バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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話が進まぬ……


そして呼ぼう

しかし、何がどうしたのか。五百蔵は睨み合う二人、鈴谷と龍驤を眺めながら、表示枠を開く。

 

 

鉄桶男¦『これ、何が起きてるの?』

鉄桶嫁¦『鈴谷さんが、第二特務として動いたという事は、そういう事だと』

副長¦『しかし、一体何を?』

邪気目¦『普通に考えるなら、横須賀と北海の共通利益を見付けただが、これはちょっと違うな』

船長¦『なら、なんで鈴谷が第二特務として動いたんだ?』

元ヤン¦『ん~、何と言うか、あれだな。ガキの喧嘩というか言い掛かりと言うか、まあそんな感じの奴』

七面鳥¦『えっと、どういう事?』

 

 

瑞鶴の疑問もだが、今は現状も少し謎だ。五百蔵は表示枠の流れを眺めながら、思案する。

佐世保鎮守府が大破した鉄蛇(ティシェ)の回収に来たのは、事前に三笠の手引きがあり、そういった流れであの騒動に導入されたからだ。

だが、何故その回収に、副長に第一特務といった役職者が出張り、佐世保鎮守府の第一特務である夕立が、何故こちらに敵対とも取れる行動を取ったのか。

 

 

――ひょっとしなくても……――

 

 

これは過去だ。吹雪、睦月、夕立。この三人の過去が全ての始まりであり、決着でもある。

あの時の夕立から、敵意や害意という感情が、そこまで強く感じなかったのも、そこに理由がある筈だ。

だが、これは夕立に対する憶測だ。今現在、目の前で起きているのは、鈴谷と龍驤の事だ。

 

 

元ヤン¦『実際の所、今回のこれに関しては、龍驤の言動から推察して、ちょっと吹っ掛けにいった感じだな』

七面鳥¦『それだと、こっちが悪くならない?』

グラタン¦『よくは分からんが、実はそうではないという事だろう』

元ヤン¦『いや、これがなぁ……。何と言うか、マジでビミョーなもんでな?』

蜻蛉玉¦『一体何があったであります?』

邪気目¦『あ? おぉ? えー、まさか嘘だろ?』

船長¦『どうした? バカみたいだぞ』

邪気目¦『いやだってよ、これが仮にも副長のやる事か?』

元ヤン¦『嫌がらせというか、見栄だろ?』

船長¦『嫌がらせって、……おーい』

鉄桶男¦『しかし、だとすると、かなりだね』

鉄桶嫁¦『というかこれ、役職者がする事ですかね?』

ほなみん¦『佐世保鎮守府の副長だから、動く案件かな?』

邪気目¦『どういう意味だよ? 仮にも副長が、こんな子供じみた真似するか?』

ほなみん¦『かなりグレー判定だけど、横須賀と佐世保この二つの鎮守府の関係と、現実の状況含めて成り立つ式が、実はあったりするんだよ。つか、気付けよ私さー』

 

 

「えっと、これってどういう意味なんですか?」

 

啓生は別室にて、表示枠からの中継を見ながら、隣に座るあきつ丸に問う。

五百蔵達が会談していて、龍驤の勢いが急に増し、何かあると啓生が感じたら、急に龍驤が会談の切り上げに乗ってきた。

途中からだが、啓生が得た情報はこれだけであり、何故に鈴谷が第二特務の立場を持ち出してきたのか。それが理解出来ずにいた。

 

「ふむ、啓生殿。現状の情報のみで判断して、どちらに非があると考えるでありますかな?」

「どっちにって、横須賀、……という話ではないんですよね」

 

問いに、考えを巡らせる啓生殿は、誠に愛らしいものでありますな……!

夕石屋に賄賂を握らせ、無音設定を組み入れた表示枠で、思案に集中する啓生の様子を撮影しながら、先の会話の流れを整理する。

 

 

――いやはや、なんとも浅ましい――

 

 

やはり、愛を知らぬ者はいけない。しかし、この浅ましさが、愛を知る故にであるなら、健気を通り越えて滑稽とも言える。

 

「今回の会談、発端は佐世保鎮守府第一特務の夕立が、突然行った凶行未遂」

「正解であります」

「そして、今回の会談はそれに対する佐世保の謝罪と、それに伴う賠償の決定。でも……」

「そう、五百蔵殿が切ってしまった」

 

