前回の話を後で読み返してみてすごいわかりづらかったので今回こそはと思ったのにうまく書けなかった……
おかげでちょっと遅れてしまいましたすみません……!!!!
今回は希の心情の話。
いつも飄々としているような彼女ですが、彼女だってこの状況では悩むことはあると思ったので。
それではご覧ください。
自分の謝罪の言葉に対する彼の言葉はどこまでもいつも通りだった。
「ことりは悪くないよ。」
「でも……私がみんなになかなか相談できなかったから……」
「ことりのせいじゃない。」
反論をさえぎるように自分の頭をなでる手は、少しだけ上から聞こえる声は、どこまでもいつも通りで。
「ことりが気にすることじゃないよ。」
どこまでもその感情を読ませなくて。どこまでも感情が押し殺されていて。
「大丈夫。」
その表情は、いつも通りに優し気にこちらに微笑むその表情は
「これは俺の問題。俺が決めることだから。」
どこまでも痛々しかった。
ことりが部屋から出て行ってから少しして、ひな子から声がかかって夕食となる。
鏡を見て、頬を叩いて無理やり気持ちを切り替える。スイッチを切り替える。自分のことは後回し。気持ちはまだ落ち着いていないし、頭はまだ整理できていないし、心はぐちゃぐちゃで今にも壊れそうで。
でも、まだ隠せる。これまでどれだけ隠しきってきたと思っているのだ。自分の本質なんて関係ない。自分には価値はない。つまりは自分の本質に価値なんてない。そんな本質が揺らぎそうになっている程度で。
まだ、ダイジョウブ。
「お待たせ。」
「大丈夫よ。じゃあ食べましょうか。」
笑顔でこちらに言ってから、両手を合わせていただきますというひな子に続いて、鷹也はことりと一緒にいただきますと言って食事を始める。
わかっている。誤魔化しだ。本質が揺らぎそうになっているのは大事で、あり方を根本からひっくり返すような出来事で。大丈夫なんてことはないはずなのだ。
でも、今だけは。せめてことりには、これ以上負担をかけたくない。こんな自分のせいで迷惑をかけたくない。
「ことり、留学の準備どう?」
「え……あっ、うん。今日の分はもう終わったよ。」
「そっか。」
だから口を開く。今だけ、ことりが留学に行くまでの間ならば隠せる。誤魔化しの理論で、誤魔化しの考え方で抑え込む。
ここは、ことりの帰る場所。いつも通りにことりが安らぐべき場所。いつも通りにいるべき場所。
「なんかあったら言ってな。手伝うから。」
「うん、ありがとう。」
お礼を言うことりはぎこちないものの笑みを見せる。
いつものことを、いつも通りの関係を、いつも通りの会話を、ぎこちなく続ける。
これでよかったのだろうか。
最近頭をよぎるのはこの感情ばかりだ。おかげであの日から、ことりが留学に行くと知らされたあの日から数日たった今も勉強も、生徒会の仕事も手につかない。
「希、そっちの書類の整理頼めるかしら?」
「え、ああ、うん。ええよ。」
てきぱきと仕事をこなす絵里に言われて、止まっていた手を慌てて動かし始める。これを機に、この後に余裕を持てるくらいに仕事をこなしておこうと考えているのだろう。絵里はいつにもまして多くなっているように見える作業をもくもくとこなしている。
「どうかしたの?」
「いや、いつものことながらえりちはすごいなぁって思ってたんよ。」
「なにそれ。」
ほめても何もでないわよと微笑みながら言う絵里の手は止まらない。つい先日には鷹也のことを止められずに落ち込んでいたとは思えない。いや、実際に落ち込んではいるのだろうがきっとそれを押し殺してできることをしていこうとしているのだろう。今はみんながそれぞれで考えるべき時だと言っていたから、きっと。
本当に強い、すごい子だと思う。
「……あ、今日神社のお手伝いあるんやった。」
ふと思い出して、時計に目をやる。時間的に……ギリギリだろうか。チラリと絵里に視線を向けると、絵里は仕方ないわねとでも言うように微笑む。
