小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

60 / 75

前回すぐに更新するような発言をしつつ全く上手く書き進まなかった雪詞です。
しばらく執筆できていなかったブランクって怖いですね。

今回の話はなんだかとても書くのが難しかったのですが色々とこれからに関わる会話が多くなっていると思います。それなのにこの出来でとても心配ですが。

それではご覧ください。


決意と諦め

「ふ~ん……そっか……」

 

目の前の沙希がふむふむと頷きながら自分で頼んだクリームソーダをストローで飲む。恭介はそんな沙希の様子に特に何か反応するわけでもなく、先ほど頼んだ食べ物を食べ終えると立ち上がろうとする。ここでの会計は沙希が勝手にしてくれるはずだ。いつものことである。

 

「完璧に壊れちゃったかな……いや、でも積極的に痛めつけられにいっているってことは……ってちょっと待ってよ。」

「あ?もう話すことなんてねえだろ。」

「いや、ちょっと聞きたいことがあるんだって。」

 

ぶつぶつと呟いていた沙希に引き留められ、イライラしながら振り返る。基本的にこの女のことは苦手なのだ。別に力でかなわないとかそういう話ではない。ただただなぜか勝てる気がしないのだ。基本的にこの女にはなぜか逆らえる気がしない。それでもイライラした様子を隠さないのは精一杯の虚勢。

 

「こっちには答えることもねえよ。今日はイラついてんだ。さっさと帰らせろ。」

「恭介は鷹也が気味悪くないの?」

「…………………………」

 

沙希に見つめられて動けなくなる。その存在感に圧倒され、そのまなざしに何もかも見透かされるような気分になる。いや、きっとこの女は何もかもを見透かすのだろう。小さな表情の変化も何もかもを見透かして、嘘かどうかを見極める。

真剣な表情から、にやにやと悪戯っぽい笑みとなる沙希は続ける。

 

「あたしからしたら話を聞くだけでもだいぶ気味が悪いと思うよ。きっとその場にいたら気味悪くてこれから関わりたいと思わなくなるくらいに。でも、恭介は逃げるどころか関わるのをやめる気はない……でしょ?」

「……それがどうしたよ。」

「あたしにしてみれば他の子たちの方が普通の人間に思えるよ?人は気味が悪いものには近づきたいと思わないし。怖い物みたさは今回の件で充分果たせたでしょ。」

「その程度で怖気づくなら最初からこんなことしてねえよ。」

「わぁ~かっこいいなぁ~」

「バカにしてんのか、てめえ……!!」

 

手をぱちぱちと叩きつつ表情と声色だけで全力でバカにしてくる沙希をにらみつける。きゃー怖い怖いと言って舌を出して悪戯っぽい表情を見せる沙希は少し目を細めて薄く唇を開く。

 

「恭介……ずいぶんと鷹也のこと分かってるみたいじゃん。私に教えてくれた以外に鷹也と昔なんかあった?」

「……分かんねえよ。あいつのことなんて全くな。」

「それは分かりたくないだけじゃない?」

「ああ、分かりたいとも全く思わねえよ。」

 

その問いに対して恭介はそう吐き捨てるように答えてから、続けて何か言おうとする沙希を無視して席を立つ。過去のイジメ。それは沙希も知っている。でも、そこからは沙希も知らない。おそらく感づいてはいるのだろうが。本当に気に食わない。小さく舌打ちをして帰路につくためにファミレスをでる。その前に一言。おそらく聞いているだろう。聞こえていなくても構わない。沙希に対して呟く。

 

「……あんな人間のことを分かれるやつなんていねえよ。」

 

 

 

 

 

恭介が出ていった後のファミレス。沙希は顎に人差し指を当てて少し考え込む。鷹也の過去。そして今の状況。面白いといえば面白い。乗り越える困難が大きいほど見てる側からすれば面白いというものだ。

 

「限界ギリギリってとこかな。」

 

そう結論付ける。正直に言えば壊れて当然。壊れていないことが不思議なくらいの状況だろう。恭介の話のような状態にある今の状況で鷹也が耐えているのは他でもない周りの手助けゆえのこと。恭介の言葉からすると誰にも理解できないような人間を理解しようとしている恵まれた周りの存在のおかげ。

 

(学園祭のライブでの失敗。穂乃果さんの無茶。何か問題を抱えているだろうメンバー……)

