次回から、プレハブかな?
麗らかな日差しの元、未だに休暇中の北海鎮守府提督五百蔵冬悟が一人で街を歩いていた。
ーーさて、昼はどうするか?ーー
街をぶらぶら歩いて、暇潰し。街のチンピラとヤーさんに道を譲られ挨拶されて、どうしたものかと苦笑しながら歩いていた。
五百蔵が何もせずに歩いていると、昼を報せる鐘が鳴った。
昼はどうするか?考えるが、良い案が思い付かない。
見付けた自販機で缶コーヒーを買い、ベンチに座り街並みを眺める。
ーーふむ、一人の昼か。久しぶりだーー
鎮守府では、吹雪や誰かしらが居て、一人で食事をする事は殆んど無かった。
何故か、また挨拶されたりして苦笑しながら、昔を思い出す。
やめた。若気のいたりだ。思い出しても、もう意味は無い。過去より今だ。
ふと、街が騒がしくなっているのに気付いた。
何かと目を向けてみると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『ああああああああああ!!待ってぇ!鉄腕ちゃん!待ってぇ!せめて、同じ方向に走ってぇ!私、二人になっちゃううううううううう!!』
『ヒイィ!腕が!腕が!・・・なんだ、提督か』
『鉄腕ちゃん!そっちは道じゃなっ・・・!』
『飛んだぞ・・・!』
見なかった事にしよう。そう決めた。
あの鉄腕、自分のチェルノ・アルファのスクラップパーツから造られた筈なのに、自立稼働している。
謎が多すぎる吹雪の新型艤装、造った夕石屋も何故自立稼働しているのか解らないと言っていた。
だが、吹雪と自分と榛名。この三人に対して、反応を示す事だけは明らかになっている。
鳳洋に対しては、ジッと見るようにしているだけだった。
ーー目がないのに、見るようにとは、これ如何にーー
元ヤン¦『オヤジ』
鉄桶男¦『どうかしたかね?摩耶君』
元ヤン¦『穂波、見なかったか?』
見なかった事に出来なかった。
ヘアピンカーブをドリフトで曲がる鉄腕ちゃん、それに引き摺られる磯谷。
見なかった事にしたかった。
鉄桶男¦『磯谷嬢なら、飛んだよ』
元ヤン¦『飛んだ?・・・ああ、鉄腕ちゃんの散歩か』
鉄桶男¦『さん、ぽ・・・?』
元ヤン¦『散歩だ、オヤジ』
犬の散歩ならぬ腕の散歩・・・
聞いた事の無い言葉に、五百蔵は戦慄する。
元ヤン¦『飽きたら、帰ってくるか』
鉄桶男¦『そう言うものなのか?』
ズーやん¦『オジサン、相手はほなみんと鉄腕ちゃんだよ』
邪気目¦『つかよ、今、トリプルアクセルしてたんだが』
あの鉄腕ちゃん、本当に何なんだろう?
あの子は何の疑問も無く使っているけど、不可思議だらけだろう、あれ。
「叔父貴、どうした?」
「木曾君か」
五百蔵が軽く頭を抱えていると、木曾が大きめの紙袋を提げて現れた。
「いやね、鉄腕ちゃんについてなんだが」
「・・・鉄腕ちゃんは、鉄腕ちゃんとして考えるしかないんじゃないか?」
「・・・やっぱり、そうなる?」
「ああ、それしかない」
神妙な面持ちで頷く木曾
川向こうでは、とうとう鉄腕ちゃんを繋ぐリードが切れて、磯谷が空を舞った。
「・・・ところで、叔父貴。飯食ったか?」
「ん?まだだが、どうしたかな」
「いやな、俺もまだだから、良かったらどうだ?」
「ああ、行こうか」
五百蔵が立ち上がり、空になった缶コーヒーをゴミ箱に捨てる。
それを見ながら、木曾は内心ガッツポーズを取った。
ーーしゃっ!叔父貴と昼飯!買い物に出て良かったぜ!ーー
熊さんパンツの木曾が、心の中で狂喜乱舞しながら「第二夫人」と危険な単語を騒いでいる。
しかし、
ーーん?木曾君はどうした?ーー
第一夫人は榛名で決まりだ。それは、どうにも出来ない。だが、第二夫人なら!ジュウコンカッコカリもあるしな!
と、意気込んでいるが、当の五百蔵冬悟にとって、木曾は「よく懐いてくる近所の子供」程度の認識でしかない事を木曾は知らない。
リードが切れて空を舞った磯谷を、鉄腕ちゃんがキャッチし、また走り出した事を二人は知らない。
「叔父貴、こっちに旨い定食屋があるんだ」
「ああ、それは良いね」
後に、榛名が表示枠で見ていた事を知って、DOGEZAに変型する事になる事を木曾は知らない。
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「どうです?霧島」
「悪くないですね。比叡姉様」
「悪くないって、味の評価を聞いているのに・・・」
横須賀鎮守府食堂で二人の艦娘が試食をしていた。
一人は霧島、一人は比叡だ。
二人はテーブルを前に、多種多様なカレーが入った小皿を見ていた。
「私としては、このチキンカレーが好きですが、駆逐艦の子達には辛すぎるかもしれませんね」
「そっちは、ちょっとスパイス効かせ過ぎたかな?」
「しかし、このシーフードカレーは良いですね」
「あ、それは蕎麦屋のカレーをヒントに、鰹出汁で作ってみたよ!」
ああ、道理でと、霧島は納得を覚えた。
霧島個人的に、シーフードカレーは塩辛いという認識がある。
それは、初めて食べたシーフードカレーがそうだったという理由だが、霧島はあまり好きではなかった。
舌と口内に険が立ち、いつまでも残る嫌な塩味と魚介の味。霧島は、それが苦手だった。
それを知っているのか、比叡のカレーにはそれらが無い。
魚介が苦手な者でも食べやすいよう、下味を付ける等しているし、慣れ親しんだ鰹出汁だ。
嫌う者はそう多くは無いだろう。
「ふむぅ、しかし、このパインカレーは無いですね」
「うん、それは私も作ってて無いなって・・・」
ーーでは何故作った?ーー
という突っ込みは口には出さずに、他の小皿を手に取り試食を進める霧島と比叡。
この後、ボロボロになった磯谷が泣きながら比叡に抱き付いてくるが、二人はそれを知らない。
次回
北海大水道?