もし、俺がリンクスタートしたら2   作:単品っすね

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ジョニーブラック

 

 

俺とキリトはどっかの草叢で立ち尽くしていた。

 

「…………あれ、なんでだっけ……どうしてこんなことになったんだっけ……」

 

思わずそんなことを呟いていた。あれ、本当にここどこ?

 

 

 

 

 

 

時は遡り、すごく前。ダイシーカフェにて。

 

「よく降るな……」

 

カウンター越しにエギルがぽつりと呟いた。

 

「梅雨ですからね。明日まで降りっぱなしみたいですよ」

 

詩乃が言った。

 

「俺はてっきりウンディーネのメイジの仕業かと思ったよ」

 

「何言ってんだお前」

 

そこに俺は突っ込む。

 

「ていうかお前の顔面でジョーク言っても散文的な笑いしか起きねーぞ」

 

「っせーな。俺はヘドロ様かよ。というか、お前最近よくスカート履くようになったな」

 

「っせーよ。和人がそのほうが喜ぶから……」

 

「エギル、ジンジャエール辛口」

 

和人が俺の台詞を遮るように言った。

 

「あっ、じゃあ俺は和人の奢りでチョコパフェ四つ」

 

「自分で払えよエレナ」

 

「無理ですー。お金持ってきてませーん」

 

「電車で来ただろうが」

 

「買ってくれないと駄々こねるぞ」

 

「二つまでなら許してやる」

 

そのやり取りを見て、思わずシノンはドン引きした。

 

「和人……あんた少し甘やかしすぎよ……」

 

「仕方ないだろ。可愛いんだから」

 

「「気持ち悪っ」」

 

「おい待てエレナまで言うか」

 

いやキモいでしょ今のは……。

 

「ていうか二人とも、痩せたんじゃない?かなり。食べなさいよもっと」

 

詩乃が俺と和人に向かって言った。その問いには和人が答えた。

 

「ああ、ここ金土日で一気に落ちた……」

 

「お山で修行でもしてたの?」

 

「いいや、ひたすら寝てた」

 

「それでなんで痩せんのよ」

 

「飲まず食わずだったから」

 

「はぁ?悟りでも開くつもり?」

 

「ほらエレナ。チョコレートパフェだ」

 

「おー。サンキュー」

 

言いながら俺は早速一口食べる。ちなみにチョコパフェ、俺のためにエギルがメニューに加えてくれたものだ。

 

「うめぇ!エギル、結婚しよう!」

 

「俺は外婚者だ。つーかそこのはいいのか?」

 

「だってそいつチキンでさー。いつまで経っても童貞卒業しようとしないんだもん」

 

その一言に詩乃と和人はブフッと吹き出す。

 

「えっ、お前らまだヤッてなかったのか?同じ家に住んでるのに?」

 

「ああ。何度も同じベッドに入ったりお風呂入ったりしてるのに和人が毎回チキるんだよ」

 

「うーわっ……男のくせに」

 

「しかも毎回俺の方から誘うんだぜ。こっちだって恥ずかしくないわけじゃないってのに……」

 

「うーわそりゃねぇーわ。甲斐性ねぇなそこのモヤシ」

 

すると、バンッ!と顔を赤くして立ち上がる詩乃と和人。

 

「何の話をしてんのよあんたらは!」

 

「つーかエレナ!お前そういうこと言うのやめてくんない⁉︎」

 

「っんだよ。そりゃアレだけムラム……」

 

「わぁーわぁーわぁー!ダメダメダメそういうの!やめてやめてやめて!恥ずかしいから!」

 

「しっかもこいつ毎回俺の全裸見るだけで鼻血出すんだよな」

 

「どこまで純情なんだよお前」

 

「ケラケラケラwww」

 

「え、エレナ!俺だって起こることくらいあるんだぞ!」

 

「ほーそりゃ怖い」

 

完全になめ腐った態度をとりながら俺はパフェを一口。すると、和人は詩乃に聞いた。

 

「そ、そんなことより彼はどんな様子なんだ?」

 

あ、話題変えた。

 

「うん……。少なくともあんたらよりはだいぶ落ち着いてきたみたい」

 

「彼って誰だよ。詩乃の彼氏?」

 

「あなた忘れたの?私の家に入ってきた瞬間、あなたが顔面に蹴り入れた子よ」

 

「………あー。ザザとく、クラ……クラーケンの時の」

 

「クラディールな。いい加減覚えてやれ」

 

和人が口を挟む。

 

「もう少ししたら、また面会に行ってみるつもり。今度は会ってくれそうな気がするんだ」

 

「そっか」

 

「でも、エレナのことはトラウマになってるみたい」

 

「そっか………」

 

和人はジトッと俺を見たが、俺は知らん顔でパフェを食べる。

 

「ねぇ、普通そこで私は大丈夫なのか聞くもんなんじゃないの?」

 

「え、あ、そ、そうか。えーと、詩乃はどう?」

 

