バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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今回で艦息セレクション終了!

次回は、オッサン主役か吹雪と悪ガキ隊のグルメかな?


艦セ

元ヤン¦『なあ?』

空腹娘¦『・・・・・・』

ズーやん¦『いやあ、あれだね?「五月蝿い」ってやつかな?』

邪気目¦『やっぱよ、吹雪。戻ったら、見てもらえ。な?』

空腹娘¦『はい・・・』

船長¦『お?立ったぞ』

 

鉄腕ちゃん瓦礫アタックが直撃した屋上、そこに居た磯谷がヨロヨロと立ち上がった。

見た感じ、ダメージはそうでもなさそうだ。

 

「ねえ、何それ?」 

 

やっぱり、来たその疑問。

しかし、本人達が何か解っていない疑問に、本人達が答えられる訳も無く

 

「えっとぉ・・・鉄腕ちゃん?」

「鉄腕ちゃん・・・?!」

 

答えにならない答えしか返せない。

 

ほなみん¦『いやいや、何なのそれ?!』

ズーやん¦『いやね、こっちとしても、その疑問は同じと言うか・・・』

元ヤン¦『解らんから、答えられん』

ほなみん¦『待って待って!なんかそれ、私が喋る度にシャドーボクシングしてるんだけど!?』

邪気目¦『うわ!マジだ?!』

船長¦『まさか、充電式?』

ズーやん¦『まっさか~、そんな事が』

空腹娘¦『そう言われると、お腹が空いてきましたね』

元ヤン¦『あ、これ充電式だわ・・・』

 

吹雪の艤装に繋がれて、シャドーボクシングをする鉄腕ちゃんが充電式?と解り、驚く面々。

それを知ってか知らずか、鉄腕ちゃんのシャドーボクシングは激しさを増していった。

 

「待って!ホントに待って!すんごい激しい!」

「あれか?穂波が嫌いなんじゃね」

「出会った瞬間に嫌われるとか・・・!」

「笑うなああああ!」

 

磯谷が吹雪達を指差し叫ぶと、鉄腕ちゃんが凄まじい勢いで瓦礫を投げつけた。

投げつけた瓦礫は、磯谷の足下にヒット。若干、砕けながら床に突き刺さった。

 

「・・・・・・えっとぉ」

「ふぶっち?」

「言いますけど、私は何もしてませんよ?」

「穂波、マジで嫌われてね?」

「私、何かしたああああ?!」

「あ・・・」

 

また、投げつけた。突き刺さった。二個目である。

見れば、片方の腕には、次弾が装填されていた。

ヤル気だ・・・!全員が思った。

 

鉄桶男¦『吹雪君?』

空腹娘¦『違いますよ?』

にゃしぃ¦『吹雪ちゃん、それ、艤装とは違う別の新しい何かなんじゃ・・・』

鉄桶嫁¦『私のも、そんな風には動きませんからね』

夕石屋¦『だとしたら、新発見ですよ!』

横須賀¦『あの、皆様?当初の目的をお忘れなきよう、御願い致します』

約全員¦『しまった・・・!』

 

摩耶が表示枠から、磯谷に向き直り言った。

 

「おい、ア穂波!」

「誰が、アホだああああ!」

「あ・・・」

 

二発同時投擲だった。

どうやら、鉄腕ちゃんは叫ばれるのが嫌いな様だ。

 

「いいから聞け、な?」

「うん!聞くよ!聞くから、鉄腕ちゃんが持ってる瓦礫放さして!」

「鉄腕ちゃん、メッ!」

 

吹雪が軽く叩くと大人しくなった。

全員が、何か納得のいかない顔をしながらも、磯谷に向けて告げる。

 

「穂波!早く戻れ!死ぬぞ!」

「話が合ってない!」

「いいかぁ?!若葉がな、着々と準備を進めてるんだよ!」

「まっさか~、いくら若葉ちゃんでも・・・」

 

わかば¦『剥製・・・』

 

表示枠が小さく呟き、消えた。

磯谷が滝の様な冷や汗を流し、摩耶を見る。

見れば、摩耶も顔がひきつっている。

 

ほなみん¦『五百蔵さん五百蔵さん!』

鉄桶男¦『早く戻れ!今なら、拳骨一つで許してやる!俺は』

ほなみん¦『最後!最後が不穏!』

鉄桶男¦『あぁ?なら、本気で打ち下ろしてやろうか?んン?』

ほなみん¦『それより、若葉ちゃん止めて!お願い!』

約全員¦『無理』

ほなみん¦『チクショー!』

 

