バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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どうも、逆脚屋です。「バケツ頭のオッサン提督の日常」第38話です。今回はオッサンが追い詰められ始めます。

それでは始まります!「バケツ頭のオッサン提督の日常」お楽しみください!


オッサン、追い詰められる

どうも、AMIDA 鎮守府第一艦隊所属如月です。私は今、横須賀鎮守府医療棟にある病室に居ます。

あの模擬戦で得た傷は不思議体験アンビリーバボーして癒えたのですが、治療中に落ちた体力や筋力の回復と若干右腕に違和感があるのでその経過観察の為に入院しています。

 

「如月サマ、次ハ腕ヲ伸バシテクダサイ」

「はい」

 

今は洋さんの部下の方による、腕の動作に問題が無いかの検診中です。

比叡さんはリストラもとい、磯谷提督の監視役に戻りました。

「問題ハ無イヨウデスネ、コレナラ今週中ニハ退院デキマスヨ、AMIDA 鎮守府ニモ連絡シテオキマショウ」

「そうですか、ありがとうございます」

 

正直な話、複雑な気分です。私達の怪我の原因となった人達に看病にされるなんて・・・

まぁ、それは良いです。

問題は洋さんです。

彼女、先程お見舞いに来てたんですが、私の右腕を見て一瞬驚いた後、先に来てた吹雪さんを見て何か納得したような顔をしたんですよね。何ででしょう?

右腕を見て驚いただけなら、まだ納得できます。しかし、吹雪さんを見てあの顔をした理由が解りません。

 

「謎だらけですね、あの人は」

「如何サレマシタ?如月サマ」

「いえ、何でもありませんよ」

「右腕ノ違和感デシタラ、急激ナ治癒ニヨルモノデショウ。スグニ治マリマスヨ」

 

そうですか、と言いながらも頭の中では彼女の正体についての考察が止まりません。

横須賀AMIDA を使って軍部の機密資料を調べても、まったくの無駄足でした。

彼女に関する資料は軍部の機密資料よりも重要視されているらしく、幹部の不正や軍の後暗い情報しか得られませんでした。つまり、彼女の資料は自らの保身に関して必死になる連中が自らの保身を棄ててまで、隠しておきたい情報ということなります。ただ単純にトカゲの尻尾切りの可能性もありますが。

まあ、良いでしょう。得た情報は有効に使わせてもらいます。

 

「んぃ・・・」

 

思考の海に沈みかけていた私は、聞こえてきた寝言によって引っ張り戻されました。

 

「吹雪さん、貴女こんなに甘えたさんでしたっけ?」

 

お見舞いに来た吹雪さんは、横須賀で見つけたお店や五百蔵さんと榛名さんの関係推進の話等をした後、眠くなった様で、椅子に座ってコクリコクリと舟を漕ぎだしたと思ったら、パタリと倒れて私に抱き着いて寝てしまいました。

 

「むぃ・・・」

「やだ、この子意外と力強い」

 

少し体勢が辛そうだったので、抱き寄せようと思い手をほどこうと、吹雪さんの手に手を掛けましたがピクリともしません。もしかして、力に関しては五百蔵さん似?

あの人なら、彼女を軽々と持ち上げるのでしょうが私はそうはいきません。

どうしたものかと、考えていると

 

「如月サマ、林檎ガ剥ケマシタ。如何デショウ?」

「その手がありましたね」

 

部下の方から可愛らしいウサギ林檎を受け取りましたが、このウサギ林檎、肉眼で分かる程に均等に果実の厚さや切り込みの角度、耳の長さ等寸分の狂いも無く切り揃えられています。

あの人の人材の厚さはどうなっているのでしょう?

 

それはさておき、早速、このウサギ林檎を吹雪さんの鼻に近付けてみます。

 

「むぅ?」

「おお、作戦成功です」

 

林檎の香りを嗅ぎ付けたのか、鼻をヒクヒクさせながら顔を上げました。

そのまま、私が居るベッドの上に誘導するように手を動かすと、ゆっくりと起き上がりベッドに這い上がって来ました。ホントに寝てます?後ろで束ねた髪が犬の尻尾みたいにパタパタしてますが気のせいですよね?

 

「よしよし、そのままそのまま」

「うぃ・・・」

 

私の膝の上に来た辺りで、そっと抱き寄せてから林檎を与えると、ショリショリと食べ始めました。

 

「まさか、寝ながら食べるとは・・・」

 

知ってましたが、驚愕の食欲です。寝て、ますよね?