「別に今日やらなくちゃいけないことじゃないから大丈夫よ。」
「そう?ごめんね。」
「大丈夫よ。それより珍しいわね、希が予定を忘れるなんて。」
「んー……そうやね。でも、ちょっとぼーっとしてるだけやし、大丈夫だから気にせんといて。」
じゃあ行くね。そう言って希は生徒会室を後にする。そのあとで絵里も帰るだろうかともチラリと思って、外に出てから生徒会室の窓を見上げてみるも電気が消える様子はない。どうやらもう少し作業を続けていくようだ。
視線を窓から外して帰路につく。こういう時間は最近は考え事をする時間となっている。そして、行きつく思いはいつも同じ。想いはいつも同じなのに、いつもどうすればいいという結論はでないのだ。
「……あれ?」
少し前方に見知った後姿を見つける。少しなんでここにとも思うが、彼の通う大学からの帰り道もこのあたりのはずだからおかしいことでもない。今日は生徒会の仕事で遅くなったわけでもなく、学校が終わってからすぐに帰路についたわけでもない中途半端な時間だから鉢合わせたのだろう。そうでもなければ、彼はきっと今は自分たちと顔をあわせる可能性を考慮してこの道を通らないだろうから。
少し考える。自分の中で結論はでていない。でもここで見逃すのも違うはずだ。自分の思いは、望みは決まっているのだから。だから、声をかける。言うべきことも、伝えるべきこともうまくまとめられていないけれど。とりあえず引き留める。
「久しぶりやね、鷹也くん」
「……久しぶりってほど会わなかったわけじゃないだろ。でもまぁ……久しぶり、希。」
数日ぶりに対面した彼は、南鷹也は少し表情を歪めた後にそれを取り繕うように笑みを見せた。
「続ける気はない?」
「「え……?」」
いつものファーストフード店。目の前に座る凛と花陽に対してにこは告げる。キョトンとする彼女たちの反応は当然のものだとは分かっている。今はみんなが各自で考え直すべき時期。そう決めたのだから。
「アイドルよ。続けない?」
でも、でも自分はもうとっくに答えなんてでているのだ。自分の気持ちは、想いは決まっている。きっと、いや絶対にこの想いがなくなることなんてない。一生この想いは持ち続ける。そういう想いがあるのだ。
だから、自分は動き出したい。自分の想いは決まっていて、それしかできないというくらいにまっすぐにそこに向いている。ならば、何もできないのと変わらないかもしれないけど、自分はこの想いのままに動きたい。絶対に譲れないのだ。
「一応少しは考えてみたわよ。でも……私は決めてるの。」
この想いだけは絶対に譲れないのだ。
「私はアイドルをあきらめない。絶対に続けたい。」
「にこちゃん……」
にこは2人の目をまっすぐに見つめる。凛と花陽が少し迷うように瞳を揺らしたのが分かった。少し不安が胸をよぎる。独りぼっちの記憶が思い出される。最初にいた人たちが、仲間だと、同志だと思っていた人たちがいなくなっていく。思い出してしまった喪失感、孤独感、失望感が胸を締め付けようとする。その感情は振り払おうとしても鎖のように心に巻き付いて離れなくて。少しうつむいて、負けないように、想いを貫き通せるように手をぎゅっと握りしめる。
「……私は……続けたい。」
「凛も!!」
「え……」
締め付けようとしていた感情を一気に取り払うのは声。小さな声と元気な声に顔をあげればそこには笑顔の花陽と凛。彼女たちは続ける。
「私はアイドルが好きで……あこがれてて……こんな私でもそんなアイドルになれるんだって、やっていいんだって思わせてくれたこの場所が大切で……だから、続けたいな。」
「うん。凛も踊るの楽しいし、みんなとまだ一緒にいたいな。」
