執筆が進まない……!!!
今回も短めです。出来がそこまでいいとは思えないですが、1週間たったのでとりあえず更新。後の大幅改稿がないことを願います。
それではご覧ください。
空気は重苦しい。気まずい空気がその場を支配している。駆け出していったことりを誰も追いかけることはできない。
もはやパーティーを続けられるわけもない。穂乃果は沈み切って、困惑し、後悔し、思いつめる。
「……とりあえず説明してくれるわよね?」
「ことりの言ったこと以外に言うことなんてほとんどないよ。」
「そういうことじゃないわよ。」
絵里にそう言われて、その困惑している悲し気な表情に何か思うところがあったのか、鷹也が珍しく自分たちにも分かるくらいの苛立ちの表情を見せて唇をかむ。その苛立ちの矛先はどこに向いているのだろう。
「……母さん、理事長の知り合いに海外のプロのファッションデザイナーの人がいるんだ。その人が理事長を通じてライブの動画を見て、ことりの作った衣装をすごく褒めてたんだよ。で、その人が服飾専門の学校みたいなものに関わってる人で留学の枠をことりのために開けてくれた。大体1ヵ月くらい前の話かな。」
「ことりちゃんすごいとは思ってたけど……」
「プロの人に褒められるくらいだったんだ……」
顔を見合わせて花陽と凛が呟く。その言葉には同感だ。ことりはすごい。本当にすごい。不器用で、ただまっすぐ進むことしかしない自分にいつもにこにことついて来てくれて、とっても優しくて、とっても可愛くて、それでいてあんなに綺麗な衣装も作ってくれて。
その想いとともに浮かんでくる思い。
「なんで……教えてくれなかったの……?」
言葉が口から洩れる。分かっている。これは八つ当たり。悪いのは絶対的に鷹也じゃない。でも、言わずにはいられなくて。俯きつつも言葉を紡いでいく。手は痛いほど握りしめられていた。
「だって……ことりちゃんがいなくなるのなんて、そんなことになってるなんて私全然気が付かなくて……」
「穂乃果。」
おさえようとしてもこぼれる言葉は彼の声に遮られる。顔を上げる。そこにはとても悲し気な表情の彼がいて。違うのだ。彼にこんな表情をしてほしいんじゃない。こんな表情を彼が浮かべる理由なんて全くない。
「ごめんな……」
こんな苦し気な、悲し気な言葉を聞きたいんじゃない。
鷹也の言葉に穂乃果が何も返せずにいると、にこが口を開く。
「それで……これからどうするの?ずっとこのまま沈んでるわけにもいかないでしょ。」
「……そうやね。ことりちゃんがいなくなるのにいつまでもこっちが悲しい顔してるわけにもいかないし。」
にこは強い人だと思う。いつも大事なところではきちんとみんなを見て、言いにくいことでも正しい方向にみんなの気持ちを切り替えさせるために言葉を投げかけてくれる。
そのにこの言葉に微笑んで賛成する希。希もいつもみんなのことを見ていて、みんなの気持ちや悩みに気が付いて支えてくれる。
「ことりだって悲しい顔で送り出されるのは嫌でしょ。だから……どうするの。」
にこがそう言って視線を鷹也に向ける。この場における決定権は基本的に彼だ。普段ならばそれを避けようとするが、今回はことりの、彼の妹のことだ。真っ先に意見を確認をするべきだろう。
でも、彼は黙って首を横に振る。その動作にピクリと真姫が反応する。
「……何もしないってこと?」
「え…………」
「で、でもいなくなっちゃうのに何もしないなんて……!!」
真姫の言葉ににこと花陽が驚きの表情を見せる。でも、その選択は穂乃果にしてみれば意外でもなんでもなくて。海未も同じ気持ちなのだろう。悲し気な視線を鷹也に向けている。それを見て穂乃果の胸が明確にずきりと痛む。
その視線に気が付いているのだろうか。鷹也は小さく息を吐いてから口を開く。
「俺が何かできることじゃない。俺は何もしない。」
「でも、凛たちもことりちゃんがいなくなっちゃう前になにか……」
「それはいいんじゃないかな?」
「だったらあんたが何もしないってわけにもいかないでしょ。一応私たちのコーチ……」
そこでハッと気が付いたというようににこが言葉を切って、そして視線を鷹也に向ける。うそでしょとでも言いたげなその視線を受け止める彼の表情はきっと一生忘れられないと思う。
視界の端では絵里が悔し気な、悲し気な表情を浮かべていた。
「俺はμ’sのコーチを辞退する。」
ああ……私のせいだ……そんな思いが頭を埋め尽くし、後悔の念が心を覆った。
「ふざけないでよっ!!」
にこの声が耳をうつ。こんな時に言うべきじゃなかったよなと思いつつ、でもこのタイミングでしか言えなかったろうなと思う。