それはいいとして、確りなつかれましたね、離してくれません。

自分で抱き寄せておいて何言ってるんだという話ですが、暖房の調子が悪いらしく、体温の高い吹雪さんは有難いんですよね。

 

「ムフ~・・・」

「フフフ、安らかな寝顔ですね」

 

完全に緩みきった顔です。

 

「如月サマ、オ茶ヲドウゾ」

「あ、どうも」

 

部下の方が紅茶を恭しく差し出してきたので受け取ると、部下の方が吹雪さんを見て安心したような顔をしていました。

 

「あの、どうしました?」

「コレハ失礼ヲイタシマシタ。洋サマヨリ仰セツカッタコトガアリマシテ」

 

仰せつかったこと?いったいなんでしょう。気になります。

 

「実ハ、吹雪サマノ様子見ヲ仰セツカッタノデス」

「吹雪さんの、様子見?」

 

吹雪さんの様子見とは、どういうことでしょう?

 

「何故、吹雪さんの様子見を?」

「洋サマ曰ク、吹雪サマニハ『素質』ガアルト」

「『素質』・・・ですか?」

「ハイ、自分ト同ジモノニ『成リ果テル素質』ガアルト、ソレモ自分以上ノ『素質』ガ吹雪サマニハアルラシイノデス」

 

洋さんと同じに成り果てる?この彼女が、私に抱き着いて静かな寝息をたてる吹雪さんが?

 

「それはいったいどういうことなのでしょう?」

「申シ訳ゴザイマセン。私モ詳シイコトハワカラナイノデス。私ハ彼女ニ変化ガナイコトヲ確認シロトノコトデシタノデ」

「そうですか」

「タダ、吹雪サマガ洋サマト同ジニナル場合、洋サマハソレヲ、ナニガナンデモ阻止スルト仰ッテオイデデシタ」

 

もし、吹雪さんに変化が有ったらどうするつもりなのでしょうか、あまり想像したくありませんね。

部下の方と話をしていると、病室にノックの音が響きました。

 

「どうぞ」

「やあ、如月嬢。右腕の調子はどうだね?」

「お邪魔します」

 

五百蔵さんと榛名さんの長身コンビがやって来ました。

 

「良好です。今週中に退院できる様です」

「それは何より、後、洋さんから伝言」

「なんでしょう?」

「『また遊びましょう』だとさ、気に入られたみたいだね」

「遊びましょう、ですか」

 

あれもあの人には遊びだったのですか・・・

 

「良いでしょう、また『遊んであげます』」

「また、洋さんのテンションが跳ね上がりそうなことを」

「フフ、それが私達ですから」

「若いってのは良いねぇ、っと、吹雪君を預かろうか?」

「いえ、構いませんよ」

「しかし、怪我人に何時までも抱き着かせておくわけにもいかんからね」

「では私が、預かりましょう」

 

そう言い、榛名さんが私に抱き着いていた吹雪さんを優しく抱き上げました。少し寂しいです。

 

「むゅぅ・・・」

「フフフ」

 

くぅ!私の時はあれほどまでに緩んで無かったのに!あれですか?装甲の差ですか?

 

「如月嬢?」

「いえいえ、何でもありませんよ!」

 

危ない危ない・・・ おや?なんだか外が賑やかですね、何でしょうか?

 

「ヘーイ、冬悟!久しぶりネ!」

「お久し振りです、五百蔵司令」

 

病室に勢いよく入って来たのは、二人の戦艦艦娘『金剛』と『霧島』でした。

けど、おかしいですね。金剛型は比叡さんや榛名さんの様に巫女の様な服装のはずなのですが、この二人は頭の上から足の先まで真っ黒なスーツ姿です。

金剛さんに至っては、黒いコートに帽子、首には純白のストールがかかってます。これで葉巻でもくわえようものなら完全にゴッドファーザーですよ。

 

「久しぶりですね、金剛嬢、霧島君」

「Oh !冬悟。私のことは義姉と呼びなさい、と言ったじゃないですカー!」

「いや、それは・・・」

「私のことは義妹とお呼びください」

「霧島君?!」

 

おおぅ、畳み掛けられてますよ。その調子です!どんどん行きましょう!

 

「ヘイ、冬悟。未来の義弟ヨ、そんな遠慮しないデ義姉と呼びなさーイ!」

「そうです、私も義妹と呼んでください!」

「待って二人供、その話は外でしよう!」

 

五百蔵さんが皆を連れ病室から引き上げて行きます。ヘタレめ

榛名さんが若干オーバーヒートしてましたが良しとしましょう。

 

「如月サマ、私ハAMIDA 鎮守府ニ連絡ヲシテキマス」

「ええ、お願いします」

「ソレデハ失礼シマス」

 

部下の方が礼をし、部屋から出ました。

一人になり窓を見てみると、雲一つ無い青空が広がってました。明日は外に出てみましょうか、夕石屋の二人が創るAMIDA を見てみたいですし




ルート進行規定ポイントに到達
ルート「終わりの始まり」を始動
イレギュラー「不死の鳳」によるルート干渉を確認
ルート調整
ルート調整完了
ルート進行に問題無し

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