バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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はい、バケツのオッサン久々の戦闘です。
いやぁ、何話振りだい?

あ、境界線上のホライゾン十巻発売されてましたね。
皆さん買いました?
私はさっき買ってきました。


対極 配点¦(いつまでだ!?)

五百蔵冬悟は走っていた。元々が巨体だ。一歩の加速で常人の二倍近い距離を稼げる。

だがそれは、他に何も条件が無く、尚且つ妨害が無い場合に限る。

 

「磯谷嬢、そっちに行ったぞ!」

「しつこーい、しーつーこーいー!」

 

緑黒と灰銀の二体の鉄人が、〝播磨〟上層内部にて駆けてくる敵と衝突していた。

鉄と鉄がぶつかり合う重く甲高い音が広い通路に響き、緑黒が壁を粉砕し、敵と共に別の部屋に飛び込んでいく。

 

「・・・硬い!」

「そっちは速いじゃないの!」

 

刃が装甲にぶつかり、破砕していく。

磯谷穂波が駆るストライカー・エウレカは、腕部ブレードを展開、迫る長刀への対抗とする。

 

「仕込み刃か!」

「あぁもう! 速いってば!」

 

刃と刃が互いを削り合う。

 

「ちっ」

 

舌打ちを一つ、斑鳩近衛隊士がストライカー・エウレカから距離を取った。

視覚素子が倒れている仲間を捉える。折れた長刀、砕けた装甲、苦悶の声が聞こえる。

 

「まさか、これ程とはな」

「へへーんだ。逃げ帰るなら今の内だぞぅ?」

 

ふざけた言動とは裏腹に、彼女の構えに隙はない。

良い師か指導者が居るのか、拳は完全には握らず浅く開いて、腰は落とさず視野を広く見ている。

自分達と同じ機殻士として、充分以上に合格点。

斑鳩隊士は腰部の跳躍器(ちょうやくき)に出力を通す。

それに気付いた相手が警戒を強め、構えを半身に近くした。

激音と轟音が近付いているのが聞こえる。

もう一人の相手をしているのは、団長である荒谷芳泉に付き従っている副長に次いで、斑鳩近衛師団では三番目の腕前の男だ。

あの大男が駆る特異な形状の機動殻を仮に仕留め切れずとも、手傷は負わせられる。

 

跳躍器に蒼い焔が灯りノズルを引き絞る。例え、相手の灰銀の機動殻が装甲とパワーに優れていたとしても、直線では最速の斑鳩の機動殻の最大加速を乗せた長刀を、己の技を以て振り抜けば斬れる。

そう思い、全身を前へ傾けた瞬間、船の汽笛に似た轟音を響かせ、緑黒の機動殻が壁を粉砕しながら通路に飛び込んできた。

 

「五百蔵さん?!」

「な・・・!?」

 

壁の破片と混じり、見覚えのある破片が散っていた。

 

「まさか」

 

硬質な音と共に、斑鳩隊士の前に一つの影が放り出されていた。

自分の上役である男だ。見ると、装甲は至る所が破砕され、長刀は根元から捻り折られている。

 

「意外か?」

 

不覚、斑鳩隊士は己の油断を恥じた。

機動力は遥かに劣るとはいえ、明らかに自分達と同じ近接特化の機動殻、それを相手に二歩で済む距離を呆けてしまった。

急ぎ止まっていた跳躍器を再起動、距離を取ろうとするが

 

「逃がすかぁ!」

 

緑黒の機動殻の腕が伸び、こちらの装甲に指が引っ掛かった。そう、引っ掛かっただけだ。その程度、これからの加速で簡単に振りほどける。

隊士はそう思い、加速した筈だった。

 

ーーは?ーー

 

隊士が感じたのは背後への加速Gではなく、前方、緑黒と灰銀が居る方向への浮遊感だった。

何が起きているのか理解出来なかった。自分は確かに背後へ加速した筈なのに、何故宙を舞っている?

その答えはすぐに来た。

鉄鎚の如く硬く重い拳だ。

 

「おおあぁ・・・!」

 

一撃、隊士は理解した。上役の男はこれにやられたのだと。

たった一撃で装甲どころか、それを纏っている身すら砕けていく。こちらの防御が意味を為さない。これは人ではなく、獣のそれだ。

崩れ落ちる視界の中、隊士は未だに手に残っていた長刀を握り直した。狙うは腹部、装甲が薄いであろう放熱口。

緑黒が拳を構えた。腋が空いた。チャンスは一瞬、放熱口の装甲が開く瞬間のみ、隊士は沈んでいく意識の中、自らの持てる全てを放った。

 

「・・・!」

 

手応えは無かった。

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「うひぇぇ、オジサンってばこわー」

 

砕け口を開いた壁から、鈴谷が顔出した。

 

「うはは、オヤジすげぇ」

 

続いて、摩耶が顔を出せば

 

「流石、叔父貴だな」

 

木曾が称賛と共に出る。

 

「そりゃいいんだが、派手にやったなぁ」

「こっちの部屋、凄い事になってますよぅ」

 

天龍と吹雪が周囲を警戒しながら出れば、チェルノ・アルファを纏った五百蔵がゆっくりと振り向く。

 