磯谷が表示枠を床に叩き付けて割った。

そして

 

「もーう、怒った!怒ったよ!私は!意地でも帰らない!シリアスハードなリアルには帰らないよ!」

「うっせーマダオ!バカ言ってないで帰るぞ!」

「マダオ!言うに事欠いてマダオ!?」

 

もーう許さないぞー!と磯谷の気合いの叫びに呼応するように、大量の人影が現れた。

 

「うげ?!」

「この、ア穂波ぃ!」

「うそ~」

「え?ええええ!?」

「マジかよ・・・!」

 

磯谷が呼び出したモノ、それは

 

「私を連れ帰りたくば、この紅椿・真改軍団を倒して見せろー!」

「「「この、クソバカア穂波ぃ!」」」

 

先程まで、散々に苦戦した紅椿・真改、計20体であった。

 

「この、バカ!幾ら課金しやがった!」

「私の貯金の半分を注ぎ込んだ軍団!破れるものなら破ってみろー!」

 

ーークソが!マダオも、ここまで来ると清々しいな!ーー

 

摩耶は、現在の戦力を見た。

自分、近接系 対空以外は苦手

鈴谷、指揮系 戦闘能力は割りと低め

天龍、近接系 割りと遠距離もイケるが、威力が低い

木曾、両立系 只し、魚雷が使えない

吹雪、索敵系、鉄腕ちゃんが未知数って、ん?鉄腕ちゃんは何処だ?

 

ーーヤベェ・・・超不安定だ・・・ーー

 

この危機的状況、唯一の救いは自分達が居るエリアが戦闘禁止エリアに近いという事のみ。

 

「全軍!一斉攻撃ぃ!」

 

磯谷の号令に、紅椿・真改が一斉に右手のマシンガンを構え、掃射した。

 

 

 

 

 

鈴谷は考える。この現状を打破する方法を、弾丸が飛び交い、ビルを瓦礫を砕いていく場で考える。

 

ーー敵は紅椿・真改20体とほなみん。多分、エウレカも課金で再現してる!ーー

 

此方の戦力は、最高火力が摩耶と木曾、只し木曾は魚雷が陸上だから使えない。摩耶は近接ラムアタックだけど、近付かなければ意味が無い。

安定的な戦力は天龍、経験値はピカイチだ。だけど、火力が低い。

私は、どちらかと言えばビミョー。指揮系だし、速度も火力もそう高くはない。

最後に、ふぶっち。ふぶっちは駆逐艦で索敵系、火力は当然低い。だけど、鉄腕ちゃんが未知数。って、あれ?鉄腕ちゃんが居ない?

 

ーーどうする?どうするよ?私!ーー

 

紅茶姉¦『ふむリ』

 

金剛の表示枠が目の前で開いた。

 

紅茶姉¦『成る程、成る程成る程・・・』

 

鈴谷は何も言えなかった。

金剛は、椅子に座り足を組みゆったりと佇んでいる。

只、それだけだが

 

紅茶姉¦『これは、少々甘やかし過ぎマシタカ?穂波』

 

金剛は、怒っていた。

 

 

ズーやん¦『ヤベーよ!総長キレてるよ!』

元ヤン¦『はあ?!マジかよ!』

邪気目¦『これは、穂波終わった・・・』

船長¦『足緩めんな!来てんぞ!』

約全員¦『うおわああああああ!』

 

 

 

「比叡」

「はい、御姉様。後は、御姉様のサインのみです」

「流石デスネ、比叡。では穂波?反省シナサイ」

 

金剛は、ある書類にサインをして、目の前の人物に手渡した。

 

 

 

 

「はーっはっはっはっ!手も足も出まい!」

「くっそ!くっそ!あのア穂波め、調子乗りやがって!」

「あとちょっとで、戦闘禁止エリアです!」

「謝るなら許してあげるよぅ?」

「あのツラ殴りてぇぇぇ!」

 

逃げる吹雪達を追う紅椿・真改軍団。

背部の砲、プラズマキャノンを一斉に展開し、吹雪達に狙いを定める。

 

「おい!あのビルぶっ飛ばしたヤツ撃つ気だぞ!」

「ふざけんなー!」

「あとちょっとなのにー!」

 

逃げる吹雪達目掛けて、プラズマキャノンに光が収束し発射される瞬間、紅椿・真改軍団の動きが止まった。

 

