は気持ちを切り替え、この曲につける振り付けを考えなきゃなぁーともう一度曲をリピート再生して思考に没頭していった。

 

 

 

 

 

それから歌の練習を開始した。1度放課後に階段に来たことりたちに学校の屋上で歌ってみたの!と言われて音楽プレイヤーで録音された音源を聞かされたが歌は問題ないようだ。素直に褒めると3人は喜んでいた。で、残りの問題。ダンスである。歌を聞かされた次の日、週末で休みの今日はそれを決めるために恒例の和菓子屋「穂むら」に集合していた。鷹也もアドバイスをすると決めた以上参加するしかない。しかし、その前に

 

「じゃ、登録するぞー。」

「「「おおー」」」

 

仮登録のままにしていたサイトへの登録を済ませてしまう。鷹也が前に適当に打ち込んでいた音ノ木坂学院アイドル活動部という名称はついに世に出ることはなく、μ’sというグループ名がサイトに登録される。なぜか感嘆の声をあげる3人に鷹也は向き直る。

 

「さあ、これで逃げれなくなったな。」

「逃げる気なんてないもん!」

 

なぜか不満気にいう穂乃果にそうかと笑いながら返す。廃校阻止のために時間がないこの状況では仕方ないとはいえ、音ノ木坂学院に認可されていない時点でこの登録はまずい気もするが事後承諾を早めに行えば何とか。そのくらい正直ギリギリの行動である。少しは不安になるかと思ったがそうでもないようだ。

 

「じゃあ、まずは生徒会長を説得するためにもライブ頑張らなくちゃね。」

「ことりの言う通りですね。このまま未公認ではさすがにまずいですし……」

「うん!頑張ろう!!」

 

世の中に発信されたという状況は気を引き締めるいいきっかけになったらしい。前向きに切り替えて、おー!と手を上げる3人の注目を鷹也は手を叩くことで集める。

 

「はいはい、その気持ちはいいと思うけど今はそのためにもダンスだ。どうするかなんだけど……」

「はい!」

「……はい、穂乃果。」

 

アドバイスをする、そして1人年上という立場なので司会のポジションにおさまった鷹也は話も聞かないうちに元気よく手を挙げた穂乃果に嫌な予感を感じながら発言を許可する。

 

「なんかカッコイイ感じ!」

「で、ダンスなんだけど……」

「無視!?聞いてよー!」

「穂乃果。静かにしてください。」

 

騒ぐ穂乃果を無視していると海未が穂乃果をたしなめる。ことりもあははと苦笑しているがなんかカッコイイ感じってだけでは具体性に欠けすぎているのだ。鷹也は話を続ける。

 

「カッコイイかはわかんないけどこんな感じだろうってのは考えてある。」

 

そう言って鷹也はある程度のダンスの説明をする。先日歌を聞いたところ大体パート分けも決まっていたようで、それも考えて大まかに決めたのだ。細かいところまでは決めていない。あくまで大まかなステップや同じ振り付けの繰り返しとなるだろう部分はどこかという程度だ。鷹也も素人より少しダンスに近い位置にいるだけでそこまで詳しいわけではない。この程度が独断で考えるのは限度だろうという判断である。

 

「……って感じ。どう?」

「大まかな段取りはそんな感じでいいんじゃないでしょうか。」

「うん、私もいいと思う。お兄ちゃん、ありがとう!」

 

海未とことりの賛同を得て、鷹也は残りの穂乃果を見る。しかし、穂乃果は納得していない様子で首をひねっている。

 

「ねえ、鷹也くん。」

「なんだ?」

「1番と2番のダンスは繰り返しでいいの?」

「……なんで。」

 

聞いてきた穂乃果に歯切れ悪く鷹也は聞き返す。正直なところ、そこは妥協、しょうがないとあきらめた部分でもあるため、あまり突っ込まれたくなかった。

 

「なんか音楽番組とか見てても1番と2番でダンス変わってる時のほうが盛り上がる気がして。」

 

正論だ。穂乃果がそこまで考えるとは思ってなかった。本来ならば1番と2番と少しだけ変えて完璧な繰り返しは避けたい。しかし、

 

「今回はちょっとな……」

「えーー!!どうせなら盛り上がった方がいいじゃん!!」

 

頬を膨らませて反論してくる穂乃果。鷹也としてもその理屈はわかる。わかるのだが、

 

「はっきり言っておく。今からじゃあまり複雑なダンスは無理だ。」

「「「…………」」」

 