そう言って2人は顔を見合わせて笑いあう。その様子に小さく笑みを漏らす。にやけそうになる口を必死に隠す。そうだった。そう思ったから自分はこの子たちと一緒に進むことにしたのだった。信頼していないわけではない。それでも不安に思ってしまった自分がばかばかしいと思えてしまう。
「ありがと……」
「え?」
「にこちゃん、何か言ったかにゃ?」
「なんでもないわよ!ほら、そうと決まったらさっさと他の子たちに声かけて回るわよ!」
はーいっと先ほどよりは幾分か明るくなった笑顔で移動の準備を始める凛と花陽を見つめる。そして思う。やっぱりこの場所は、この居場所は、やっと見つけた自分と同じくらいの想いを持つみんなは失いたくない。
希は隣を歩く鷹也をチラリとみる。彼の様子は基本的にはいつものものだった。
「希はどうしたの?ずいぶん中途半端な時間に帰ってないか?」
沈黙が続いていることに居心地の悪さでも感じたのだろうか。鷹也が前を向いたままで口を開いてこちらに聞いてくる。中途半端な時間だと気が付いているということは、やっぱり想定外の遭遇なのだろうなと思いつつ希は答える。
「今日は生徒会の活動をするつもりやったんやけど、神社のお手伝いがあったのすっかり忘れてたんよ。」
「ああ、そういうことか。」
「鷹也くんは何してたん?大学の授業?」
目の前の信号が赤になり、一端歩みを止める。赤信号をぼーっと眺める鷹也に希が聞くと、鷹也は苦笑する。その姿に気負いや緊張、気まずさなどのいつもとは違う部分は見て取れない。
「大学は高校よりも長い休みがまだ終わってないよ。もう半月くらいは夏休みかな。」
「いいなぁ……うちとしては高校も夏休みがもう少し長くてもいいと思うんよ。」
「希は勉強したくないだけだろ。」
「あ、バレた?」
「バレバレ。」
信号が青になるのをまっすぐに見つめていた鷹也に悪戯っぽく笑いかけるも、鷹也はそっけなくそういって歩き出す。そのあとを小走りで追いかける。
「じゃあ、鷹也くんは今日何してたん?」
「大学のほうで成績開示があってさ。それ自体はすぐなんだけど、そこから時間割を組んだりしてたら思ったより時間がかかったんだよ。」
「へぇ~……ちなみにどうやったん?」
「優秀もなければ不可もなく。」
「なんというかさすがやね……」
まあ、こんなもんだとは思ってたよと笑いながら、鷹也は転がっていた石ころを軽く蹴り飛ばしてその行方を目で追っている。鷹也がこの時間にここを通っていた理由は分かった。そして特に彼にいつもと違う部分は見て取れない。しかし、希はどうしても無視できない違和感を抱えていた。確信を持てないが違和感が少しあって。
少しの沈黙の後。2人は神田明神の前に到着する。そして、それじゃあと言って鷹也が希と別れようとするのを希は呼び止める。
「ねえ、鷹也くん」
「ん?」
振り向く彼の顔をまっすぐに見つめる。いつも通りの優し気な表情。笑み。いつも通りに見える彼の様子。
逸らさずにまっすぐに彼を見る。気が付く。
「なんで目を逸らすん?」
「え……あ、ああ。ごめん、そんなつもりはなかったんだけど……」
そう言って、こちらに多少ぎこちなくなった笑みを見せる鷹也。その眼は、その視線はこちらに向いているようでピントが自分に合っていないのが分かった。
「鷹也くん……」
何を言おうか。なんといえばいいのか。
何かを言わなくてはいけないのは分かっている。でも、ここまで不安定な人間に対してなんと言うのが正解なのかわからなかった。いつもならある程度は言うべきことを決めれるのに。
鷹也はピントの合っていない目で、こちらを見ているのか見ていないのかもはっきりしないような目のままで苦笑する。
「ごめんな、目を合わせないようにしてたつもりはないよ。ほら、急がないとお手伝いに遅刻するよ。」
そう言って背を向ける鷹也。いつも通りを続けようとし、自分の問題は全く見せないように無理にふるまう彼に心がずきりと痛む。このままいかせてはいけない。そう思った。