「あ、あれ?どうなってるのこれ?」

「止まった・・・?」

 

全員が呆然とする中、磯谷と吹雪達が居るエリアにアナウンスが響いた。

 

横須賀¦『皆様に御知らせ致します。たった今、横須賀鎮守府艦隊総長金剛が当ゲーム「艦息セレクション」の制作会社を購入されました。なので、当ゲームはたった今より、横須賀鎮守府艦隊総長金剛様の管理下に置かれます』

約全員¦『は?』

紅茶姉¦『ふふン、安い買い物デシタネ』

ほなみん¦『あ、あの、金剛ちゃん?』

紅茶姉¦『穂波、暫く反省シナサイ』

 

「あ!あの紅椿・真改消えていきますよ!」

 

吹雪が指差す紅椿・真改が、立体からデータへと分解されて消えていく。

それも、1体だけではなく20体全てが消えていく。

 

「よっしゃ!今がチャンス!あのア穂波ボコれ!」

 

摩耶達が踵を返し、磯谷をボコろうと猛然と駆け寄る。

それを見た磯谷は、逃げずにストライカー・エウレカを展開しようとするが

 

紅茶姉¦『反省シナサイ。私はそう言いマシタヨ、穂波』

 

金剛により、ストライカー・エウレカの展開をブロックされる。

 

「くっそー!まだだ!まだ終わらんよ!」

「諦めろや!ア穂波ぃ!」

「最後の手段!自爆スイッチ!」

「「「この!クソバカア穂波ぃ!」」」

「今だ!」

「「「へ?」」」

 

磯谷が隠された自爆スイッチを押そうとした瞬間、磯谷の視界の端に何かが飛び込んで来た。

 

「鉄腕ちゃん瓦礫アタック・・・!」

 

紅椿・真改が消えていくデータの塵に紛れて近付いていた鉄腕ちゃんがアリウープで飛び出し、人一人分の大きさの瓦礫を磯谷に叩き付けた。顔面直撃である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で、磯谷ア穂波の回収完了しました」

「あ~、ご苦労さん皆」

 

ゲームなのに妙に疲れた顔の横須賀悪ガキ隊と吹雪、軽い脱水症を起こしかけている磯谷が、金剛と五百蔵の前に並んだ。

 

「取り敢えず、磯谷嬢は体調が回復したら覚悟しとけ。仕事が溜まりまくってんだ」

「・・・ふぁい」

「皆、迷惑を掛けマシタネ」

「いやはや、疲れたぜ・・・」

「あのゲームは、何がしたかったのか解んないね」

「お腹が空きました・・・」

 

三者三様の感想、それを聞きながら金剛は紅茶を一口飲み、笑顔で全員に告げる。

 

「頑張った子には、ご褒美をあげなくてはイケマセンネ」

「「「え?」」」

「比叡」

「はい、御姉様」

 

比叡が差し出した一枚の紙、それは

 

「総長、これマジ?」

「マジもマジ、大マジデス」

「やったよ、ふぶっち!」

「何何!何ですか?!」

「見ろよ吹雪!超高級中華飯店『春華楼』のVIP待遇チケット!総長の行き着けの店だ!」

「しかも、食べ放題で使用回数上限無しだぜ!」

「ほ、ほあー!ほあー!」

「やったね、吹雪ちゃん!」

 

吹雪が歓喜の声を上げ、格納空間から飛び出した鉄腕ちゃんが、睦月の車椅子を押し喜びを表現する。

 

「義姉さん、少しやり過ぎでは?」

「ふふン、頑張った子にはご褒美。これは、年長者の特権デスヨ、冬悟」

「しかしですな」

「冬悟、榛名が待ってマスヨ。早く行ってあげナサイ」

「げ!もうそんな時間ですか?!」

 

金剛が笑みを浮かべ、目の前の風景を見詰める。

摩耶が吹雪を抱き上げ、天龍が鈴谷と肩を組み、木曾が睦月の車椅子を押す鉄腕ちゃんを止めようとしている。

その横では、軽い脱水で震える磯谷にスポーツドリンクを与える比叡と急いで外出の支度に向かう五百蔵が居る。

 

ーー良いものデスネ、見守る立場というモノハーー

 

金剛は、左手の義指となった薬指を撫で、紅茶をまた一口飲んだ。




キヒヒヒヒ♪やっぱり、磯谷司令と遊ぶのは楽しいですね。
さて、疲れたし寝ようっと

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