お気に入りが二百件越えだと!
というか、クーデター理由に無理があるかな?
ネタ
鳳洋=両義「」
「目的は分かったよ。で、動機は?」
鈴谷が問う。その目に普段の色は無く、ただ〝横須賀鎮守府第二特務〟としての眼光で神宮と神通を見据えていた。
「動機、ですか」
「まさかだけど、分からないなんて言わないよね?」
少々渋い顔を見せた神宮に対し、鈴谷は目を細め、神通が僅かに重心を前にずらした。
それに気付いた霧島が直立から、足を肩幅に開いた。
「神通、控えなさい」
「しかし・・・」
「これはこちらの不手際、交渉や謀略は誠実よ?」
「畏まりました」
神通が神宮の背後に下がると、鈴谷の背後に居た霧島も警戒を解いた。
「助かるよ。あ、後さ、助かるついでに、こっちの表示枠を使える様にしてほしいんだよね」
「ええ、構いません。神通」
「はい、では」
言うと神通は懐から取り出した端末を操作する。
すると、鈴谷が手元で操作していた表示枠から、徐々にノイズが消えていき、何時もの画面が鈴谷達の顔前に現れた。
ズーやん¦『では、表示枠復活。さて、今回の裏とか気付いた事ある?』
鉄桶男¦『また、いきなりだね』
鉄桶嫁¦『いや、まあ、そうですね。分かり易い目下の敵としては、斑鳩近衛師団という事ですね。先ずは』
元ヤン¦『んで、主犯は団長の荒谷芳泉』
船長¦『しかし、動機は不明』
邪気目¦『目的もな』
空腹娘¦『あれ? 目的は解ってませんでした?』
にゃしぃ¦『吹雪ちゃん、今回の暗殺は目的じゃなくて、どちらかと言うと手段だよ』
ヒエー¦『艦娘の中でも、随一の実力者の二人が警護する要人を、人間である荒谷が暗殺し、艦娘の不要を世に唱える』
副長¦『かなり、回りくどいやり方ですが、今の厭戦気分が蔓延する世論には効果的とも言えますね』
ほなみん¦『比叡ちゃん、斑鳩近衛師団に艦娘は居る? 若しくは居た?』
磯谷の問いに比叡は表示枠を操作し、斑鳩近衛師団の名簿ファイルを開いた。
暫く、ファイルに目を通した後、比叡は磯谷の問いに返した。
ヒエー¦『過去十年ですが一件だけ、名前不明の隊士が殉職しています』
ほなみん¦『名前分からない? 顔と性別は?』
ヒエー¦『顔と名前は今あるファイルでは分かりませんが、性別なら女性と記載されています』
ほなみん¦『そっか・・・』
鉄桶男¦『磯谷嬢、何か分かったのかね?』
ほなみん¦『いや、分かったというか引っ掛かるというか、多分その女性が鍵かなぁ?』
ズーやん¦『仇討ち?』
邪気目¦『なら、その仇を討てば終わりだ。俺達の権威の失墜だか剥奪だかに、手を出す理由にはならねぇ』
船長¦『その仇が艦娘なら、どうだ?』
木曾の言葉に天龍は目だけを動かし、神宮の横で表示枠を操作する神通を見る。
最近、外部へと配布され始めた表示枠。採用するのが早い。
恐らくだが、近衛全体には浸透はしていないだろう。
近衛師団は血統主義の様なものが蔓延している。どれ程に優れたものであろうと、血筋や経歴が確固たるものが無ければ、それが人であろうと物であろうと採用しない。
一鎮守府の一技術役の艦娘が作ったものを、近衛師団が採用するとは、天龍には思えなかった。
ーー全ては神宮三笠かーー
天龍は恐らく、今回全ての引き金に指を掛けているであろう神宮に目を向けた。
「天龍。如何しました?」
「いや、なにも」
「そうですか」
邪気目¦『艦娘が仇なら、そいつを殺せばいい。まあ、恨み積もって〝艦娘〟自体を憎んでいるなら話は別だが』
元ヤン¦『そういう奴じゃないと?』
邪気目¦『直接の面識は無いがな。艦娘を憎むとか、そんな奴じゃねぇ筈だ』
船長¦『だったらなんで、こんな事を?』
鉄桶男¦『目的が確かじゃないから、はっきりとした事が言えないね』
鉄桶嫁¦『目的が確かじゃないって、艦娘の権威失墜が目的なのでは?』
顎を撫でて眉を寄せる五百蔵に榛名が問うた。
鉄桶男¦『いやさ、確かに今回のターゲットの二人は血筋も家柄もあるし、何かあったら事だという事も理解出来るけど、二人だけ暗殺して急激に世論は変わるものかね』