厳しい口調で言うと黙り込んでしまう3人。だが、こればかりは鷹也も言っておかなくてはいけないことである。もう3週間もない。今までダンスの練習は基礎しか行ってこなかった以上、振り付けを決め、覚え、完成まで持って行く。複雑なダンスをやっている余裕はないのだ。

 

「でも……」

「それだけじゃないんだよ。」

 

穂乃果としては全力を尽くしたい。最初から無理と決めないでやりたいことを後悔しないよう全力でという思いもあるのだろう。しかし、その反論しようとした様子を鷹也は許さない。

 

「3人とも。そんな複雑なダンスしながら、息を切らさず笑顔で歌いきる。できるの?」

「それは……」

 

言い淀む3人。それはそうだろう。まだ慣れ切っていないダンスという運動、それに加えて新しい振り付け。そこに歌と笑顔もつくのだ。気持ちだけでどうにかなる問題ではない。それでも納得がいかないのだろう。穂乃果は弱気な表情を振り払って、鷹也に反論する。

 

「鷹也くんの言うことは分かるけど……分かるけどダンスだけ気を抜くなんてしたくない。」

 

鷹也の目をまっすぐ見返す穂乃果。分かっているだろう。時間的に余裕がなく、厳しいことは。それでもなお彼女は言う。

 

「やりきりたい。後悔はしたくないから。」

 

言い切った穂乃果の表情は覚悟が決まっていて。前に生徒会長に厳しく言われて落ち込んでいたのを完全に振り切り、覚悟を、やりきることを決めたのだろう。鷹也は、これが普段お気楽な穂乃果と同一人物なのかとたまに疑いたくなる。圧倒されそうになるのだ。その純粋な頑張りたいという気持ちに、一片の曇りもないその純粋な気持ちに。

 

「と言ってもそこまで複雑にしても……」

「私も穂乃果ちゃんに賛成かな。」

「ことり?」

 

だが、鷹也としてもひいてはいけない場面である。ここで穂乃果に賛同してダンスが上手くいきませんでしたでは済まされないのだ。しかし、そこでことりが穂乃果に賛成の意を示した。驚いて鷹也が横を見ると、ことりは笑顔で続ける。

 

「確かにお兄ちゃんが言ってることも分かるけど……。でも、穂乃果ちゃんの言う通りやりきりたいなって思うな。海未ちゃんは?」

「私は……ってここはなにを言っても無駄でしょうね。鷹也さん、悪いのですが賛成してもらえませんか?」

 

海未まで引き込まれ、3人に見つめられる。ここまで言われて反対できるほど鷹也は強くない。諦めてため息をついて両手を上げる。

 

「……わかったよ。多少は変えよう。その方がいいのは確かだ。」

 

やった!と手を叩いて喜ぶ3人を見ながら、ただし!とつづける。

 

「中途半端になるようじゃ意味ない。ちゃんとできるようになる振り付け、きちんと考えるぞ。」

「「「はい!!」」」

 

3人の元気のいい返事を聞きながら、どんなものがいいか考えていく。ライブまであと2週間と半分。もう迷ってる時間はない。

 

 

 

 

 

「ことり、飲み物持ってきた。」

「あ、うん。ありがとう。入っていいよ。」

 

そう言われて鷹也はことりの部屋に入る。ライブまで残り1週間を切っていた。この1週間と少しの間で歌、ダンスもなんとか形になってきていた。朝と夕の階段上り下りもある程度余裕を持ってこなせるようになってきていたので後の課題は完成度。これからは歌、ダンスの完成度を繰り返して上げていくしかない。そしてもう1つ。

 

「ありがとう、お兄ちゃん。」

「どう?何とかなりそうか?」

 

笑顔でお礼を言うことりの前、はスペースがないので少し離れた所に持ってきた飲み物を置く。女の子らしいぬいぐるみやクッションが置かれた部屋を見まわすとそこら中に裁縫道具や布の束が散らばっている。それらを興味深げに見ながら鷹也が問いかけると、飲み物を飲んで大きく伸びをしていたことりは難しい顔でうつむく。

 

「もうちょっとなんだけどさすがに大変かな。でも間に合いそうだよ。」

「そうか?なにか手伝うことは……」

「い、いいよ!大丈夫!なんとかなるから大丈夫だよ!!」

「そ、そうか……ならいいんだけど。」

 

全力で否定され少し落ち込む鷹也。しかし、それも仕方ないことである。鷹也は裁縫の技術は一切才能に恵まれなかったらしく、とてもじゃないが作業を手伝うことなどできないのだ。鷹也もそれは自覚しているためとりあえず気持ちを切り替える。