 

しかし、今は周りのメンバーもきっと精一杯だろう。手助けは期待できるか分からない。むしろこの問題はきっと鷹也の手を借りたいものだろう。自分たちで解決できるのならそもそも学園祭のライブで失敗なんてしていない。状況は絶望的。だからこそ

 

「ここから這い上がってくれば……きっとあなたたちは面白くなって、あたしたちを……あたしを楽しませてくれるだろうね。」

 

小さく呟いて笑みを見せる。今のままでは、支えを失いかけている鷹也ではいつかダメになる。支えを失いかけているμ’sでは自分たちには追い付けない。でも、この絶望的な状況を何とかして這い上がってくるのなら。

 

「……途中から聞いてたんでしょ?いいよ、隠れなくても……って言っても隠れるのは仕方ないか。じゃあそのままでもいいよ。」

 

目線を後ろの席に座って小さくなっている制服姿の子にチラリと向けて言う。もう見限ろうとも考えていた。でも、まだギリギリ持ちこたえているのなら。這い上がって、歯向かってくる可能性があるのなら。

 

「鷹也はきっと限界寸前。きっとあなたたちも限界寸前。お互いに限界寸前ならどうすればいいのか。ちゃんと考えてみてよ。」

 

ピクリと特徴的な赤いリボンの頭が反応したことを確認して薄ら笑いを浮かべる。ラブライブの出場は彼女たちは今回はない。おかげでA-RISEは予選をトップ通過。この調子ならば本選も余裕で優勝だろう。ツバサ達はまだ自分の求めるところまではたどり着いてはいないが、その程度の才能の相手しかいないのだから。面白さのかけらもない。

それではつまらない。つまらないということを今回のラブライブで再確認してしまった。

 

「あなたたちは……あたしを失望させないでね。」

 

だから呟くように、歪だなと自分で感じる笑みで言う。聞こえたかは確認しない。沙希はそのまま会計を済ませてファミレスから出ていく。その表情は周りの人間からしてみればとてもきれいで、けれどとても冷たいものだった。

 

 

 

 

 

 

小さく丸めていた背中を伸ばす。隣の席と向かいの席にいた少女たちも同じように姿勢を楽なものにする。

 

「……バレてたわね……」

「そやんなぁ……でもまあ仕方ないんやない?あっちはうちらの顔知ってるわけやし。」

「それもそうよね。」

 

胸に手を当てて小さく息をつく絵里と苦笑する希ににこは頷く。今日のことで少し相談しないかと希に持ちかけられたので家に帰った後でみんなでもう1度集まり、少し座ろうと思ってファミレスに入ったのが運のツキだったのか。いやむしろ運はよかったのか。鷹也とにこが初めて話したこのファミレス。席について最初に聞こえてきたのは聞き覚えのある名前だった。女の声で聞こえてきた言葉。『恭介は鷹也が気味悪くないの?』

 

「気味が悪い……ねえ。ずいぶんな言われようだったわね。」

 

小さく息を吐きつつ言う。自分たちのコーチで、でも今は遠くに行ってしまいそうな人の名前と共に言われていたことを自分たちが聞くことの出来た部分だけでも思い出す。気味が悪い。もう関わりたいと思わないはず。あんな人間のこと分かるやつなんていない。

本当に彼のことを話していたのかなんてわからない。たまたま同じ名前なのかもしれない。でも話している人物に見覚えがあった。おそらくはライブの時に彼と一緒にいた女の人。彼のことである可能性は高いだろう。

 

「それに関しては何かあったとしても、問い詰めても鷹也は答えてくれないだろうし考えても分からないけど……あとは限界寸前って言ってたわね。」

「うちらも限界寸前っても言われてたね。なんでそこまで知ってるんやろ?」

「希にそれを言われたら本当に分からないわね。」

 

絵里と希の会話を黙って聞きつつ、少し考えてしまう。チラリと視線をつい上げたときに見えてしまったあの女の人の表情。あれはおそらくA-RISEのサポートについているというコーチの人だ。何度かほんの少しだがA-RISEのPR動画にも出てきている。彼女の表情はなぜだかとても共感できてしまうような、そんな表情だった。何かを諦めきって、でも何とか何かに縋ろうとするそんな表情。

 

「にこっち?」

「大丈夫?気分でも悪い?」

 

