同志、同志は居ないのかね……?!!
台本形式みたいなタグ、要るかな?
さて、どうしたものか。
磯谷は眼前に広がる資料に、頭を悩ませた。
ズーやん¦『さて、ふぶっちの力とやらについて考えるのと、こっからの事を話そう』
船長¦『まずどっちだ?』
邪気目¦『吹雪についてだろ。謎が多すぎる』
元ヤン¦『だよなぁ……、一体、吹雪の力ってのは何なんだ?』
邪気目¦『分からん。というか、情報が少なすぎる』
表示枠を横目に捲る資料には、金剛や洋から送ってもらった第一世代艦娘に関する事が記述されている。
――科学よりオカルトの塊――
第一世代艦娘は宿毛の大和を除き、ほぼ全てが鳳洋からの分化とあった。洋との関連性や個体による同一性は皆無で、存在としての特異性のみを抽出し形にした。
……意味が解らない。
磯谷は頭を抱えた。第一世代の特異性については、金剛と洋から聞いている。だが、それでも納得が出来ない。
元ヤン¦『まず、吹雪は鳳様の系譜だって事だ』
邪気目¦『そして、それが問題なんだよなあ』
船長¦『不死性、攻撃性、多様性、単一戦闘能力、集団戦闘能力、その他諸々、吹雪に欠片でも引き継がれてるか?』
ズーやん¦『そこ、鳳様の能力って何?』
元ヤン¦『あ? だから今木曾が言ってたやつだろ』
ズーやん¦『摩耶、違う。もっと正確に言うと〝どれ〝?』
邪気目¦『はあ? いやだから……』
ズーやん¦『天龍、ふぶっちは一体〝どれ〟を引き継いだの? いや、引き継ぐの?』
元ヤン¦『落ち着け。鳳様の能力が全部引っ括めて、そうだって可能性があるだろ』
ズーやん¦『だとしたら、ふぶっちはどうなる? 鳳様のそれを一部でも引き継ぐとなったら……』
船長¦『最悪、保たん』
剣呑な雰囲気の表示枠、だがそれはこちらも同じだ。
第一世代が洋から派生した、それは知っていた。だがそれを、深く考えてこなかった。
鳳洋から全ての艦娘は始まった。だとするなら、鳳洋は何処から始まった。
そして、その直系の系譜とされる吹雪は、何処に繋がる。
一瞬、背筋に冷たいものが差し込んだ。全ての艦娘の始まりが洋なら、彼女はこの世界の艦娘という存在の根源、そう言える存在だ。
なら、彼女に繋がるという事は、根源に繋がるという事だ。
そしてそれは、弱い一生命がしていい事ではない。
ズーやん¦『保たない。例え、保ったとしても、ふぶっちがふぶっちでなくなる可能性がある』
邪気目¦『情報の上書きか。木曾、改二になる時どうだったよ?』
船長¦『俺の場合はそこまでじゃねえな。どっちかって言うと、艤装の改装の意味合いが強かったしな』
元ヤン¦『アタシもだな』
嘗て、第一世代艦娘建造技術が失われてから、まだそう経っていない時期、不安定な改装技術で艦娘に更なる強化を加えようとして、情報の質や量により、元々持っていた技能や装備が使用できなくなったり、本来の人格がまるで別人の様に、上書きされてしまうという事態が多発していた。
今となっては、そういった事故に対する対処や処置も確立され、例え起きたとしても大事には至らない。
だが嘗てはあったのだ。
邪気目¦『睦月の事件も、その対処の穴を抜いて起きてるからな』
元ヤン¦『なら、このまま朝潮と訓練を続けさせるのはマズイか?』
船長¦『いや、寧ろ訓練自体は続けさせた方がいい。同じ第三世代の理不尽さに触れれば、何かしらのものを見付けるかもしれん』
ズーやん¦『でもそれで……』
鉄桶嫁¦『大丈夫ですよ』
表示枠が別で立ち上がり、柔い笑みを浮かべた榛名が映っていた。
鉄桶嫁¦『吹雪ちゃんは大丈夫です』
ズーやん¦『榛にゃん、何が大丈夫なのさ?』
鉄桶嫁¦『あの子が自分を見失う訳がありません。だって、あの子はまだ見失うものを見付けられていません』
元ヤン¦『いや言うがよ、心配じゃねえのか?』
摩耶が問うと、柔い笑みを崩さずに榛名は続ける。
