バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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初見の読者を置いていき、お気に入りと評価を下げていくスタイル。

あ、実写版アンパン◯マンは、ジャム◯おじさん役は、ドウェ◯ン・ジョンソンで決まりだよね?

あ、〝神々のいない星で〟下巻。出てるから皆買おう!
主成分の九割は〝先輩最高です!〟


共に行こうと

吹雪が目を開けると、そこは夜だった。

いや、実際に夜ではない。そうとしか言い表せない、塗り潰された暗闇があり、頭上には月の様に丸い空白が、ぽっかりと口を開けている。

 

「あー」

 

身を起こせば、水音と水の手応えがある。どうやら、下は水が満ちている様だ。しかし、濡れた感覚は無く、それよりも馴染む感じが強い。

しかし、明かりらしい明かりが無いのに、はっきりと周囲を視認出来るのは何故か。

頭上の月の様な空白は違う。あれは開いているだけで、光源にはならない。

はて、では何故なのかと、普通は考えるだろうが、吹雪は違った。納得した上で、軽く身を伸ばして欠伸を一つ。そして一回、軽い呼吸を入れると、

 

『ここには来ちゃダメって言ったじゃん。「私」』

「『私』」

『んン~? あれ?』

 

声に振り返れば、吹雪()が居た。会ったのは数回、比較にならない力量差があっても、結局は同じ自分だと、全く気負いは無い。

寧ろ、近付いてこちらの匂いを嗅ぐ、彼女の為すがままになっている。

 

『……この匂いは朝潮ちゃんか。しかも負けてる』

「なんで分かるの?」

『見てたし、私も負けたからだよ「私」』

「『私』も負けたの?」

『そりゃもう、この通り』

 

言って、吹雪()が帽子を上げる仕草で、頭を軽く引けば、僅かに粘性のある音がして、頭が首から離れた。

首の無い胴が腰を折り、お辞儀の真似事の様な動きを見せて、吹雪が叫んだ。

 

「うっわ……!? 『私』、エンガチョ!!」

『「私」、それは酷くない?!』

「だって『私』、首が取れてるじゃん!」

『言っとくけど「私」、「私」もこうなるかもしれないんだよ?!』

「嫌だ!」

 

叫んで、吹雪()が頭を元に戻す。幾度か左右に揺り動かし、頭の座りを確認してから、威嚇状態のままの吹雪の前に座り直す。

 

『だから強くなりなよ。……今のままだと、〝次〟で誰かを失うよ』

「いきなりマジトーンとか……、〝次〟って、また何かあるの?」

『もっと大きいのあるあるヨー』

 

サラッと重要そうな事を言うのは、同じ自分でも正直どうかと思う。

しかし、話半分に聞いても、あの〝播磨〟での出来事以上の事があるのは確定の様だ。

 

『「私」、一応言っとくけど、これから先、最後の最後まで〝私達〟は綱渡りを続ける事になる』

「その内容は言えないの? 『私』」

『言いたくても言えない。下手すると、邪魔が入るからね「私」。……ていうか、今何処に居るの? 「私」』

「え? 何処って、宿毛」

『くわー! それもそうか、朝潮ちゃんに負けたんだし、宿毛に居るのは当たり前か。いやでも、だとしても、うんン?』

 

いきなり何を言い出すのか。同じ自分だが、どうにも考えや行動が突発過ぎる。その上、こちらを置いていく様な内容ばかりだ。

 

『ねえ「私」、会ったのは朝潮ちゃんだけ?』

「だけって?」

『他の第三世代、例えば夕立ちゃんとか?』

「会ってないよ。あ、でも、確か佐世保鎮守府が鉄蛇の回収に来てる筈?」

『は? 鉄蛇の回収? 佐世保が? なんで?』

「なんでって、佐世保で何か造ってるから?」

『え? 佐世保で造ってる? 何を? いやいや、早くない?』

「え、早くないって言われても、困る……」

 

またもや奇声をあげて、吹雪()が雑に頭を掻き乱す。

どうやら、吹雪()の思惑と、今の吹雪達の現状は何やら違う様だ。

 

『う~ん? だとすると、もしかしたら夕立ちゃんが居る? あぁ~、これはちょっとマズイよ』

「マズイって、何かあるの『私』」

『いやでも、線が違うからいいのかな?』

 

吹雪の質問に答えず、一人で頭を抱えて唸る吹雪()。訳の分からぬ事を言い出しているが、それは先程から変わらないからいいとして、吹雪が言った佐世保の現状が、吹雪()にとっては予想外だった様だ。

 

『ああ、でも、線は違くても、大元は一緒で、線自体も近いからこれが出来てて、あれ? あれー?』

「『私』何言ってるの? 狂った?」

『あ、それは元から』

「元から?」

『ま、それは別にどうでもいいから、佐世保が鉄蛇を回収に来てて、回収は何かの開発の為なのは確か?』

「うん? 多分」

『はっきりしてよー』

 

はっきりしてよと言われても、こちらは第三世代としての性能発揮の為の訓練で、弾かれては宙を舞う毎日だったのだ。

そんな細かい情報は入っていない。仮に入っていても、弾かれて吹っ飛んで、ちょっと記憶がアレな感じになっている。

というか、見てたなら、聞いてるのではないのか。

 