そんな自分の様子に気が付いた絵里と希に顔を覗き込まれて、にこは我にかえる。そんな自分の憶測だけでものを考えても仕方ないだろう。今はそれよりも重大な考えなくてはいけないことがたくさんあるのだ。

でも、でもこれだけは口にしなくてはいけない。

 

「失望させるも何も……こんなことで辞める気なんて……諦める気なんてないわよ。」

 

この程度の苦しさは何度でも味わった。1人っきりになら何度でもなった。でも今は

 

「……そうやね。にこっちの言う通り。」

「ええ、今はことりがいなくなるまでに何ができるか。鷹也を連れ戻すために、何か抱えてる鷹也のために何ができるか。それをちゃんと考えましょう。」

 

でも今は自分と同じだけの想いを持って頑張ろうとしてくれるメンバーがいる。この程度の苦しみは乗り越えられる。何となく照れ臭いので絶対に口にはしないが。

 

「で、具体的にどうするかなんだけど……」

「そんなの決まってるじゃない。」

 

話を戻そうとする絵里の言葉に被せるように言う。自分たちは所詮1人の高校生でしかない。先ほどの会話から考えるに何か抱えている鷹也に関しては何も彼が言ってくれなくて、自分たちにできることなんてたかが知れている。でも、自分たちは他の高校生とは少しだけ違う。自分たちができること。自分たちがやらなければいけないこと。

 

「私たちはスクールアイドルなのよ。スクールアイドルならやることは1つでしょ。」

 

そう自分たちにできるのはこれだけだ。何もできないのと同じかもしれない。でも信じている。きっと、きっとこの自分が憧れて、望んで、信じたものはみんなに届くと。あのお人好しで、手間のかかる兄妹にもきっと届くと。

にこが何を言おうとしているのか気が付いた様子の2人が笑顔で頷くのに合わせて口を開く。

 

「ライブをしてみんなを笑顔にするわよ。」

 

自分たちも、鷹也もあの女性の言う通りに限界ギリギリかもしれない。でも、そんなもの変えてみせる。全部笑顔にして見せる。自分が信じた、憧れたアイドルというものはそんなことができる最高の存在なのだから。

 

 

 

 

 

次の日。屋上で穂乃果以外のメンバーが登校してきたところで相談し、ライブを行うことに賛成してもらう。凛と花陽は即答で賛成。無理やりだとはしてもテンションをあげようと、みんなを盛り上げようとする2人を微笑ましく見つつ、少し考え込んでから最終的には頷いた海未と真姫に希は視線を向ける。海未はきっとことり、穂乃果のこと。そして鷹也の問題に1番近かったからこそ少し考え込んでいるのだろう。そう判断してもう1人の少女に声をかける。

 

「真姫ちゃん、なんかあったん?元気ないようやけど……」

「……なんでもないわ。ちょっと昨日眠れなかったから……」

 

そう言ってそっぽを向いてしまう真姫。ここのところずっと様子がおかしいのには気づいていた。昨日の鷹也との会話でも少しおかしな感じだった。このままにしていていいのだろうか。そんなことを考えていると、凛が心配そうにこちらを見ているのに気が付く。

 

「みんな、穂乃果呼んできたわよ。」

 

そんな凛と真姫のどっちに声をかけようか悩んでいる間に時間切れ。残りの穂乃果を呼びに行っていた絵里が戻ってきて、話が進む。いつもの太陽のように明るい笑顔はなりを潜め、かなり落ち込んだ様子の穂乃果が屋上に姿を見せる。

 

「穂乃果ちゃん、ライブするにゃ!!」

「……ライブ?」

 

そんな穂乃果に明るく話しかけたのは凛。いつもの穂乃果のような役割で、明るい笑顔で元気よく振舞う姿はとても健気で。本当に優しい子だなと思う。

そんな凛の言葉にも穂乃果は小さな反応しか見せない。そんな穂乃果に絵里が補足の説明をする。

 

「みんなで話したの。ことりがいなくなる前にみんなでライブをしようって。その時には鷹也にも来てもらうつもり。」

「思いっきりにぎやかのにしてことりちゃんの門出を祝うにゃ!!」

「はしゃぎすぎないの。」

 

