あ、後ですね。友人がギャーギャー煩いので、ここで書きます。
私の作品のキャラは、好きに使って頂いて構いません!
皆、ホライゾン・ブレイブを忘れないで!
ストライカー・エウレカの視覚素子から送られてくる超高速で移り変わる景色を見ながら、磯谷穂波はこう思った。
ーーこわぁぁぁっ!ーー
工厰が襲撃され、その機能の大半が麻痺、鎮守府の主力の殆んどを封じられ、霧島と自身のイェーガーも封じられた。
運よく、霧島のイェーガー『ロミオ・ブルー』と木曽、天龍、摩耶、鈴谷、吹雪の艤装は解放する事が出来た。
だが、自身のイェーガー『ストライカー・エウレカ』は解放する事が出来なかった。
工厰内格納庫、その中のハンガーの位置が悪かった。襲撃時に生じた歪みの影響をモロに受けてしまった。
ハンガーを解放しようと、歪んだ部分を取り除こうとすれば、また新たな歪みが噛み混んでくる。下手な手を打てば、ストライカー・エウレカごと格納庫が崩れてしまう。
頭を抱えた。頭を抱えている横で、夕石屋の二人が何かを言い出した。
「「屋根抜いて、デリッククレーンで射出しましょう!」」
二人が言うが早いか、ストライカー・エウレカに放り込まれ、整備班が格納庫直上の屋根を抜いてデリッククレーンを操作してのワイヤーを落としてきた。
あれよあれよと、準備が整い、着地点観測も加賀達空母の観測機により完了した。
後は打ち出すだけ。打ち出された。
所属の艦娘達や整備班達が取り付けた大量のスクラップや艤装の予備パーツ等を反対側、吊り上げ用のワイヤーに括り付け落とす。
その勢いで巻き上げられたワイヤーにより、一気に跳ね上げられた。
ーー横須賀デリック最強伝説・・・!ーー
そんな単語が頭を過ったが、直ぐに通り過ぎた。
上から下へ、押される様な潰される様な急激な加重が襲ってきた。一瞬、エウレカが軋んだ。
視界が一瞬黒く染まるが、直ぐに復帰。
エウレカからのアナウンスが機体内に響く。
[おはようございます。当機は只今、超高速で上昇中です]
言われなくても分かりますぅ!
磯谷は叫びたかったが、急激な加速Gに歯を食い縛る事が限界だった。
[パイロット負荷を確認、負荷軽減の為干渉を開始、干渉終了。如何でしょう?]
流石は最新鋭機!対応が早いぜ!
とか、考えていたら体に掛かる負荷が確かに軽くなったのを感じた。
[加速終了、落下します]
負荷が軽くなったのは気のせいだった。一瞬、浮遊感が身を包み頭から落下する。今度は、下から上への加重が始まった。
[着地予定地点を確認、全関節ロックを解除、着地の為姿勢制御バインダー分離]
射出前に、両腰に取り付けられた姿勢制御用のバインダーが切り離されたのを確認して、磯谷は空中で身を回し脚から着地する体勢に移行する。
着地予定地点に視線を運べば、五百蔵のチェルノ・アルファと霧島のロミオ・ブルーが、白い細身を取り押さえようとしているのが見えた。
ふと、違和感を覚え、ストライカー・エウレカの視覚素子をズームさせ、三体の鉄巨人を見る。
霧島のロミオ・ブルーにダメージは無い。問題は五百蔵のチェルノ・アルファだ。
頭部装甲は凹み罅が入り、左腕と右肩部からは黒煙が上がっている。無事と言えるのは右腕だけという状態。
それでも、霧島と動きを合わせて白い細身を取り押さえようとしている。
二人が取り押さえようとしている白い細身に視覚素子を向け、その胸部に納められている少女を見た。
瞬間、腕部ブレードを展開し体勢を整える。
着地迄、後5
4
3
2
1
着地、同時に体と機体に強い衝撃が走り水柱が立ち自分を覆い隠す。その衝撃を身に流し、膝に力を込め爆発させ、白に向けて一気に加速を叩き込んだ。
