あ、後、何処からか電波を受信しまして宿毛のあの人と陸軍のあの人が登場しますぅ。
活動報告に、これからのバケツのオッサンの予定を書いてます。
「それじゃ、出るから、後よろしくね」
「はーい」
「いってらっしゃいです」
冬の寒空の下、横須賀鎮守府で休暇中の五百蔵が街へと出掛けた。
それを、吹雪と睦月が見送る。
様々な騒動があったが、今は平和そのものだ。
「行ったかな?」
「行ったよ?」
五百蔵が出掛けたのを確認し、二人は表示枠を開いた。
空腹娘¦『行きました!』
ズーやん¦『よし!では、作戦開始!』
にゃしぃ¦『いいのかなこれ?』
邪気目¦『いいのいいの』
船長¦『で、どうするんだ?』
空腹娘¦『提督を追い掛けます!』
船長¦『いや、だから、その方法』
元ヤン¦『素直に、尾行するしかないんじゃね?』
吹雪達の作戦、それは五百蔵と榛名が出掛けるのを尾行するものだった。
ほなみん¦『何!私を除け者にして、楽しい事やってるの?!』
ズーやん¦『あ、ほなみん生きてた』
元ヤン¦『喧しいのが来やがった・・・』
ほなみん¦『なんだあああ?!私提督!提督だよ!?』
ヒエー¦『疑問系入ってる時点でアウトじゃないですかね?』
ほなみん¦『比叡ちゃんまで・・・!いいもんいいもん!私一人で一大ジャンルになるから!』
邪気目¦『メンドクセエからやめろ』
船長¦『つかよ、仕事はいいのか?』
ほなみん¦『今日の分は終わったし!』
空腹娘¦『あの、磯谷司令?若葉さんが近くに・・・』
ほなみん¦『そうなんだよ!最近、若葉ちゃんとの距離が物理的に縮まったんだよ!振り返れば、物影に若葉ちゃんが居るんだよ!』
わかば¦『・・・人体模型』
約全員¦『ひいぃ!』
最近、会話の流れが早くて追うのが大変だと、睦月は思う。特に、磯谷が入ってきた時のスピードは凄まじいの一言に尽きる。
あっという間に会話が始まり終わり、また始まるを繰り返している。
ほなみん¦『そう言えば、吹雪ちゃん』
空腹娘¦『何ですか?磯谷司令』
ほなみん¦『鉄腕ちゃん、どうしてるの?』
空腹娘¦『・・・何でそんな事を聞くんです?』
ほなみん¦『え!?え~っと~』
磯谷が答えに詰まり、言い淀んだ。
吹雪の艤装を納める格納空間から、鉄腕ちゃんがニュッと這い出し、走り去っていった。
空腹娘¦『磯谷司令、鉄腕ちゃんは今出ました』
ほなみん¦『今出た?!今出たって言った?!何処?!何処から?!』
ズーやん¦『因みに、ほなみんは今、何処に居るのかな?』
邪気目¦『おい、穂波』
ほなみん¦『え!?いや、そのっ?!ちょっ!まっ!』
磯谷の表示枠から磯谷が消え、快音が連続で響いた。
元ヤン¦『何か今、すげえ良い音がしたな・・・』
ズーやん¦『ゴキャァ!とかパキャァ!って感じの音だったね・・・』
横須賀¦『ほなみん 様が退室されました。九割九分九厘の可能性で、鉄腕ちゃん様によるコンビネーションが原因と思われます。承認しますか?はい/いいえ』
全員が黙って『はい』を押した。
空腹娘¦『磯谷司令が更衣室前に潜んでいる音がしましたので・・・つい』
船長¦『吹雪の耳から逃げられると思っていたのか?あいつ』
元ヤン¦『騒がしくしてたら、釣れると思ったが・・・』
邪気目¦『まさか、本当に釣れるとはな・・・』
ズーやん¦『ほなみん、分かりやすすぎ・・・』
にゃしぃ¦『あの、五百蔵さんはいいの?』
約全員¦『しまった・・・!』
結局、五百蔵のオッサンと榛名の尾行は大幅に出遅れ、吹雪達は大急ぎで支度をし、出掛ける事になった。
日本の何処かの埠頭、そこで一人の女性が釣糸を垂らしていた。
横に置いてあるバケツには、何も入っていない。どうやら、釣果は芳しくはないようだ。
だが、女性の顔には苛立ちの色は無く、今の状況を心底楽しんでいる。
その女性に、作業着姿の長身が後ろで結んだ髪を揺らしながら、がに股で近付いていた。
「おう、久しぶりやにゃあ。まるゆ」
「む?ああ、大和か。どうした?珍しいじゃないか、お前が宿毛から離れるなど」
「アシも珠にゃあ、の。旅行の真似事もすらぁよ」
「そうか、子らに親孝行でもされたか?」
「あのチビ助共、余計な気ぃ回しよるわ。そういや、おんし今は中将になったがやったか?」