「エレナが貸してくれたガンダムDVD、全部見たわよ」

 

「まじで⁉︎一番気に入ったのは⁉︎」

 

「OOのロックオンかなぁ。いずれは私もあんな風に成層圏射撃をしてみたいわね」

 

「おおー!わかるやつがいた!」

 

「あとあのビームピストル乱射するところ。あれはヤバかったわうん」

 

「そうなんだよ!やっぱOOはロックオンかグラハムだよな!いやコーラサワーも捨てがたい……」

 

「あとサーシェスとか!」

 

「そうそれもいい!」

 

などと盛り上がってると、和人が呟いた。

 

「じゃあ、死銃事件は、これで何もかも終わった……ってことかな」

 

「うん……そう、だね」

 

すると、その詩乃のまえに角切りベーコンが置かれた。

 

「あ、わ、私頼んでませんから」

 

「いいや、奢りだよ。和人の」

 

「どーも。ごちそーさま」

 

「まあ、いいけどさ。バイト代入って、今ちょっと懐あったかいから」

 

「じゃあ俺のパフェも追加で」

 

「それは断る。お前もバイト代あるだろうが」

 

「へー、二人してバイトなんかしてたの?」

 

「さっきの三日間飲まず食わずってやつさ。まぁその話は本題を片付けてからにしようぜ。とりあえず、熱いうちに食べよう」

 

「和人、俺のことも熱いうちに食ってくれよ」

 

「お前はまだその話引きずってんのか‼︎」

 

で、並べられた料理を食べる。

 

「これも……すごく、美味しい。ボストン風、って言ってた?味付けはなんなのかしら」

 

「んーと。名前は忘れたけど、粗製の糖蜜を糖蜜を使うんだったな」

 

「モラセスだよバカ。お前の頭の中はどうなってんだよ」

 

俺が罵ると、和人は一瞬俺を睨んだ気がしたが、すぐに詩乃に向き直った。

 

「だ、そうだ」

 

「へええ……アメリカの料理なんて、ハンバーガーとフライドチキンだけだと思ってたわ」

 

「マックしかねぇのかよあの国は。アメリカだって美味い料理はたくさんあるんだぞ」

 

まるで自分の国のように俺は自慢した。自由の国はそこまで嫌いじゃないしな。

 

「そうだな。あっちのVRMMOプレイヤーも話してみりゃいい奴ばっかじゃん」

 

「うん、それは確かに。こないだGGOの国際サーバーでシアトルの女の子とスナイピングについて三時間も話し込んじゃった。あーでも……あいつとだけは分かり合えそうにないな……」

 

「あいつ?」

 

「それが今日の本題なんだけどね。先週の第四回BOBの個人決勝があったのは知ってるでしょ?」

 

ああ、そういやあんなんあったわ。

 

「うん。みんなと一緒に中継を観たよ。そういや、まだお祝いを言ってなかったな……まあ、シノンにとっては悔しい結果だろうけど、3位おめでとう」

 

「ふん……あそこのバカさえいなけりゃ私は準優勝だったのよ?」

 

俺を睨みながら詩乃は言った。

 

「弱いお前が悪い」

 

「なんですって⁉︎」

 

「ま、まぁまぁシノン……」

 

「まぁいいわ……。中継見てたなら話が早いわ。二位だったサトライザーって名前のプレイヤーだけど……あいつ二度目なのよ。そこのアホンダラに負けて準優勝するの」

 

「つまり……セレナさえいなけりゃGGO最強だったってわけか……」

 

「悪いな強くて」

 

「「ウザい」」

 

ちょっと和人まで声揃えなくてもいいじゃない。

 

「だってあの大会ってほとんどのプレイヤーが1位と2位を引きずり落とすために出てたって感じだったんだぜ?それなのにあいつもお前も簡単に敵を瞬殺しやがるんだから……」

 

「でもすごかっわねムカつくけど。あの決勝戦はほとんど格ゲーだったからね」

 

懐かしいなぁーなんて考えながら俺は天井を見た。話が思ったより長い……………。

 

 

 

 

 

 

あの後、明日奈も来てみんなで話して解散した。で、和人と俺は帰宅中。すると、声をかけられた。

 

「あのぉ、駅はどっちの方ですか?」

 

小柄な男が声をかけてきた。振り返る二人。

 

「いや、無理があるから。お前ずっとダイシーカフェ近くにいたろ」

 

「バレてないとでも思ってたのか?」

 

二人でいうと、困ったような顔をわざとらしく作ったあと、ニヤリと口を歪ませた。

 

「……やっぱ不意打ちは無理か」

 

「お前は、誰だ?」

 

和人が聞くとそいつは言った。

 

「ヘイ、ヘイ、そりゃあないよキリトさん。俺の顔忘れたのかよ……って、あっちじゃいつもマスク被ってたっけな。でも、俺はあんたらのこと1日たりとも忘れちゃいなかったぜ」

 

「おいおい、ヤンデレですか。ジョニーブラック」

 