視線をそちらに向けると、にこの表情は怒りに満ちていて。なんで。と思う。こんな自分がいなくなるからと言ってこの少女はなんでここまで感情をあらわにしてくれるのだろう。
「あんた言ったじゃない!ずっと見てる。ずっと支えるって!!」
ずっと見てる。ずっと支える。そう言っていた時がずっと昔のような気がする。その気持ちに偽りはない。自分は今でもこの少女たちを支えて、見ていたいと思う。でも、
「……ごめんな」
もうできないのだ。自分では。その言葉に見合うだけの行動ができない。故に謝ることしかできない。そんな自分に本当に嫌気がさす。本当にこんな自分が嫌で嫌でたまらない。
驚きつつ、苦痛に満ちた悲しい表情を見せる海未や穂乃果の顔はできるだけ見ないようにする。
「鷹也さん……」
「今回の件の責任をとるためにも、これ以上みんなにマイナスの影響を及ぼさないためにもこれが最善だ。」
「そんなの逃げてるだけじゃない!前にも……」
「ああ、言ってくれたね。俺のことを信じてくれてるみんなを信じろって。必ず俺がいることは意味があるってみんなが思ってくれてるって。」
オープンキャンパスの前。絵里にダンスの指導を頼もうとしたとき。彼女たちは自分を肯定してくれた。その言葉を自分は嬉しく感じてしまった。だから誤魔化しだと分かっていても、その時に最善だと思ったことをしようとしたのだ。でも
「でも、所詮誤魔化しなんだ。最善じゃない。」
最善というのは、感情的なものであるとは限らない。そんな感情的な最善が通じるのはドラマ、アニメ、小説などのフィクションの中だけだ。本当の最善は大多数の場合において理論的な、残酷なほど論理的なものだ。
とどのつまり
「俺は間違ったんだよ。決めていたのに。誓っていたのに。分かっていたのに。自分に価値はないって。期待なんてしないって。」
感情的最善。ことりたちの感情を優先するのは自分のあり方に関して最も大切なものだ。だから、ことりの、みんなの言葉で間違えた。彼女たちを大事にすることは大事だ。でも、それでいて自分を大事にすることがあってはいけない。自分を彼女たちのそばに置いておこうなどとしてはいけなかったのだ。自分を彼女たちのそばから離す。それはきっと優先順位として最高位だったのだ。
「だから……もう間違えない。間違いをただすために。正しい最善に戻すために。俺がいない最善に戻すために。俺はもう1度俺を消し直す。自分に失望しなおす。」
「鷹也さん……」
「やだよ……凛……分かんないよ……なんで鷹也くんがやめなくちゃいけないの?」
悲し気な表情を見せる花陽と凛に何も鷹也は返せない。きっともう何を言っても彼女たちは自分のことを肯定してくれる。ならば、もう何も言えない。ただ自分が辞めるという意志を強く持って、伝えるだけ。
「…………それがあなたのやり方なの?それが……あなたなの?」
そんな中で真姫が小さな声で、でもしっかりとこちらに届く声で問いかけてくる。視線をこちらにまっすぐに向けて。でも、すぐに逸らしてしまう真姫はいつもと違って弱々しくて。この時ようやく希が前に言っていたことを理解できた気がした。いつもとはこの少女の様子は違っていた。
そんな真姫に鷹也は小さく笑って返す。どんな笑みを自分は見せているんだろう。きっと、ひどい笑顔なんだろうなということは分かった。
「うん、これが俺だよ。」
真姫の顔が明らかに苦痛に歪むのが見えた。
「ねぇ……本気なの?」
逃げるように部室から出た鷹也を追いかけてきたのは絵里だった。絵里が抜けて部室の方は収集が付くのだろうかと少し思うが、希とにこがいるし何とかなるかと思いなおす。
「本気だよ。俺はもうお前らに関わらない。」
きっぱり言い返すと一瞬彼女は悲し気な表情を見せる。その表情に胸が痛むも、その痛みを無理やり押し殺す。
「ねえ……それが鷹也の望み?」
するとそこで絵里がそう言ってこちらの顔を覗き込んできた。悲し気で、寂し気なそんな表情の問いかけの答えは決まっている。鷹也は頷く。
「俺の望みはみんなの最善だよ。論理的に考えて、冷静に考えて、俺が関わるメリットがないって考えたからこその結論。俺の望み。」
「……聞き方が悪かったわね。」
鷹也の答えに納得していないように絵里が考え込む。そして続ける。
「鷹也のことだからことりの留学にもなんにも言っていないんでしょ?」
「……まあね。そのことはことりの将来に関わることりの問題だ。俺が口をはさむべきじゃないだろ。」
「そうかもしれないわ。でも……その件に関して、そしてコーチをやめる件について……」
—————そんな辛そうなのに……本当に鷹也のやりたいことはそれ?