 

「まあ、なんかあったら言ってきて。手伝うから。」

「うん。ありがとう、お兄ちゃん!」

 

そう言って部屋を出る。ドアを閉める際にことりが少しあくびをして目をこすっているのが見え、ドアを閉めてから少し立ち尽くす。ことりが夜中まで頑張っているは知っている。文句1つ言わずに頑張っているのを知っている。なのに何もできない自分が少し情けなかった。しかし、今は応援しかできない。ドアに掌を当てる。そこで向こう側から声が聞こえた。

 

「お兄ちゃん、いろいろ手伝ってくれてありがとう。」

「……気づいてたのか?」

「ドア閉めてから足音聞こえなかったもん。」

 

そっか。と鷹也は笑う。

 

「ことり、頑張れ。」

「うん、頑張るね。ありがとう、おにいちゃん。」

 

応援しかできないんじゃない。応援はできる。ことりの頑張りを自分は見ている。自分の妹が頑張っているという保証は自分が、応援は自分ができる。穂乃果も海未もいないこの場所。ここで妹のことりを支えるのは自分の役割だ。それは大切な役割のはずだ。

 

 

 

 

 

 

「ことりたちはどう?」

 

その後、いつも通りリビングで書類を片付けていた鷹也に、帰ってきて晩御飯を口にしているひな子が問いかけた。

 

「頑張ってるよ。歌もダンスもよくなってきてる。」

「そう……」

 

難しい顔をしてひな子は黙り込む。難しい立場だろう。ひな子は理事長だ。娘を応援したい気持ちはある。あるにはあるが、学校に認可されていない以上は学校側の介入は難しい。認可されていてもスクールアイドルというリスクのある活動に支援を決めるなど簡単に決断できることではない。

 

「母さんはとりあえず見守ってあげて。母さんには他にもやることいっぱいあるんだから。学校に認可されてない以上なにかするのは難しいんだし。」

「……そうなのよね。そうするしかないのよね。」

「大丈夫。俺がちゃんと見とくから。」

 

鷹也は母の心配を取り除くように笑顔でそう言う。ひな子にこれ以上負担をかけるわけにはいかない。ことりたちの活動くらいは自分が完全に支援して見せる。そんな鷹也の思いが伝わったのか、心配そうな表情だったひな子は、じゃあ鷹也に頼むわね、と笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

「1!2!3!4……」

「ことり!ちょっと遅れてる!」

「穂乃果!動きすぎ!1個の動作できっちり止めろ!」

「海未、動き小さい!」

 

ライブ前日。朝練は今日は階段はなし。鷹也が指示する中で何回かダンスを通して練習する。

 

「っ!」

「よし、いい感じ。」

「っだあああ~~疲れた~~」

 

最後の決めポーズを取り、鷹也が褒め言葉を口にしたところで穂乃果が崩れ落ちた。朝からこれだけ踊ったんだ。疲れたのだろう。

 

「どうだった?お兄ちゃん」

「まあ、だいぶよくなったんじゃないか?」

 

ことりに聞かれてもう1度そう言ってやると3人は満面の笑みで手を取り合って喜んでいた。まあ、小さなところはまだまだだが、ある程度は完成の形に持って行けただろう。鷹也からすれば時間がなかったにしては十分すぎるほどの出来である。

 

「まあ、3人ともよく頑張ったよ。誰もさぼらなかったし。」

「そうですね。穂乃果が寝坊しないとは思いませんでした。」

「大丈夫!その分授業はぐっすり寝てるから!」

「穂乃果。今度は教えないからな。」

 

寝転がって伸びをする穂乃果に鷹也は釘を刺しておく。音ノ木坂学院は一応進学校となっている。であるからには入試も当然厳しくなり、勉強ができなかった穂乃果に教えるのにものすごい時間と労力を鷹也は使ったのだ。

 

「ええ~!!そんなこと言わないで教えてよ~!!」

「俺だって暇じゃないの。自分でやれ……って、ん?」

「どうかしたの?」

「いや、あそこ。」

 

急に黙ったことを不思議に思ったことりに聞かれ、駄々をこねる穂乃果をあしらっているときに視界に入った人物を鷹也は指さす。気づかれたのが分かったのだろう。そっと階段を降りていこうとするのは、

 

「あ!お~い!西木野さ~ん!真姫ちゃ~ん!」

 