鉄桶嫁¦『何にせよ、何時かは自分の足で歩いていかなくてはなりません。それに、そんなに危険ならば鳳様や御姉様、冬悟さんが止める筈です』
ズーやん¦『オジサンも気付いてないかもしれないよ』
鉄桶嫁¦『それでも大丈夫です。二人は何時だってちゃんと帰ってきますから』
はっきりと榛名は言い切った。鈴谷は第二特務、大事な事であるなら、それだけ感情で判断する訳にはいかない。榛名も横須賀の元第一特務だ。役職者の役割については、理解している。
鉄桶嫁¦『それに、私も待つだけじゃないんですよ? 何かあったら、迎えに行きますし、ひっぱたいてでも連れて帰ります』
邪気目¦『わーお』
元ヤン¦『待つだけの女はやめたか。こりゃ、オヤジも大変だ』
鉄桶嫁¦『な、何がですか?! 待つだけの女は嫌かって、摩耶さんが言った事ですよ!』
元ヤン¦『そうだったか?』
ケラケラと摩耶の笑い声が響く。
先程までの剣呑とした雰囲気が嘘の様だと、磯谷が資料をテーブルに置くと、小さい溜め息が聞こえた。
ズーやん¦『……取り合えず、今はふぶっちの力については置こうか。……榛にゃん、任せたよ』
鉄桶嫁¦『はい、任せてください』
取り合えず話は帰着した様だ。磯谷は表示枠のページを切り替えて、お気に入りのサイトの巡回に入る。
――〝エスペラント語の創始者はザーメンホーフ(本当)〟か――
お気に入りのメーカーのサイトにある、新商品一覧に並ぶタイトルを読み上げる。
「キャッチコピーは〝世界征服だ!〟か。やっぱりあれかな? 豊富なのかな? それにこっちは〝留年生〟でキャッチコピーは〝堕ちるがいい!〟、これ一部の人の心に突き刺さるんじゃないかな」
ほぼ休暇同然とは言え、職務時間中にエロゲの物色を開始する磯谷、ページをスクロールし、更に一覧を読み込むと、あるタイトルで目が止まった。
「〝美代子の傘〟、このタイトルからどうして、主人公がアレキサンダー大王になるんだろ?」
「それなら、隠された血筋が覚醒してなるらしいですよ」
「へえ、そうなんだ。……って、え?」
「ご休憩中でしたかね?」
「ああ、五十嵐さん。吃驚させないでくださいよ」
磯谷が顔を上げると、顔の左半分を覆い隠す傷のある細身の男がそこにいた。
宿毛泊地提督〝
「ああ、破壊された
「わーい、重要情報がポロッと出てきた。五十嵐さんったらお茶目さん……!」
「ははは、後、回収ついでに補給もと、佐世保の夕立も来てますよ」
はて、今このイケメンは何と言った。破壊された鉄蛇の回収に、佐世保鎮守府を指揮する龍造寺が来た。かなり重要な情報だが、機竜建造の家系である龍造寺が来た事は想定内なので、この際は置いておく。
問題はその次、佐世保の夕立が補給に来たと言った。佐世保の夕立、第三世代の夕立、つまり今この宿毛泊地に第三世代が三人居るという事になる。
「は、え? 佐世保の夕立……?!」
「ええ、確り件の艤装も背負ってましたね」
「こ、この誘い受けー!!」
磯谷は叫んで走り出した。このタイミングで接触は避けたい。
呉で起きた事件、そう吹雪が睦月を撃った事件。あの事件の日、吹雪は暴走する睦月を撃ち、夕立はそれを目撃した。
そして、もしやすると夕立は事件の概要を知らずに、佐世保鎮守府に配置された可能性がある。
「ま、間に合え……!」
つまり、友を撃ち殺した友と、撃ち殺された筈の友が、ここには存在する。
格納空間に納まっているストライカー・エウレカを、万が一の為に半起動状態にし、リハビリをしている筈の睦月に連絡を入れる。
ほなみん¦『睦月ちゃーん!』
にゃしぃ¦『え? 何? 何ですか?!』
副長¦『どうかしましたか?』
ほなみん¦『今何処に居るの?! 港?!』
にゃしぃ¦『あ、うん。〝播磨〟に大きい船が着いてて、それを見てたよ。……あ、ボートから誰か降りてきたよ』
ほなみん¦『うわぁぁぁぁぁぁっ!』
手近の窓から飛び出すと同時に、ストライカー・エウレカを装着、まだ破損はあるが強引に加速した。
三雄揃い踏み?