何を言えばいいのかもわからないままで口を開く。
「うちらはまだ望んでるよ。」
とっさに出てきた言葉はきっと心からの言葉だ。希はピクリと鷹也の背中が反応したのを見て、届いていることを察して続ける。心のままに伝えたいことを続ける。
「ずっと一緒についてきてくれるって……望んでいる間はついてきてくれるって言ってたでしょ?」
あの日。2人で朝日の光る海を見ながら話したこと。まだみんなでいられることを誰も疑っていなかった頃の言葉。あの会話は自分の中では少し特別なもの。あの時は少しだけ自分をさらけ出せた気がした。鷹也との会話。そのあとの真姫との会話は自分の心の底を見せられた気がした。お互いの心をさらけ出せた気がしたのだ。
「だから……」
「希」
ゆっくりと、できるだけ彼にまっすぐに届くように言葉を紡ごうとするも、それは彼にさえぎられる。振り向く彼の表情は小さな、小さな微笑み。とてもはかなげな、今にも壊れそうな笑み。
「ごめん、覚えてないや。」
嘘だということは明らかだった。彼の笑みはどこか泣きそうな表情にも見えて。でもまぁと彼は続ける。
「俺はお前たちについてはいけないよ。」
はっきりと拒絶の言葉を吐く彼の表情はとても悲し気に見えた。希はその表情に何も言えない。自分たちのそばにいてほしい。それはただの自分たちのわがままで。そのわがままで彼にここまで悲しい表情をさせてしまうという考えが自分の動きを止める。
「じゃあね……みんなのことよろしくな。」
「あ……鷹也くん!」
呼び止めて何を言おうというのだろう。こんな時は少し自分が嫌になる。最近特に感じることが増えた感情。
きっとこんな時、にこならば感情をまっすぐに出しつつ、彼と一緒に納得する答えを出そうとするだろう。絵里ならば考えて、考え抜いて彼に悲しい顔をさせずに自分たちのそばに戻ってもらえるようにする答えをだそうとするだろう。では自分は?
足を止めずに去っていく彼を見送ることしかできない自分が悲しくなる。苦しくなる。
「だめだなぁ……私……」
感情を表に思いっきり出すことも、考え抜いて相手の心を変えて自分の思うところに来てもらうことも、自分にはできない。自分ができるのは見守ることだけなのだ。見守って、たまに少し助言を与えて。相手の意識を求めているところに後押しするだけ。
自分たちのところに戻ってきてもらおうと思っても、それを彼が悲しむのならば後押ししてもこちらに彼は戻ってきてはくれない。
「どうすればいいんだろ……」
小さくつぶやく言葉には誰にも反応しない。はずだった。
「のっぞみちゃーん!!」
「うひゃあっ!!」
急にかけられた声とともに背中に何かが抱き着いてきて、その勢いについ悲鳴じみた声をあげてしまう。よろけそうになるも、そこはダンスのレッスンで鍛えられた体幹が支えてくれたようでギリギリのところで踏みとどまる。変なところで役に立ったダンスの成果に微妙な気持ちになりつつ、抱き着いてきた少女を見る。
「り、凛ちゃん?どうしたん?」
「えっへへ~なんかぼーっとしてたみたいだから。いたずらせいこ~う!!」
にこにこと抱き着いたままに元気いっぱいに笑うのは凛。制服を着たままのようだが、どこかに寄り道をしていたのだろうか。その割にはいつも一緒の花陽の姿が見えない。
落ち込んだ気分が凛の登場と驚いたことによって少し薄れていることに気が付きつつ、きょろきょろとあたりを見回してみると曲がり角からこちらを見ている花陽を発見した。
「花陽ちゃん?」
「あ、あの……ご、ごめんね?凛ちゃんに気付かれたら大変だからちょっと待っててって……」
申し訳なさそうにこちらに歩いてくる花陽にそっかと苦笑しつつ、大丈夫だよと安心させてやる。μ’sの中では歳は関係ないということにはなっているが、それでもやはりかわいい1年生であるこの子たちには少し年長者としてふるまいたくなるのだ。
「2人とも、どこか寄り道してたん?」
