それでは始まります!「バケツ頭のオッサン提督の日常」お楽しみください!
どうも、五百蔵冬悟です。只今私は、横須賀鎮守府にある特別ドックにいます。
「どうだい、霧島君、違和感は無いかね?」
「はい、義兄さん。特にこれと言って問題は無いですね」
「それはよかった。・・・義兄さんって呼ぶのやめない?」
「やめません」
ちくせう、なんでや・・・
「ん?訂正です。手の動きに違和感が・・・」
「あ~、手の形状で指の可動域が広くないからね。手で掴むというより、手首を使って巻き込むように掴むって感じかねぇ?」
ロミオ・ブルーは手の形状が特殊だから、殴るより掴んで投げたり引きちぎったりするのに適している。
その手も指の可動域が広くないから、手首ごと巻き込んで強靭な手指に引っ掻ける様に掴む。
その先は、さっき言ったように投げたり引きちぎったり振り回したりだ。
うん、霧島君にピッタリな機体だね。
「それじゃあ、霧島君。少し歩いてくれるかな?」
「はい」
霧島君が装着したロミオ・ブルーが彼女の動きに合わせ、ゆっくりとハンガーから歩み出す。
そして、手足の動きを確める様に軽く腕を振ったり踏み込んだりしていた。
「どうだね霧島君?ロミオ・ブルーは」
「悪くないですね。少し重いのが難点ですが」
「そうだねぇ、俺のチェルノ・アルファより重いからなぁ」
確か、チェルノの三倍近い重量だった筈だ。明らかにチェルノの方が重そうなのに、実際は、ロミオ・ブルーの方が重いのだ。何でなんだろうね?
「そう言えば、榛名とはどうなんです?義兄さん」
来たよ、この話。避けてたんだがなぁ、逃げれんか。分かってるんだが、どうにも踏ん切りがつかんのよ。
「あ~いやね、それはね?」
「yesにしろ、はいにしろ早く答えてあげてください」
「ああ、そうだね」
早く答えてあげないとね。最悪、気付いてないならまだしも、気付いていながらこの状態を続けるのは只の外道だ。てか、選択肢無くね?いや、選択肢なんぞ関係ないか。榛名さんに答えるということは変わらんのだから。
しかし、どうやって答えるか。それが問題だ。
なんだろ?戦場とか星空の下とか聞こえた気がする。気のせいだよね?
ま、気を取り直して試験の続きだ。
「それじゃあ霧島君。戦闘機動をしてくれるかな」
「了解しました」
「明石と夕張も準備は良いね?」
「「任せてください!」」
明石と夕張が一糸乱れぬ動きで、目の前のコンソールを操作し、ハンガー前のシャッターがゆっくりと上がっていく。
さあ、新生ロミオ・ブルー初御披露目だ。
「では、行きます!」
号令と共に機関音を高らかに鳴らし、ハンガーから演習用海域に青き鉄人が水飛沫をあげ、一気に駆け出す。その姿はまるで、一本の巨大な鎗のようにも見える。
「よし、霧島君。そこで反転してくれ」
「了解!」
急速な制動をかけ、機体を振り回す霧島君。彼女が反転したのを確認し、すかさずコンソールで機体状況を見ている二人に声をかける。
「二人共、機体はどうだ?」
「「良好です。ですが、腰や脚回りに掛かる負荷が予想より大きいですね」」
「どれどれ、確かに負荷がでかいな。後で要調整だな」
霧島君の動きに機体が追い付いてないかな、これは。
しかし、イェーガーの運動性能が追い付けないとか霧島君、流石は横須賀の武力の象徴なだけはあるね。
「次は、的が出るから適当に潰してね」
「待ってました!」
わぁい!戦闘の許可出した途端に、生き生きし出したぞ!