絵里の説明を受けて凛がまたも明るく元気に言う。そんな凛の頭にチョップをしてたしなめるにこも、きっと穂乃果の気持ちを少しでも明るくしようと思ってやっていることだろう。ふざけて言いあうにこと凛のことを笑って見つつ、何も反応を返さない穂乃果に向かって希は口を開く。

 

「鷹也くんにも何かしたいのは山々なんやけど……やっぱりうちらができることって言ったらライブが1番やしね。」

「ことりちゃんのこともあるし、それにライブで私たちが一生懸命頑張って……それから自分たちの想いを伝えればきっと鷹也さんにも届くと思うんだ。」

 

そう一緒に伝えてくれた花陽に微笑む。しかし、穂乃果の表情は変わらない。変わらずに暗いもののまま。

 

「まだ……気にしているのですか?」

「明るくいきましょ?これが9人でやる最後のライブなんだから!」

 

その様子に心配そうに海未が声をかけ、絵里が明るく言う。しかし穂乃果にはそのどの言葉も届かなくて。

 

「……私がもう少し周りを見ていればこんなことにはならなかった。」

 

そしてその口から発せられたのは後悔の言葉。ここまでこの後悔をずっと心の中で抱え続けているのだろう。堰を切ったようにその口から言葉があふれ出す。

 

「穂乃果だけのせいじゃないわよ……」

「私が何もしなければこんなことにはならなかった!!!」

 

辛そうな表情の真姫の言葉を遮るように強い口調で言われたその言葉には色々な思いがこもっているのだろう。後悔、怒り、悲しみ。きっとどれも自分に向けたもので。まっすぐだからこそ、自分に素直だからこそ。自分の中で生まれるその自分に対する感情を抑えきれないのだろう。自分にある責任を感じずにはいられないのだろう。

 

「あんたねえ……!!」

「そうやってなんでも自分のせいにするのは傲慢よ。」

「でも!!私がこんなこと始めなかったらことりちゃんも鷹也くんも……!!!」

 

それでもそんな彼女の言葉を許容するわけにはいかなくて。にこが声を荒げそうになるのを、絵里が遮るように話し出す。昨日の時点で自分もだいぶ弱っていて、つらいはずなのに。そんなことは感じさせず、この場をまとめるために大人として話す絵里は穂乃果の言葉を聞いてから続ける。

 

「それをここで言って何になるの?何も始まらないし、誰もいい思いもしない。」

 

この絵里の言葉はきっと正論だ。後悔したって何も始まらない。前を向かなくては何も始められない。でもきっと穂乃果はまだ前を向ける力はないだろう。だからこそ少しその背中を押そうと希は口を開く。

 

「それにラブライブだってまだ次があるよ。」

「そう。次は絶対に出場するんだから落ち込んでる暇なんてないわよ。さっさと鷹也を連れ戻して練習するわよ。」

 

にこの声が少し震えていて、表情も笑顔だが無理をして笑っているのが少し透けて見えた。今回のラブライブ出場辞退を1番つらく思っているにこ。それでも自分の言葉に続いて穂乃果に声をかけてくれたことに感謝しつつ、茶化すようににこに声をかける。

 

「にこっち、意外と鷹也くんを連れ戻すのに積極的やね?」

「鷹也くんがコーチになったばっかの時はあんなに反対してたのににゃー」

「う、うるさいわね!!あんなんでもコーチだし……途中で逃げ出されてもラブライブ目指して練習してるのにあんたたちがそっちばっか気にして練習になんなかったら困るでしょ!!」

 

少し頬を赤くして声を大きくするにこが元気になってくれたところで希は穂乃果に視線を戻す。しかし、穂乃果の表情はやはり変わっていなくて。その口がゆっくりと開かれる。

 

「……ラブライブに出場してどうするの?」

「え……?」

 

一瞬空気が凍ったように、時間が止まったようにみんなが静まり返る。全員がうそでしょとでもいうような感情を抱いているのを察することができたが、そんな思いを穂乃果は全く考慮せずに続ける。

 

「学校が存続できたんだから……出たってしょうがないよ。」

「穂乃果ちゃん……」

 

これまでラブライブ出場を目指してまっすぐに走っていたとは思えない、そんな穂乃果の言葉に全員が何も言えずに黙り込む。思考が止まりかける。心配そうに辛うじて呼びかける花陽の言葉も穂乃果には届かない。

 

