バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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お久しぶりです。逆脚屋です!

チェルノ・アルファのプラモが出ますね!逆脚屋は今から、ウキウキ気分でパシリムのDVD見てます!

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オッサン、会敵

ゴポリゴポリ、水泡が膨らんでは消えていく。

どれもこれも、水面に出られず消えていく。

 

「・・・ちゃ、ん・・・」

 

愛しき友の名を呼んでも、それも水面には出られない。

ゴポリゴポリ、膨らみ消えていく。

 

「・・・ちゃん・・・て・・・」

 

淡い望みを飲み込み、絶望を与える。

その望みは叶う事は無い。

 

それはただただ、水泡の如く浮かんでは消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?エウレカとロミオは何時出せるの!」

「今、ハンガーから引っ張り出してるところです!」

「出来るだけ急いで、嫌な予感がする!」

 

ホント、勘弁して欲しいわね。

吹雪ちゃんが居なくなったと思ったら、お次は工厰の機能が半分ダウンでイェーガーと艦娘の艤装が一部使用不可になるとか、冗談がキツイにも程がある。

何とか、各艦代表艦娘の何人かの艤装は無事に使用出来るけど、艦隊運用における連携は不可能に近い。

 

「嫌、ねぇ。ホント」

 

何をどうしたら、工厰の。しかも、ここ横須賀鎮守府の工厰にダメージを与えられるのやら。

哨戒班からも未確認存在の接近は報告されていない。

いや、待て。もしかしたら、海底を?

有り得る話ではあるか。この近海の水深はそう深くはない。だから、潜水艦の子達は今回の哨戒班に回していなかった。

 

だが、深海棲艦の襲撃にしては妙だ。

連中は、必ず集団で行動する。ならば、何らかの痕跡がある筈なのに何も無いし、連中なら家の子達がすぐに発見して迎撃している。

 

なんだ、この感じは?

おかしい、明らかに深海棲艦の仕業ではない。

行動がお粗末過ぎだ。工厰と言う心臓部の一つにダメージを与えて、追撃が無いなんて素人のやることだ。

第一、工厰を『凍結』させる深海棲艦なんて聞いた事がない。

 

「ねぇ、班長。今回のこれ、どう見る?」

「分からんな、俺も基地の襲撃に巻き込まれた事はあるが、こんな事は初めてだ」

「ですよね」

 

新種?だとすれば、話が通らない訳ではないが弱いわね。

・・・待て、待て待て待て。

確か、新米ちゃんと五百蔵さんが『凍結』とかの極低温を武器にするイェーガーが居るとか言ってなかったか?

思い出した!

あの電話嫌いの五百蔵さんが凄く楽しげに電話をしてたから、何だと思ったら、新米ちゃんとイェーガーの話をしていたんだった。

そこで出てきたイェーガーで、確か名前は・・・

あー!くそっ、出てこない!

後、ちょっとで出てきそうなのに~!どうしても、出てこない~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう少し、もう少しで会える。彼女に会え・・・

 

 

「吹雪ちゃん!」

「榛名、さん?」

「良かった、無事だったのね!」

 

榛名は万が一を考え、最新の艤装を装備していたが杞憂に終わったようだ。

吹雪が海に足を踏み入れる瞬間に、抱き止める事が出来た。

本当に、危なかった。見れば吹雪は、艤装を身に付けておらず、普段のパーカー姿で海に入ろうとしていた。

例え、艦娘であっても艤装が無ければ海上での行動は不可能であり、ましてや、今の季節は冬。艦娘は人間よりも耐性が高いが、艤装による保護機能が働かなければ凍死や溺死は必然的だ。

 

「どう、して、艤装を?」

「工厰が襲撃されて、今の横須賀は厳戒体制に入ったの。だから、早くここを離れましょう!」

 

榛名が叫び吹雪の手を取るが、吹雪は動かない。

 

