バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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どうも、逆脚屋です。「バケツ頭のオッサン提督の日常」第35話です。今回は前回の続きです!

それでは始まります!「バケツ頭のオッサン提督の日常」お楽しみください!



今回のお話はザ・バックホーンの「美しい名前」を聞きながら書きました。


オッサン、問題続発する 後編

吹雪君の異変を聞き鎮守府へと向かう途中、二人が俺を見上げなから呟いた。

 

「ポ、トーゴ、フブキダイジョウブナノ?」

「ヲ、フブキ、コワガッテル」

「大丈夫さ、俺に任せなさい」

 

任せなさいか、笑わせる。あの娘がああなるまで気づきもしなかった癖に、何をいけしゃあしゃあと抜かしているんだろうな、俺は。

 

兎に角、今は急ぐしかない。ああ、くそが、家迄の道はこんなに遠かったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたら提督が居ませんでした。何処にも居ません。執務室にも、台所にも、書斎にも、畑にも居ませんでした。何時もなら、この何処かに居るのに

町に行ったのかと、車庫を見ても車があり、町に行ったのではないと分かりました。

家に遊びに来ていたほっぽちゃんとヲガタさんが、捜しに行ってくれましたが、まだ帰って来ません。

何処に行ったのですか、提督・・・

何処に居るんですか、提督・・・

まさか、出撃したんじゃ!

提督、戦わないでください。戦ったら死んじゃいます。

もう嫌なんです、私のせいで誰かが死ぬのは・・・

この時季の寒さが、空の低さが、海の音が、無理にでも、思い出させるんです。

 

私が殺した『  』のことを

 

皆が仕方ない、あれはどうしようも無かったと言ってくれたけど、私が『  』を殺した事実は消えない。

『あの時』の『  』の顔を、声を忘れられる訳が無い。

私のせいで誰かが死ぬのは、私のせいで誰かが居なくなるのは、もう嫌です・・・

 

「居なくなっちゃ嫌です・・・ 提督」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足が重い、腹に力が入らん、一向に鎮守府に着かん。何をしてるんだ俺は。

あの不安定な状態の吹雪君を放っておいて、この様か!

 

「ポ、トーゴ、カオコワイヨ・・・」

「ヲ、トーゴ、ソノカオダメ、フブキ、コワガル」

「すまん・・・」

 

この二人に嗜められるとは・・・ 参ってるな、我ながら。

彼女を守ると決めておきながら、この体たらく。全くもって情けない!

 

「ポ、トーゴ、チンジュフツイタ」

「ヲ、ツイタ」

「ああ・・・」

 

目の前にある我が家、何時もなら何事も無く開くことの出来る扉だが、今はこの扉が何よりも重い。

俺は、何をしてやれば良いんだ?

 

「トーゴ、アケナイノ?」

「トーゴ、ハヤク」

 

二人が急かして来るので、意を決して扉に手を掛ける。

その時だ

 

『居なくなっちゃ嫌です・・・ 提督』

 

吹雪君の弱々しい呟きが俺の耳に届いた。居なくなる?俺が?どうして? そんな訳無いだろう、吹雪君、俺は・・・

 

「大丈夫だ、吹雪君・・・ 俺は此処にいる。君を置いて居なくなる訳がない」

 

扉を開け、執務室で踞る吹雪君の前にしゃがみ、抱き締める。

 

「てい・・・とく・・・?」

「ああ、そうだ。俺だ」

 

体を震わせ、力の無い声と少し虚ろな目で、吹雪君が俺を見上げてくる。

すまない、吹雪君・・・ ずっと傍に居たのに、君の痛みに気付いてやれなかった。

君はこんな小さな体で、その耳と目で俺のことを支えてくれていたというのに・・・

彼女を抱き寄せながら、誓う。

 

「すまない、吹雪君。此処にいる、何があっても俺は君と共に此処にいるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大丈夫だ、吹雪君・・・ 俺は此処にいる。君を置いて居なくなる訳がない』

 

執務室で一人踞る私を、帰って来た提督が私をこう言って抱き締めてくれました。

いきなりだったので、少しびっくりしながら見上げると今にも泣き出しそうな提督が居ました。居てくれました。

私なんか比べ物にならないくらい大きな体で、その両腕で私のことを守ってくれる人が居ました。

日々の仕事で染み着いた紙と鉄と土が混じった匂い、間違いなく提督です・・・

 

「てい・・・とく・・・?」

「ああ、そうだ。俺だ」

 