「手加減出来る相手じゃなかったからねぇ」

 

振り向いたチェルノ・アルファの腹部の放熱口を塞ぐ装甲には僅かな傷があった。

五百蔵は掴んでいる長刀をチェルノ・アルファの握力に任せて捻り折った。

 

「しっかし、この人達強くない?」

「いや、当たり前でしょ。ほなみん」

「近衛師団だ。弱い訳がねえ」

 

磯谷がストライカー・エウレカの装甲から顔を出して嘆息する。

彼女の背後には、倒れた斑鳩隊士が拘束されていた。

 

「吹雪、二人の音は聞こえるか?」

 

摩耶が吹雪に問うが、吹雪はヘッドホンを押さえながら首を横に振る。

 

「無理ですよ。さっきも表層から物凄い音が聞こえて、音が混ざっちゃってて」

「吹雪の耳は、今回は当てに出来ねえか」

 

天龍の言う通りに、今の〝播磨〟は音が入り交じっている。流石の吹雪の耳でも、何れがどの音なのか判別は出来ない。

 

「さて、あきつ丸君達は何処に居ると思う?」

「表層か上層だと思うよ? 中層以下は狭くて機動殻じゃ動き辛いから」

「だとしたら、連中はこの階層に居るって事か」

 

五百蔵の問いに鈴谷が答え、木曾が腰の軍刀を確認しながら言った。

 

「虱潰しに探すか?」

「戦力的に分断はされたくないな。分断のされかたによっちゃ、全滅も有り得る」

「なら、オヤジと穂波を前にして進むか」

「それしか無いかな」

「そうですねって、鉄腕ちゃんどうし・・・!」

 

五百蔵が一番前を行き、磯谷がそれに続く形で歩み出した時、鉄腕ちゃんが突然稼働し悪ガキ隊の裾を掴み、力任せに引っ張り倒した。

 

「なに?! どうしたの?!」

 

一瞬遅れて、磯谷が後ろを確認する為に一歩下がる。

 

「・・・外したか。良い腕前だ。いや、俺が鈍ったのか?」

 

壁から一振りの長刀が伸びていた。

音も無く、刺突跡には罅一つ無く、まるで長刀が通るのが当然と、通路やトンネルの様に口を開けていた。

引き抜かれていく長刀は、丁度ストライカー・エウレカの胸の辺りの高さ、脇腹の装甲と装甲の継ぎ目の辺りを貫いていた。

もしあの時、磯谷が振り向きと共に一歩下がっていなければ、磯谷は串刺しになっていた。

 

「嘘だろ・・・」

 

天龍の頬を冷や汗が太い筋となって流れていく。

引き抜かれた長刀が再度壁を貫き、円弧を描いて壁を斬り裂いていく。一周し、円を結び終えた壁はゆっくりと倒れていく。

吹雪は見た。壁の断面に自分達が写っている。

 

ーーどんな切れ味ですか!ーー

 

見た目は先程の隊士達が振るっていた長刀と変わりはない。だが、明らかにあの長刀の切れ味だけが異常だ。まるで、豆腐でも斬る様に何の抵抗も感じさせず、壁を斬った。

 

「団長」

「・・・お前は先に行け。俺は野暮用がある」

「了解。御武運を」

 

吹雪がはっとして顔を上げ、壁を見た。

高い音が混じって聞き取り辛いが、確かに聞こえた。

くぐもった声だ。

 

「その壁の向こうに二人が居ます!」

 

瞬間、全員が動いた。磯谷が壁に向けて突貫し、吹雪と悪ガキ隊がそれに続く。

火花が散った。

 

「提督!」

「早く行きなさい!」

 

鉄鎚が長刀を弾き火花を散らしていた。

返す二刀目が迫る。これも拳で受ける。鈍く甲高い音が響き、五百蔵が一気に荒谷を押し込んだ。

 

「荒谷芳泉だな?」

「ああ、そうだ。五百蔵冬悟」

 

チェルノ・アルファの拳の握りを確認、握力強化グリップは問題無く、射出用スプリング、テスラコイル共に異常無し。

 

「問おうか。何故、こんなクーデターなんぞ起こした?」

「では、こちらも問おうか」

「なに?」

 

脱力、自然体、機動殻を纏っていても解る程に自然な脱力。群青色の機動殻は両手に長刀を構え、研ぎ澄まされた刃の装甲に僅かな灯りを滑らせた。

 

「何時までだ?」

 

腰部の跳躍器から高い音が五百蔵へ届く。

 

「何時まで、我等はあの小さな背中に凭れ掛かり頼り続ければいい!?」

 

答えろ!

荒谷は咆哮した。

 

「我等は何時まで、あの小さな手に砲火を持たせ続ければいい!?」

 

答えろ、五百蔵冬悟〝提督〟!

荒谷の咆哮に、五百蔵は咄嗟の反応が遅れた。

見れば、荒谷が振るう長刀が眼前に迫っている。

拳も腕も間に合わない。

 

「答えろ、答えてくれ・・・! 我等が持つ力はそれ程に頼り無いのか?!」

 

ならば、五百蔵は全速の前進を以て、荒谷の咆哮に無言を以て応えた。




次回

未定
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