『あー、そこら辺、私はそっちに常に居る訳じゃないから』

「え、そうなの?」

『気が向いた時、っていうか、寝てる時?』

 

そこで聞かれても、正直困る。

 

『まあ、兎に角。私は常に「私」と居る訳じゃない。だって『私』と「私」は、同じだけど違うからね』

「まあそうだよね」

 

顔も声も嗜好も名前も、交遊関係もまったく同じ。違うのは存在の性能と、何が起きて、何を見て何を知ったかだ。あとちょっと、あっちが狂ってる。

同じ(吹雪と吹雪)でも、結局は違う(吹雪と黒)のだ。

 

『でまあ、もうすぐ私起きるから、結論言うよ「私」。もう少ししたら、色々起きるから、誰も失っちゃダメ』

「その〝誰も〟の範囲は?」

 

流石「私」、同じ私なだけあって賢い。やっぱり、お父さんとお母さんの娘なだけはある。

 

『誰も彼も、基本失っちゃダメ。やらかしちゃってるのも居るけど、失ったら手を増やす事になるから』

「手を増やす?」

 

首を傾げて、吹雪()を見る。手を増やすというのは、一体どういう意味なのか。

 

『あ~、それはちょっと言えない。……言ったら、今のそっちにちょっかい出すしさ』

 

一瞬、吹雪()の双眸が、底も果ても無い闇になった。

こちらには害は無いと、本能で理解していても、あの洞穴に満ちる闇は、決して良いものではない。

グラグラと、何か効果音でも付きそうな動きで、吹雪()の首が揺れる。

また首でも取れるのかと、吹雪が身構える。

 

『ああ、うん。ちょっとちょっかい出してきたか……』

「『私』?」

『……ゴメン、最後にトチった。「私」、多分目覚めても覚えてないだろうけど、言うね。手を伸ばして、確かに届けと諦めないで』

「『私』、最後に謎ポエムはちょっと同じ自分でもどうかと……!」

 

目覚めたのだろう。吹雪の姿が消えた。

さて、『私』は誰も彼も失った。なら「私」は、どうなるのだろう。

いや、心配は無用だ。「私」は睦月を失わず、それによる連鎖も起こさず、誰も欠ける事なく今にいる。

「私」は『私』とは違う。

 

『だから、ちょっとの間は助けられないけど、頑張れ「私」。これから始まる日々は、一番大事な日々だから』

 

吹雪()は足元から二本の鉄鎚を引き抜き、頭上の空白に絶対の殺意と敵意の睨みを向けた。

 

『何度だって、ぶち殺してやる。クソ野郎』

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「あ……?」

 

何か夢を見ていた様な気がする。しかし、どうにも思い出せない。

しかし、何故寝ていたのか。記憶を遡り、首を傾げてぼやけた頭を動かす。ここは宿毛泊地、外で重機か何かの音がするのは、確か佐世保鎮守府が、大破した鉄蛇の回収に来ているから。

 

 

――あれ? 佐世保?――

 

 

何か引っ掛かるが、今は何故寝ていたのかだ。

体にはのし掛かる様な疲れと、軋む様な痛みがある。これは〝播磨〟での騒動だろうが、何か違和感がある。

 

「あ、起きましたか」

 

吹雪が考えていると、大鍋を片手に提げ、もう片手にタッパーを乗せた飯櫃を抱えた朝潮が、部屋に入ってきた。

炊いた米と、沸かした味噌の匂いがする。しかし、それと同時に、吹雪は何故か首元に疼きを覚えた。

 

「……どうしました?」

「……首チョンパ」

「はい?」

 

何か間違えた。

 

「また、何か受信しましたか?」

 

人を電波扱いとは失礼な。この米と味噌汁を平らげたら、成敗せねば。朝潮から白飯と味噌汁を受け取りながら、吹雪が鉄腕ちゃんをチラリと見ると、何やら動きが鈍い。

 

「その艤装なら、貴女が目覚める少し前から、動きが鈍くなってましたよ」

「うぇ?」

 

はて、これもまた何か引っ掛かる。しかし、キャベツやらエノキやら、明らかに冷蔵庫の余り物を、雑に刻んで叩き込んだだけの味噌汁が旨い。今度は提督に作ってもらおう。

 

「期限切れの牛脂で軽く炒めただけでも、豚汁というか肉感というか、薄味ラーメン的な味噌スープ感が出ますね」

「あ、牛脂」

「何時から冷蔵庫にあったのか、まるで分からないやつでしたが、まあ第三世代の内臓なら問題無いでしょう」

 

 

――割りと雑?――

 

 

吹雪が味噌汁を飲み干し、次をと鍋に引っ掛かけたお玉に手を伸ばすと、タッパーの漬物を囓っていた朝潮が、良い音をさせた後に口を開いた。

 

「しかし、貴女方はトラブルが好きなの?」

「へ? トラブル?」

 

何処かの横須賀の珍生物の愛読書が、そんな名前だった気がする。

 

「佐世保と揉めてますよ。貴女方」

「なんでぇ……?」

 

取り敢えず現実逃避に、漬物を囓ったら良い音がした。




あー! 「私」に〝私達〟の体の使い方は、洋さんに教われって言うの忘れてた……!
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