番外編パート①。結局南家の父のお話。時系列的には本編終了ちょっと後くらい。
お蔵入りの可能性まである出来のないようですが更新しなさすぎなので更新しました。
お父さんは原作登場しないので好き勝手書けて楽です。
ただほとんど書く暇もなく適当に描いた話なので、続きのパート②を更新するのはいつになるやら……
②を更新する時には①の内容変わってるまである。
キャラ崩壊を多く含みつつ、内容も別に面白くはないです。
あとはあとがきの方に少し報告があるので読んでくださった方はあとがきも読んでくださるとうれしいですよ!
その知らせは突然だった。
『今から帰るからな。ひな子とことりにも伝えといてくれ。』
「……は?」
学校も休みの日曜日。唐突に電話をしてきたと思えば、もしもしも何も言わずに第一声がこれである。鷹也は顔を引きつらせつつ、聞き返す。
「え?帰ってくるって言った?……今日?」
『そう言ってるだろう。学校休みだからみんないるだろ?じゃあ伝言よろしくな。』
「あ、ちょっ……!切れた……まじか……」
呆然と通話終了を示す画面を見つめる。そして、
「母さん!ことりーーー!!!」
大声で2人を呼んでリビングへと向かった。
☆彼と彼女たちと南家の大黒柱☆
「お父さんが帰ってくるのっ?」
「あら、ひさしぶりね。」
そのことを伝えると、ことりは嬉しそうに母は頬に手を当ててにっこりと微笑みながら言う。その様子を鷹也はなんとも言えない複雑な表情で見つめる。
南鷲一(しゅういち)。南ひな子の夫であり、鷹也、ことりの父親である。一家の大黒柱たる彼は仕事の関係で日本全国津々浦々、はてには海外まで行ったり来たりの大忙し。今ではほとんど家にいることはない。そうは言っても年に何度かは帰ってくるし、それこそ小さなころは鷹也やことりが寂しがらないようにと忙しい合間をぬって相当の頻度で帰ってきていたので、鷹也とことりにとっては尊敬する父親である。
「帰ってくるのはいいんだけどね……」
「鷹也?」
「お兄ちゃんはうれしくはないの?」
苦々しく口にする鷹也に首を傾げる2人。それに違う違うと否定してから、チラリと時刻を確認。時刻は朝の10時15分。今から連絡を回したとして追い返せるだろうか。連絡にかかる時間を考えるとぎりぎりか。
そこまで考えたところで鷹也は口を開く。別に帰ってくるのが嫌なわけではない。むしろうれしい。ことりも鷹也もここまで何不自由なく育ててくれた父には感謝しているし、寂しい思いをさせないようにと努力してくれた父のことは本当に大好きだ。だが、今日は少し問題がある。
「今日……みんなが家に来る日だよ……?」
「あ……」
その言葉にことりと母の顔色が変わったのを確認。状況の深刻さを理解したようである。できれば彼女たちと父を合わせたくないのは共通見解。
「どどど、どうしよう……!?」
「落ち着け、ことり。とりあえずみんなに連絡して今日のミーティングの場所の変更を……」
「そもそもいきなりすぎるわね……帰ってきたらお仕置きね。」
「か、母さんも落ち着いて?」
「とりあえず今月のお小遣いは半額にしておくわ。」
「帰ってこれないくらいに働いてるのに父さんはお小遣い制なの!?父さんがお金管理してないの!?ってか半額はやめてあげて!!生活できなくなりそうだから!!」
「……落ち着きなさい、鷹也。あの人にお金が管理できると思う?」
「…………」
「お兄ちゃん、さすがに何か言ってあげないとお父さんがかわいそうだよ……?」
ピンポーン
大慌てでこの後の対応を余計な会話を交えつつ考えている中、鳴り響くインターホンの音。口を噤み、恐る恐るとことりと母と顔を見合わせる。集合時間は10時半。現在時刻は10時20分。穂乃果が遅れてくる可能性を考えての少し早い集合時間。いつもどおりならばみんなはほぼ10時半ちょうどに集合すると考えてよいはずだが、少し早く来ることも考えられる。特に今日は一連の留学等の騒動を終えて少し経ち、初めてのミーティングの日である。一連の騒動に関しては全員ですでに話をしてあるのだが、少し緊張気味に早く来ることもあり得なくはない。
