なにやってたんだろね?
船長¦『はい、第三特務による現状解説デス』
邪気目¦『は? いきなりどうしたよ』
元ヤン¦『そっとしてやれ。……情報特務なのに、実際の働きが、実働の現状を認めたくないんだ』
七面鳥¦『はい、その実働の第四特務です』
蜻蛉玉¦『同じく実働の憲兵隊長であります』
二人¦『お前は
船長¦『来んな! こっちに、こっちに来るんじゃねえ!!』
副長¦『解説するなら、早くしては如何です?』
船長¦『イエスボス! まずはざっと流れを書くぞ』
1 御三家、篁と神宮、斑鳩のいざこざに介入する。
2 鉄面皮の目的達成、叔父貴と荒谷は叔父貴が上。
3 不壊の大和に宿毛泊地に曳航される。第三世代の朝潮と遭遇
4 第三世代としての覚醒?の為に、朝潮と吹雪の合同演習。現在、吹雪の完全劣勢。
5 佐世保鎮守府が大破した
6 佐世保の第一特務の夕立がいきなり突っ掛けて、今は同鎮守府副長の龍驤と、うちの第二特務の鈴谷が会議中。
船長¦『他の細かい部分は、各々で補足していくとして、大体の流れはこんなもんだろ。……んで、早速だが、神宮と佐世保、というより龍造寺はグルだろこれ』
邪気目¦『根拠はなんだよ?』
船長¦『早すぎる。準備していたにせよ、最初から宿毛に運ばれる事を知っていたみたいに、連中は鉄蛇の回収に来た』
七面鳥¦『少し弱くない? あの神宮のお嬢様なら、あの騒動の中で、連絡を取り合って、予定の変更とかも出来そうだけど』
船長¦『それを言われると、少し弱いが、それでもあの佐世保の連中が乗ってきた船、あれは鉄蛇級のデカモノを積み込む為の貨物船だ。……あのサイズとなると、横須賀なら兎も角、佐世保の力で急いで用意出来る規模じゃあない』
さてと、流れていく表示枠内を見ながら、五百蔵は現状を整理する。
現状、五百蔵が取れる行動は多くない。というより、場を動かしているのは、鈴谷と龍驤であり、今は龍驤が取ろうとしていた行動を、はっきりと明言し、共有しておく必要がある。
鉄桶男¦『とりあえず、今は突然突っ掛けてきた、夕立君の責任の所在と、それに関する龍驤君の行動か』
鉄桶嫁¦『彼女の責任に関してなら、佐世保では?』
鉄桶男¦『いや、それはそうだけど、どうにも根が深そうだよね』
言って五百蔵は、ミノムシの様に簀巻きにされた夕立に、ちらりと視線を向ける。
事前に話は聴いていたが、実際に見るとでは、やはり違う。
――第三世代、か――
龍驤の投擲した符を握り潰した腕、見えた形状から察するに、恐らく吹雪の鉄腕ちゃんより、動作の精密性や敏捷性は上かもしれない。
だが、それは腕だけの話だ。以前に聴いた話では、使われた技術の大元である、人型の大型艤装が使える筈だ。
もし、何かあれば、
――摩耶君や天龍君に任せるしかないか? いや……――
恐らくではなく、確実にこの根は他人に任せるべきではない。
元ヤン¦『根が深いなら、吹雪は第三世代のプロトタイプ。言ったら、第三世代全員と根が深いぞ』
邪気目¦『現に朝潮があれだからな。夕立は勿論、他二人も下手したら相当だぜ』
七面鳥¦『でもさ、私達は手を出せないよ』
蜻蛉玉¦『当然でありますな。しかし、あまり行き過ぎる様であれば、それはまた別の話であります』
吹雪達第三世代の内情は、関係性は単純だが、その間にある感情や立場、思いから複雑怪奇極まりない事になっている。
瑞鶴やあきつ丸の言う通り、吹雪のこれらの問題は、吹雪が動き解決していくしかないのだが、夕立のあの様子から察するに、抱えている内情は一筋縄ではいかないものなのだろう。
船長¦『つかよ、鈴谷は何を材料に交渉するつもりなんだ? 吹雪の件に関しては、交渉材料にはならんだろ』
邪気目¦『まあ、正直な話だが、吹雪の件は交渉じゃなくて、相対戦の材料だな』
元ヤン¦『横須賀対佐世保か? 規模が違いすぎる。いや、内容を絞るのか』
