バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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何をやっていたんだろうか。


そして君の手を取り

ズーやん¦『では、なぜなに鈴谷さんのコーナー!』

 

 

イエーイ! 

やけに上機嫌な鈴谷の合図で、五百蔵の開く表示枠が賑やかになっていく。

 

 

元ヤン¦『んで、今日のお題は?』

船長¦『あれだろ、佐世保の連中』

邪気目¦『というより、佐世保の夕立だな』

副長¦『確実に何かありましたね』

ズーやん¦『でも、それは私達が探る事じゃないよ』

 

 

夕立の過去に、吹雪と睦月の二人の、事件が関わっている事は、誰が見ても明らかだ。だがそれは、あの三人だけのもので、自分達が進んで暴くものではない。

 

 

ズーやん¦『それはふぶっちやムッキーが話す事だからね。いい、キソー?』

船長¦『え、なんで俺?』

邪気目¦『そうだぞ木曾』

元ヤン¦『そういうとこだぞ木曾』

船長¦『は? いや何が?』

副長¦『そうですよ、木曾』

船長¦『副長まで?! いやマジで何なんだよ?!』

半死半生¦『成る程、そうなのね』

神従者¦『その様で』

船長¦『待ってくれ! 何? 何が進んでんだ?!』

グラタン¦『それが分からないから、ダメなのではないか?』

 

 

何やら明後日の方角に進み始めた表示枠を、一旦脇に置いて、五百蔵は正面に向き直る。

正面には、佐世保鎮守府副長である龍驤と、後頭部にコブを作り眠る夕立が、龍驤の拘束符です巻きにされ、そして五百蔵の隣に磯谷、その中央の席には中立として荒谷が座っている。

 

「此方としてやけど、事を構えようとか、そんな気は無いですわな」

「まあそれは、そうだよね」

「せやねん。ウチらみたいな弱小鎮守府、旦那方に食って掛かったら、見る間もなく消し飛びますわ」

「ははは、まさかそんな……」

 

五百蔵が止まった。無い、とは言い切れなかった。五百蔵率いる北海鎮守府はそうでもないが、磯谷率いる横須賀鎮守府と、とある個人は違う。

やりかねない、そんな人材が揃いに揃いきっている。というより、とある個人だけで十分過ぎる。

 

「いや、まさかそんな……」

「いや、そんな深刻な顔せんでも……」

「話を進めんのか」

 

中立の立場にある荒谷が、一向に進まない内容に、早く進めろと急かす。しかし、急かしたはいいが、この会談は下手をすれば、実に厄介な事に繋がりかねない。

今回、他鎮守府所属の艦娘が、任務中に協力関係にある他鎮守府所属の艦娘に対し、他鎮守府内で傷害を行おうとした。

実際は少々違うが、簡単に纏めればそうだ。他鎮守府内で、所属外の艦娘が無許可に、戦闘行為を行おうとした。実権は当鎮守府である宿毛泊地だが、責任者である五十嵐と総長兼副長の大和からは、この件は好きにしろと、責任放棄とも取れる発言があった。

 

「と、取り敢えず、こちらとしても、実害は無く、事を荒げる気はないので」

「いや、そう言うてくれるのは嬉しいねんけど、粗相したんは事実やから……」

 

 

――うわぁ、嫌だなぁ……

 

 

夕立のしくじりを、ただのしくじりで終わらせるのではなく、こちらに対する次へのパイプ代わりにしようとしているのか。

磯谷個人的には、龍驤のやり方は嫌いではない。だが、やり方が些かあからさま過ぎる。定石なら、もう少し回りくどくても、謝罪を挟んでから、繋がりを築くべきだ。

龍驤側から差し出せるものは、その謝罪だけであり、仮に他を差し出されても、五百蔵側はその対処に困る。

 

「しかし、実害は無いし、行動も未遂。それに鎮守府責任者二人から、事実上の黙認もされている。この件に関しては、これで手打ちとしましょう」

「いや、でも……」

「手打ちにしましょう」

 

五百蔵が、にこやかに話を打ち切りに入った。五百蔵としては、確かにいきなりの行動に驚きはしたが、結果それだけであり、言ってしまえば何も起きていないに等しい。

これ以上、龍驤にごねられて、何か条件を引き出されても厄介だ。

 

「色々言いましたが、結果としては何も起きていないののです。何も無かった。それでいいじゃないですか」

 

何が目的なのか。北海に繋ぎを得ても、そこから得られるものは無いに等しい。唯一と言えるのが、全鎮守府中最大の工廠を備える横須賀鎮守府と、埒外の幸運を持つ金剛との橋渡し役だろう。まさか、あの鳳洋との繋がりを求めているとは思えない。

 

「はぁ……、敵わんなぁ。でも、そっちがそう言うてくれるなら、そういう風にしときましょ」

 

何か違和感、の様なものがあった。いや、ここで龍驤が引き下がるのは、まったく自然な流れだ。

しかし、何か違和感がある。噛み合っているのに、何処かズレた様な、掴み所の無い霞の様な異質感。

五百蔵は磯谷に目をやるが、彼女も何か戸惑いがある。龍驤が大人しく引き下がった事に、何の問題も無い。

 

「ほな、ウチらはさっさと作業済ませて帰りますわ。宅の娘さんには、宜しゅう言うとってくださいな」

「は、はあ」

 

何だろうか、やけに早く引き下がる。五百蔵達が、内心で首を傾げていると、部屋の外から騒々しい足音が近付いてきた。

足音の主は、喧しく部屋の前で止まると、これまた勢いよく扉を開け放った。

 

「よし、必殺鈴谷マン到着……! さあ、話をしようじゃんか!」

 

息を切らし、飛び込む様にして、部屋に入ってきた鈴谷。二度三度、大きく息をして呼吸を整え、驚き身を引いた龍驤に改めて向き直る。

 

「中々、舐めた真似してくれるじゃん」

「いやー、何の事か解らんわー。ウチ、これから忙しいんで、通してや。……横須賀第二特務鈴谷」 

「いやいやー、鈴谷さんは今から仕事で忙しくなるんでー。ね、佐世保副長龍驤」

 

一気に空気が張り詰める。状況に着いていけていない五百蔵と磯谷が顔を見合せ、元より中立の立場を崩す気が無いのか、興味無さげに席に着いたままの荒谷。

その三人を他所に、鈴谷と龍驤が距離を詰めていく。

 

「忙しくなるて、第二特務だけなん? 他の特務は?」

「あっはは、私だけで十分だって話、分かる?」

 

表情だけは、にこやかやに進めてはいるが、発される言葉や空気は険悪そのものだ。

 

「仮にも第二特務が、副長に意見かいな」

「第二特務は第二特務でも、私は横須賀鎮守府の第二特務。言ってる意味解る? 佐世保なんて、吹けば飛ぶ様な零細弱小鎮守府の副長が、まさか話になると思ってんの?」

 

何か決定的なものが割れた、そんな音がした。

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