バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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はい、話がね。進まぬ。何時もの事か。

あ、今回は応急修理女神ネタあるよ!


お前は? 配点¦(え? なにが?)

「はぁ! 生きてる?!」

「起きたか」

 

半ば瓦礫と化した廃墟で叫び目を覚まし、飛び起きたのは、瑞鶴だった。

彼女は、早鐘の様に鳴り続ける心臓の音を聞きながら、周囲に目を配る。

箱をひっくり返したみたいに荒れた室内、白い装甲服に傷と埃をまぶしたグラーフ、そして自分。

 

「あ、グラーフ。生きてる?」

「当然だ。死んだら話は出来ん」

「それもそっか」

 

納得する瑞鶴に、グラーフは何故か疑わしげな目を向ける。

 

「なにその目?」

「・・・生まれつきだ」

「いや、いいけどさ。こっから、どうすんの?」

「若様をお救いする。それだけだ」

 

グラーフがライフルと機関銃を手に立ち上がる。

瑞鶴も続くが、立ち上がると視線を下に、自分の下半身へと向け、頭を傾げた。

 

「・・・どうした?」

「ん~、寝違えたかな?」

「この瓦礫で寝れば、寝違えもする」

「なら、もうちょっとマシな場所に寝かせてよ」

 

瑞鶴が軽く腰を回して、新たな弓と矢筒を格納空間から取り出す。

 

ーー腰を寝違えるとか、どんな寝方したのよ?ーー

 

腰から下にかけて、僅かな違和感がある。正座をした時の痺れに似た感覚が、下半身全体に淡く走っていてムズ痒い。

しかし、動けないかと聞かれたら、それは否定出来る。

あくまで、僅かな違和感であって、それも次第に消え始めているのだ。

 

下半身痺れて動けませんでしたテヘペロ。なんて、やらかせば、後で酷い事になるのは目に見えている。

 

兎に角、今はグラーフと共にあきつ丸(正太郎コンプレックス)と、その対象を救出するのが大事。

 

「というか、あてはあるの?」

「あて、は無い。だが、奴は上層区か表層区に居る筈だ」

「機動殻捨てて、生身で行動は?」

「可能性は低いな。艦娘相手に機動殻の力無しに勝てると、自惚れる様な奴ではない」

「となると、アレと戦うのか~」

 

瑞鶴の記憶にある荒谷との戦い、瑞鶴は何も出来なかった。出会い頭の戦いも、不意の遭遇戦も、瑞鶴は何も出来ずにいた。

己との圧倒的なまでの力量差、アレと戦えば死ぬ。

一瞬だが、死を実感した。

 

ーーて、うん?ーー

 

と、そこで瑞鶴は頭を捻った。

荒谷との戦いで、死を感じたのは事実。だが、それともう一つ、何かあった様な気がする。

忘れてはいけない。瑞鶴が〝瑞鶴〟である為に、とても重要な事。

 

ーー先生?ーー

 

はっきりとしないが、自分達の師である鳳洋(おおとり よう)に関係している事の様な気がする。

だが、はっきりと思い出せない。

その様子に、前を行くグラーフが怪訝そうな目を向けてくる。

 

「どうした?」

「いや、うん? まあ、いいか」

「何か、気になる事でもあったか?」

「ん~?」

 

瑞鶴は更に頭を捻った。どうにも思い出せない。思い出したくないというのではなく、思い出せない。

思い出せないのは、どうにもならないので、思考を切り替える。

 

「あ、そうだ。鉄蛇!」

「それなら、我々を消したと思って、次のターゲットへ向かった」

「・・・なら、いいけどさ。二人抱えて逃げてる時には、出会したくないよ?」

「同感だ」

 

海上都市艦〝播磨〟という、限定された空間で、全長数百m級の兵器と世界的にも高練度の部隊に追われながら、自分達と護衛対象の安全を確保する。

言うは簡単だが、行うのは不可能に近い。否、グラーフだけなら、やってのけるだろう。

目の前を行くこの白い女は、それだけの確かな実力がある。

 

ーー正直、私お荷物だねーー

 

だが、瑞鶴にはそれだけの実力は無い。これでも、高い練度を持っているのだが、グラーフのそれは桁が違う。

瑞鶴とあきつ丸、この二人が居なければ、グラーフは問題無く篁啓生を救出してみせる。

 

ーー現実キビシー!ーー

 

気落ちするが、すぐに切り替える。今は無理でも、自分は原初の艦娘鳳洋の教え子なのだ。

無事に帰れたら、訓練時間を増やそう。

瑞鶴はそう考え、グラーフの後に着いていった。

 

「時に、ズイカク」

「なに?」

「お前の装備は横須賀製か? ああ、守秘義務があるなら構わん」

「守秘義務もなにも、私もよく解ってないから、詳しい事は説明出来ないわ。でも、新型よ」

「・・・治療機能もあるのか?」

「簡単な応急措置なら。どうしたの?」

「・・・いや、なに。若様がもしお怪我をとな」

 

首を傾げる瑞鶴に、グラーフは内心で疑いの目を向ける。

瑞鶴が実は敵なのでは、という疑いではない。彼女達の身元については十分以上に調べてある。

横須賀の瑞鶴は、約190cmという高身長を除けば、極一般的な高練度の瑞鶴だと。

だが、グラーフが〝あの瞬間〟に見た光景は、その情報を否定するものだった。

 

ーー消し飛んだ下半身が、装備ごと瞬時に再生する艦娘など、原初の艦娘以外に聞いた事が無いーー

 

瑞鶴、お前は何者なのだ?

グラーフは誰にも聞こえない呟きを、口の中で噛み潰した。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「吹雪ちゃん達、大丈夫かな?」

「心配?」

 

〝播磨〟船内、その中でも最重要区画にある一室に、睦月は神通と神宮三笠の三人が居た。

音や震動が伝わってくる室内で、睦月が漏らした言葉に、呼吸器を着けた神宮がゆっくりと話し掛ける。

 

「え、あ、少し」

「そうよね。私達は彼女達の様に戦えないもの」

 

そう言う神宮の体は、衣服や膝掛けの上からでも分かる程に細い。そして、それは自分の膝から下の足も同じだ。

睦月も神宮も、自分の足で立てない。いや、睦月は杖があれば立てるが、神宮は自分で自分の体を支えられない。

支えるどころか、己を保つ事すら危うい。

だがそれでも、神宮は戦っていると、睦月は思う。

 

「私は神通が居なければ、一日生きる事も出来ない」

「でも、神宮さんは強いよ?」

「私が?」

「だって、神宮さんはこんな危ない場所に、解ってて来てる」

 

睦月は車椅子を回して、神宮に向き直る。今はまだ、肉の残る彼女の顔には驚きがあった。

 

「は、はは、まさか、私が強いだなんて・・・」

「神宮さんは強いよ。私なら、こんな怖い事は出来ない・・・」

「ただ、死にたがりなだけよ」

「違うよ。生きてるよ」

 

死にたがっているという事は、今生きているという事だ。生きていなければ、死ねない。

 

「だって、死にたがってるって事は、生きたがってるって事なんだ」

 

一度死んだ私は解るよ。

睦月は泣きそうな笑みを浮かべて言った。




横須賀

「先生が! 先生が追ってくる!」
「うわああああああ!」
「ああ! 飛竜がやられた!」
「なんであの人、いきなり下半身消し飛んで、テケテケになったの?!」
「知るか!」
「ああ、祥鳳!」
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