船長¦『確かにな。叔父貴の言う通りだ』
ヒエー¦『言ってしまえば、社会的権力を持たない子供二人』
副長¦『例え暗殺されても嫌な話、情報規制や操作でどうにでもなる』
ズーやん¦『・・・ヒエー、名簿。今、〝播磨〟に居る斑鳩近衛隊士の』
ヒエー¦『え? あ、はい』
「鈴谷、どうしたよ?」
「うん・・・ もしかしたらさ、かなり厄介かも」
「厄介?」
「動機次第、だけどね」
そう言い、鈴谷は比叡から渡された名簿から、先程から黙したまま、なにも語らない神宮と神通に目を向ける。
「ねぇ、二人共。荒谷は、どうしてクーデターを起こしたの?」
「それは、私達にもはっきりとは言えないのですよ」
「言えない?」
「いくら調べても、確たる情報は出てこず、恐らくはその殉職した女性隊士が関係しているとしか・・・」
鈴谷は頭を抱えた。一応、予想があるが、はっきりとした動機が判れば、そこから崩す事も出来たが、肝心のそれが判らない。
しかし二人の様子を見るに、隠しているという訳ではなさそうだ。本当に判らないのだろう。
「兎に角、情報を整理しようか」
鈴谷は神宮達にも見える様に、表示枠をホワイトボードの様に広げる。
元ヤン¦『先ず、敵は斑鳩近衛師団で、目的は神宮三笠と篁啓生の暗殺による艦娘の権威失墜』
空腹娘¦『しかし、動機はいまいちはっきりせず』
にゃしぃ¦『恐らく、十年前に殉職した女性隊士が関係している?』
船長¦『仇討ちかと思ったが、何か違う』
邪気目¦『オッサン、どうした?』
鉄桶男¦『いやね、名簿見たんだが、薄らぼんやり見えてきたよ』
鉄桶嫁¦『どういう事ですか?』
全員の視線が巨躯に集まる。
五百蔵は額を軽く掻いた。
鉄桶男¦『鈴谷君も気付いたんじゃないかな?』
ズーやん¦『ねぇ、オジサン。これってまさか、本当にそういう事なの?』
鉄桶嫁¦『冬悟さん、これって・・・』
鉄桶男¦『今、〝播磨〟に居る斑鳩近衛隊士は全員、十年前以前から近衛師団に所属している古株で、勿論十年前の殉職した女性隊士の事も知っている筈だ』
そして、と五百蔵は神通にある事を聞いた。
「神通さん、貴女はこの女性隊士を知っていますか?」
「申し訳ありませんが、私は存じ上げません。十年前となると、私が近衛師団に入る前後なので・・・」
「有難う御座います」
「叔父貴、一体どういう事だ?」
「うん、鈴谷君がさっき言っていた様に、今回の件は動機次第でかなり厄介になる」
五百蔵がそこで切り、鈴谷が続ける。
「仮定だけどね、仮に殉職した隊士が艦娘だとするよ? 十年前にその部下を喪った荒谷と師団隊士達、艦娘を憎んでいる訳ではないし、急激な排斥運動を行っている訳でもない」
「名簿を見たんだが、斑鳩近衛師団には女性隊士はその殉職した一人しか居なかった」
「まさかだけどよ、荒谷が、いや、荒谷達がクーデターを起こした理由は・・・!」
摩耶が目を見開いた。
鈴谷が溜め息を吐いた。仮定とは言え、これが理由なのかと、怒りたくもなるが、解る気もする。
実際、横須賀の街でもあるのだ。〝そういった視線〟を受ける事が。
「艦娘の権威を失墜させ、軍事を艦娘が現れる前に戻し、自分達が再び矢面に立つ時代を作る。それが奴等の目的だ」
五百蔵が言うと、一つの表示枠が飛び出してきた。
唖然とする面々が動きを止めて見る。
七面鳥¦『誰か! 誰か居る?!』
行方が知れなかったメンバーの一人の瑞鶴だ。
表示枠はノイズが多かったが、彼女が焦っている事が分かり、戦闘音が聞こえる。
ほなみん¦『どうしたの? 瑞鶴ちゃん』
七面鳥¦『あ! 穂波?! あきつ丸と篁啓生が!』
ほなみん¦『二人がどうしたの?!』
七面鳥¦『うわっちゃ! ちょっと、グラーフ! そのデカ蛇、なんとかしなさいよ!』
瑞鶴の叫びが表示枠越しに響いた瞬間、炸裂と破砕が連続した咆哮が海上都市艦〝播磨〟に轟いた。
七面鳥¦『兎に角! 今は斑鳩近衛師団と戦闘中! あきつ丸と篁啓生が拐われて、グラーフが追い掛けてるけど、あの〝
事態が一斉に動き出した。
次回は少し時間を巻き戻して、瑞鶴達が戦闘に入るまで
そして、あきつ丸が・・・!