「……誰だと思う?」
「まだよ。私が頼んでおいた宅配の可能性もあるわ。」
「母さん……その観測は希望的観測過ぎない……?」
「あはは……」
めずらしい母の現実逃避に苦笑しつつ、ことりがインターホンを確認しようと動き出す。その背に鷹也は声をかける。
「とりあえずメンバーの子たちだったら家は無理になったからほかに行こうと言って外で待ってもらう。父さんだったら家に入れて、全力でメンバーに連絡を回す。宅配なら受け取る。これでいこう。」
「……まあそうするしかないわね。」
「というかこれでもだいぶ無理やりだけど……ことり?聞いてる?」
「あ、あの……これはもう……むりかなぁって……」
「え……?」
何とかしようと考えた策ともいえない方法を聞いて、インターホンに向かったことりは引きつった笑みを浮かべてこちらを振り向く。その様子に嫌な予感を覚え、恐る恐るインターホンの画面を鷹也が確認する。
『おーいいるんだろー開けろー』
『鷹也くーん、ことりちゃーん来たよー』
『あの、あまり大声を出すと周りの迷惑に……』
『海未ちゃんは気にしすぎだよーこのくらい大丈夫。でもそこまで考えられる海未ちゃんは偉いねー』
『あ、あの……』
『っていうか早く開けろー!鷹也ー!』
「……ことり。」
「な、なにかな?」
「……あきらめるしかないな、これ」
「あ、あはは……」
渇いた笑みを浮かべることりに向っていい、ため息をつく。インターホンのカメラの向こうでは園田海未、高坂穂乃果、そして南鷲一の姿。とりあえず通話のボタンを押して対応する。
「なんで3人一緒なの……」
『たまたまあったんだよ。っていうか早く開けろって』
「すごい開けたくないんだけど……」
『なんでだよっ!!』
『そーだよ!せっかく早起きしたのに!!』
「今日に限って早起きしないでくれ」
『おお~穂乃果ちゃん、早起きできたのか!偉いな~!!』
『はいっ!今日は頑張っておきました!!』
「……海未、父さんのカバンに鍵ついてるから」
『……分かりました』
『鍵?おお!こんなところにあったのか!!早く言えよ~鷹也!!』
「…………………」
「お、お父さん!とりあえず早く入ってきて!!穂乃果ちゃんと海未ちゃんも!!」
カバンにつけっぱなしにしないと忘れるからと言って前につけっぱなしにしておいたのは誰だっただろうか。さすがに軽くイラっとした鷹也の雰囲気を察したのか。ことりが慌ててみんなを中に招き入れる。そして、後ろでやれやれと言った様子で額に手を当てているひな子のため息がその場の状況を物語っていた。
「マンションの入り口で会ってしまって、そこでこうなると察したけど押し切られたと」
「はい……すみません……」
「海未ちゃんは何も悪いことしてないのに謝らなくてもいいだろー」
「まあ穂乃果は父さんに懐いてるし、止められないのも仕方ないか……」
玄関でことりが対応し、とりあえずはもうどうしようもないので鷹也の部屋に海未と穂乃果を通す。ことりの部屋でもいいのだが、ことりの部屋は今は衣装づくりで少し手狭になっているので鷹也の部屋となった。鷹也は謝る海未に気にしないでと声をかけつつ、小さくため息をつく。
「どうせごはん食べていけとでも言われたんでしょ?」
「うんっ!焼肉連れて行ってくれるって!!」
「それも高級なやつだ!どうだ鷹也!うれしいか!」
「穂乃果、ダイエットしなくていいの?」
「おーい鷹也―?」
「う……きょ、今日は大丈夫だもん!」
「海未、後で雪穂に聞いといて」
「分かりました」
「う、海未ちゃーん……」
「あれ、俺ってば息子に無視されてない?」
引きつった顔で何とか海未を止めようとする穂乃果から目を逸らし、鷹也は足音に気が付いてドアを開ける。そこには案の定ことりが飲み物の入ったグラスとお菓子の入った皿が載ったおぼんを手にして立っていた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「どういたしまして。ことりも飲み物とお菓子ありがと。そこにおいて座りな?」
