本編とは関係無い話なのです!
「かっあー!まるゆよぅ、おんしゃ、こんな上等な酒呑みゆうがか」
「相変わらず、いい呑みっぷりだな大和」
「家やと、チビ助共が喧しいきの。上等な酒らぁ呑めんわ」
静かなBARに二種類の声が響く。
まるゆは静かにグラスを傾け、大和はボトルを一気に空けていく。
二人共、呑み始めてかなりの時間が経つが、酔いが回っている様子は無い。
素面で呑み、話をしている。しかし、まるゆはどこか歯に挟まった様な様子だ。
「大和」
「何ぜ?」
ややあって、まるゆが切り出した。
グラスを煽り、一息吐いた。
「・・・最後の戦いを覚えているか?」
「んあ?ああ、あの中枢棲姫か」
「そうだ・・・」
「何ぜ?酔うたかや、似合わん言い方しよって」
「なあ、大和。奴の最期の言葉を覚えているか?」
「ああ?最期の言葉?」
「そうだ」
大和は嘗ての記憶を呼び覚ます。
誰も彼もがパタリバタリと当たり前のように死んでいき、海を紅く染めていたあの戦場。
その最奥、最後の戦場。其処に居た奴の最期の言葉。
『コノ世界ハ平和ノ成レノ果テ、愚カナオ前達ガ望ンダ愚カナ理想。精々足掻ケ』
「じゃったか?これがどういたぜ」
「大和・・・私はあの戦いの後、深海棲艦達に話を聞いて回った」
「ほう、変わった事するにゃあ」
「そこで、奇妙な話を聞いたよ」
まるゆは目を閉じ、グラスを揺らした。
「深海棲艦達は、誰も中枢棲姫の事を知らなかった」
「ああ?どういう事な?」
「正確には、中枢棲姫とその氏族を知らなかった、か」
「もっと、解らんわボケ。分かりやすうに話せ」
「深海棲艦は氏族で纏まり、氏族間の繋がりは弱い。隣の海域の氏族の事もまともに知らない事だってある。だがな、全く知らない訳じゃない」
深海棲艦は氏族で纏まり、鬼や姫と言った上位個体を族長としている。
その為かは解らないが、他の氏族の事をよく知らない事がある。だが、それでも
「どの氏族がどの海域に居て、誰が族長かぐらいは知っている。なのに」
「誰っちゃあ、中枢棲姫と氏族を知らんつか」
「そうだ、あの北の氏族を纏める港湾棲姫も、中枢棲姫の事を知らなかった」
「あの、港湾棲姫もかや。益々、怪しいにゃあ」
「大和、私達艦娘は洋から始まった」
「んお?」
新しいボトルをバーテンダーから受け取り呑み干していく大和に、まるゆは内心ちょっと引きながら話した。
「・・・大和、私達艦娘は、深海棲艦を研究して産み出されたとされている」
「・・・・・・」
「しかし、その切っ掛けとなった戦争を起こしたとされる中枢棲姫は、誰も見た事も聞いた事も無い。そんな存在が突然現れ戦争を起こし、それに対抗する為に洋が産み出され、私達が産み出された。シナリオとしては、出来すぎと言えるし不出来とも言える」
「・・・・・・」
「なあ、大和。私達はいったい何だ?」
まるゆの独白に大和は何も言わず、空のボトルを量産していた。
その様子に、まるゆが眇で大和を見ると、大和はまるゆの前に置かれていたナッツが入った皿を掴むと、一気に口に流し込んだ。
「あ」
まるゆが茫然とする横で、大和は口内のナッツの群れを噛み砕き、ボトルに入った琥珀色の液体で飲み下す。
ややあって、ゲップを一つして、煙草に火を着ける。
「何でもかまんちや、んな事」
「そんな、事・・・?」
「アシもおんしも、艦娘。それでええやか」
「いや、お前、私の話を聞いていたのか?」
「聞きよったよ、めんどい事言いよるなあち、の」
ヌッと手を伸ばし、バーテンダーが持つバーボンのボトルを取り、一息に呑み干す。
「のう、まるゆ。アシらは艦娘よ」
「ああ・・・」
「アシらに出来るがは、何ぜ?」
「・・・ああ、そうか・・・」
「謎解きは謎解き屋に任いて、アシらはアシらに出来る事やりよったらええがよ」
バーテンダーは驚愕した約五十度のバーボン、それが瞬く間に消えていく。おかげで、二人の話が頭に入って来ない。
それ以外の酒も、たった一人により空のボトルとなって積み上げられていく。
いったい、どういう肝機能をしているのか。驚愕しながらバーテンダーは次のボトルを手に取ると、それも空になった。
「まるゆよぅ、おんしの悪い癖よ、それは」
「・・・そう、だな」
「抱えて抱えて、抱えるだけ抱えて、最後の最後まで抱えっぱなし。洋にでもなる気かや?」
「・・・それは、無理だな・・・!」
笑い、グラスを空にする。
「そうよ、アイツになるは無理よ」
「くっくくく・・・お前ぐらいなものだぞ?洋をアイツ扱いする奴は」
「はっ!知ったことかや」
二人の話は、まだ続く。
「知っているか?大和。洋は、あれでいて中々に・・・」
「かっはははははは!笑わすなや!」
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