「それに無理だよ。A-RISEみたいになんてどれだけ練習したってなれっこない。鷹也くんがいたってあそこまでいけないなら……頑張ったって鷹也くんをまた傷つけるだけだよ……」

「あんたそれ……本気で言ってるの……?」

 

穂乃果のらしくない言葉を頭の中で必死に理解しようとする中で、にこが絞り出すように言葉を発する。その顔からは表情というものが感じられない。呆然としているような、悲しんでいるような、怒っているような。どれともつかない表情。

 

「本気で言ってるなら許さないわよ……」

「…………………………」

「許さないって言ってるでしょ!!!」

「ダメぇっ!!!」

 

黙り込む穂乃果ににこの表情が怒りに変わり、穂乃果に掴みかかろうとする。それをみんなの様子がおそらく1番見えていたのだろう真姫が必死に止めるも、にこは声を荒げて穂乃果に言葉を、想いをぶつける。

 

「私はね!あんたが本気だとおもったから……本気でアイドルやる気だと思ったからμ’sに入ったのよ!!ここに懸けようって思ったのよ!!!それをこんなことで……こんなことで諦めるの!?こんなことでやる気をなくすの!?」

 

にこの怒声が屋上に響く。その言葉に誰も何も言えない。にこの想いが痛いほど分かったから。にこの気持ちが痛いほど伝わってきたから。そんなにこの言葉にも何も返さない穂乃果に絵里が声をかける。

 

「じゃあ穂乃果はどうしたいの?」

 

希は何も言えずに穂乃果を黙って見守る。こういう時、自分の辛さを隠して大人の対応ができる絵里や自分の感情を素直にぶつけられるにこを少しすごいなと思ってしまう。自分は今、ただただ穂乃果の言葉をどう処理すればいいか分からずに困惑しているだけなのに。

 

「穂乃果はどうすればいいと思うの?」

「………………」

「答えて?」

 

沈黙を貫く穂乃果に絵里が優しく、でも厳しく問いかける。その問いに対する穂乃果の答えは単純で。暗い表情のままで、冷たく何もかもを諦めたような表情で彼女は口を開く。

それを希は黙って見ていることしかできない。

 

「……やめます。」

「……え……」

「私……スクールアイドルやめます。」

 

誰も反応できなかった。太陽のような笑みを浮かべ、いつもみんなの中心で前向きに明るく引っ張っていってくれた彼女は今、なんといったのだろう。言葉は届いている。でも頭が理解するのを拒否している。そんな感覚。

みんなが呆然と彼女を見つめる中、穂乃果は歩き出す。その姿を誰も止めることができない。

 

「………………」

「あっ………!」

 

不意に隣の少女が動き出す。これまで黙っていた海未が気が付いたときには穂乃果の腕を引っ張り、その目の前

で腕を振り上げていて。

 

「っつ……!?」

 

乾いた音が屋上に響き渡る。それが穂乃果の頬を海未の掌がうった音だと希が気が付くのには少し時間がかかった。他のメンバーも同じような様子。

 

「あなたがそんな人だとは思いませんでした……」

 

いまいち判断が上手くできない中で海未の言葉が響く。穂乃果が赤くなった頬をおさえる中、海未が珍しく本気の怒りを、悲しみを込めて叫ぶ。その目には涙が浮かんでいた。

 

「最低です……あなたは……あなたは最低ですっ!!!」

 

その色々な感情のこもった海未の行動、言葉を希はただただ黙って見ていることしかできなかった。





はい、いかがだったでしょうか。
沙希先輩が話だけで大まかな状況などを察する中、にこが決意し、穂乃果が諦める話。
希も少し思うところはあるはずです。

そして大まかな鬱展開部分はここで終わりかなと思っています。
ここからは少しずつ解決に向かう時です。やっと一期のゴールが見えてきました。

ここから鷹也の問題に誰がどうかかわるのか。沙希先輩は何を考えているのか。ことりの留学はどうなるのか。穂乃果の気持ちを誰が持ち直すのか。真姫の問題を誰が解決に導くのか。へたくそな伏線などで分かる方もいらっしゃるかもしれませんが楽しみにしていただければと思います。

ここ数話上手く書けている自信がなく、文才のなさに悩むばかりですが遅くなっても更新はつづけていくのでできればこの物語を見守っていただければと思います。

それでは感想・評価もお待ちしています。
次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。