「うん……な、なんでお父さん泣いてるの?」
「自業自得」
「理不尽に息子に無視されて泣かない親父がいるだろうか!?」
「自業自得と理不尽の意味を辞書で調べてから出直せ!!」
「自業自得:仏語。自分の行いの報いを自分で受けること。主に悪事に使われる。
理不尽:名詞または形容動詞。物事の筋道が通らないこと。」
「それっぽいこと言ってからのそのどや顔やめてくんないかな……!!」
「あ、あはは……」
父親と息子の言い合いを娘が苦笑いで見守る光景をさらに微笑んで見守る幼馴染の2人。一体なんなのだろうか、この状況は。小さくため息をついて鷹也は鷲一に向って口を開く。
「なんでこっちにいるの?母さん、久しぶりだって喜んでたよ?リビングへどうぞ?」
「お前は実の父に地獄に行けと言っているのか?」
「リビングって言った気がするけど。」
「今のリビングは俺にとって地獄だろうが。鷹也もことりも知ってるだろ。ひな子が怒った時はやばい」
「怒られる自覚はあるんですね……」
「ここにいて後回しにする方が大変な気もするけど……」
「それに、ここにいればμ’sと会えるんだろ?」
実際にお説教くらいは確実だろう。鷹也の言葉に引きつった笑みを浮かべる父。そこに海未とことりが小さく声をかけるも、それを気にせずに父が気になる一言。その言葉に穂乃果が反応する。
「あれ?私たちのこと知ってるんですか?」
「さすがに息子と娘が関わってたらね。スクールアイドルなんて思い切ったじゃんか」
「それは今でも思ってるよ。ずいぶんと無茶してるなって」
「まあここまで人気出てたら無茶とも言えないだろうよ?メンバーも皆かわいいしな!!」
「やっぱそこじゃんか……」
拳を握って動画で見たというメンバーの可愛さを力説する父にいつものことかと4人で顔を見合わせる。昔から身内の子に甘いのだ。そしてその身内の範囲が広い。娘のことりは言わずもがな。ことりの幼馴染の穂乃果や海未まで自分の娘みたいなものだとして溺愛しているのだから始末に負えない。そんな父が娘の参加しているアイドルグループのメンバーに興味を示さないわけがないと思っていたが案の定だったらしい。もはや自分の娘と同じくらいの愛情を勝手に抱いているんだろうなと思うと、実の父親の危ないくらいの博愛精神が怖くなりそうである。
『おじゃましまーす!』
「あ、みんな来たみたい」
「おお!生でμ’sに会えるのか!!」
「うわぁ、最悪のタイミング。というか娘と同年代の子相手にそんなにテンション上げないで。気持ち悪い。」
「……息子からの気持ち悪いは心にくるなぁ……!!」
そこで響いたチャイムと玄関からの声。母が応対してくれたらしい。テンションが上がり始めた父をどん底に突き落としつつ、鷹也はその様子にため息をつく。父が来るとため息が加速するのは気のせいではないだろう。
そんな中、最悪のタイミングで恐らくこの状況にもっとも対応できないメンバーが先頭で部屋に入ってくる。
「みんな、遅くなってごめんなさ……」
「おお!本当にμ’s!!握手してください!!」
「へ?え?ええっ!?」
「花陽ちゃん!お願いします!」
「あの……え、ええ~!?」
「かよちん?」
「ちょっと!はやく入りなさいよー!」
「ほら!後ろも詰まってるし!ぜひ!」
「あ、あの……!だ、誰か助けてー!!」
「自重しろ!!」
「いてっ!」
前方の見知らぬおじさん(南鷲一)、後方のメンバーからの文句(凛、にこ)に処理限界を超えた花陽がいつもの口癖を発したところで鷹也が軽く父の頭を叩いて止める。なにすんだとわめいているが、それはこちらのセリフである。
「いきなり知らないおじさんに詰め寄られたら驚くに決まってるでしょ」
「誰がおじさんだ!まだお兄さんで行けるだろうが!」
「そこなの……?ってかお兄さん?40後半に入ってきて50間近なのに?」