「身に合わぬ身分さ」
「はっ、そら、堪らんのぅし」
作業着の長身、宿毛の大和がまるゆの隣に腰を下ろし、煙草に火を着ける。
二人は言葉を交わさず、まるゆは釣糸を垂らし、大和は紫煙を吐いていた。
ややあって、まるゆが上着のポケットから葉巻を取りだし火を着けた。
「金剛もおんしも、葉巻かや?気取るのう」
「大和、こう言う嗜好品は好みだ。気取るだのは関係無いさ」
「かっははは!そらそうじゃな、アシも葉巻は性に合わん」
「そうだろうな」
笑い、まるゆのバケツに大和は目をやる。
バケツの中は、相変わらずの空だった。
「知っちゅうかや?魚は針付けんと釣れんち」
「・・・またか」
「針取られたに気付かんかったがか?変わらんのう」
「はあ、大和」
「何ぜ?」
据わり目付きの悪い目で、大和はまるゆを見る。
まるゆは紫煙を空に向けて吐き、釣竿を片付け始めた。
「お?どいたぜ?針取られるき、嫌になったかや?」
「大和、暇なら呑みに行くか?」
「奢りならの」
「ああ、私の奢りだ」
「いたら、行こうかや」
まるゆは背筋を伸ばし、大和は若干猫背で、二人は揃って歩き出し、店へと向かった。
「しかしよ、まるゆ。おんしのその、水着か何か解らん格好は何とかならんがかや?」
「何ともならんな」
「ほうか」
「冬悟さん、このネクタイはどうですか?」
「ふむ?ああ、これは中々」
五百蔵と榛名は、街の紳士服店で買い物をしていた。
長身の二人がネクタイを選んでいる光景は、不思議な威圧感めいたものがあった。
「冬悟さんは、どちらかと言えば明るい色目は合いませんから、此方の寒色系が合いますね」
「いや、すまないね。選んでもらって」
「いえいえ!これも妻の務めですから!」
店の外で何か崩れ落ちる音が聞こえた。
「くそぅ!くそぅ!何であんなオッサンに!」
「諦めろ、榛名お嬢が選んだ相手だ」
「それに、あの金剛総長も認めているんだ」
「はっ!吹雪様が居るぞ!あ、提督、ちーっす」
「横須賀悪ガキ隊もだ!あ、提督、ちーっす」
「早く御試食を用意するんだ!あ、提督、ちーっす」
「ふうむ、この街もふぶっちに染まってきたね」
「あの、最後がおかしくなかったです?」
「まあ、あまり気にするな。睦月」
「いや、おかしくない?ねえ?」
物影に、吹雪達が隠れ五百蔵達の様子を窺っていたが、如何せん人数が多かった。隠れきれずに、街の料理人達に見付かっていた。
「ほっほーう!」
「おい、誰か吹雪取り押さえろ!」
「吹雪ちゃん!落ち着いて!」
目の前の店先に、試食の山が並ぶ。
それも、吹雪が二回以上通って常連になった店は繁盛するというジンクスがあるからだ。
どの店も必死に吹雪を呼び込もうと、出来立ての中華まんや菓子類に揚げ物を試食として山のように積み上げていく。
「穂波!止めろ!」
「あ、ちょっと待って!このパターンは?!」
天龍が、復活した磯谷を暴走する吹雪にけしかける。
しかし、磯谷の予想通りに鉄腕ちゃんが格納空間から飛び出し、右腕が磯谷を掴み左腕が肘で右腕をフック、そのまま磯谷を引き摺り、横須賀の街を駆け抜けた。
「ひぃ!腕が!・・・何だ、提督か」
「な、なんだ!・・・提督かよ」
「腕が遡上していく!・・・あ、提督か」
「何て言うか、安定のほなみんだね」
「いいんですか、あれ?!」
「いいのいいの、ムッキーは気にせず可愛い服を探そう」
「オヤジと榛名の尾行はいいのか?」
「いやもう、吹雪が店に突撃して、穂波があれだし、バレてるだろ」
「それじゃ、ふぶっち回収して、ムッキーを可愛くコーディネイトしちゃおう!」
山のように積み上げられた試食が吹雪が通ると同時に消え感謝の声が響く中、摩耶が吹雪に中華まんとスティックサラダを買い与え、鈴谷達に合流する。
磯谷は、後に五百蔵と榛名に回収された。
「何やってるのよ?君」
「ふっ、流石は鉄腕ちゃんね!やるじゃない」
「鉄腕ちゃん、お散歩は終わりですよ」
それから暫くの間、リードを付けた鉄腕ちゃんが磯谷を引き摺り横須賀の街を駆け抜けるお散歩が、恒例行事になるのは、また別のお話。
鉄腕ちゃん無双だ、これ・・・
まるゆ中将は、攻殻な機動隊の少佐をイメージ・・・