ストライカー・エウレカの視覚素子からは、様々な情報が送られてくる。
此方の着地起きた水柱に一瞬だけ目を向けた霧島と五百蔵、今までの動きから一転し、此方を捉え瞬時に右の刃を突き出してきた白。
霧島も五百蔵も、反応が遅れている。ならば、自分はどうだと言われれば、簡単だ。反応している。
ゆっくりと、ゆっくりと刃が突き出されてくるのが見える。実際は、かなりの速度なのだろう。だが、遅く感じる。
駆け出した体勢をそのままに、右のブレードを白の腕、その右肘へと走らせる。伸びきり、装甲の継ぎ目からグロテスクな肉塊が見える。
それを断つ為に、ブレードに熱を通す。下から上へ刃が肉塊に入り黄緑の体液が吹き出る。だが、それも一瞬。ブレードに通した熱により肉の断面が焼かれ体液が蒸発する。
一気に刃を通そうとすれば、腕とブレードに強い抵抗が掛かる。重い、しかし、斬れない訳ではない。
腕の出力をあげ、腰を入れる。ブレードを噛み潰す様な抵抗を無視し、斬り上げた。
舞い飛ぶ白の右腕、それを見送らず白の胸部の亀裂に手指を掛けようとするが、白が瞬発し後ろに下がった為に失敗した。
曇天の下、降り頻る雨露と共に水柱が崩れ、銀灰色の鉄巨人が現れた。
「天呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!あの子を助けろと轟き叫ぶ!」
右腕を自分の顎下を斜めに通す様に掲げ、左腕は腰だめに、脚は肩幅に開き、堂々と前を向き高らかに宣言する。
「可愛い女の子の味方!磯谷穂波見参!」
言うや否や、白が銀に飛び掛かった。
「うっしゃ!穂波がやりやがった!」
工厰からAMIDAにより運ばれた艤装を背負いつつ、天龍が胸の前で手を打ち叫んだ。
鈴谷と吹雪も、艤装のセッティングが終わり、後は海に出るだけだ。
「それじゃ、行こっか」
「はい・・・!」
鈴谷が気楽に言い、吹雪が応じる。
首に掛けていたヘッドフォンを改めて耳に当て直し、両足の推進機の出力を確認、背中の主機の出力は安定している。
「吹雪ちゃん、無理はしないでね」
先程の戦闘で艤装が大破した榛名が、吹雪の両手を握り、祈る様に告げる。
「大丈夫です!怖いけど、大丈夫です!」
怖いというのは事実だろう。瞳には恐怖の色があり、体は僅かに震えている。
だが、それ以上に決意の色が見えた。
「そうそう、私に天龍にキソーが居るしね。摩耶は後からだっけ?」
「ああ、ちょっとな、艤装が遅れてるからな。後から行くぜ」
鈴谷が笑い、榛名に向ける。
「大丈夫だって、榛にゃん。私達は、ただ迎えに行ってくるだけなんだから」
「迎えに?」
「おう、あそこに居る迷子を迎えに行ってくるのさ」
だからね、と鈴谷は天龍に続く。
「榛にゃんはここで待ってて、私達の帰る場所になって」
「そうだな、帰る場所が分からねぇと、また迷子になっちまう」
帰る場所、その言葉に榛名は一度目を閉じ、息を吐いた。
そして、自身の決意を込め
「いってらっしゃい、吹雪ちゃん。晩御飯までには帰ってくるんですよ」
言った。
「はい!それじゃあ、睦月ちゃんを迎えに行ってきます!」
木曽、天龍、鈴谷、吹雪が海に出る、それを見送る榛名と摩耶。
下唇を噛み締め俯く榛名に摩耶が運ばれてきた艤装をチェックしつつ榛名に話し掛ける。
「待つ女ってのは、ツラいかい?」
「自身の不出来が招いた事ですから、口惜しいですね」
そうかい、と摩耶は呟きチェックを続ける。
榛名が見詰める海上で繰り広げられる決戦は、佳境を迎えようとしていた。
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