今回、ネタがちょっと少ない気がするので
鉄桶男¦『え? なに、これ読むの?』
ほなみん¦『そうですよー』
鉄桶男¦『あー、じゃあ、俺の事どれくらい好き?』
鉄桶嫁¦『いっぱいちゅき!』
鉄桶男¦『あー、榛名さん?』
鉄桶嫁¦『いっぱいちゅき!』
ほなみん¦『イエア』
磯谷は駆けた。
ストライカー・エウレカは改修に改修を重ね、建造当時とは比較にならない性能に至った。
しかし、それでも追い付けない。
機体性能は勝っている。それだけの自負と信頼がある。
このストライカー・エウレカの元になっているのは、金剛から譲り受け、受け継いだものだ。そう、敗ける訳が無い。
機動殻の性能の違い。それが如実に現れている。
「くあー! 降りてこーい!」
ストライカー・エウレカは、飛べない。というよりは、イェーガーの設計自体に飛行や跳躍といった考えが無い。
と言っても、跳躍は出来るし、まったく飛べないという訳でもない。磯谷はイェーガーでの飛行の経験がある。
だがあれは、横須賀鎮守府工厰のデリッククレーンによって打ち出されたものだ。
「ぬあー! もー鬱陶しい!」
先程から、こちらの装甲に傷を付けてくる斑鳩の機動殻は違う。
自分で跳躍し、短時間なら低空飛行が出来る。
二本の足で加速しなければならないイェーガーとは違い、瞬時に加速と停止を行い、磯谷を翻弄する。
「うなー!」
意味の無い叫びを上げる磯谷、装甲と出力はこちらが遥かに上だ。クリーンヒットすれば、一発で沈められる。
だが、それが出来ない。
「当たれ!」
唸りを上げる鉄拳が、飛来する鎧を掠める。だがそれだけで、拳は潜り抜けられ、抜けられ様に長刀が装甲を削る。
一瞬に火花が散り、甲高い擦過音が響く。
「あーもー! また繰り返し?!」
頬当ての内、己の顔が歪むのをはっきりと感じ取れる。
特殊鋼を成形するではなく、一から鍛造して打ち出した長刀、それを用いた己の技、その一撃がなんら意味を成していない。
斑鳩隊士は吐き捨てたかった。
幾ら技を体を心を、精練し研鑽しようと、技術の進歩と他を圧倒する力の前では無力でしかない。
十年、十年だ。あの日から十年の月日を生き、鍛え上げ練り上げ精練し研鑽し今に至った。
恐らくではなく確実に、自分の絶頂は今だ。
後は老い衰えていくだけ、そう今が自分の絶頂なのだ。
それなのに
「通用せんか・・・」
「喋った!?」
「人間だからな、喋りもする」
どうにも気の抜けた小娘が纏う機動殻に、まともな損傷を与えられない。
自分の十年はこの程度だったのか。
若しくは、団長である荒谷なら、あの機動殻を両断せしめるだろうか。
「否」
「へ?」
当然、斬り伏せる。荒谷芳泉に斬れないものは、宿毛に座す世界最硬の存在のみだ。
アレは斬る斬らない以前の問題だ。荒谷の技を以てしても、その身に傷を付ける事が出来れば、奇跡が起きたとしか言いようがない。
だが、嘗ての戦場では、それが当たり前だったと聞く。
今、副団長を追っている少女達の祖先は皆、その様な戦場に身を置き、世界を救った。
そして、現代でもそれは続いている。
「問う。貴様は提督だったな?」
「そうさ、私は横須賀鎮守府の磯谷穂波だよ」
「艦娘を、どう見ている?」
「え? 良い子達・・・!」
動作は咄嗟だった。
磯谷は卓越した反射神経を以て、唐竹に振り下ろされた長刀に反応、腕部装甲で受け流す。
衝撃で二、三歩鑪を踏み下がり、ダメージを確認。
装甲が割れる事は無かったが、衝撃で腕に痺れが僅かに残っている。
「いやいや、いきなりなにさ?!」
拳の握りを再確認し、勤めて平静を装い問う。
だが、装甲の内には冷や汗が、肌を伝って滑り落ちていくのが分かる。
「良い子達、そう言ったか」
「言ったさ、あの子達は皆良い子達だよ」
「ならば・・・」
一度言葉を切り、隊士は磯谷の懐へと肉薄する。
斑鳩機動殻の加速性能による強引な加速は、隊士の体に確実な負荷を刻み付ける。
空気を焼き、切り裂く音と共に隊士は長刀を二刀、縦横無尽に振るい叫ぶ。
「ならば何故! その娘達を鉄火場に立たせる!」
人間の技と機動殻の力と速度で振るわれる長刀は、火花を散らし擦過音を重ねる。
「戦う力を持ちながら、年端のいかぬ娘達が鉄火場に向かう姿を見るしか出来ない者の気持ちが解るか!」
連なり重なる。風切り音と擦過音が絶え間なく続き、ストライカー・エウレカの装甲を削る。
火花が目映い閃光となり、視界を遮る。だが、それは肉眼での話であり、機動殻の視覚素子は光量を即座に調整し、変わらぬ視界を確保する。
