小鳥が大きくなるまで、いつもそばに   作:雪詞

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今回はライブのその後のお話です。短めかもです。
話の進みはほとんどないですが一応鷹也の内面に少し、ほんの少し触れています。

では、あまり良い出来ではないですがどうぞご覧ください。


ライブのその後……

ライブが終わったその後、鷹也は講堂の外で希と遭遇していた。鷹也としてはことりたち3人に声をかけに行くべきかと考えていたのだが、どうせ着替えなどもあるだろうし外で待っていようと思い、希と少し話をすることにした。

 

「完敗やね?」

「そうなるね。見てたんなら中に入ってくればよかったのに。」

 

廊下をともに歩きながら話をする。今回のライブを思い出して、鷹也は少し複雑な感情を抱きながら鷹也は希になぜ入ってこなかったのかと聞く。差し込んでくる西日が2人の顔を照らす。

 

「うちは誰かを支えることしかできひんからね。遠くから見てるのが今はいいんよ。」

 

そう言って希は笑う。本当になにを考えているのか分からない子である。すべてを見透かしているような、そんな感じ。いつか理解できるだろうか。この子の考えを。

 

「それはどういう根拠があっての判断?」

「カードがそう言ってるんよ。」

「お、おう……そっか。」

 

今度は懐からカードを取りだしていたずらっぽく微笑む希。それを見て、鷹也は引きつった笑みを見せる。理解できる日は来ないのかもしれない。

とりあえず話題を変える。

 

「そーいえば絢瀬と会ったよ。苦労してそうな子だな。」

「えりちと?」

「ああ、忍び込むときにちょっと……」

 

苦労したんね……と憐れみの目を向けてくる希に全くだと返しつつ鷹也は思い出す。あの苦し気な少女の表情を。

 

「あの子、生徒会長っていう役割と学校存続のプレッシャーに潰されそうになってんじゃないのか?」

「なんでそう思うん?」

「なんかすごい苦しそうな顔してたんだよね。」

 

生徒会長だから。そう言うときの絵里の顔は本当に辛そうで。鷹也はとてもあんな表情をする人が普通だとは思えない。

 

「……えりちは抱え込んじゃうところがあるんよ。今回の件に関してもそうやと思う。」

 

希はそう言って夕日に目を細める。その表情はとても心配そうで本当に絵里の心配をしているのが分かった。しかし、そこでふと気づいたように希は鷹也に問いかける。

 

「でも、なんでえりちのことまで気にかけるん?こう言ってはなんやけど、鷹也さんには……」

「関係ないな。」

 

鷹也は笑って言う。ことりたちですら小さいころからの習慣だと思っているこの鷹也の関係ない人まで気に掛けるこの行動。確かに鷹也の考え、あり方、それらを知らない希からすれば不思議だろう。でも

 

「でも……それが俺だから。」

 

詳しくは言わずにそう言って鷹也は微笑む。夕日に照らされたその笑みの裏に希はなにかを見た気がして。でもそれも一瞬。

 

「あ、俺1度理事長室寄らなくちゃいけないから。」

 

そう言って鷹也はその場を後にする。昔からのことだからこそあの3人は気づかない。これまでは3人以外に関わりがなかった。だが、

 

(他の人にはそうもいかないか……。そりゃあ、この行動は違和感あるよな。)

 

鷹也は廊下の角を曲がって希から見えないところに行くと、表情を変える。その顔に浮かんでいるのは………無だ。

 

 

 

 

 

希は鷹也の違和感に首をかしげる。あの一瞬で見えたものあれはなんだったのか。

 

「副会長さん?」

「あれ、ことりちゃん。もうライブの後片付けはいいの?」

「あ、はい。大体終わって後は準備手伝ってくれたクラスの友達がやってくれるみたいで。」

 

後ろから声をかけられて振り向くとそこにいたのは、先ほどまで一緒にいた彼の妹である南ことり。希の問いかけに、私たちも最後までやるつもりだったんですけどね。と複雑そうな表情を浮かべることり。ライブの内容、結果も含めて、今は難しい心境なのだろう。

 

「そうなんや。で、ことりちゃん。なんかうちに用やないの?」

「あ、そうでした。希先輩、お兄ちゃん……ってあ……」

 

女子校である音ノ木坂学院に男性がいるということを言ってはダメだったのではと今更口を抑えて焦っていることりの様子を面白く思いながらも希は大丈夫やとすでに知っていることを伝える。

 

「そ、そうだったんですね……。それで、お兄ちゃんどこにいるか知りませんか?」

「う~ん……さっき1度理事長室に行くって言ってたけど、すれ違ってもあれやし校門で待ってた方がええかもね。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「あ、ことりちゃん。」

 

お礼を言って去っていこうとすることりを希は引き留める。なぜ呼び止められたのだろうと不思議そうなことりに希は聞く。

 

「鷹也さんって昔からあんな感じなん?」

「あんな……感じ?」

「ああ、ごめんね。昔からあんなに周りの人に気を使う人だったんかなって……」

 