そこに付け入った。というより、そうなる様に話を向けていた。下手な駆け引き、やけに下手に出る態度、あれら全ては、五百蔵達に警戒を抱かせ、話を早く切り上げさせる為。

 

「しかし、五百蔵さんを責められません。言ってしまえば、今回は横須賀より北海の案件。つまり、彼は損や利より、話が無くなる方向に舵を切った」

「そう仕向けたのは、あの龍驤でありますが、実質被害が出ていない以上、下手に欲を出すよりは、そちらが正解でありましょう」

 

しかし、その場に横須賀鎮守府提督である磯谷が居た。

これと、横須賀鎮守府と北海鎮守府の関係、そして横須賀鎮守府と佐世保鎮守府、両鎮守府の間に横たわる確執にも似たしがらみ。

これらが複雑に絡み合い、今の状況を作り出している。

 

 

――しかし、気になるのは夕立であります――

 

 

仮にも実働の第一特務、副長級とは言え、純粋な戦闘系ではない龍驤の打撃符一枚の打撃で、昏倒したままとは考え難い。

もしそうだとするなら、よほどいい角度で入ったか、夕立自身の耐久力がそれほどでもないか。もしくは、まだ眠ったふりをしていて、牙を剥く瞬間を虎視眈々と待っているか。

どちらにせよ、夕立が起きる前に話を片付け、宿毛から出すべきだ。

 

「だけど、分からない事があります」

「なんでありましょう?」

「何故、龍驤はこんな事をしたのでしょう? はっきり言って、副長のやる事ではないような……」

「……啓生殿は、戦史の方は得意でありますかな?」

「戦史、ですか? まあ、それなりには」

「話は簡単で、しかし複雑。そして、いまだに根が残る。そういう話なのであります」

 

 

――何を今更と、そう言えるでありますが、しかしあれが今の始まりでもありますからなあ……――

 

 

百余年前の事柄を、よくもまあ引き摺れるものだ。

 

 

鉄桶男¦『いや、まさかね。全然気付かなかった』

鉄桶嫁¦『何か違和感がありましたが、肝心の言葉を放っていなかったとは……』

鉄桶男¦『俺の失敗だね、これは』

船長¦『いや、叔父貴の失敗というより、龍驤の手腕だ』

邪気目¦『ログ見たけどよ、やっぱりはっきりとは言ってねえな』

元ヤン¦『雰囲気や仕草、言葉と話の運び方が、全体をぼやかして把握しにくくなってんな』

七面鳥¦『うわ、穂波なんで気付かなかったの?』

ほなみん¦『うっせー! 油断してたの! 要求するものも無いし、疲れてるしでさっさと終わらしたかったの!』

グラタン¦『切実だな』

 

 

「嫌やわぁ、ウチも第二特務と言えど、構ったれる程暇やないねん」

「いやいや、そんな事言わないでさ。もうちょっと話しようよ」

「あかんわぁ、ウチ一人やったらええけど、このやらかしたアホ犬連れて帰らなあかんねん」

「え~、折角のいい話があるのに?」

「是非聞きたいけどな~、ウチんとこ役職者少ないから、ウチ一人で回しとんねん」

「ふーん、……じゃあ、機竜の話はいっか」

 

鈴谷がそう言った瞬間、龍驤の雰囲気が、がらりと変わった。

煙の様なのらくらとした雰囲気から、得体の知れない、何が出てくるか解らない影の様な変化に、目を閉じたまま動かなかった荒谷が、閉じていた目を開けた。

 

「……因みに、どんな話やろか?」

「うん? 忙しいんじゃなかった?」

「前言撤回や」

「じゃ、話再開しよっか」

「……ええで」

 

袖から拘束符を取り出し、夕立のす巻きを更に厚く固める。これだけ固めれば、例え起きても、すぐには動けない。

まだ佐世保の機竜は完成には程遠い。だから、多少危険な橋を渡ってでも、その残滓が残る鉄蛇が必要だった。

だがそれでも、それでも足りない。

 

 

――すまんな、司令官。ちっと無理するで――

 

 

きっと、そこまでは望んでないと、彼女はそう言うだろうが、同じ苦悩を知っている身だ。水臭い事は無しにしてほしい。

 

「さあ、話してもらおか。ウチらの望む話を」

 

龍驤はそう言って、薄く笑む鈴谷を見据えた。




次回は吹雪?視点かな
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