穂乃果に大声で呼ばれ、恥ずかしかったのだろう。顔を赤くしながら真姫は階段を上ってくる。

 

「大声で呼ばないでよ!」

「え?なんで?」

「無駄だよ。穂乃果にそんなことで恥ずかしがる気持ちはない。」

「なんなのよ、もう……」

 

素で聞き返してくる穂乃果とそれを説明する鷹也の言葉に真姫はあきれたように呟く。そんなそっけない様子に負けずに穂乃果が真姫に自分たちの歌を聞かせようとイヤホンを取り出し、真姫に聞いて!とその先を差し出す。しかし、迷惑そうな真姫は聞く気はないようでそっけない態度。

 

「な、なんで私がそんなもの聞かなきゃいけないのよ……」

「だって真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」

「えっ……いや、だから私じゃないって何度も……」

「嘘下手だな。」

「なによ!あんたは黙ってて!」

「え?俺にだけあたり強くない?」

 

確かに前に希にわしわしされてる現場見ちゃったし、その後に曲を作ってくれるといったような言葉を聞いたのは鷹也だけであるため少し恥ずかしい気持ちはあるのかもしれないが。口には出さないが、俺、年上なのになぁとしゃがみ込んで落ち込む鷹也をことりがよしよしと慰めている間に穂乃果は隙をついて真姫の耳にイヤホンをつけることに成功したようである。

 

「とりあえず1回聞いてみて。」

「…………」

 

そう言われて、イヤホンをはずさずにきちんと聞いてくれるあたりほんとに優しい子だなと鷹也は思う。そして聞き終わった後、真姫は

 

「音程がまだはずれてる。」

 

そうばっさり言い捨てる。そしてショックを受ける3人に背を向けてさっさと階段の方に向かって行く。しかし、そこでぼそっと小さく付け足した。

 

「でもまあほんの少し外れてる部分があるだけよ。ほとんど完璧じゃない?」

 

小さくてもその声はきっちりとこちらに聞こえていて、3人は一転して笑顔になる。穂乃果は大きな声でありがとー!真姫ちゃーん!と言ってまた怒られているが。その後、練習を再開した3人に鷹也はトイレに行くと言ってその場を離れた。そして向かった先は

 

「おーい、西木野さーん!」

「……なによ。」

 

真姫のもとである。不機嫌そうに振り向いた彼女だがその不機嫌そうな顔がほとんど本当に不機嫌なわけではないことがだんだん分かってきた鷹也はスルー。

 

「いや、お礼言おうと思って。」

「あなたにお礼言われることじゃないわ。ただの気まぐれよ。」

 

ツンとしてそう言う真姫が面白くなってしまい鷹也は吹き出してしまう。なに笑ってんのよ!という真姫の言葉も無視。本当に面白い子だ。本当に素直じゃない。

 

「ごめんごめん。ちょっと西木野さんの反応が面白くて。」

「なにそれ。イミわかんない。」

「だってそんなに意地張って、素直じゃなくて。でも、さっき曲聞いてたとき自覚あった?すごく楽しそうでいい表情してた。」

「なっ……!」

 

恥ずかしそうに頬を染める真姫を面白そうに鷹也は見る。そう、真姫は自分が作った曲を他人が歌うのを聞いて笑顔を見せていた。とても満足そうに。

 

「今回は本当に助かったよ。ありがとう。もしよければでいい。またあの3人の力になってやって。」

「……別に大したことじゃないし。ていうかそんなの知らないし!また気が向いたらね!」

 

最後まで素直じゃない言葉を顔を真っ赤にしながら言った真姫はもう用はないでしょと背を向けて歩いていってしまう。そんな彼女は頼ればまたすぐ力を貸してくれるだろう。あの子はそういう子だ。すでになんとなく真姫の性格が把握できてきている鷹也はそんなことを思って苦笑すると、歩いていってしまう背中に向けて聞こえないと分かりつつもう1度小さな声でお礼を告げた。

 

「ほんとにありがとう。」

 

 

 

 

 

その日の放課後。今日は急に恥ずかしがりがぶり返した海未の特訓のためのチラシ配りをしてから神田明神に来た3人の練習に付き合い、鷹也は今、『穂むら』の1階と2階をつなぐ階段で団子を食べて3人を待っていた。ことりの衣装づくりもなんとか間に合い、今3人は試着の最中である。ドアの前で待つのもなんか不自然なので1階から上る際の1段目に腰かけているのだが意外と長くかかっている。穂乃果が大声で叫んでいる声が聞こえてきたりもしたが先ほど自分だけ制服で出ますと言ったような海未の声が聞こえてきたばかりなので、おそらく短いスカートを嫌がった海未を説得するためのものなので無視する。昨日、眠たそうな顔で目をこすりながらことりが見せてくれた衣装はスカートが結構短かった気もするので海未の説得に時間がかかっても仕方ない。すると、穂乃果の妹の雪穂が居間から顔を出した。