希の言葉にことりは少し考え込む。

 

「そうだったと思いますよ?お兄ちゃんはずっと誰かのためにって感じで。それが……どうかしたんですか?」

「そっか……。ううん、なんでもないんよ。ごめんね。」

 

希の様子に首を傾げながらもことりはとりあえずじゃあ行きますねと言って外に向かう。今度は妹の方を見送りながら希は考える。

 

(気にしすぎなんかな。そういう人もいるんよね、きっと。)

 

そう結論付け、希は帰り道を歩き出す。鷹也のことも気にはなるが、今日はライブの結果やそこに集まった子たちのことを案じよう。自分の思惑……いや、この言い方は語弊があるか。願いの形が、思いが、今日は見えかけていたのだから。

 

 

 

 

 

鷹也は希に言ったように理事長室に行くことはせずに、少し遠回りして校門に向かっていた。理事長のスケジュールもある程度把握しているので今日はもう学校にいないことは知っているのだ。今日は重要な会議があったはず。本来ならば理事長室に寄って返さなくてはいけない入校許可証はとりあえず警備員さんに、理事長の入校許可付きの書類はあとで家で返せばよいだろう。

 

「お兄ちゃーん!」

「おーお疲れ様、3人とも。」

 

警備員さんに入校許可証を返し、校門につくとそこにはすでに穂乃果、ことり、海未の3人が待っていた。そこに合流して4人で帰路につく。しばらくの間は無言で歩き続ける。それもそうだろう。今日の結果は決して良いものではない。

 

「……今日ダメだったねえー」

 

いつまでそうして歩いていただろうか。辺りが暗くなり始めたころ、穂乃果がそう口を開いた。ことりと海未の2人がピクリと反応する。

 

「そうですね……。」

「でも、頑張ろうって思えたよね。」

 

辛うじて返した海未にそう言って穂乃果は小走りで3人の少し前に出る。そしてこちらに振り向いて笑顔をみせる。

 

「私、楽しかったよ。鷹也くんが来てくれなかったらどうなってたか分からないけど……。でも私、楽しかった。」

「穂乃果ちゃん……」

「来てくれてありがとね、鷹也くん。」

「どういたしまして。間に合ってよかったよ。」

 

笑顔でそうお礼を言う穂乃果に笑顔で鷹也は返す。しかし、鷹也がしたことは背中を押しただけ。そこからまた立ち上がったのは

 

「でも、3人が頑張ろう、楽しもうって思ったからこそ楽しめたんだと思うよ。」

 

そう、頑張ったのはこの3人なのだ。鷹也がそう言ってやると穂乃果はそれでもだよ。ありがとう。そう言って、海未とことりの手を引っ張って自らの横に並ばせる。

 

「穂乃果ちゃん……!?」

「な、なにするんですか、いきなり!」

「2人は楽しくなかった?」

 

いきなり引っ張られて困惑する2人に穂乃果が聞くと、ことりと海未はそんなわけないと首を横に振る。

 

「そうだよね。じゃあ、鷹也くん。」

 

満足そうにうなづき穂乃果は2人と笑いあう。そして穂乃果とことり、海未が鷹也の目をまっすぐに見つめる。その時、急に街頭の灯りが付き始め

 

「今回は失敗だったけど……私たちまだ頑張るから。これからもサポートお願いします!」

「「お願いします!」」

 

そう言って笑顔を見せた3人を灯りが照らす。街頭の灯りだけどそれはスポットライトのようで。

 

「心配なかったみたいだな。」

 

鷹也はそう言って笑顔を見せる。心配だったのだ。ライブ終わりにああ言っていた以上、その気持ちに偽りはなくても少しは今回のライブのこと引きずってしまうのではないかと。でも、この様子を見る限りでは完全に切り替えて頑張る気のようだ。

 

「今回で3人だけじゃ危なっかしいってはっきりしたんだ。3人だけにしておけないよ。大丈夫、いつだって見ててやる。」

 

その鷹也の言葉に危なっかしくなんかないもんと言って頬を膨らませる穂乃果に、そう言われても仕方ないですよと穂乃果をたしなめつつ恥ずかしそうな海未。そして、そんな2人を見て微笑んでいることり。そんな3人を鷹也は小さく微笑んで見守る。

 

「さ、とりあえず今日は帰るぞ。」

「はーい!」

 

元気の良い穂乃果の返事にやっぱりなんとなく子供っぽいじゃないかと思いつつ、4人は帰路をたどる。先ほどまでと違い、いつも通りに楽し気に会話しながら。

 

 

 

 

 

その日の夜、音ノ木坂学院理事長、南ひな子はいつも通り夜遅くと言えるような時間に我が家の玄関前に立っていた。今日も1日ハードだった。つい出そうになったため息をすんでのところでこらえる。ただでさえ、息子と娘には心配かけているのだ。疲れた様子は極力見せないようにしなくては。いつも通りにと自分に言い聞かせ、玄関の扉を開ける。

 

「ただいま……ってあら?」

 