提督はその腕で私を抱き締めながら、大きなゴツゴツした手で私の頭や耳、目の周りを優しく撫でてくれました。

 

「すまない、吹雪君。此処にいる、何があっても俺は君と共に此処にいるよ」

 

そう言い、私を抱き寄せると提督の音が聞こえます。この地響きの様に大きく強い心臓の音を聞いていると、だんだん、眠くなってきました・・・

 

 

今日は、あの『夢』を見なくていいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪君? 寝てるのか」

 

抱き寄せると、小刻みに震えていた体から力が抜け此方にもたれ掛かってきた。顔は見えないが、静かな寝息が聞こえるから寝ている。

 

「ポ、トーゴ、フブキダイジョウブ?」

「ヲ、フブキダイジョウブ?」

「ああ、すまんな二人共。世話をかけた」

 

だが、大丈夫とは言い切れん。吹雪君がこうなった原因をつきとめ、それをなんとかしない限りはこの娘はまた・・・

 

良し!こうするしかないな!

 

「ほっぽ、ヲガタ」

「ポ、ナンダ?トーゴ」

「ヲ、トーゴ、ナンダ?」

「港さんや鈴木さん、洋さんに伝えてくれ。北海鎮守府は暫くの間、休止すると」

「ポ、リョウカイ!ポポポ」

「ヲ、リョウカイ!ヲヲヲ」

 

ほっぽが敬礼、ヲガタがサムズアップし、鎮守府から飛び出して行く。

まあ、あれだ。ヲガタよ、何故ほっぽが敬礼してお前がサムズアップなんだ?逆じゃね?

 

「ん・・・」

「っと、このままじゃいかんな」

 

吹雪君が寝苦しそうに身を捩ったので、抱き上げ近くのソファーに寝かしつけようとすると

 

「ん~・・・」

「離しては貰えそうにないね」

 

確りと、俺の上着を掴んで離そうとしない。仕方がないので、彼女を膝の上に乗せることにする。

 

「ん・・・」

「大丈夫だ、吹雪君。俺は此処にいるよ」

 

彼女の背をゆっくりと叩きながら呟く。出来る限り、ゆっくりと

 

さて、どうしたものか。原因を究明して解決するといっても、下手なやり方ではマズイことになる。

情報が少なすぎる、吹雪君から聞ければ一番良いのだが、この状態のこの娘に聞ける訳が無い。

過去に何かあったのは明白だ。ならば、知ってる人間を捜して話を聞くしか無いな。磯谷嬢に頼むか、あんなでも中々に有能だ。

吹雪君がもう少し落ち着いたら、如月嬢達の見舞いがてら、横須賀に行くか。

 

ロミオ・ブルーのパイロットも決まったらしいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、この時季になると『  』の夢をよく見る。だから、よく眠れない。それに加えて、最近ある『夢』を見るようになった。

『皆が居なくなる夢』とても恐い『夢』を『何かに引き込まれる様に』を見るようになった。

だけど、今日は少し違うみたいです。

 

「ハロー、『私』」

「え?あ、どうも」

 

『恐い私』が話し掛けてきました、びっくりです。

 

「早速ですけど、『私』」

「なんです?」

 

何を言われるのでしょう?

 

「もう此処には来ちゃダメだよ」

「え?」

「後、その手も離しちゃダメ」

「いったい、どういう・・・」

 

この『恐い私』は、何が言いたいのでしょう?

 

「フフフ それじゃ、バイバイ」

「ちょっと、まっ・・・」

 

ここで『私』の意識は『恐い夢』から『追い出されました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ・・・ あれ?」

「吹雪君、起きたかね?」

 

あれ?なんで私、提督に抱っこされてるんでしょう?

まあ良いです。温いし

 

「吹雪君、今やってる仕事が終わったら、横須賀に行こうか?」

「横須賀ですか?」

 

なんでいきなり?

 

「休暇ついでに、如月嬢達の見舞いだよ」

「はぁ?」

「ついでのついでに、横須賀食べ歩きツアーをしようかとね」

「良いですね!行きましょう!」

 

やりました、あれ?私・・・

 

「どうしたね?吹雪君」

「いえ、なんでもないですよ」

「そうかね」

 

あれあれ?なんで私、怖くなくなってるんでしょう?提督が近くに居るからでしょうか、『夢』を見ていた様な気もしますが、不思議です。

それにしても横須賀ですか、榛名さんに久しぶりに会えますね。楽しみです!




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