七面鳥¦『ほぼというか、間違いなくそれ。戦力的に、正面から佐世保が、うちに勝てる道理はないわ』
蜻蛉玉¦『逆に、もし正面から挑んできた場合は、勝てる道理がある。という事にはなりますな。いや、単にやけくそになった可能性も無いではありますが』
副長¦『いずれにせよ、もしそうなれば戦い勝つのみ。それ以外に何か必要ですか?』
ヒエー¦『貴女はそれ以外を覚えなさい』
半死半生¦『私としては、この交渉が上手く纏まってくれると、すごーく手間が省けて助かるのだけれど』
竹藪¦『また、変な事企んでる?』
半死半生¦『変じゃないわよ。……趣味よ』
約全員¦『それ同じだよ……!』
騒がしい表示枠を横目に、鈴谷はあまり多くない手札を繰る。
相手は佐世保の副長である龍驤なのだが、手札の少なさから中々攻めきれずにいた。
「双方が双方共に、お互いの欲しいものを持っている。穏便に済ませましょうや」
「それは勿論、だからさ、教えてよ。そっちの欲しいものをさ」
分かりきっている事だ。龍驤は、横須賀が所有する。正確には、鳳・洋が所有するという大戦期の機竜、その核となるパーツを、鈴谷は今回五百蔵達と纏めた交渉結果の破棄。
横須賀にとっては、取るに足らないもので、子供の理屈の様なものでしないが、佐世保が横須賀に僅かでも泥を引っ掻けた。この事実は、横須賀という巨人を躓かせる小石になる可能性がある。
大演習という、鎮守府間のパワーバランスを測る場が迫る今、渉外担当でもある鈴谷は、その取るに足らない小石でも、こちらを意図的に躓かせる小石は、路肩の向こうに蹴り飛ばしていまいたい。
「いやいや、こっちが差し出せるものがあらへんのに、ただ貰うだけって訳にはいかんやろ?」
「ははは、差し出せるもの? 知ってる癖に」
「嫌やわー、ウチなんの事かわからんわー」
しかし、この龍驤がのらりくらりと面倒くさい。
話が進んだと思ったら、今のやり取りの繰り返し、いっそのこと、鎮守府間抗争の申請を出して、正面から潰してしまおうかとも考えたが、それもそれで面倒くさい。
それに、簀巻きにされたまま、ソファーの上で動かない夕立。彼女が、この交渉の切り口になるのだが、簀巻きは簀巻きのまま動く気配が無い。
鈴谷は口では繰り返しのやり取りを続けながら、頭の中で龍驤の狙いを探る。
龍驤の狙いは十中八九、五百蔵達との交渉結果。
子供の様な理屈、正規の結果ではないが、あの佐世保が横須賀と交渉して、有利な結果、今回は佐世保側が横須賀側の提案を受け入れた。非常に分かり難いが、佐世保が横須賀の上に立った。
成り立っている様で、まるで成り立っていない。言いがかりそのものではあるが、正規ではない機密に近い形の交渉という、対外的に情報の開示が為されない場での結果となると、要らぬ詮索が生まれ、そしてそれが疑惑に育つ。
ひょっとすると、今の横須賀は弱っている。
現状、横須賀の総長である金剛の露出が減り、代理として比叡が前に出ている。この事も、その疑惑を育てる肥料となるだろう。
「ところで、そっちの総長、最近どうてすのん?」
「総長? 夏の近親同好会に出す画集の描き下ろしを描いてるよ」
事実だから、疑われても痛くはない。冬の絶倫に向けても、最近の金剛は精力的に活動している。
ただ、眠る時間と座っている時間が、前より増えただけだ。
「それは、今年の大演習は大変やな」
「本当にね」
こうして、探りを入れてきたという事は、間違いなくそういう事だ。金剛が欠けた横須賀に、恐れる要素は無い。そう言われている様なものだ。
さて、どうしてくれようか。鈴谷が考えを巡らせ、鎮守府間抗争の申請を、正式に視野に入れ始めた時、龍驤の隣の簀巻きに動きがあった。
そして、この交渉の場を動かす動きは、部屋の外、廊下からもあった。
「ちょっと何してるですかよ?!」
「勝手になに決めてるっぽい?!」
廊下から吹雪が、扉を蹴破る勢いで、部屋に飛び込み、夕立が簀巻きから脱出し、声を挙げるのはほぼ同時だった。