その名前が俺の口から出た瞬間、和人は反射的に肩の上の何もない空間を掴んだ。

 

「プッ、クッ、クハハハッハハハ!ないよ、剣ないよぉ‼︎」

 

「背中に置いてあるはずの剣がないよぉ‼︎お母サァーン!」

 

「お前は誰の味方だ‼︎」

 

ノッた俺に怒鳴る和人。

 

「お前………まだ逃げていたのか」

 

「オフコーーース。ザザの奴が捕まっちまったから、俺が根性見せないとじゃん?ラフコフの最後の一人としてさ。あの喫茶店を探し当てるまで五ヶ月、その近くに張り込んで一ヶ月……ヘイトな日々だったぜ〜」

 

低く喉を鳴らし、ジョニーブラック……金本は首をカクカクと右左に傾ける。

 

「しっかしキリトさんよ、剣がないとなんつーか……単なるひ弱なガキですなぁ?顔は同じだけど、俺を散々ぶちのめした剣士様と同一人物とは思えねーなぁ」

 

「ほんっとそれな!今となってはこいつただのモヤシだからね」

 

「まだお前さんは……セレナか?お前さんの方が強そうだ」

 

「実際俺のほうが強いしな。こいつに毎回バックドロップ決め込む日々な」

 

「お前あんなんリアルで出来んの⁉︎すげーなおい!」

 

「何を盛り上がってんだお前らはァッ‼︎」

 

とりあえずそれを指摘しておいて和人は言った。

 

「そう言うお前も……得意の毒武器なしで何ができるんだ?」

 

「ヘイ、見た目で武装を判断するのはトーシロだぜ」

 

で、金本が取り出したのはデスガンのような拳銃だった。いやあれ本物というか薬品だな。

 

「和人、下がれ!」

 

俺は反射的に和人の前に立った。

 

「ぷっ!つくづく情けねぇなキリトさんよぉ!女の子に庇われちゃうなんてよぉ!」

 

「オイ」

 

俺は喉から声を絞り出す。

 

「確かにキリトは情けねぇよ。メンタル豆腐だし女々しいし俺の全裸見るだけで鼻血出るし中々チキってセ○クスしねぇし」

 

「えっ、待ってタンマ。お前ら付き合ってんの?」

 

「けどなぁ……コソコソ逃げ回ってるテメェよりゃよっぽど男らしいぜ」

 

ゾッとしたのか、金本は二、三歩後ずさる。

 

「あー……お前さん本物のヤバいやつか……見くびったな。ま。ここで引くわけにゃいかんよなぁ」

 

言いながら金本は拳銃を俺に向けた。瞬間、俺は傘を開いた。

 

「っ⁉︎」

 

「ッッ」

 

そのまま特攻。

 

「バーカ。傘さしてりゃ防げると思ったか?それじゃこっちの反撃見えねーだろうが」

 

金本は俺の傘を蹴った。だが、その傘の裏から俺はいち早く抜け出して、金本の背後を取った。

 

「!」

 

「終わりだ」

 

そのままブン殴ろうとした時だ。俺の腹に何かが刺さった。

 

「ッ⁉︎」

 

注射器だった。しっかりと突き刺さり、吐血した。

 

「銃の方はフェイク。こっちが本命だぜ」

 

「……………っ」

 

「エレナ!」

 

と、叫んだ和人の肩にも注射器が刺さった。後ろにばたりとぶっ倒れる。

 

「ああ、悪い。フェイクっつーより、注射器は二つある、っていうのが正解だ」

 

しまった……。そういうことか……。

 

「クッハハハハァ!いいねぇ、最高だぜ。英雄を二人まとめてぶっ潰すってのはよぉ!」

 

そのまま高笑いする金本。

 

「さて、本当はこのままゆっくりしていきたいところだが、一応お尋ね者だから、俺はぁこの辺でおさらばするわ。あばよ、英雄」

 

で、帰ろうとしやがった。その金本の肩を俺は無理矢理身体を起き上がらせて掴んだ。金本は俺を信じられないものを見る目でみた。

 

「おいおい、冗談だろ……?なんであれ喰らって動けんだよ……」

 

「死ぬ覚悟できてんだろうなぁ……」

 

そう吠えると、俺の右拳は金本の顎を捉えた後、左拳で腹に一撃入れた。ケハッ、と血を吐いて前のめりになる金本の後頭部に俺は組んだ両手を思いっきり叩きつけた。

 

「ンガッ……‼︎この、チート野郎……!」

 

そのまま金本は倒れたが、俺も倒れる。それでも俺は無理矢理身体を動かして、倒れた和人の方へ身体を引きずる。

 

「かっ…とぉ……かず、とぉ………」

 

自然と口から声が出た。目から流れる涙。俺がどんなに呼んでも和人が起き上がることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

で、気が付いたら俺と和人は淡い緑色の草叢にいた。

 

「で、ここどこ?」

 

「どこだろうな」

 

二人して緊張感のない声が漏れた。

 

 

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