「っつ……!」
一瞬息がつまるような感覚に襲われてつい反応する。前に自分が絵里に言った言葉。それを絵里は口にして、こちらをまっすぐに見る。
「私は鷹也にこの言葉を言われて自分と向き合えた。この言葉と、みんなの姿に救われた。」
優し気な微笑みに表情が歪むのが理解できた。
「私と鷹也は似てるわ。きっと。不器用で、素直になれなくて、人のことと自分のことを両立できない。」
でもね……そう言って絵里は続ける。
「鷹也は言ってくれた。私を自分のやりたいことと向き合わせてくれた。そして、それでいいんだって思わせてくれた。」
だから今度は私が鷹也にこの言葉を返す番。そう言って絵里が言葉を紡ごうとして、
「絵里……とは違うよ。」
鷹也が遮る。言葉を遮られて絵里の不満げな表情を受け止め、鷹也は小さく自嘲気味に笑いながらごめんごめんと言って続ける。
「絵里にはきっと自分でやりたいことを自覚できていた。そしてそれをやっていけるだけの力、才能があった。でもね、俺にはないんだよ。」
ツバサの時も感じたこと。やりたいことをやれるのなんて才能にあふれ、夢に向かって頑張れる人間だけなのだ。それこそ絵里のような人間だ。でも、鷹也は違う。やりたいこともないと自分で思い込み、自分に失望し、まったく期待していない。自分に価値がないと感じる人間にとっては。
「俺はとっくに自分と向き合ってるよ。」
そう、とっくの昔に向き合っているのだ。ずっと自分を否定しているのはずっと自分と向き合っているからこそだ。自分に向き合ったからこそ自分に何もないと断定し、失望し、価値を見出せない。だから、自分なんかよりもみんなのことが大事で、みんなのことを最優先にする。
鷹也は絵里に背を向けて告げる。自分なんかと絵里は違うから。絵里はこんな自分と違うから。
「絵里と一緒にしないで。」
絵里が何か言っている気もしたがもう振り返らなかった。
「えりち、みんなの片付け終わったよ……えりち?」
去っていく彼の背中を黙って見ていることしかできなかった。そんな自分の無力感に唇をかみしめている間に後ろからやってきて声をかけてきたのは希だった。
心配そうにこちらを覗き込んでくる希に無理やり作った微笑みを作る。
「希……私じゃ……ダメだったみたい……」
止めたかった。止めようとした。彼は大切な人で、μ’sのメンバーが大切にしている人だから。でも
「私の言葉じゃ……なんにも届かなかった……!!」
「えりち……」
何をしているのだろう。理事長室でも止められず、みんなに言わないでおいて、理事長にチャンスをもらっているのに結局止められなくて。
絵里は手をギュッと握りしめる。自分は本当に何もできていない。
「あんなに鷹也に救ってもらって……助けてもらったのに……私は……!!」
「大丈夫。」
その手がそっと包まれた。優し気な言葉と一緒に包まれたその手はとても暖かくて。絵里はうつむいていた顔を上げる。そこではいつも隣にいてくれて、支えてくれる親友が微笑んでいて。
「1人で抱え込まないでいいんよ。」
「希……」
「きっとえりちの言葉は届いてる。だから……」
希はそう言ってそっと頬を拭ってくれる気づかないうちに少し涙をこぼしていたらしい。
「今度はみんなで。みんなで鷹也くんに言いたいこと言おう?」
きっと希は絵里が自分だけ前から鷹也の考えを知っていたことに気が付いているのだろう。でも、そのことは責めずに、ただただ次は一緒にと言ってくれる。1人で抱え込まないで一緒にと言ってくれる。何も聞かずに、分かっているからと包み込んでくれる。
それが絵里には不思議なくらいにとても心強くて。1人じゃできなかったけど、何もできなかったけど何とかなる気がした。
「うん…………!!」
ちょっといつもよりも子供っぽい答え方になっちゃったなと少し思いつつ、絵里は涙を拭って力強く頷いた。
はい、いかがだったでしょうか。
最後の絵里と希の会話を入れたのは、これをいれなかったらいい加減絵里のメンタル折れちゃうんじゃないかと少し心配になったからです。
きっと希が支えてくれるならば絵里はまだ頑張れます。逆もまたしかり。
それと同じようにきっと色々な思いから何も言えずにいる真姫もきっと周りの支えがあるからこそまだ頑張れます。
次回は番外編の予定です。
本編の次回、つまり次々回はきっと穂乃果の病み期突入回かなと思ってます。その中で久しぶりの彼と鷹也との話も入れる予定。展開に悩んでいるので予定は未定状態ではありますが。
それでは感想・評価お待ちしています。
次回もよろしくお願いします。