「うん、ちょっとね。希ちゃんを探してたんだ。」
「うちを?」
花陽の言葉にキョトンとする。何か急用だろうか。それ以外のちょっとした用事なら携帯での連絡で済むと思うのだが。どんな用があるのか把握しかねている希に気が付いたのだろう。凛が口を開く。
「希ちゃん、一緒にアイドル活動再開するにゃ!」
「え……?」
「にこちゃんに誘われたの。凛ちゃんと私は参加しようと思ってるんだけど……」
元気よく誘われた言葉に少し驚くも、花陽の補足で納得する。にこが我慢できなくなったのだろう。このままでいいとは彼女も思っていないだろう。でもきっと彼女にはこれ以外の解決に向けた手段が思いつかなかったのだ。なんともアイドルに対する想いが人一倍強いにこらしい。
「今はみんなに声かけてみてるんだ。さっき絵里ちゃんに会って、それで希ちゃんはたぶんここだって聞いたから……」
「そうなんや……」
花陽に言われて少し考える。でも、答えは決まっていた。
「ごめんね。まだちょっと自分の中で整理できてないんよ。」
「そっか……」
「ほんとにごめんね?」
気にしないでと首を横に振る花陽と凛に少し胸が痛む。でも、まだ気持ちが整理できていなかった。自分の中ではμ’sとはあの9人だったのだ。それがこんな状況になって。活動に身が入らないのは目に見えていた。
それにきっと自分の前に話をしたという絵里も同じ考えのはずである。
「ちなみにえりちはなんて言ってたん?」
「絵里ちゃんもやんないって……希ちゃんと同じような理由を言ってたよ。」
希の確認に少し寂し気な表情で答えた凛は、意識を切り替えるように首をぶんぶんと横に振るとまっすぐにこちらを見つめて、口を開く。
「じゃあ希ちゃん。凛のお願い、聞いてくれないかな?」
「お願い?」
「うん。」
真剣な表情でこちらを見る凛は一切目を逸らさない。その様子にまじめなお願いなのだなと察して頷く。かわいい後輩のお願いなのだ。聞かないわけにもいかない。
「真姫ちゃんのこと……助けてあげてほしいんだ。」
「真姫ちゃん?」
「うん」
意外なお願いが来て聞き直す。しかし、聞き間違いではなかったようで凛は真剣な表情のまま話し始める。
「真姫ちゃん、最近様子がおかしかったんだけど……凛じゃあ何をしてあげればいいのかわかんなかったんだ。」
悲し気に、それを誤魔化すようにあははと笑う凛の姿に胸が詰まる。きっと何かあったのだろう。でも、それでも自分よりは真姫に近いのは彼女たちだ。それを言ってみる。
「でも、うちよりも同学年の凛ちゃんたちのほうが真姫ちゃんも話しやすいんやない?」
「う~ん……なんとなく希ちゃんのほうがいい気がするんだ。凛、うまく人の気持ちとか考えれないし……」
希の言葉に凛は苦笑して返す。
「真姫ちゃん、辛そうだったんだ。でも凛たちじゃ深くまで真姫ちゃんに話を聞けなかった。」
「凛ちゃん……」
その悲し気な表情に真姫のことを本当に大切に思っている気持ちが見えて。きっと真姫は何もいわなかったのだろう。プライドが高くて、優しい子だ。もしかしたら凛や花陽、もしくはほかの誰かのことを考えて何も言わないのかもしれない。それは凛も花陽も分かっているのだろう。
「だから凛たちは待つことにしたんだ。」
「待つ?」
「うん。」
きっと苦しいだろう。何もできない。大切な人にたいして何もできない苦しみはさっき自分も感じた。それはとても苦しくて、つらくて。
でも、凛は、花陽はまっすぐなまなざしで、笑う。
「真姫ちゃんはきっと帰ってきてくれる。いつもの真姫ちゃんにもどって。今はバラバラだけど……穂乃果ちゃんも、鷹也さんも、ほかのみんなもきっと帰ってきて、みんなでまた一緒にいれるって。そう思いたいなって思ったの。」
「花陽ちゃん……」
花陽の言葉に小さく息をのむ。すごいなと思う。ほんとに強い子たちだと感心する。先ほど自分が味わった苦しみと同じような苦しみを受けたこの少女たちは、前を向こうとしている。