「おまっ……こんなとこで年齢公表すんな!父親権限で社会的に抹消するぞ!?」
「本物のスクールアイドル目の前にして昔のアイドルみたいに年齢秘匿しないでくんないかな!ってか父親権限で実の息子を消そうとすんな!子供大事にしろ!」
「父親大事にしてから言え、そのセリフ!もっと父親を敬え!」
「娘と同じくらいの年齢の子に詰め寄る父親をどう敬えと!?」
「え、えっと……あのままでいいのかしら……?」
「ずいぶんにぎやかやね?」
「あはは……ごめんね、ちょっとすれば収まると思うから……」
「あんなに大声だす鷹也くん珍しいにゃ……かよちん大丈夫?」
「あ、う、うん。ちょっと驚いただけだから……」
「あ、みんな。いらっしゃーい」
「なんで穂乃果はこの状況で我が家であるかのようにくつろいでるのよ……」
「まあ、見慣れた光景ではありますので……」
「それにしたってくつろぎすぎでしょ……」
父と言い合いをしている間にメンバーが全員部屋に入ってくる。絵里と希、そして凛と花陽が驚いたような視線をこちらに向け、スペースの問題上もあり、ベッドの上でだらっとしてくつろいでいる穂乃果ににこと真姫があきれたような視線を向けている中で、ことりがそれぞれに飲み物を手渡す。
それを気にせずに鷹也と鷲一は言い合いを続行。
「俺がいなければお前は生まれてないんだぞ!」
「誰も生んでくれって頼んでないけどな!」
「俺はお前に生まれてきてくれって頼んだけどな!」
「それはありがとう!」
「おうどういたしまして!」
「………………」
「………………」
「……もうやめようか。なんだこの不毛な言い合い」
「……そうだな。みっともない」
くだらない流れでくだらない言い争いが落ち着き、視線を周りに向けるとこちらを生暖かく見守る9人の少女。
「「……なんだよ」」
「なんでもないわよ?」
「ただ珍しいものが見れたなぁって思って」
「「…………」」
答えてくれた絵里と希を筆頭にして、にやにやとこちらを見るメンバーから無言で目を逸らす。ことりと海未と穂乃果が特に笑顔だったのがとても印象的で。誤魔化すように口を開く。
「さ、みんな来たし、さっさとミーティング始めるよ」
「騒いでたの鷹也くんたちだけにゃ」
「とにかく!!!」
凛の言葉を遮るように少し大声を出してから、視線を横の父に向ける。なぜか横で腕を組み、ミーティングに参加する気満々なことを無言で意思表示したままこちらに頷いて見せる父。全く頷きの意味が伝わらない。
「なんでここに残ろうとしてるの」
「気にすんな。続けろ」
「続けないから。知らないおじさんいたらみんな緊張するだろ」
「その知らないおじさんがファンにもたくさんいることを忘れんな。ということを伝えるためにもだな……」
「そんな知らない人が家にいるのなら追い出さなくちゃいけないわね」
「おい、さすがにそれはちょっとひどす……ぎ……」
合間に入った不審者扱いに言い返そうとした父の言葉が途切れる。胡坐をかいて腕を組み、偉そうな姿勢のまま彼は鷹也に視線だけを向ける。今度はその意図が伝わり、鷹也は笑顔を見せる。息子として父の無言の要求は的確に、確実に察して答えなくてはいけないだろう。
「俺とことりのこと、忘れないでね」
「ちげえよ!別れの挨拶は求めてない!!助けろよ!!」
「あらあら、知らない人は家においてはおかないから間違ってはないわよ?」
「ひな子!?旦那を知らない人扱いし続けんな!」
「みんな、ごめんなさいね。今電話を……」
「おい、待て!その電話何に使う気だ!?警察!?警察か!?」
「ええっと……1……1……」
「0だよ、母さん」
「あらありがとう、鷹也」
「7!7で!俺、天気予報聞きたいなあ!ってかことり!母さん止めてくれ!あれたぶんマジで電話かけるぞ!」
「あ、あのお母さん……?」
「ちょっと待ってね、ことり。今忙しいから」
「あ、うん。分かった……」
「ことり!?」
「だ、だってえ~……」