すぐに違和感に気が付く。遅いとはいえ、まだ普段ならば2人とも起きている時間である。にも関わらず

 

「真っ暗ね……。どうしたのかしら……」

 

なにかあったのか。少しの不安を覚えながら電気をつけ、リビングへ。いつもなら電気がついていて、テーブルで書類を整理しながら息子が待っていてくれるのだが、やはりそこも真っ暗。いよいよ不安にかられ、ひな子は少し焦り気味に扉を開ける。

 

「鷹也……ことり……?」

 

これまでの間に暗闇に慣れた目を凝らし、リビングを見渡す。そこで見つけた。テレビの前に置かれたソファの上、そこで

 

「「すぅ……すぅ……」」

「寝てたのね……もう焦ったじゃないの……」

 

背もたれにもたれて寝る鷹也とその肩に頭を乗せて寝ることりの姿。その手元に電気のリモコンを発見する。晩御飯の食器がシンクに残っているのを見ると、どうやら晩御飯を食べた後に少し休憩のつもりで座ったら寝てしまったといったところだろう。電気は何らかの拍子にリモコンを押してしまったというところか。

 

「今日は2人とも忙しかったみたいだものね……」

「ん……」

 

ひな子がそう言って2人の頭を撫でるとことりが小さく声をあげるが起きる様子はない。もう少し寝かせておこう。ひな子はそう判断してもう1度2人の頭を撫でる。

 

「お疲れ様。ゆっくり休みなさいね……」

 

 

 

 

 

次の日。さっそく朝練をするという穂乃果たちに朝は付き合い、1度家に帰ったあとに鷹也は大学に向かい講義室に入って授業の準備をしていた。まあ、準備と言っても講義形式のこの授業は基本話を聞いてメモを取っていれば終わるので大した準備はないのだが。余った時間で鷹也は物思いにふける。

 

(昨日は失敗だったなあ……。まさかあんなに早くに寝ちゃうとは……)

 

家に帰り、晩御飯の用意をしてことりと食べた後に少し休むつもりが熟睡してしまい、母に起こされるまで全く起きなかった。そこから、風呂に入り、次の日の講義の確認、期限の近い音ノ木坂学院関連の書類と大学の講義のレポートの確認をしていたらあっという間に寝なければ次の日に支障をきたすような時間。母もすでに自分の部屋で就寝していた。母に話を聞きたいことがいくつかあったのだが聞けずじまいになってしまったうえに書類もレポートもたまってしまったこの状況。仕方ないとはいえ、抑えられないため息をつきつつ、講義時間はまだかと手元の携帯端末をいじり始めようとしたとき、

 

「たーかーやー!!!!」

「うわっ!?なんだよ、和樹、そんなに慌てて……いいから落ち着いて。周りの視線がいたいから。」

 

急に後ろからやってきた和樹に両肩をつかまれる。その大声に周りの人がこちらを見ているため、恥ずかしい鷹也がなんとか落ち着かせようとするが和樹はおかまいなし。そのままのテンションで話を続ける。

 

「お前の妹すごいな!あんないい曲、歌、ダンス!」

「は?なんのこと……」

「μ’sだよ!学校の講堂か、あれ?すごいいいスクールアイドルじゃないか!」

「ちょ、ちょっと待って!1回落ち着いて!!」

 

鷹也は混乱しつつも、とりあえず和樹を落ち着かせて隣の席に座らせる。この男はことスクールアイドルに関してはテンションが際限なく上がるから困る。しかし、今鷹也が重要に思うのはそこではない。重要なのは

 

「なんでお前がそのこと知ってるの?あのライブは音ノ木坂学院の生徒のみが見れたライブだろ?」

 

そう。あのファーストライブは音ノ木坂学院でのμ’sの知名度を上げようという物。新入生歓迎会の出し物という名目上も自分を棚に上げれば、部外者が見れるものではないのだ。しかし、そこで和樹はキョトンとした顔で知らないのか?と言って続ける。

 

「そのライブ、ネット上のμ’sのランキングのページにアップされてるぞ?」

「……は?」

 

和樹の言葉に一瞬鷹也の脳が機能を停止したその時、講義を担当している教授が教室に入ってきて講義を開始する。

 

「あ、やべっ。この話はまた後でな。」

 

そう言って、根が真面目な和樹が教授の話に意識を集中させていくなか、鷹也は教授の言っていることなど一切聞いておらず先ほど聞いた衝撃の情報を処理するので精一杯だった。

 

(ネット上にμ’sのライブがアップされてる……?)

 

どうやら昨日のファーストライブ。あれだけでは終わらないようである。

 

 

 





次あたりにまきりんぱなの3人が加入できればいいなと思っています。(するとは言っていない)


お気に入り登録してくださった方が気づけば50を超えていました。ありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいでそろそろその気持ちを表す語彙がなくなってきました。
記念に番外編でもかこうかなとも思いますが、それはまだ未定。

感想、評価もお待ちしています。これからもがんばるので引き続きよろしくお願いします!
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