 

「なに~?今の声……って鷹也さん?なにしてるの?」

「よ、雪穂。ちょっと穂乃果たちの手伝いしててさ。お前、今まで昼寝してたのか?夜寝れなくなるぞ?」

「もうそんな子供じゃないよ!」

 

そう言って頬を膨らませる雪穂だが鷹也にとっては末の妹という感じなのでいつまでも子供扱いしたくなるのだ。それにそう言う割には少し雪穂の髪には寝癖がついてしまっている。それを鷹也が自分の頭をポンポンと叩いて教えてやると、

 

「頭……?ってうわわああ!」

 

と慌てて居間に顔をひっこめた。自分からすればそういうとこが子供なんだと鷹也が笑っていると3人が2階から降りてきた。若干1名少し不満気な顔つきな海未という少女がいたがなんとか納得させたようだ。

 

「お兄ちゃん、お待たせ!」

「いや、いいよ。じゃあ成功祈願のお参りに行きますか。」

 

 

 

 

 

スクールアイドルをやると3人の少女が決め、それから毎日足を運んで体力作りに励んだ神田明神。その境内に3人の人影が並ぶ。例外なく全員が一心にお祈りをしていた。

 

「どうかライブが成功しますように、いや大成功しますように!」

「緊張しませんように……」

「みんなが楽しんでくれますように。」

 

3者3様のお願いを少し後ろで聞きながら鷹也は空を見上げる。そこにはきれいな星々が大小様々な輝きを放っている。鷹也が3人と一緒にお願いをしない理由は自分は何もしていないから。神様に祈ることのできるのは頑張った者だけだ。自分たちでできる限りの努力をして、限界まで最善を尽くす。そのことを怠らなかった者たちが、最後の願掛けとして行うべきことだ。

その点、あの3人は努力をしてきた。1日も欠かさずに朝練、放課後、夕方に練習を3人は繰り返していた。穂乃果がはじめようと決断し、沈んだときも明るく元気に頑張ろうと後の2人を引っ張っていた。海未が真剣に歌詞を考え、トレーニングのメニューを考え、他の2人の力になろうとしていた。恥ずかしがりなのに負けずに克服しようとしていた。ことりが眠い目をこすりながら衣装をつくり、1番ダンスが苦手でも精一杯ついていっていた。3人とも努力していた。できる限りの努力、最善を尽くしていた。鷹也はそう思うし、本当に報われてほしいと思う。

 

「よろしくお願いしまーーす!!!」

 

穂乃果の声が聞こえて鷹也はそちらに視線を戻す。では、自分たちでできる限りのことをして、最善を尽くし、願掛けをした者が必ず報われるかと言われればそうではない。努力したって報われないことはある。神様なんて、神頼みなんてそんなものだ。

 

「鷹也くーん!」

「お兄ちゃん!」

「鷹也さん!」

 

3人に呼ばれてそのそばに行く。手をつなぎ空に視線を向けていた3人の横、ことりの隣に立つと穂乃果が小さくつぶやいた。

 

「明日かぁ……。楽しみだなぁ……」

 

成功を信じているのだろう。そう呟いた穂乃果の顔は希望に満ちていて。他の2人も同じような表情をしていて。

 

努力が報われないことだってある。神様が、神頼みがなんの意味もなさないことだってある。むしろその方が多いかもしれない。

でも、いやだからこそ、そんな権利はないことは分かっている。もはや祈れるという段階にすら自分がなっていないことは分かっている。

それでももし、もしも自分が祈ることが許されるのならば、少しでも神様が聞き届けてくれることを信じてよいのならこう祈りたい。

 

(どうかあの3人の努力が報われますように……)

 

ライブ前日。本番まであと少し。

 

 




いよいよ次回はライブ回。
どんな描写にしようか。きちんと伝えらえるように頑張ります。

毎回のことですが少し増えていたのでここでお気に入り登録してくださった方に感謝の言葉を。
ほんとうにありがとうございます。ほんとうに嬉しいです。こんな文章で楽しんでいただけているのか正直不安ですが、できるだけがんばるので引き続きよろしくお願いします。
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