電話を掛けようとするひな子にことりが声をかけるも一切目が笑っていない満面の笑みを見せられてあえなく撤退。まあその気持ちは分かる。普段温厚な人がマジで怒るとめちゃくちゃ怖いというあれである。
父が大慌てでこちらに助けを求めようとするのを見て、鷹也は満面の笑みで口を開く。
「自業自得:仏語。自分の行いの報いを自分で受けること。主に悪事に使われる。」
「冷たすぎやしねえかな、息子!!ちくしょう!ひな子、ストップ!警察は洒落なんない!冗談になってない!」
「……さ、これで静かになったな」
「え、このまま進めるの……?」
あきらめて自分でひな子を止めに行った鷲一を見送りつつ、何事もなかったかのように進めようとするも、そうもいかないようで。こちらに説明を求めるような視線を向けるメンバーに対して小さくため息。今日はミーティングできないのではないだろうか。
『海外で活躍するインテリアデザイナー!?』
驚きの声を上げているメンバーに対し、ことりと同時にうんと頷くことで肯定の意志を見せる。穂乃果と海未はもとから知っているので驚きも何もないが、他のメンバーに関しては相当の衝撃ではあるだろう。あれだし。
「いんて……?」
「凛、まさか……」
「し、知ってる知ってる!!いんてりあでざいなあだよね!うん!常識にゃ!!」
「家具とか照明とかの室内全般をデザインする人のことよね?」
「うん、絵里ちゃんの言う通り。お父さん、一応海外でもいろいろデザインしているみたい」
絵里の言葉にうんうん、そうそうと頷いている凛は放っておき、鷹也が続ける。
「まあ、俺もことりもほとんど仕事の内容とかは知らないんだけどね。あんま話したがらないんだよ。聞き出せもしないし。」
「お兄ちゃん、たまに無理に聞こうとしていつも誤魔化されてるもんね……」
「なんかその光景が目に浮かぶわね……」
「でもそんな有名なデザイナ-さんなんやったら、ことりちゃんからしたらだいぶおっきなコネになるんやない?」
先ほどの言い争いを思い出しているのだろう。にこがそう言っている中、そこで希がふと思いついたとでも言うように口を開く。その発想は間違ってはいないだろう。実際に種類は違ってもファッションデザイナーとインテリアデザイナーという同じ芸術方面に関わっている仕事。ある程度は交流を持っていてもおかしくはない。しかし、鷹也は小さく首を振る。
「ことりと俺の将来のために自分の地位を使って優遇する気はないってさ。最初から宣言済み。あの人がどんなコネを持ってるかも俺らは知らないし、聞けないの」
「そうなん?」
「それは自分で勝ち取るものって言ってたよ」
「な、なんかすごいね……」
「だろ?まあ年に数回しか帰ってこないからそんな話する暇もないし、コネを利用しても自分のためにはならないしね。最終手段としては活用できるけど、そのためには何をすることになるのやら……」
鷹也が最後に顔を顰めていることで、感心する表情にどんなことさせられるんだろうというような引きつった笑みがメンバーにプラスされる中、真姫がそんなことよりと口を開く。
「それなら私たちはいない方がいいんじゃない?」
「そうだね。ことりちゃんも鷹也さんも久しぶりにお父さんと会うんだし……」
「ああ、それなら心配しなくても……」
「大丈夫だよ!みんなで焼肉食べに行けるって!」
「焼肉!やったー!!」
「凛の適応の早さって本当にすごいなぁ……」
真姫と花陽の当然の疑問に鷹也が答える前に穂乃果が答える。その答えに凛がはしゃぎだすのを見つつ、鷹也が苦笑していると絵里が声をかけてくる。
「でも、さすがにこの人数でごちそうになるわけには……」
「大丈夫だと思いますよ。というか強制的に連れて行かされます」
「強制的?」
「試す?」
海未の言葉に首を傾げている絵里に向って言いつつ、ことりに合図。ことりは本当にいいの?とでもいうような視線を向けてくるがもはやあきらめている。もう仕方ないでしょという鷹也の意思を察したのか。ことりは半ばやけくそ気味にえいっと少し気合を入れてから、ドアを開けてリビングに声をかける。