「駄目、なんです・・・」

「吹雪ちゃん?」

「駄目なんです。彼女が呼んでるんです、もうすぐ、もうすぐ其処に来てるんです」

「吹雪ちゃん、駄目です!今すぐ離れないと・・・!」

 

榛名の説得に応じず、海に入ろうとする吹雪。

そして

 

「え?」

「吹雪ちゃん!」

 

突如として海から吹雪目掛けて突き出された白と黒の刃、それは鞭の様に撓り横薙ぎに彼女を切り払おうと迫る。

 

「勝手は榛名が許しません!」

 

だが、その刃は2つの鉄の手により弾かれた。

榛名の艤装、その船殻を模した防盾を変形させ、刃を弾いた。

 

「くっ!」

 

しかし、その衝撃は凄まじく強靭な筈の戦艦の艤装を軋ませる。

それでも、榛名は一歩も退かず吹雪と襲撃者との間に立ち塞がった。

次々に振るわれる襲撃者の刃、それを弾き防ぎ吹雪を守り続ける榛名。

しかし、力が質量が違い過ぎた。

徐々に、確実に鉄の手は削られひしゃげ元の形を失いつつあった。

 

「榛名さん、逃げてください!」

 

吹雪が叫ぶも榛名は、白い襲撃者に立ち向かう。

その目には、何があっても退かないという強い決意の色に満ちていた。

 

「どうして!?狙いは私なんです!」

 

だから、貴女は逃げてと叫ぶが、刃が鉄の手を斬り裂く音に掻き消される。

榛名の鉄の手は、とうとう右手を半ばから断ち斬られ三本の鉄指が僅かに動くのみとなり、左手はひしゃげ何とか盾としての役割を果たしているが、それも長くは保たないだろう。

榛名自身も、衝撃や破片による疲労と傷が目立つ。

それを見て、吹雪は頭を振る。

襲撃者の、『彼女』の狙いは自分で、榛名ではない。

自分があの刃に掛かれば、全て終わる。それなのに、榛名は立ちはだかる。

 

「吹雪ちゃん、貴女が何を思い自分を犠牲にしようとしているのかは、私には分かりません」

 

振り抜かれる刃を右で流し、右手の鉄指が弾け飛ぶ。

最早、右手に盾としての機能は残ってはいない。左手も限界が近い、艤装本体とのジョイント部から火花が散り異音をあげている。

だが、榛名は普段と変わらぬ様子で優しく吹雪に語りかける。

 

「だけど、それは間違っています」

「でも!」

「良いですか?確かに、貴女の過去は辛い事がありました。私もそれは聞いています」

「榛名、さん?」

「吹雪ちゃん、生きましょう。生きて生きて生き抜いて、立ち向かいましょう。貴女になら、それが出来る筈です」

 

降り下ろされる刃、盾となる鉄の手も既に力無く垂れ下がり動かない。

そこから導き出される結論は、簡潔なものだ。

その刃は、榛名と吹雪を斬り裂く。

 

そう、何も邪魔が無ければ

 

「そうでしょう?冬悟さん!」

「ああ、その通りだ」

 

降り下ろされた黒い刃は、緑黒の鉄鎚により持ち主ごと弾き飛ばされた。

 

「やあ、吹雪君榛名さん。待たせたね?」

「提督・・・」

「榛名さん、吹雪君を連れて避難を。こいつは俺が受け持つ」

「はい!吹雪ちゃん、此方へ」

「提督!」

「心配は要らないよ」

 

直ぐに叩き潰すからね。

 

チェルノ・アルファを纏った五百蔵が、その両の拳を打ち鳴らし、『タシット・ローニン』を纏った襲撃者が鉄鎚と激突した刃を確認する。

両者はそれを、開戦の合図と見なした。

轟音を響かせ拳を振りかぶる五百蔵と、静かに刃を突き出すタシット・ローニン。

横須賀で、最古の鉄鎚と白刃の戦いが始まった。




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