「その少女達が、血を流す様を見るしか出来ない者の気持ちが解るか!」
長刀から痺れに似た振動が伝わる。刀身と芯が激突の衝撃から、ズレ始めていた。
近年、近衛師団の装備は儀礼用の意味合いが強くなり始めている。そしてそれは、近衛師団が戦いから離れつつあるという事を意味している。
荒谷や側近級の装備はいまだに第一線での長時間無補給戦闘に耐えうるだろう。
だが、隊士は腕利きだが一般隊士でしかなく、その装備の質は儀礼用に近くなっている。
その長刀の刃が通らない硬度を持つ相手に、今まで絶え間なく振るっていたのだ。
よく保った方だと、隊士は右の長刀を横薙ぎに薙いだ。
「くっ・・・!」
だがそれは、迎撃の鉄拳により砕かれた。
「だったら、話をしたの?!」
「なにを?!」
「艦娘の皆と話はしたのかって聞いてんだ!」
連続した鉄拳が装甲を砕き、隊士の身を打つ。
浴びせる様な長刀の一撃を避け、返す刀で脇腹をかち上げる。
装甲が砕け、機体を支えるフレームが露になる。
「あの子達と話をして、それでそう言ってんのか?!」
「その様な機会があると?!」
「ふざけんな、バーカ!」
残る長刀も砕かれた。だが、隊士は刃となる残った装甲を用いて抗う。
装備の大半を失い、機体も半壊、しかしそれでも、斑鳩近衛隊士の技は曇らず、ストライカー・エウレカに肉薄する。
「ふざけるなだと?」
「あの子達が選んだ道に、話もせず、見もしようとしない奴等が生意気言ってんな!」
「ならば、貴様はそうだと?!」
「当然だ! バッキャロー!」
甲高い砕音が響き、最後の刃が砕かれた。
残るは跳躍器を暴走させての自爆だが、既に跳躍器からの反応が無い。
「あの子達が選んで、あの子達が進んだ道だ。私達はそれを支えて一緒に進むだけだ」
「それで、失わぬと?」
「失わない為に、一緒に進むんだ。私を支えてくれる皆の為に、私は皆を支えるんだ」
「そうか・・・」
隊士は薄れゆく意識の中で、十年前のあの日を思い出す。
あの日、〝彼女〟と共に居れば、もしかしたのだろうか。
ーー団長、後は頼みますーー
荒谷芳泉の隣に立っていた、苛烈で狼の様に気高かった〝彼女〟。その顔を瞼に浮かべ、隊士の意識は闇に落ちた。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「これが鉄蛇、〝竜砲〟まで積んでいるとは」
「冬悟さん、ご無事で?!」
「ああ、なんとか。だが、マズイよこれ」
「ここまでして、止まりませんか!」
巨大な鉄の大蛇がうねり、唸りを上げて〝播磨〟表層部を薙ぐ。
しかしその身は、既に満身創痍であり、装甲の割れたいたる所から黒煙を噴いていた。
七面鳥¦『ちょっとヤバイって! 鉄蛇止まんない!』
副長¦『区画を抜けませんか?』
グラタン¦『無理だ。丁度船体フレームの直上を走っている』
ヒエー¦『頭撃ち砕いたのはマズかった様ですね』
鉄桶男¦『だが、ああでもしないと、俺ら全員やられていた』
鉄桶嫁¦『索敵システムが体温でも音波でもない、まさかの嗅覚探査。頭部の空気吸入口を潰さないと、私達は狙い撃ちでした』
七面鳥¦『てか、ヤバイってば! ・・・あいつ、どこ行ってんの?』
瑞鶴の言葉に全員が鉄蛇を見る。
何かおかしい。暴れているが、その進行ルートは真っ直ぐだ。
ほなみん¦『え?! ちょっ、やば!』
ヒエー¦『司令?!』
ほなみん¦『だ、大丈夫、生きてる。ちょっと、崩落に巻き込まれて、上層部まで落ちたけど』
ヒエー¦『そうですか・・・』
ほなみん¦『というか、鉄蛇! 皆が二人を追っ掛けて行った方角に突き進んでる!』
鉄桶男¦『それを早く言え!』
五百蔵が駆けるが、チェルノ・アルファの加速力は低い。と言っても、全長百メートルの大蛇に追い付ける速度の持ち主は、今ここには居ない。
「くそ・・・!」
「冬悟さん」
装甲内で歯噛みする五百蔵、その彼の顔前に一つの表示枠が現れた。
七面鳥¦『私にいい考えがある』
頭上にエンジン音を聞きながら、嫌な予感がすると、五百蔵は嫌な冷や汗をかいた。
意味の無い、あきつ丸ラブストーリー以後の煽り予告
「いたら、あれやにゃ。朝潮、この吹雪と喧嘩しいや」
「へ?」
突如始まる、北海吹雪VS宿毛朝潮
「アタシの歌を聴きなぁ!」
「そのシャウトは卑怯だよ!」
横須賀悪ガキ隊VS舞風の対バン
そして
「これは・・・!」
「さよなら、洋。僕の勝ちだ」
不死の鳳が時雨に散る。
まあ、あれだよ。覚えてたら、こんな流れかな?