「お父さーん!絵里ちゃんが今日は帰るってー!!」
「え、あのどういう……」
「ぬぅあーーーーーにぃーーーー!!!!!!」
「きゃあ!!」
ことりの声に絵里が反応する前に、ことりの声からコンマ数秒ほどで知らないおじさん再降臨。驚いて、悲鳴を上げる絵里に詰め寄る。
「絵里ちゃん帰るのか!?なんで!?焼肉嫌いだった!?」
「え、あの……いえ、そんなことは」
「じゃあ家で何かあるのか!?」
「いえ……でも……」
「よしじゃあ大丈夫!行こう!みんなで行こう!!」
「あの」
「穂乃果ちゃん!焼肉は好きか―!?」
「いえーーい!!」
「凛ちゃんは!?」
「いえーいにゃーーー!!!」
「希ちゃんは!?」
「いえーーーーい!!!」
「希!?あなたまで……」
「さあ、絵里ちゃんも!!」
「え、あの……」
「みんなも!せーの!」
『いえーーーい!!』
満足げなどや顔の父を見つつ、乗せられて声を上げている絵里を見る。そこでハッと我に返った絵里が顔を一瞬で真っ赤にし、がっくりとうなだれる。まあ、気持ちは分からなくもない。ちなみに花陽は凛に無理やり巻き込まれ、にこはさりげなく楽しそうに混じっている。
「まあ、これをかいくぐって帰れるものならってこと」
「絵里……」
「何も言わないで……」
「気持ちは分かりますよ、絵里」
「あはは……海未ちゃんも何回か同じことになってるもんね」
慣れているためにその場のノリにのせられなかった鷹也、ことり、海未とわれ関せずとみていただけの真姫が絵里を生暖かい目で見ている中、父がさも当然かと言うように室内に入ってくる。
「で、なんの話だ?」
「いや、なぜ毎回平然と混ざろうとするのさ」
「いいだろうよ。どうせ俺の話だろ?」
そういう鷲一に特に否定も肯定もしないでいると、鷲一はそれ見ろとでも言わんばかりの表情を向けてくる。
「で、なんの話していたんだ?」
「……ったくもう……父さんの仕事の話。あとは父さんのコネを俺らは使う気ないよって話」
「ああ、そのことならちょうどいい」
「ちょうどいい?」
鷹也が鷲一の言葉に首を傾げると、鷲一は適当な様子のままに口を開く。
その言葉は、あっさりと、そして簡単に告げられた。
「鷹也、俺と一緒に海外まで来い」
「……とりあえずは理由聞いておくよ。なんで?」
周囲が凍ったかのように固まり、静まり返るなかで唯一反応を返してきた鷹也は静かにこちらに問いかけてくる。その傍からは落ち着いたように見える様子に少し目を細めつつ感心する。さすがにもう少し取り乱すと思ったのだが。息子が自分が思っていたよりも大人になっていたようで、少しうれしくなる。
「処理しきれずにフリーズか、それとも大声を出すか、取り乱すかのどれかかと思ったんだけどな?意外と落ち着いてるじゃんか」
「……いいから答えて」
「余裕はないみたいだな」
ははっと小さく笑って見せるも、鷹也は表情を崩さない。視線は厳しくこちらを問い詰めるようにまっすぐ向けられている。
その視線から目を逸らし、隣にいたことりに視線を向けるとことりはようやく我に返ったようでハッとしてからこちらに問いかけてくる。
「お、お父さんそれって……」
「ことりはまだ高校生だしな。さすがに連れていけないからごめんな?」
「そうじゃなくって……!!」
「父さん、いい加減に……」
「尻拭いだよ」
ことりを少しからかったあと、さすがにいらだちを見せた鷹也に視線を向けることなく告げる。その言葉だけで察することができた様子なのはさすが我が息子といったところなのだろうか。少し察しがよすぎる気もするが。
「父さんは関わってないって聞いてたんだけど」
「関わってなかったさ。でもさすがに知ってる名前ではあるからな」
「……そこまで有名なの?」
「ま、本場で教育やってるだけあるってことだな」
「ちょ、ちょっと待ってください!あ、あのそれって……」