待たせるのもアレだし、早速行ってみようか。
「そんじゃ、行くよー」
「了解です!」
まず一個目の的は、鎗のごとく突き出された青く長い右腕に貫かれた。
続く二個目三個目は、二個目は空中から三個目は海中からほぼ同時に出したが、いとも簡単に引き千切られたり投げられたりとあっさりクリアされた。
次は三個連続で出したが、なんだろうねあの子は?背中に目がついてるのかね。
「「やっぱり、機体が追い付いてないですね」」
「マジかい、あれでも調整したんだが」
「「あのままだと、霧島副長の動きにロミオ・ブルーが耐えきれませんよ」」
「だとするならまずは、各部の強化と反応速度の上昇かな」
「「ですね、後は出力も調整しないといけません」」
「そうだねぇ。うわぁい、やることが山積みだ」
まずは、装甲外して各部関節の調整と強化をして、霧島君の動きに反応できる様に反応速度も上げないと。
あれ、俺は横須賀に休暇に来てたよな?なんで仕事してるの、おかしくね?
「「霧島副長、次大型標的出ます!」」
「来なさい!」
射出された大型標的はイェーガーとほぼ同サイズであり、ある程度の自立行動が出来るよくできた球体関節人形だ。
如月嬢の分身?でいいのかな。Liv 嬢からヒントを得て夕石屋の二人が作り上げた物だ。
性能に関しては、この二人が手抜きをする訳もなく、あの洋さんから訓練用の人形としては上出来という評価を受けた代物である。
装備は、既存の艦娘の装備やイェーガーの余剰パーツを必要に応じて取り付ける仕様になっている。
今回は磯谷嬢のストライカー・エウレカの装甲と腕部のブレードを装備している。流石にエア・ミサイルを積むのは止めた。本気で止めた。霧島君が凄い不満そうな顔してたけど・・・
「なるほど」
大型標的が繰り出すブレードの連撃を、その長い腕で捌きながら確実に相手にダメージを与えている。
動きを見る限りは問題は無さそうだね。だが、油断は禁物だ。
「ふむ、どうだね?」
「「やはり、追い付けてないですね。副長の動きを阻害してます」」
「あれで阻害されてるなら、本来はどれ程のモノなんだい」
まったく、俺から見てもかなりのモノだというのに、あれで本来の動きではないならば、とんでもない事だ。
いや、そうでもないか。あの洋さんと模擬戦を行って、『二度』にわたり洋さんを『殺している』のだから、そう考えれば納得がいく。俺?俺は相討ちが限界だったよ。あの軍勢、マジチート。
お?そろそろ終わりかな。
大型標的の両腕を肩口からもぎ取って、相手の頭に叩き付けた後、立て直そうとした標的を両手でガッシリとホールドし、力任せに引寄せ頭突きの要領で胸部の衝角を突き刺す。
普通ならこのラムアタックで終わりだけど、ロミオ・ブルーは違う。
あの衝角には仕込みがあるんだよ。
「全門斉射ぁっ!」
衝角が突き刺さった標的の首が、一瞬だけ膨らみ破裂する。その後からは、大量の鉛弾が吐き出される。
この通り、ロミオ・ブルーの衝角にはガトリング、しかも大口径の奴が仕込まれている。
あの長い腕で相手を掴み引寄せてから、衝角を突き刺し仕込まれているガトリングで内部から破壊する。これがロミオ・ブルーの戦い方だ。ホント、霧島君向きの機体だよ。
「以上で終わりですか?義兄さん」
「ああ、終了だ。お疲れさん」
「「霧島副長、お疲れ様です。ハンガーにお戻りください」」
さあ、これから霧島君の意見を交えながらの機体の調整だ。腕の伸縮機構も再現せにゃならんし、『アレ』も買いに行かないと、忙しくなりそうだよ。
ところで、皆さん。休暇ってなんでしたっけ?仕事の別名だったかな?
あ、皆さんお久しぶりです。北海鎮守府秘書艦の吹雪です。
横須賀の街で、鈴谷さん達と食べ歩きをしていたら提督を見掛けたので、後をつけたんですよ。そしたらですね、あの人、宝石や貴金属や時計を扱うお店に入って行ったんですよ!ビックリです!
しかもですよ。鈴谷さん曰く、提督が入っていったお店は超がつく程の高級店らしく、間違っても家の提督が行くお店ではありません。第一に時計を買うにしても、提督の趣味はああいったきらびやかなモノではなく、実用性重視の武骨なモノを好みます。因みに、私もG-shockとかが好きです。
なんか小さな箱が二つ入った紙袋を持って出てきましたが、あの人、いったい何を買ったんでしょうか?
さあさあ、オッサンは何を買ったのか?次回明らかになりそうだよ!