翌日。俺が寝てるとキリトに叩き起こされた。
「ってぇな!焼却炉にぶち込むぞ!」
「言ってる場合か!セレナ、力を貸してくれ!」
「あ?」
「セルカを連れ戻すんだ!」
要約すると、言っちゃいけないところに言ってるかもしれないセルカを連れ戻すってことか。
「なんで俺が……」
俺がボヤいてると、果ての山脈へ到着した。この向こう側が闇の国に繋がってるらしい。ってキリトが言ってた。
「これが世界の果て、ねぇ……なんか、パッとしねーな」
「僕も初めてきた時は驚いたよ。世界の果てが、こんなに近いなんて……」
なんて話しながら洞窟に突入。俺は反射的にキリトの背中に引っ付いた。
「ど、どうしたんだい、セレナ?」
「気にしないでくれ。こいつ、お化けとか出そうな雰囲気が苦手なんだ」
「余計なことを言うな」
「いだだだだ!首しまってる!ギヴギヴ!」
「システム・コール!リット・スモール・ロッド!」
は?システムコール?思わず驚いて手を離してしまった。なんて驚いてる間にもユージオの握る草穂の先端にポッと青白い光が付いた。キリトも同じように思ったのかユージオに聞いた。
「ゆ、ユージオ……いまのは?」
「神聖術だよ。すごく簡単なやつだけどね」
「お前……システムとか、リットとか……意味は知ってんのか?」
「意味はないよ、式句だから」
なるほどね……。まぁ今はそんなこと聞いても仕方ない。
「とにかく、中入ろうぜ」
で、三人で洞窟に突入した。
「おい、セレナ。離せよ歩きづらい」
「無理無理無理無理!俺を殺すつもりか!殺すぞコラ!」
「何言ってんだお前」
なんてやってると、ユージオが呟いた。
「ねえ……ほんとに、セルカはこんなとこに潜って行ったのかな……」
「そ、そればっかりは間違いないんじゃね?」
俺は言いながら足元を指差した。その先には凍りついた浅い水たまりに足跡とヒビが入っていた。
「確かに間違いないみたいだな……。まったく……無鉄砲というか恐れを知らないというか……」
「別に、何も怖いものなんていないよ。この洞窟に白竜もいないし、それどころかネズミやコウモリの一匹だっていやしないよ」
「霊もいないよね?いないと言えよ。言わなきゃ殺す」
「い、いないよ……?」
もっとハッキリ言えよ、と言おうとしたら妙な音が響いた。
「ヒィッ!」
「おごっ!」
思わずキリトを締め上げてしまった。
「おい……今の、なんだ?」
「さあ……初めて聞くよ、あんな音。……あっ」
「な、なんだよ!なんでもないよね⁉︎何にもないよね⁉︎あったら許さん!世界もお前も俺もすべて許さん!」
「静かに。何か臭わないキリト?」
「………確かに、焦げ臭いな」
なんでこいつらこんなに落ち着いてんだよ……英雄体質かよ。その時だ。きゃああああ……と、断末魔が響いた。
「キャアァァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」
「「静かに‼︎」」
俺の悲鳴も響いた。そして、ユージオとキリトが走り出す。その時だ。前から足音が近付いてきた。
「! な、なんか聞こえるよ……?」
「隠れよう!」
「ていうか帰ろう?」
「お前は黙ってろ」
俺の提案は一蹴され、俺たちは近くの岩に身を潜めた。ドンドン足音は近付いてくる。そして、暗闇の中から現れたのはゴブリンだった。
「な、なんだあいつら……」
「わからない……。とにかく、やり過ごそう……」
キリトとユージオがそう決めた時だ。俺はゴブリンの前に出た。
「あん?テメェか、さっきの悲鳴は」
声をかけられたが無視。
「き、キリト!セレナを助けなきゃ!」
「…………あっ」
「どうしたの?」
「下手に手を出すと俺とユージオが殺される」
「それでもセレナを見殺しにするわけには……!」
「いやいやそうじゃなくて。セレナに俺たちが殺される」
「へっ?」
なんて会話が耳に入った。その時だ。ゴブリンが俺に殴りかかってきた。が、ぬるりと俺は躱す。
「あ?」
「や、ほんとさ……お化けとかさ、そういう類だと思ってさ……ほんとにちょっと、ちびりそうでさ……その正体がこんな顔色の悪いオッさんだったとかお前……」
「何ブツブツ言ってんだテメェ!ぶっ殺……」
「脅かすんじゃねぇよ!」
俺の右ストレートがゴブリンの脂肪まみれの腹に減り込んだ。ゲハッと血を吐き出すゴブリン。だが、負けじと殴ってくるが、躱して脇腹に三発蹴りを入れた。ゴフッと血を吹き出し、壁に突っ込むゴブリン。
「ほんっとになんなんだよ、この世界……なに、人をビビらすのが趣味なの?そんなに殺されたいの?」
俺はブツブツ言いながらゴブリンに迫った。が、ピクリとも動かない。そのゴブリンの鼻の穴にその辺の石を詰め込んだ。
「おい、てめーに、聞いたんだよ。おい」
「ふ、ふごごごご」
で、岩を無理やり詰め込んだ鼻を殴った。
「ふごっ⁉︎」
そのまま気絶したのか、口から泡を吐くゴブリン。
「誰の許可得て寝てんだよハゲ!」
そこに思いっきり蹴りを入れた。
「ゴッファアァッ‼︎」
と、久々のSMプレイをやってると、後ろから声が聞こえた。
「セレナって、どういう子なの……?」
「馴れろ、としか言えないわ俺には」
本当はそのまま50連発くらい顔面に岩をダンクしてやりたかったセレナだったが、セルカが危ないというので仕方なく壁に減り込ませて先へ進んだ。すると、奥にはゴブリンが数匹いた。
「いいか、ユージオ。俺とセレナで前の三匹を体当たりで突破する。体格差があるからこっちが怖気付きさえしなきゃ絶対行ける。その隙にお前は右のかがり火を池に倒すんだ」
「あの……キリト?」
「なんだ?」
「もう、終わってるけど」
「は?」
見れば、ゴブリン全員が両手を上に重ねられ、剣で突き刺されて壁に動きを封じられていた。
「」
「ど、どうしよっか……」
「とにかく、セルカを助けよう」
と、セルカの元へ行くキリトとユージオ。セレナは残り一本の剣を拾うと、軽く素振りを始める。
「さて、久々にソードスキルの練習でもしようかなー。的もいっぱいあるし」
「お、おい……なんなんだテメェは……」
「何勝手にしゃべってんだアル中がァッ‼︎」
怒りに任せてシャープネイルを使うセレナ。その時だ。ソードスキルが発動した。
「!」
予想外の出来事だった。この世界にはソードスキルという概念が存在したのだった。ちなみにゴブリンは一匹死んだ。
「…………マジでか」
思わず呟くセレナ。キリトも呆然とした。
「あっはっはっはっ!スゲェ!オラァ!」
「ゲハァッ!」
「オラァ!」
「グハァッ!」
「オラァアッ‼︎」
「プギャー」
「やめてやへよもう!」
キリトの怒声でなんとか止まるセレナだったが、その頃にはゴブリンは全滅していた。