ようやく復帰したらしい絵里が少し焦りつつ声をかけてくる。周りのメンバーも心配そうな視線を向けてきており、少し胸が痛むがその痛みを抑えつつ鷲一は口を開く。
「ことりの留学の件。ドタキャンみたいなもんだったのは分かってるよね?」
「あ……」
「一応その留学先の理事長と面識があってね。正直相当偉い立場の人なわけ。…性格に関してはお世辞にもいいとは言えないけど。そんでその理事長からうちの会社に圧力がかかってるんだなあ、これが」
言いたいことが分かったのだろう。ことりが顔を青くしている中で、メンバーのほとんどの子も察したようである。一応さっきまで自分の職業についてはなしていたらしいから察しが早い子は理解できるだろう。まあ、穂乃果や凛は理解できていないようだが。
「……仕事の量とか交渉とかで色々人手が足りていないと」
「そういうこと。あっちの方じゃ圧力かかってて人集めらんねえし、こっちだと急に外国来いなんて言ってくる人もいねえしな。ぶっちゃけ父さん倒産の危機。父親の危機には息子が立ち上がんなきゃな」
「何ヶ月……とかって話じゃないよね?」
「まぁ数年がかりだな」
「……拒否権は?」
「鷹也にはねえよ。お前も原因の一つといえば一つだからな」
「……お兄ちゃん……」
真剣な口調の鷹也に大してかるく返していると、ことりが心配そうに鷹也のことを見ている。一応親父倒産の危機なのにこっちには心配はないのだろうかと思いつつ、立ち上がる。
「鷹也に拒否権はねえし、ひな子も納得済み。さぁどうする?」
「……俺には何もできなそうだね」
「その物分かりの良さもお前らしいじゃんか」
「まあ、これでも責任は感じざるを得ないしね。でも」
目をつぶって考え込んでから頷く鷹也にからかうように声をかけてやれば、鷹也は小さく笑う。だが、それも一瞬のみで。続く言葉と表情に一瞬息をのむ。
「絶対行かない」
真剣な表情と声色に少し唖然としてしまう。正直に言えば意外だった。時々しか帰ってこれなかったとはいえ、幼いころから見てきた息子の変化。はっきりと感じる意思の強さは、息子の成長の度合いは想像以上で。堪えきれずに口から笑みが零れるのを自覚しつつ、鷲一は言う。
「何とかしなくちゃいけないのは分かってんな?それでいてそう言えるんだな?」
「……父さん、場所変えたいんだけど。みんなに話すことでもないでしょ」
「……そうだな。じゃあリビングでも行くか」
鷹也に言われてドアを開いてリビングに向かおうとする。実際に9人の少女たちはことりを含め、全員どうすればいいのか分からないという様子だったのでちょうどいいだろう。しかし、そこで声がかかる。
「あ、あの!!」
「ん?花陽ちゃん?」
これも意外といえば意外な子からの呼び止め。呼び止めるとしたら穂乃果あたりかと思っていたのだが。引っ込み思案だと聞いていたメンバーは少し口ごもりつつも、それでもまっすぐにこちらに意見を言おうと口を開く。
「あ、あの……鷹也さんは、私たちの手伝いをしてくれてて……とてもよくしてくれてて……」
「……聞いてたのとだいぶ違うな……」
「父さん?」
「ん?ああ、悪い悪い。花陽ちゃん、大丈夫……とは言えないけどもとりあえずは親子の話し合いをさせてもらえないかな?」
「あ……は、はい……」
鷹也に怪訝な目で見られ、花陽に笑顔を向けてから外にでてドアを閉める。小さく息を吐けば鷹也がこちらをジト目で見てくる。
「……とりあえずリビング行くか」
「……まあいいけどさ」
本当に察しのいい息子を持ったものである。うれしいような悲しいような、そんな複雑な感情を抱えつつリビングへと向かった。
はい、どこかで見たことある展開。兄妹は同じ壁にぶつかるのです。
ここから面白くできる自信がないのでお蔵入りの可能性までありますがとりあえず頑張ります。
報告ですがツイッターにアカウント作ってみました。@yukikotoconpasu
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