「みんなが戻ってきたときに部室に誰もいなかったらきっと悲しいかなって。だから凛たちが頑張るんだ。みんなの帰ってくる場所を守るにゃ!!」
その必死に前を向く姿がとても眩しくて。Vサインをこちらにむけてえへへと笑う凛に微笑む。
後輩が頑張ろうと、必死に前を向こうとしているのだ。負けられないではないか。
「うん、わかった。真姫ちゃんのことは任せて。」
「ほんと!?」
「うん。」
やったー!!と手を合わせて喜ぶ2人をほほえましく見つつ、疑問に思っていたことを聞いてみる。
「でも、なんでうちなん?なんとなくって言ってたけど……それならえりちとかでもよかったんやない?」
「希ちゃんと真姫ちゃんって合宿の時に2人で話したりしてたでしょ?それに希ちゃんは優しく見守ってくれてる気がして……答えになってないかな?」
μ’sの名前も付けてくれてたし、みんなのことよく見てくれてるしと言ってくれる花陽に首を横に振る。
自分は見ているだけなのだ。ちょっとした後押しはできるけど、それでうまくいかないことには何もできない。そこに関してはにこや絵里のほうがうまくやりそうだと思ってしまうから。でも、
「ちゃんと答えになってるよ。ありがとね。」
そう言って笑って見せる。そもそも全部自分ができる、できないで考える必要はないのだ。みんながいる。凛たちは真姫に何もできないからと言っても、止まらなかった。みんなの帰る場所を守ると言って前を向いた。真姫のことを希にも話して進もうとした。
それなら自分はどうするべきか。
鷹也に何もできないかもしれないからと言って立ち止まりそうになった。でも、自分にだってできることがある。真姫に何ができるかはわからない。でも、凛と花陽は任せてくれた。頼ってくれた。ならば自分は真姫に対してできることをしよう。そこからまた次につなげる。次はどうつながるかは分からないが、すべてが丸く収まるまで前に前に。前を向いて進むのだ。
「凛ちゃん、花陽ちゃん」
前を向かせてくれた2人に微笑む。先輩だというのに教えられてしまったなと内心で苦笑する。本当によくできた後輩だ。
「頑張ろうね。」
笑顔で元気に返事をする2人に希は優しく微笑んだ。
「そういえばにこっちは?」
「絵里ちゃんと話した時に海未ちゃんとかことりちゃんにはなしてくるわねって言って行っちゃったにゃ。」
「一応同学年のうちらを最初に誘わなかったことを気にしてるんかな?」
「それはちょっとあったかも。わたしたちを誘った後に真っ先に誘うのは2人って言ってたし……」
「別に気にしないのに。きっと最初に誘って時間をとったら生徒会の活動の邪魔になるって考えたんやろうし。」
「でも、きっとにこちゃんなりに気をつかったんだよ。」
「そうやね。まぁにこっちらしいと言えばらしいかな。」
「絵里ちゃんもきっと気が付いてるんだろうね。」
「あれ?絵里ちゃんといえば、希ちゃん、絵里ちゃんが希ちゃんは神社のお手伝いに間に合わなくなりそうだから先に帰ったって……」
「「「あ…………」」」
いかがだったでしょうか。
凛と花陽は本当にいい子だからこそ、きっとこう考えると思ったんです。
更新も遅く、完成度も低い気がするこの作品ですが、読んでくださり、お気に入りを外さずにいてくれるかたに感謝の気持ちでいっぱいです。
もっとうまく書けるように努力していきますのでこれからもよろしくお願いします。
番外編に関してですが、いっそ本編と同時更新でもしようかなと思います。
1週間以内にできればいいなと思っていますが、もしかしたらもう少しかかるかもしれません。毎回更新するする詐欺みたいになってすみません……
それでは感想・評価もいただけたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。